六十四卦

六十四卦 意味・読み方

天水訟|意味・卦辞爻辞解説(てんすいしょう)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

争い、口論、訴訟、契約不和の卦です。争い抜くより、始まりを省みて止め所を探します。

卦象と卦名

訟は上が乾天、下が坎水です。天は上へ行き、水は下へ流れます。方向が初めから背いているので、心、言葉、契約、利害が噛み合わず、争いが生まれます。ここでいう訟は、裁判だけに限りません。事実が塞がれ、曲直が明らかでなく、双方が自分の言い分を公の場へ持ち出して分けてもらおうとする。そういう局面すべてを訟として読みます。

卦の中心的な意味

乾の剛が上にあり、坎の険が下にあります。一方は強く押し、もう一方は困り、傷つき、言葉を飲み込めません。そこに不信、体面、契約の曖昧さが加わると、小さな不平は口舌となり、口舌はやがて官司や長い対立になります。訟卦が本当に見せるのは、最後の裁きより、争いが起こる前の始まりです。

向いている問い

職場の衝突、契約トラブル、共同事業の分裂、婚恋や家産の争い、訴訟、クレームに出ます。まず見るのは、勝てるかどうかではありません。どこから争いが始まったかです。事実は何か。証拠はあるか。契約は書かれているか。境界は約束されていたか。自分は正したいのか、それとも相手を負かしたいのか。訟を得た時は、証拠を保ち、公正な第三者を探し、中途で止める道を考えます。大事をさらに進めることや、大川を渡るような危険な決断は、争いが解けるまで避けます。

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卦辞

一言で読む

理があっても、途中で筋を明らかにして止めるほど吉。押し切るほど凶になります。

原文

訟:有孚、窒、惕、中吉、終凶。利見大人、不利渉大川。

書き下し文

訟は、孚有るも窒がり、惕る。中なれば吉、終れば凶なり。大人を見るに利あり、大川を渉るに利あらず。

現代語訳

訟は、真実はあっても塞がって通りません。恐れて警戒し、中道で止めれば吉ですが、最後まで争い抜けば凶です。大人に会うのは利がありますが、大川を渡るような大きな危険に進むのは利がありません。

卦辞の読み解き

争う人が、必ずしも全く無理を言っているわけではありません。内には真実も根拠も、信じるところもあります。しかしそれが塞がれて通りません。相手が聞かない、手続きがない、証拠が弱い、自分の怒りが言葉を曇らせる。理由はさまざまです。そこで「惕れて中すれば吉」となります。危険を知って警戒し、中途で曲直を明らかにし、止められれば吉です。

「終われば凶」は、争いを最後まで押し切ることの危険を言います。たとえ判決や勝利を得ても、金銭、名誉、人情、健康、時間を失い、怨みだけが残ることがあります。大人を見るとは、公正な裁断者、上位者、調停者、専門家を見よということです。大川を渡るなとは、争いで坎の険にいる時に、さらに大きな危険を重ねるなという戒めです。

実際の読み方

官司では、弁護士、調停者、公的な手続き、信頼できる上司や長老を使います。協力なら、先に契約、帳簿、メール、証人を整理します。関係では、対話を裁判のようにせず、目的を「相手を罰する」から「事情を回正する」へ移します。実際の読みは三層です。真実と証拠はあるか。道はどこで塞がっているか。中正の人を見られるか。この三つがそろわないうちは、怒りだけで起訴や申訴へ走りません。

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彖曰

一言で読む

強い者と険しい事情が背き合っています。事実を分けなければ、争いは深まる一方です。

原文

訟、上剛下険、険而健、訟。訟、有孚、窒、惕、中吉、剛来而得中也。終凶、訟不可成也。利見大人、尚中正也。不利渉大川、入于淵也。

書き下し文

訟は、上は剛にして下は険、険にして健なるは訟なり。訟に孚有るも窒がり、惕る、中なれば吉なるは、剛来りて中を得ればなり。終れば凶なるは、訟は成すべからざればなり。大人を見るに利あるは、中正を尚べばなり。大川を渉るに利あらざるは、淵に入ればなり。

現代語訳

上は剛で、下は険しく、険の中でなお健やかに押すので訟になります。訟に真実があっても塞がり、恐れて中を得れば吉です。終わりまで争えば凶で、訟は成し遂げてはなりません。大人に会うのが利なのは中正を尊ぶからで、大川を渡るのが利でないのは険に入るからです。

