高島易断
兌為沢|意味・卦辞爻辞解説
兌為沢䷹:一言で読む 兌は悦びの卦です。意思疎通、親しみ、朋友の講習を表します。本当の悦びは人に媚びることではなく、内は剛正で、外は和やかであることです。 現代語訳 兌は上も下も兌で、沢の象です。沢は水を蓄え、万物を潤し、ものが滋養を得て喜びます。兌はまた口舌でもあるので、言葉、講習、相談、説得を主ります。二つの沢が相連なるとは、互いに潤し合い、互いに成就することです。
導入
一言で読む
兌は悦びの卦です。意思疎通、親しみ、朋友の講習を表します。本当の悦びは人に媚びることではなく、内は剛正で、外は和やかであることです。
現代語訳
兌は上も下も兌で、沢の象です。沢は水を蓄え、万物を潤し、ものが滋養を得て喜びます。兌はまた口舌でもあるので、言葉、講習、相談、説得を主ります。二つの沢が相連なるとは、互いに潤し合い、互いに成就することです。
卦体は一つの陰が二つの陽の上にあります。二陽は下にあり、内は剛実です。一陰は上にあり、外は柔和です。だから兌のよさは、顔いっぱいの笑みではありません。「剛中にして柔外」です。心には原則があり、外では和やかに親しめることです。
卦辞は「兌は、亨る。貞に利があります」と言います。悦びは人心を通じさせるので亨ります。しかし悦びが正しくなければ、諂い、誘惑、空言、甘言になります。兌は正を守って初めて、人を親しませる悦びになります。正を守らなければ、ただの媚びと牽引です。
実際の読み方
兌を得たら、話す、友を結ぶ、学び合う、協議する、和解する、楽しい関係を作ることに向きます。
ただし自分が誠で相手を悦ばせているのか、話術で歓心を買おうとしているのかを見分けます。朋友講習なのか、互いに持ち上げ合っているだけなのか。心服させているのか、相手を釣っているのか。悦んで正を守るから亨ります。
卦辞
一言で読む
人を喜ばせて道は通じますが、正しさを失う悦びは甘言に落ちます。
現代語訳
兌は通じます。正しさに利があります。つまり、悦びによって物事は通じるが、正しさを守ってこそ利がある、という字面です。
高島は、兌は本来乾から来たので、乾の亨と貞を持つと言います。ただし兌は秋を主り、元始の徳には及ばないので、亨るが貞に利がありますと言います。平たく言えば、兌には成熟、収穫、親和の気があります。しかし万物を始める源ではないので、正道を離れてはいけません。
兌の悦びで最も危ういのは、外だけを悦ばせることです。世には笑顔、甘言、従順のふりに長け、人に好かれようとする人がいます。品格が卑くなるほど、心は偽りやすい。本当の兌は人に媚びることではありません。天に順い人に応じることです。内が剛正で信じられ、外が柔和で近づきやすいことです。
二と五は剛中で、兌卦の正です。三と上は柔外で、兌卦の用です。柔外が悪いわけではありません。ただし剛中を根にしなければなりません。剛中がなければ、柔外は来兌、引兌の危うさへ滑ります。
実際の読み方
意思疎通、交渉、協力、感情を問う時は、悦びの源を見ます。誠信、共通の目的、正当な関係から来るなら吉です。
媚び、媚び笑い、誘導、互いの欺きから来るなら、一時楽しくても後に事を壊します。
彖伝
一言で読む
内に剛正、外に柔和がある悦びは、人心を開き、苦労さえ進んで引き受けさせます。
現代語訳
兌は悦びです。剛が中にあり、柔が外にあり、悦んで正しさに利があります。これによって天に順い、人に応じます。悦んで民に先んずれば、民はその労を忘れます。悦んで難を犯せば、民はその死を忘れます。悦びの大きさは、民を励ますものです。つまり、正しい悦びは人の心を開き、自然に力を出させる、という字面です。
兌が悦べるのは、内に剛中があり、外に柔和があるからです。天に順うとは原則が正しいことです。人に応ずるとは表現が和やかなことです。この二つが同時にあって、初めて正当な悦びです。
