六十四卦

六十四卦 意味・読み方

沢水困|意味・卦辞爻辞解説(たくすいこん)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

外が塞がり、資源も言葉も届かない時。志を失わないかが試されます。

卦象と卦名

困は上が兌沢、下が坎水です。節卦と反対の形になります。節は沢の中に水があり、水が節されて物を潤します。困は沢が水の上にあり、水が下へ漏れ、沢がかえって涸れる。沢に水がなければ、木も枯れ、日が照りつけ、困の象はいっそう深くなります。

卦の中心的な意味

序卦伝は「昇って已まざれば必ず困す」と言います。上へ上へと昇り、降ることも止まることも知らなければ、上は高くなるほど下は尽き、最後は困に至ります。前卦の升は上進を説きました。困はその後に置かれ、根を超えて上がった時、あるいは外の条件が急に断たれた時、人は苦境へ入ると知らせます。

卦辞は「困は亨る、貞し。大人は吉にして咎なし。言有るも信ぜられず」と言います。困はふつうなら通らないはずなのに、なぜ亨ると言うのでしょう。普通の人の身や事は困ります。しかし大人や君子は困の中でも正を守り、心の道までは困らせません。ただし困の時には、言葉が信じられにくい。低い所にいる人がどれほど説明しても、人はますます信じないことがあり、語るほど困ることさえあります。

向いている問い

困を得たら、まず自分を証明しようと焦らないことです。あちこちへ理解を求め過ぎてもいけません。元気を保ち、資源を節し、原則を守り、本当に信じられる人を探します。

事業なら資源が細り、意思疎通が難しい時です。関係なら説明だけでは効きません。病や危機なら現実の危険を重く見ます。修身なら、困っても志を失わないかどうかの試験です。

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卦辞

一言で読む

言葉で押すより、正を守って力を残す人だけが困を通ります。

原文

困:亨、貞大人吉、無咎、有言不信。

書き下し文

困は亨る、貞し。大人は吉にして咎なし。言有るも信ぜられず。

現代語訳

困は通じます。正しくします。大人は吉で咎がありません。言葉があっても信じられません。

卦辞の読み解き

困っても正しく守れば通じる。ただし言葉だけでは信じられにくい。古人は「困」の字を、木が口の中にある形として解しました。木は本来生気を持ちますが、口に囲まれて伸びられません。卦象では、木が坎の険に遇ってしおれ、兌の金に遇って刑せられるので困となります。震の春に転じて木が発生して初めて、木の道はふたたび亨ります。古の賢哲が艱難困苦に遭い、正道を守り、久しくして通達したことに似ています。

卦辞の「亨、貞」は、苦境が快いと言っているわけではありません。困の中で正を守れば、最後に通じる道が残るという意味です。「大人吉、咎なし」も、誰にでも約束された吉ではありません。剛中の徳があり、命に安んじ道を守れる人だけが、困の中でもその亨を失いません。

「有言不信」は重い言葉です。志を得ない時、その人の位置は用いられず、能力は見られず、言葉も重んじられません。この時に長々と語り、急いで事情を訴え、才を誇って進もうとすれば、かえって咎を招きます。困の時は言葉を簡にし、沈黙して忍び、道をもって自ら守ります。永遠に口を閉ざせという教えとは違います。まず自分が立ち、時勢が開いてから語れば、その言葉に重みが出ます。

実際の読み方

誤解の説明を問うなら、まず相手に今それを聞く条件があるかどうかを見ます。弁明、上申、売り込み、求職を問う時、時勢が困なら、話だけでは足りません。先に力を保ちます。

指導者を問うなら、困の時に空言で人を安心させようとしてはいけません。剛中、制度、行動、信用で支えます。困の中の沈黙は弱さではありません。言葉が一時効かないと知って根本を守る構えです。