彖伝の読み解き

構造そのものが争いを生みやすい形です。下にいる者は坎の険の中で困り、恥じ、怒ります。上にいる者は乾剛で、強く決しようとします。困った者は言いたくなります。強い者は譲りません。上下の位置、力、感情が相容れなくなると、公に訴えて曲直を分けてもらうしかなくなります。訟における「有孚」は、必ず実を伴わなければなりません。根拠がなければ、ただの虚妄です。根拠がありながら塞がれるからこそ、訟になります。逆に、事実が明らかなのに、機巧、私曲、強弁で勝とうとするなら、それは訟卦の正しい用い方ではありません。

実際の読み方

処理する時は、誰が上にいて、誰が下にいるかを見ます。誰に権力があり、誰が危険の中にいるか。誰が聞かず、誰が言えずにいるか。多くの争いは、一方が全悪だから起こるのではなく、位置と力が違い、情意が背いているために起こります。そこで、事実と解釈と要求を分けます。事実は何が起きたか。解釈はそれをどう受け取ったか。要求は何を求めるか。ここを混ぜると、情緒がそのまま事実になり、体面がそのまま要求になります。分けて初めて、中吉の可能性が出てきます。

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象曰

一言で読む

争いを減らす早道は何か。始める時に名分、責任、出口を決めておくことです。

原文

天与水違行、訟、君子以作事謀始。

書き下し文

天と水と行いを違えるは訟なり。君子以て事を作すに始めを謀る。

現代語訳

天と水が違う方向へ行くのが訟です。君子はこれを見て、事を始める時にその始めをよく考えます。

象伝の読み解き

天は上へ、水は下へ行きます。後から急に背いたのではなく、本性と方向がそもそも違います。

高島の読みでは、訟の原因は成訟の後ではなく、作事の始めにあります。交友は相知の始めが大切です。契約は立券の始めが大切です。売買、婚姻、雇用、共同事業は、最初に名分、金、責任、期限、退出方法を明らかにしておかなければ、後で必ず争います。訟卦が教えるのは、どう勝つかだけではありません。どうすれば訟を生まずにすむかまで含みます。始まりを謀るのは、多疑だからではありません。未来の争いを小さくするための礼です。

実際の読み方

協力では、退出条件、利益配分、権限、決定方法を書き残します。雇用では、職責、報酬、評価、解約を明らかにします。婚姻や家族では、金銭、親族、住居、価値観、境界を話しておきます。貸借なら、返済時期、利息、遅延時の処理を記録に残します。

すでに争いが起きた時も、始まりへ戻ります。どこが曖昧だったか。誰が何を期待していたか。記録は残っているか。最初を直せば、今の争いも、次の争いも小さくできます。

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占断

一言で読む

争いの卦ですが、勝ち切る卦ではありません。理を明らかにして止め所を探します。

総合的な占意

この卦を得た時は、争議、閉塞、口舌、訴訟リスク、始まりの設計不足を読みます。吉は理を明らかにして止めることにあり、凶は争いを終局まで引くことにあります。高島の実占では、「転・止・退・守」が判断の中心になります。

項目別の占断

  • 職場:上司、部下、同僚の意思が通じない時は、書面で確認し、感情的な弁明を減らします。
  • 訴訟:理があっても証拠と中正な裁断者が必要で、怒りだけで最後まで争いません。
  • 商売:初めの約款、帳簿、責任を明らかにし、曖昧な契約から後の争いを生じさせません。
  • 婚姻:初めから二人や両家が相背くなら、無理に成立させず、関係の土台を見直します。
  • 健康:陰陽や気の不和を見て、小病の初めに治し、長く放置して内外が争う状態を防ぎます。

六爻の要点

  • 初六:小さな争いを早く止め、口舌と怨みを長引かせなければ終吉です。
  • 九二:勝てない争いから自分の領域へ退き、周囲への連累を防ぎます。
  • 六三:旧徳と従来の基盤を守り、不満で根を壊さず、上に従っても功を争いません。
  • 九四:争いが成らなければ正理へ戻り、争心を改めて正しさを守ります。
  • 九五:中正で権威ある裁断者が、事実と公理によって争いを解きます。
  • 上九:争って得た栄誉は繰り返し奪われて保てないため、危険を見て退きます。

実際の読み方

職場では、書面で確認し、感情的な弁解を減らします。官司では、有理であっても証拠と裁断者を見ます。商業では、契約と帳簿を整理します。婚姻や家産では、中正な長上や、制度化された手続きに寄せます。健康では、小病の始めを軽く見ず、内外が相攻む状態にまで至らせません。