「説びて民に先んずれば、民其の労を忘る。説びて難を犯せば、民其の死を忘る」。これは話術で人を働かせるという意味ではありません。上に立つ者が、正道、誠意、恩沢によって先に人を感ぜしめるなら、民は心から悦び、労苦を引き受け、危難にも心を合わせるということです。
高島は、彖伝が「民を勧む」とは言わず、「民勧む」と言うところを重んじます。最上の悦びは外から押し出すものではなく、人が心から励まされるものです。本当の指導者、朋友、師長は、人に自ら善へ向かわせ、自ら努力したいと思わせます。
実際の読み方
人を率いる、家族を説く、顧客と関わる、関係を調える時、ただ相手を喜ばせる方法だけを考えてはいけません。
まず、事が正しいか、自分が信じられるか、相手が意味を理解しているかを問います。兌の力は迎合ではなく、心からそうしたいと思わせることです。
象伝
一言で読む
よい悦びは友と学び合い、互いに潤して実践を深めるところにあります。
現代語訳
連なる沢が兌です。君子はこれを見て朋友と講習します。つまり、友と語り合い、学び習い、互いに潤す、という字面です。
麗は連なることです。二つの沢が連なれば、水気が通じ、互いに潤し合います。朋友の間も同じです。一方的に教え込むのではなく、互いに講じ、互いに習い、互いに戒めます。
兌は口なので講習の象があります。孔子の「学びて時にこれを習う、亦説ばしからずや。朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」という悦楽も、単なるにぎやかな雑談ではありません。学問と徳行が朋友の間で繰り返し明らかにされ、実践され、修正される喜びです。
四爻は「商兑」と言います。商は相談、議論です。兌卦のよい悦びは、内容を離れません。和、信、商量、慶びがあります。もし笑顔と言葉だけで実の講習がなければ、それは空の兌です。
実際の読み方
学習、共同事業、夫婦、組織には麗沢が必要です。自分をより明らかにし、より正直にし、より行動できるようにしてくれる人と講習します。
ただ居心地よく同調してくれる人だけを求めてはいけません。よい朋友は、悦ばせると同時に前へ進ませてくれます。
占断
一言で読む
話し合い・和解・朋友には利がありますが、甘言や媚びに引かれず正しさを守ります。
現代語訳
高島の総占では、時運は平平ですが、衆心を得られれば自然に吉を得ます。三爻と上爻に当たる時は慎みます。来兌、引兌の危うさがあるからです。経営は人の助けを得て利益を得られます。功名は朋友の力に頼って成ることがあります。戦いでは沢地に兵を屯し、二営が約して進めば勝てます。
婚姻は多く朋友や旧好によるものです。家宅は沢水に臨む家で、朋友と同居または相助けるのに宜しい。病は、病情を知る医師に共に診てもらうのがよいとされますが、現実の医学に従います。訴訟は朋友に公評してもらうのに向き、必ずしも法廷へ持ち込まなくてもよいことがあります。
兌卦の六爻は、六つの悦びを分けています。初は和兑、二は孚兑、三は来兑、四は商兑、五は孚于剥、上は引兑です。初と二が最も正しく、三と上が最も危うい。四は商量の間にあり、五は盛位で剥を防ぎます。
実際の読み方
まず口を開きますが、誠実であることです。友を結びますが、友を選ぶことです。和を求めますが、原則を失わないことです。
自分が迎合、誘導、甘言、利益で人を牽いている、または人に牽かれていると気づいたら、すぐ「貞に利があります」へ戻ります。
初爻
一言で読む
関係の始めは、作った笑顔より自然な和があれば順調に進みます。
現代語訳
和して悦びます。吉です。つまり、自然に和やかに悦べば吉、という字面です。
初爻は兌卦の始めで、陽剛が内にあり、まだ私欲や疑いが混ざっていません。人が初めて交わる時、心気が和し、同じ心で助け合えるなら、その悦びは正しい所から来ています。わざと歓心を買うのではありません。
象伝は「行い未だ疑わざるなり」と言います。後にも永遠に疑いがないということではありません。事の初めにはまだ念が転じず、猜疑や私曲が入っていないという意味です。初九のよさは、和して流れないこと、柔和であって剛正を失わないことです。