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彖曰

一言で読む

身が険にあっても、心の道を失わなければ通路は残ります。

原文

困、剛掩也。険以説、困而不失其所、亨、其唯君子乎?貞大人吉、以剛中也。有言不信、尚口乃窮也。

書き下し文

困は剛掩わるるなり。険にして以て説び、困しみて其の所を失わず、亨るは、其れ唯だ君子のみか。貞しくして大人吉なるは、剛中を以てなり。言有るも信ぜられずとは、口を尚べば乃ち窮するなり。

現代語訳

困とは、剛が覆われることです。険の中にあって悦び、困ってもその正しい所を失わないので亨ります。それができるのは君子だけでしょう。貞正な大人が吉なのは、剛中だからです。言葉を発しても信じられないのは、口を重んじるほど窮するからです。

彖伝の読み解き

力あるものが押さえられても、心の道を失わなければ、困の中にも通る所がある。九二、九五のような剛中の爻が陰柔に覆われるのは、能力ある人が環境、流言、権勢、小人に押さえられ、伸びられないようなものです。

しかし困卦は下が坎の険、上が兌の悦です。身は険の中にありながら、心は悦びの道を失いません。遭遇は困っても、道は困らない。文王が幽囚されて易を演じ、周公が東に居て誠を守り、孔子が厄に遭って歌ったことは、みな険にして悦び、困して亨る例です。本当の君子とは、困厄を免れた人ではありません。困厄に志を奪われない人です。

困と亨は、本来は反対を向く言葉です。身が困れば事は亨りません。しかし君子が困に処する時、身は困っても心は亨り、遇は困っても道は亨ります。小人は困るとすぐ命を怨み、騒ぎ、憐れみを求め、恨み言を口にします。その結果、困によって語り、語ることでさらに困ります。君子は口先の勝ちを争わず、道を守れるかどうかを争います。

実際の読み方

困卦は、「身が困る」ことと「心が困る」ことを分けて読みます。外の資源、地位、名声、関係は一時困るかもしれません。しかし内の志、原則、節制、信用まで困らせてはいけません。

外が困り、内も乱れれば、困の上に困。外が困っても内が定まれば、後に亨る根が残ります。

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象曰

一言で読む

資源が尽きても、命と志を分け、握れる正道は手放しません。

原文

沢無水、困、君子以致命遂志。

書き下し文

沢に水無きは困なり。君子以て命を致し志を遂ぐ。

現代語訳

沢に水がないのが困です。君子はこれを見て命を尽くし、志を遂げます。

象伝の読み解き

外の潤いが尽きた時こそ、命を受け止め、志を守り抜きます。沢に水がなければ万物を潤せません。士が志を得ないことも、沢が水を得ないことに似ています。坎は水であり、また志です。水は尽きても志は尽きてはならない。これが困卦の大象です。

致命遂志とは、命を軽くすることでも、無謀に危険へ飛び込むことでもありません。運命の中には、すぐには変えられない困厄があります。身体、境遇、財、名声は困ることがあります。それでも人は、自分が尽くすべき道義を尽くし、志を最後まで通すことができます。命は天にあり、志は我にあり。道のために謀り、一時の得失だけを謀らない。長久を計り、目前の一日だけを計らないのです。

高島がここで引くのは、危城を孤守する比喩です。強敵が囲み攻め、内の兵は疲れ、外の援けも絶えた時、それでも危を見て命を授け、忠志を改めないなら、それが君子の困です。現代で読めば、戦場に限りません。事業、家庭、病、貧困、世論が最も冷たい時期の中で、譲れない一線を捨てず、原則を売らずにいられるかどうかです。

実際の読み方

苦境を問うなら、まず何が命で、何が志かを分けます。資源が断たれたのは命です。信を失うかどうかは志。人が信じないのは命。乱れて語るかどうかは志です。

境遇が苦しいのは命です。正を守るかどうかは志です。困卦のいちばん大切な工夫は、自分がまだ握れる部分をしっかり守るところにあります。

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占断

一言で読む

焦って進まず、多く語らず、退いて守るほど出口が生まれます。

総合的な占意

困卦の占断は、往けば凶、来れば吉と言うことが多いものです。往とは、納得できないまま、怒りと焦りを帯びて前へ争うこと。来とは、退いて戻り、命に安んじ、力を蓄え、時を待つことです。困の中の不動は、あくまで一時のもの。まず乱れて動かず、上六のように悔い悟ってから動く時、初めて吉へ転じます。