高島の占例

占例1

求仕の件では初六を得て、長く争わず別の道を求めよと断じています。

占例2

罷職の申弁を問われた時は九二から退蔵を勧め、その人は後に別任を得ました。訟の妙は、勝たずに道を開くところにもあります。

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初爻

一言で読む

芽のうちは勝ち負けにしません。言葉が乱れても、長引かせなければ吉へ向かいます。

原文

初六:不永所事、小有言、終吉。

書き下し文

初六、事とする所を永くせず、小しく言有り、終には吉なり。

現代語訳

争う事を長く続けません。少し言葉の行き違いはありますが、最後には吉です。

爻辞の読み解き

訟の始まりでは、小さな口舌を大きな争いに育てない。初六はそこを説きます。

ここはまだ、大きな官司の段階ではありません。初六は陰柔で下にあり、力も弁も弱く、上に対して長く争える位置にいません。心に不平はあり、小さな口舌も出ます。しかし長引かせなければ、曲直はだんだん明らかになり、大きな咎にはなりません。この爻の吉は、ひとえに「早く止める」ところにあります。小さな怨みを長い訴えに育てない、小さな書類不備を商業の大争いにしない、小病を長病にしない。要はそれだけです。

実際の読み方

職場や関係では、早く説明し、謝るところは早く謝り、誤記や条件の違いを直します。売買では、小さな争議なら精算して抜けます。競争では、勝っても相手を追い詰めません。病では、初期に治せばよく、長引かせるほど険になります。

高島の占例

官を求める人の占で、局長に頼る道は長引かせず別の道を求めよと高島が読んだように、初六は「通じない一線に自尊心を賭けない」ことを教えます。

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二爻

一言で読む

勝てない争いからは退きます。小さな基盤を守るほうが、災いを広げずにすみます。

原文

九二:不克訟、帰而逋、其邑人三百戸無眚。

書き下し文

九二、訟に克たず、帰りて逋る、其の邑人三百戸に眚なし。

現代語訳

訟に勝てません。帰って身を避けます。小さな邑の人々には災いがありません。

爻辞の読み解き

勝ち目のない争いは広げない。自分と周囲の小さな基盤を守る爻です。

九二は剛で中を得ていますが、下卦にあり、上の九五と争う形になります。相手は位が高く、力もあります。ここで勝てない争いを広げれば、自分だけでなく、周りの小さな共同体まで巻き込みます。だから退き、小邑に帰り、身を隠し、基本の盤を守ります。この退きは、責任逃れではありません。避けるべきは、勝ち目のない訟が、人、家、部下、資産を巻き添えにすることです。

実際の読み方

官司や申訴では、証拠、権限、資金、公論が弱すぎるなら、当面は退きます。職場では、不利な場でその場の正面衝突を続けません。家庭や共同事業では、名分の争いより、小家庭、小チーム、小資産を守ることを優先します。

高島の占例

罷職に不満を持つ北沢正誠に高島が争弁を止めるよう勧め、後に別任が来た例のように、九二の退きには未来を残す力があります。

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三爻

一言で読む

危うい時に新しい功を争いません。旧い信用と本分に依って守るほうが吉です。

原文

六三:食旧徳、貞厲、終吉。或従王事、無成。

書き下し文

六三、旧徳を食む、貞しけれど厲うし、終には吉なり。或いは王事に従うも、成すこと無し。

現代語訳

旧い徳に養われます。正しければ危うくても最後には吉です。王の仕事に従うことがあっても、自分の功として成すことはありません。

爻辞の読み解き

危うい時に頼るのは、旧来の信用と本分。六三はそう告げます。

六三は陰柔で危うい位置にあり、積極的に争って勝つ力はありません。ここで頼るべきは旧徳です。祖業、旧職、既存の信用、以前からの技能、古い約束、長く積んできた関係です。それを正しく守れば、危険はあっても最後には吉です。

「王事に従うも成すこと無し」は、新しい公務、大きな役、他の道へ乗り換えても、自分の功として成りにくいということです。動機が不満や怨みに寄っている時ほど、軽く移らない方がよいのです。

実際の読み方

仕事では、今ある職分、顧客、信用、技能を守ります。転職や配置替えを、委屈への反発だけで決めません。財務では、安定した収入源を軽く捨てず、高リスクの新路にも飛びません。関係では、一時の争いで過去の情分まで否定しません。

高島の占例

長年勤めても報われず転官を望む人に、高島が旧業に安んじるよう読んだ例のように、六三は「離れる前に、時機と動機を見よ」と言います。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