占例では、友人が謀事の成否を問うて、兌が困に変じる初九を得ました。高島は、初爻は事の始めであり、和は互いに同心することだと読みました。初と四は応じ、四は商兑で、謀事を相談する意味に合います。初爻は行未疑、四爻は有慶と言うので、この事は安心して取り組んでよく、後に成ると断じました。
実際の読み方
時運は和を貴び、万事吉に向かいます。戦いでは師が和してこそ勝ち、民兵が悦服し、戦わずして帰服する象もあります。経営では兌が正秋で万物成熟の時なので、商いは自然の利を得ます。
協力や関係では、始めに和気、信頼、共通目標を立てるのが最も大切です。
二爻
一言で読む
信頼にもとづく喜びなら、過去の行き違いもほどけて関係は安定します。
現代語訳
誠があって悦びます。吉です。悔いは亡びます。つまり、信実によって悦べば吉で、悔いも消える、という字面です。
二は下卦の中にあり、陽が陰位にいるので、剛中です。九五と相応し、二は五を信じ、五も二を信じます。互いに孚があるので、互いに悦びます。
この悦びは初九より深いものです。初九は自然に和して悦び、九二は信任を経て悦びます。君臣、上下、朋友、夫婦、協力者の間で、心が相孚しなければ、笑って話しても本当の悦びにはなりません。真に信じ合えば、前の悔いは自然に消えます。
占例一では、友人が気運を問うて、兌が随に変じる九二を得ました。高島は、九二は剛中で孚があり、阿好迎合ではない。すでに相孚を得れば、相悦ばざるものはない。朋友を選び、小人を遠ざけ、君子に近づけば、自然に相扶けられると断じました。占例二では、明治二十八年に日本とアメリカの交際を占い、同じ爻を得ました。邦交は信義が相孚するのが最もよく、両国に詐虞がなければ、干戈を玉帛に化せるので吉と読みました。
実際の読み方
時運は中正を得て、衆心が相孚し、吉で悔いがありません。戦いでは上下が一心で、令が出ればすぐ行われます。経営では利益を追う貿易でも、信を本にしなければなりません。
婚姻は二五相応で、陰陽が相偶います。家宅は隣里と同心して富を得られます。病は疑いが解ければ軽くなることがあります。
三爻
一言で読む
人を引き寄せるための笑顔や巧言は、内に正しさがなければ凶になります。
現代語訳
来りて悦びます。凶です。つまり、外から悦びを招き寄せる形は凶、という字面です。
来は招き寄せる、牽き寄せることです。三爻は兌の主で、陰柔が外にあります。もっとも柔媚、笑語、外飾によって人の悦びを招きやすい位置です。初九の和兑、九二の孚兑は、意図的に悦びを求めなくても自ずから悦ぶものです。六三の来兑は、わざわざ人を引いて自分を好かせようとします。
この悦びの問題は、剛中の徳を失っていることです。外では話がうまく、笑顔が多く、合わせることに長けていても、内が正しくなければ欺きの風が生まれます。上下が互いに蒙り、互いに媚び合うなら、朋友講習ではなく、互いに誘い合うだけになります。
占例では、明治二十四年に友人が某氏の気運を代占し、兌が夬に変じる六三を得ました。高島は、兌の悦びは心の中から出るべきで、外から来る悦びは多く偽りであると読みました。この友人は心地が正しくなく、口蜜腹剣の象があるので凶です。朋友であるなら、常に戒めて偽りを去り誠を存させれば、凶を吉に変えられると説きました。
実際の読み方
時運は、諂笑によって悦びを求めれば人に軽んじられます。経営では和気で客を招くのはよいが、互いに欺けば商道を失います。功名は奔走して栄を求め、一時栄えても必ず敗れます。
戦いでは烏合の衆を招く形で、長く保てません。婚姻は初め合っても終わりに離れます。訴訟は外から来る禍です。
四爻
一言で読む
相談しながら正邪を見分け、節操で疑いを隔てれば、不安は喜びへ変わります。
現代語訳
商りて悦びます。まだ安らかではありません。疾を介てれば喜びがあります。つまり、相談してもまだ不安だが、節操で病を隔てれば喜びがある、という字面です。