項目別の占断

  • 時運と功名:困窮の中では名と身をともに保ちにくいため、命に安んじ、正しく身を処します。
  • 戦いと経営:孤城の危急ではまず存続を図ります。資財が尽きた時は、進むより収めて保全します。
  • 家宅と訴訟:枯井、水患、陥落を防ぎます。訴訟は理を伸ばしにくく、損失を増す恐れがあります。
  • 行人と病:旅先では困難が重なります。腎水の弱りや危険な症状は、占いで遅らせず直ちに受診します。

六爻の要点

  • 初六:困り始めに暗い閉鎖へ逃げ込むと、長く人にも道にも会えません。
  • 九二:豊かな資源も束縛になり得るため、富貴を正しい事に用い、さらに貪りません。
  • 六三:前は石、後ろは蒺藜、内にも帰る所がなく、強いて動けば最も危険です。
  • 九四:救う力があっても体裁と疑いで遅れれば吝ですが、最後には補えます。
  • 九五:高位で威刑に頼るほど困るため、ゆっくり説明し、誠で怨みを解きます。
  • 上六:絡まりが極まった時、悔いを改過と行動に変えれば困を出て吉へ向かえます。

実際の読み方

困に遭ったら、まず四つです。言葉を少なくし、消耗を少なくし、争いを少なくし、正を守ります。次に三つ。資源を調べ、中正で信じられる人を探し、動ける時を待ちます。

戻って整理できるなら、意地で前へぶつかりません。事実で少しずつ信用を戻せるなら、長い弁解だけで信を求めません。

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初爻

一言で読む

困り始めに暗い方へ入ると、長く人にも道にも会えません。

原文

初六:臀困于株木、入于幽谷、三歳不覿。

書き下し文

初六、臀株木に困しみ、幽谷に入り、三歳まで覿ず。

現代語訳

尻が株木に困ります。幽谷に入ります。三年見えません。

爻辞の読み解き

低い所で動けず、さらに暗い谷へ入り、長く通じない。臀は人体の最も下、株木は地上に出た木の根の低い所です。どちらも低く動けない象を取ります。初六は坎険の最下にいて、人が枯木に坐して困しみ、さらに幽谷へ陥るようなものです。困はますます深まります。

三歳不覿とは、長く見えず、通ぜず、遇わないことです。困が初めて来た時、形勢を見分けないまま、より偏り、より閉ざされ、より危ない所へ入れば、困の上に困を重ねます。この爻で怖いのは、方向を見失ってしまう点です。もともと低い所で困っていただけなのに、さらに幽暗へ行ってしまいます。

実際の読み方

時運は厄運が初めて来て、しだいに苦境へ入ります。しばらく時間が経ってからでなければ順に転じにくい時です。戦いでは兵が険地へ陥ります。経営では貨物が深い谷に困しみ、発送や流通が滞ります。

功名は位置が卑く、名は現れません。家宅は幽僻で隠者にはよいのですが、通達を求めるには不利です。病や安全上の危険を問うなら、強がって危険地へ深く入らず、早く避け、助けを求めます。

高島の占例

明治十九年、横浜の人が虎列剌の疫病の伝染を恐れて占い、困が兌に変じる初六を得ました。高島は坎を病、沢に水がないことを泄瀉の象と見て、疫病は恐れるべきだと読みます。初爻の株木は棺木に近く、幽谷は葬穴に近い凶もある。ただし幸い初発で、なお避けられる理があるので、箱根、伊香保などの幽僻な地へ一時避けるよう勧め、「三」から三か月ほどの時を推しました。相談者は従って伊香保へ行き、無事に災いを免れています。