争いが通らないなら、勝ちに固執せず本来の分と規則へ戻り、心を正に安んじます。

原文

九四:不克訟、復即命渝、安貞吉。

書き下し文

九四、訟に克たず、復りて命に即き渝わり、貞に安んずれば吉なり。

現代語訳

訟に勝てません。戻って命に就き、心を改めて正しさに安んじれば吉です。

爻辞の読み解き

争いを押し通さず、本来の規則や分へ戻る。それが九四の出口です。

九四は剛ですが正を失い、争う心があります。しかし上には九五があり、下に強い応じもないので、争いは通りません。九二が勢いに欠けて退くのに対し、九四は理が足りずに戻る爻です。

「復即命」は、物事の本来の命分、規則、現実の配置へ戻ることです。「渝」は悪い意味の変心ではなく、怨みや不安の心を改めることです。「安貞」は、正しいところに心を安んじることです。じっと堪えて黙り込むのではなく、争いの心そのものを正道へ戻します。

実際の読み方

職場の待遇、役職、名分の不満では、直接争って通らないなら、まず職責と長期信用へ戻ります。共同事業や商売では、既定の契約や命令、合意に従って再調整します。婚姻や家事では、計画変更そのものより、心を回正できるかが大切です。病では、復して安んずる象を取り、治療法を改めて安定へ向かいます。

高島の占例

ある商店の幹事を占った時、高島は主人へ怨みをぶつけるより安常待命を勧めました。九四は、言い分がある時ほど怨気を整えてから動けと教えます。

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五爻

一言で読む

公正な中心に事実が届いた時、争いはもっともよい形で裁かれていきます。

原文

九五:訟、元吉。

書き下し文

九五、訟は元いに吉なり。

現代語訳

訟は大いに吉です。

爻辞の読み解き

公正で中正な裁き手に争いが届けば、曲直は明らかになる。だから大きく吉です。

九五は尊位にあり、中正で剛明です。訟を聴くには、威がなければ軽く見られます。中がなければ偏ります。正がなければ私意に固まります。明がなければ曲直を分けられません。九五はこれを備えるので、争う者にとって大きな吉となります。訟卦は、争いを勧める卦ではありません。訟を化して、無訟へ向かわせる卦です。九五の裁断は、片方を甘やかすものでもありません。私情と弁舌の中から事実を取り出し、公正に定めます。

実際の読み方

官司では、公平な裁判官、仲裁人、調停者、専門家を求めます。組織では、上位者が両方の事実を公開で聞き、証拠と規則で判断します。商売では、公明正大に利を求めることで争いを避けます。婚姻や家産では、中正な長老や制度を使います。

高島の占例

北海道の先住民との通婚政策をめぐる占例で(原書は当時の旧称を用いますが、ここでは今日の言い方に改めます)、高島が下情の上達によって不当な令が改められたと読んだように、九五の吉は「塞がれていた事実が正しく聞かれる」ことにあります。

次へ:上爻

上爻

一言で読む

争って得た名誉は保てません。勝ったように見えても、朝のうちに剥がれます。

原文

上九:或錫之鞶帯、終朝三褫之。

書き下し文

上九、或いは之に鞶帯を錫わるも、終朝に三たび之を褫わる。

現代語訳

飾り帯を与えられることがあっても、朝のうちに三度も奪われます。

爻辞の読み解き

争いで得た栄誉や地位は、長く保てない。上九はそう言い切ります。

鞶帯は命服の飾りで、争いに勝って得た栄誉や地位の象です。しかし朝のうちに三度も奪われます。機巧、私曲、強弁、僥倖によって得た勝利は、たとえ一時の賞になっても、長くは手元に残りません。訟の終局は、まさに卦辞の「終凶」です。

これは、すべての勝訴を否定する言葉ではありません。問われているのは、訟を極め、争いによって名誉を取ろうとする心のほうです。根が正しくなければ、外の飾りはすぐ剥がれます。

実際の読み方

選挙、訴訟、競争、昇進、名誉争いでは、勝ち方を見ます。人心を裂き、規則を曲げ、口先で勝った地位は保ちにくいものです。商売では、不正な利や争って得た利益ほど、早く失われます。病では、よくなったり悪くなったりを繰り返し、極まった状態として慎重に扱います。

高島の占例

名古屋市長選挙の占で、高島が当選しても人心不服で保ち難いと読んだように、上九は「得ること」と「福であること」は違うと教えます。ここでは、争う前に退くのが最もよい策です。