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二爻

一言で読む

富貴に縛られる困は、資源を誠に用い、争わなければ咎なし。

原文

九二:困于酒食、朱紱方来、利用亨祀、征凶、無咎。

書き下し文

九二、酒食に困しむ、朱紱方に来る。亨祀に用うるに利あり。征けば凶なれども、咎なし。

現代語訳

酒食に困ります。朱紱がまさに来ようとします。祭祀に用いるのに利があります。征けば凶です。咎はありません。

爻辞の読み解き

豊かさや名位に困る時は、それを誠ある用途に向け、進み争わなければ咎はありません。二と五は位こそ対しますが、ともに陽で正応ではありません。ここで借りるのは君臣上下の位だけで、二と五には富貴と祭享の象があります。酒食は豊かで、朱紱は貴人の祭服です。一見栄えていますが、それもまた人を困らせます。膏粱は身を傷つけ、文飾は志を溺れさせる。安楽は、時に貧しさよりも気づきにくい困です。

この爻の解き方は「亨祀に用うるに利あり」にあります。酒食、服飾、資源があるなら、怠惰、誇示、放縦へは向けません。祭り、祖を敬い、誠を立て、心を正すために使います。この富貴を背負ったままさらに前へ争えば征凶です。中に居て自ら守り、資源を正しい事へ用いるなら、大きな過失はありません。

実際の読み方

時運そのものは悪くありませんが、節度を知らず、富貴に困じることを防ぎます。経営では商いで富み栄えることがあるものの、なお貪って進めば凶です。功名はすでに現れていて、かえって功名に縛られる恐れがあります。

病は逸楽の過度、飲食の不節制から来ることが多く、調養が要ります。家宅は富貴の家でも落ち着かず、祭告して整えます。婚姻は聘礼が備わり、結納も調おうとしていて、成ることがあります。

高島の占例

板垣伯がかつてこの爻を得たことは原文にも見えますが、詳しい断は地雷復の上爻に付けられています。ここで展開しなくても、爻義は明らかです。困は必ずしも金や位がないことを指しません。金や位が重すぎて、かえって人を引き留める困もあります。

次へ:三爻

三爻

一言で読む

前も後ろも塞がり、内の支えも失う時は、動くほど危うい。

原文

六三:困于石、據于蒺藜、入于其宮、不見其妻、凶。

書き下し文

六三、石に困しみ、蒺藜に據る。其の宮に入るも、其の妻を見ず、凶なり。

現代語訳

石に困ります。蒺藜に腰を下ろします。自分の家に入っても妻を見ません。凶です。

爻辞の読み解き

前は固く塞がり、後ろは棘で安らげず、内の支えまで失う。だから凶です。石は硬く前を塞ぎ、蒺藜は棘があって下に据わることもできません。坐っても安らかでなく、歩いても行けない。三は坎険の極にあり、進退とも位に合わないので、危うく窮まった困です。

「其の宮に入り、其の妻を見ず」はさらに重い言葉です。宮は自分の居所、妻は内の頼りです。本来は身を安んじる場所へ戻ったのに、最も近い支えを見ることもできません。外に道なく、内に帰る所もない姿です。孔子は繋辞でこの爻を解き、困るべきでない所で困り、據るべきでないものに據るなら、名は必ず辱められ、身は必ず危うい、死期が近いのに、どうして妻を見られようか、と言います。

実際の読み方

時運は進退両難で凶です。戦いでは前に矢石、後ろに罠があり、軽く動いてはいけません。功名は身を保つことさえ難しく、名を語る段階に至りません。経営は財と命をともに失う象があり、きわめて慎みます。

病は凶象が重いので、占に頼らず、すぐ現実の治療と防護を取ります。婚姻は配偶者を失うこと、離散、重大な不祥を防ぎます。失せ物は多く得られません。

高島の占例

高島が疫病を避けて箱根木賀温泉にいた時、東京の商人藤田が親戚の婦人の急病の生死を問うて、困が大過に変じる六三を得ました。高島は繋辞の断を根拠に、凶象は明らかだと読みました。翌日に電報が届き、その婦人はすでに死んでいました。変卦の大過にも棺椁の象があり、入棺の時刻にも応じています。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

助ける力があっても遅れれば吝。隔たりを通せば最後は成る。

原文

九四:来徐徐、困于金車、吝、有終。

書き下し文

九四、来ること徐徐たり、金車に困しむ、吝なれども終わり有り。

現代語訳

来るのがゆっくりです。金の車に困ります。吝ですが終わりがあります。

爻辞の読み解き

助けに来るのが遅く、富貴や体裁に縛られて恥は残る。それでも最後にはまとまります。兌は金、坎は車なので、金車の象です。四は初と応じ、本来は初を救いに来るべき位置にいます。しかし中間に九二が隔たり、また自分の位が当たらないため、疑い恐れて遅くなります。だから来ること徐徐です。

「金車に困しむ」はおもしろい言葉です。金車は富貴の道具でありながら、同時に人を困らせるものにもなります。四には資源、身分、車、体裁があるかもしれません。しかし気遣いが多く、行動が遅いため、困を救うのに間に合いません。幸い四にはなお剛性があり、二と五の助けもあるので、羞吝はあっても最後は成ります。

実際の読み方

時運そのものは悪くありません。ただ位が当たらず、疑いが多く、遅いので、人に軽く見られやすい時です。経営では仕事の処理が鈍り、貨物の運送が途中で阻まれますが、急いで救えば全うできます。

功名は初め困り、最後に通じます。婚姻はゆっくりなら成ります。家宅は隔たりが多く、関係が少しずつ通じるのを待ちます。病は長く遅く続く勢いなので、疲労による損傷を防ぎます。

高島の占例

友人が気運を問いに来ましたが、実際には借金の意があり、困が坎に変じる九四を得ました。高島は初を貧者、四を富者と見ます。四は初を助ける気持ちがあるけれども、二爻に隔てられているため、ためらってすぐには許せない。解決は、二と五の関係を通じられる人に間へ入ってもらい、隔たりを助けに変えることだと読みました。後に借金は成りました。

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五爻

一言で読む

威刑に頼るほど困ります。中直に戻り、ゆるやかに解きます。

原文

九五:劓刖、困于赤紱、乃徐有説、利用祭祀。

書き下し文

九五、劓刖せらる、赤紱に困しむ。乃ち徐ろにして説び有り、祭祀に用うるに利あり。

現代語訳

鼻を切られ、足を切られます。赤紱に困ります。やがてゆっくりと解放されます。祭祀に用いるのに利があります。

爻辞の読み解き

刑罰や名位に困っても、急がず中直に戻れば悦びがあり、誠敬に用いれば利があります。劓は鼻を切る刑、刖は足を切る刑で、いずれも古代の刑罰です。九五は尊位にあり、困卦の主であり、刑を司る人でもあります。厳刑と明察だけを頼み、自分の威厳を誇れば、上には赤紱の栄があり、下には刑を受ける苦があり、結局は自分も名位と刑罰に困じます。

「乃ち徐ろにして説び有り」は、ゆっくり解け、ゆっくり説明が通ることを言います。困にある時は急に弁じてはいけません。権力を持つ者も、刑罰だけに頼ってはいけません。本当の出口は中直にあります。中なら偏らず、直なら枉げません。中直をもって民に臨み、中直をもって神に事えるので、祭祀に用いるに利があり、最後に福を受けます。ここでの祭祀は、誠敬によって人心を収め、怨みを和解へ向けることとも読めます。

実際の読み方

時運は気性が剛強で、剛は折れやすいので損傷を防ぎます。事はゆっくり行うのがよく、そうすれば禍を福へ変えられます。経営では、貨物の底や面に傷みがあることがあり、開いて整理し、ゆっくり売ります。

功名は富貴の後の刑傷や名位の束縛を防ぎます。戦いは主として敗れやすいので、ゆっくり兵を収め、後の勝ちを図ります。病は頭や足の病に注意し、ゆっくり調養します。訴訟は刑獄の災いを防ぎ、焦らず弁明します。