天水訟:読みの覚え

天水訟は、理があるから最後まで争えばよい、という卦ではありません。争いの筋を早く明らかにし、止め所を探す卦です。

勝ち切るより、正しく終える

訟では、勝ち負けだけを見ません。そもそもの契約、言葉、責任の置き方に、どんなズレがあったかを見直します。 正しさがあっても、争いを長引かせれば関係と体力を削ります。早い段階で筋を整理し、必要なら中正な第三者を入れます。勝ち切ることと正しく終わらせることは、そもそも別の目標です。

証拠と出口を用意する

契約、家族間の衝突、社内の責任問題では、証拠と経緯を整理します。感情が強いほど、言い切る前に出口を用意します。当事者だけで言葉が同じところを回り始めたら、契約書、記録、専門家、仲裁者といった個人感情より上位の基準を入れる段階です。訟は、争いに入る前の言葉の重さも問います。

待つ段階、争う段階、決する段階

水天需とあわせて読むと、需は険の手前で待つ段階、訟は対立がすでに形になった段階だと分かります。需の時に条件を詰めておけば、起こらずにすむ争いは少なくありません。沢天夬とあわせれば、訟がなお議論する局面、夬が公に決断する局面だと見えてきます。議論から決断へ進むには、道理と手続きの両方が要ります。

天水訟:読みの覚え札記を開く

天水訟は、理があるから最後まで争えばよい、という卦ではありません。争いの筋を早く明らかにし、止め所を探す卦です。

勝ち切るより、正しく終える

訟では、勝ち負けだけを見ません。そもそもの契約、言葉、責任の置き方に、どんなズレがあったかを見直します。 正しさがあっても、争いを長引かせれば関係と体力を削ります。早い段階で筋を整理し、必要なら中正な第三者を入れます。勝ち切ることと正しく終わらせることは、そもそも別の目標です。

証拠と出口を用意する

契約、家族間の衝突、社内の責任問題では、証拠と経緯を整理します。感情が強いほど、言い切る前に出口を用意します。当事者だけで言葉が同じところを回り始めたら、契約書、記録、専門家、仲裁者といった個人感情より上位の基準を入れる段階です。訟は、争いに入る前の言葉の重さも問います。

待つ段階、争う段階、決する段階

水天需とあわせて読むと、需は険の手前で待つ段階、訟は対立がすでに形になった段階だと分かります。需の時に条件を詰めておけば、起こらずにすむ争いは少なくありません。沢天夬とあわせれば、訟がなお議論する局面、夬が公に決断する局面だと見えてきます。議論から決断へ進むには、道理と手続きの両方が要ります。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

相手が明らかに悪いのですが、それでも争ってはいけませんか。

争うなという卦ではありません。卦辞は「惕れて中すれば吉、終われば凶」と言います。筋を明らかにするところまでは進み、最後まで押し切る手前で止める。そこに吉があります。勝っても金銭、名誉、健康、時間を失うなら、その勝ちは高くつきます。

訴えるべきか、示談にすべきか迷っています。

三つを見ます。真実と証拠があるか。道はどこで塞がっているか。中正な裁断者や調停者に届くか。九五のように公正な聞き手が得られるなら、事実は正しく扱われます。そこが望めないなら、九二の退きのほうが基盤を守れます。

もう争いが始まってしまいました。まず何をしますか。

象伝に従って、始まりへ戻ります。どの約束が曖昧だったのか、誰が何を期待していたのか、記録は残っているのか。そのうえで、事実と解釈と要求を分けて書き出します。この三つが混ざったままだと、感情がそのまま要求になり、話は動きません。

相手が明らかに悪いのですが、それでも争ってはいけませんか。開く

争うなという卦ではありません。卦辞は「惕れて中すれば吉、終われば凶」と言います。筋を明らかにするところまでは進み、最後まで押し切る手前で止める。そこに吉があります。勝っても金銭、名誉、健康、時間を失うなら、その勝ちは高くつきます。

訴えるべきか、示談にすべきか迷っています。開く

三つを見ます。真実と証拠があるか。道はどこで塞がっているか。中正な裁断者や調停者に届くか。九五のように公正な聞き手が得られるなら、事実は正しく扱われます。そこが望めないなら、九二の退きのほうが基盤を守れます。

もう争いが始まってしまいました。まず何をしますか。開く

象伝に従って、始まりへ戻ります。どの約束が曖昧だったのか、誰が何を期待していたのか、記録は残っているのか。そのうえで、事実と解釈と要求を分けて書き出します。この三つが混ざったままだと、感情がそのまま要求になり、話は動きません。