高島の占例

ある紳士が気運を問うて、困が解に変じる九五を得ました。高島は、この人は友人の間で厳しすぎ、人に面目を失わせ、退く余地を与えなかったのだと読みます。そのため相手が人の多い所で、彼の文飾ある身分を逆手に取って辱めました。まさに赤紱に困しむです。出口は、心を低くし、気を下げ、ゆっくり弁じ、あるいは酒席を設けて盟を結び、旧怨を記さないところにあります。そうして初めて禍は福に転じる。そうしなければ、怨みが怨みを追って止まらないとしました。

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上爻

一言で読む

からまり揺れても、悔いを行動に変えれば困から出られます。

原文

上六:困于葛藟、于臲卼、曰動悔。有悔、征吉。

書き下し文

上六、葛藟に困しみ、臲卼に困しむ。動けば悔い有りと曰う。悔い有りて征けば吉なり。

現代語訳

葛藟に困ります。危うく不安です。「動けば悔いる」と言います。悔いがあって征けば吉です。

爻辞の読み解き

からまって不安でも、悔いを知ってから進めば吉へ転じます。葛藟は蔓草で、他にからまり、すがりついて、自立できません。上六は坎険からは遠ざかり、幽谷を出ようとしているようにも見えます。しかし柔弱で中を得ないため、まだ蔓草のように何かに寄りかかり、揺らぎ、心が安定しません。

この爻の妙は悔にあります。動けば悔いがあると知っているので、ためらいます。しかし困が尽きる所では、動かなければ脱することができません。悔いを反省に変え、反省を行動に変えれば、その悔いが吉を呼びます。道はしばしば窮まった所から通じ始め、境遇は苦い所から甘へ転じます。善へ移ることも、まず過ちを悔いる所から始まります。

実際の読み方

時運は苦運が終わりに近く、本来は難を脱せる時です。ただし心が不安で、すぐには変われません。一度悔い悟って行動すれば吉を得ます。功名は困が久しくして変わり、一挙に名を成すことがあります。経営は貨物が長く包まれ滞っていても、時価が動けば利を得ます。

病は長くまとわりついているので、環境を替えて静養し、現実の治療を受けます。家宅は古い家に蔓が茂り、棟柱が傾く象があるので修理改造を要します。婚姻はしがらみがまだ解けず、動いた後に整理できるかを見ます。

高島の占例

友人が気運を問うて、困が訟に変じる上六を得ました。高島は、沢に水がないのは、人に財がなく生活しにくいことの象で、困窮の甚だしいものだと読みます。上爻は困の終わりで、本来は脱困できる所です。ただ柔弱が過ぎ、葛藟が木にかかるように自立できず、揺れて不安なのです。決然と奮起し、動いて事をなせば征吉。この時は動くのに利があり、座して守るのに利はなく、後運はまさに佳いと断じました。

沢水困:読みの覚え

沢水困は、沢の水が涸れた卦です。外にはまだ形があっても、内はもう詰まっています。言葉が信じてもらえない時に志を保てるかが、いちばん難しいところです。

言葉を減らし、根を守る

困の中では、多く語っても効きません。むしろ説明するほど疲れます。資源が乏しく、信用が押さえられ、話に耳が向かない時は、すべてを証明しようと急がないことです。 できる小さな事を確かに済ませ、人柄を守る。そこまでできれば、境遇に心まで困らされずに済みます。

どちらの困かを分ける

自分を困らせているのは物の条件なのか、それとも相手が今は言葉を信じないことなのか。二つは解き方がまるで違います。前者なら、節約し、緩め、使える資源を探します。 後者は急いでも動きません。説明するほど力を失う場面で信用を保つのは、たいてい弁舌ではありません。期日どおりに片づいた仕事、言ったとおりに果たした約束、そういう小さな事の積み重ねです。困の中でまだ手を付けられる一件があるなら、志はそこから支えられます。

困っても信用は落とさない

金がない、勢いを失った、誤解された、行き詰まった、底を打った。困はきれいな言葉で踏ん張れとは言いません。約束を減らし、真を増やす。争いを減らし、できる小さな事を増やす。困の中でも正を守れていれば、その後に向き直る余地が残ります。

涸れた沢、残った水源

水風井と並べると、困は沢の水が涸れた状態、井は水源がなお残っている状態です。片方は当座の乏しさ、もう片方は根本の供給を見ます。天水訟と並べれば、訟ではまだ言葉で争えますが、困では語るほど届きません。困に処する時は、口数を減らして正を守るのが常道です。

沢水困:読みの覚え札記を開く

沢水困は、沢の水が涸れた卦です。外にはまだ形があっても、内はもう詰まっています。言葉が信じてもらえない時に志を保てるかが、いちばん難しいところです。

言葉を減らし、根を守る

困の中では、多く語っても効きません。むしろ説明するほど疲れます。資源が乏しく、信用が押さえられ、話に耳が向かない時は、すべてを証明しようと急がないことです。 できる小さな事を確かに済ませ、人柄を守る。そこまでできれば、境遇に心まで困らされずに済みます。

どちらの困かを分ける

自分を困らせているのは物の条件なのか、それとも相手が今は言葉を信じないことなのか。二つは解き方がまるで違います。前者なら、節約し、緩め、使える資源を探します。 後者は急いでも動きません。説明するほど力を失う場面で信用を保つのは、たいてい弁舌ではありません。期日どおりに片づいた仕事、言ったとおりに果たした約束、そういう小さな事の積み重ねです。困の中でまだ手を付けられる一件があるなら、志はそこから支えられます。

困っても信用は落とさない

金がない、勢いを失った、誤解された、行き詰まった、底を打った。困はきれいな言葉で踏ん張れとは言いません。約束を減らし、真を増やす。争いを減らし、できる小さな事を増やす。困の中でも正を守れていれば、その後に向き直る余地が残ります。

涸れた沢、残った水源

水風井と並べると、困は沢の水が涸れた状態、井は水源がなお残っている状態です。片方は当座の乏しさ、もう片方は根本の供給を見ます。天水訟と並べれば、訟ではまだ言葉で争えますが、困では語るほど届きません。困に処する時は、口数を減らして正を守るのが常道です。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

困というのは、結局どこが困っているのですか。

多くは、制限されていること、窮屈なこと、そして言葉が信じてもらえないことの三つです。ただし道が絶えたわけではありません。まず信用と志気を守り、自分を削る動きを減らします。

困の時、いちばん避けたいことは何ですか。

困るほど口数が増え、約束が乱れ、早さばかりを求めることです。困の中でいちばん値打ちがあるのは、内側の正しい気を保つことです。

困と井は、どう違いますか。

困は目の前が涸れて押さえられている状態、井は根本の水源がまだある状態です。困では志を守り、井では汲み上げる道を直します。

説明しても分かってもらえません。どうすればよいでしょう。

聞く条件がそろっていない場では、言葉を増やしても力が減るだけです。しばらくは記録と実績で示し、時勢が開いてから語る方が届きます。

困というのは、結局どこが困っているのですか。開く

多くは、制限されていること、窮屈なこと、そして言葉が信じてもらえないことの三つです。ただし道が絶えたわけではありません。まず信用と志気を守り、自分を削る動きを減らします。

困の時、いちばん避けたいことは何ですか。開く

困るほど口数が増え、約束が乱れ、早さばかりを求めることです。困の中でいちばん値打ちがあるのは、内側の正しい気を保つことです。

困と井は、どう違いますか。開く

困は目の前が涸れて押さえられている状態、井は根本の水源がまだある状態です。困では志を守り、井では汲み上げる道を直します。

説明しても分かってもらえません。どうすればよいでしょう。開く

聞く条件がそろっていない場では、言葉を増やしても力が減るだけです。しばらくは記録と実績で示し、時勢が開いてから語る方が届きます。