商は相談、量ることです。兌は口なので、商兑は繰り返し相談し、取捨を量ることです。四爻は三と五の間にあり、上には九五の剛中を承け、下には六三の陰柔に近い。君子と小人の間で軽重を見分ける位置です。
未寧は、心がまだ安定していないことです。介は節操が堅いこと、また隔てることです。疾は憂疑から来る病です。もし介節を守り、邪正を隔て、事情をよく商量できれば、病は去り、喜びが来ます。
占例では、ある人が某縉紳の気運を占い、兌が節に変じる九四を得ました。高島は、兌は悦、未寧は不悦であり、商兑とは悦と不悦の間に介在することだと読みました。人生の気運は中立に居続けることができず、正に従えば吉、邪に従えば凶です。選択が定まらない時は、病が身にあるようなものです。選択が定まれば、病は去り身は安らぎます。四は君位に近いので、事宜を商度し、上に君徳を助け、下に民心を合わせれば慶があります。
実際の読み方
時運はまだ安定していません。逆なら憂い、順なら喜びがあり、よく考えて行います。経営では外へ出て商いをすると憂惧が多いが、相談の後に喜びがあります。功名は艱難から来ます。
婚姻は一時疑って成りにくく、媒妁が再三説き合わせる必要があります。家宅は中が安らかでなく、秋ごろ安定することがあります。病は心神の不安から来て、喜事で緩むことがあります。
五爻
一言で読む
盛位で人の信任が集まる時ほど、損耗や剥落を見落とさず危うさを防ぎます。
現代語訳
剥に信を置きます。危ういことがあります。つまり、剥落や損耗を信じるほど深く関わるので、危険がある、という字面です。
五は尊位で、剛中得正です。兌卦の最も正しい高位です。ここでの剥は、単に傷つけられることだけではありません。労苦、艱難、損耗、削られる事を含みます。
高島は、悦びが極まると、民衆は心悦誠服し、労を忘れ、死をも忘れることがあると解します。上に立つ者は、まさにその状態を見て警戒しなければなりません。民は苦労と感じていないかもしれない。しかし君上は、それが剥であることを知らなければなりません。人々が自ら引き受けたいと思っていても、主事者はそれを濫用してはいけません。位が正しいからこそ、危きを思う心が必要です。
この爻の深いところは、安きにいて危きを忘れないことです。二爻の孚兑は互いの信任です。五爻の孚于剥は、盛運の中で衆志が城となることです。しかし盛りが極まれば剥が来ます。常に剥を防げば、常に盛りを保てます。
占例では、明治二十二年に友人が気運を問うて、兌が帰妹に変じる九五を得ました。高島は、この人は陽剛中正で、運は盛時に当たり、衆心が相孚し、たとえ剥削や労難があっても、相悦んで解けると読みました。しかし心中では剥を危険と見て、患いを思い予防し、盈を持ち泰を保つべきだと戒めました。五は吉を言いませんが、二の吉は五の吉でもあります。
実際の読み方
時運は位が正しく運も盛んですが、盛極まって剥に転じることを防ぎます。戦いでは生死存亡の中で軍心が一体となり、衆志成城となります。
経営は費用、損耗、搾取の議論があっても、信任が深ければ大利があります。功名は命に安んじれば通じます。病は肌を剥ぐような疾を急いで治せば癒えることがあります。
上爻
一言で読む
悦びで人を引き、自分も引かれる関係は明るさを欠き、終わりには大きく伸びません。
現代語訳
引かれて悦びます。つまり、人を引き寄せ、また悦びに引かれる、という字面です。
引は牽き寄せることです。上六には巽の気があり、巽は縄です。兌は艮にも通じ、艮は手です。だから牽引の象があります。上六と六三はともに柔爻です。三はすでに失位しており、上六はまた三を牽いて自分に応じさせます。来ることも正しくなく、引くことも当たりません。
これは自然の和でも、誠信の孚でもありません。互いに牽引し、互いに媚び合う形です。爻辞は直接凶とは言いません。しかし象伝は「未だ光らざるなり」と言います。つまり明るく開けた事ではありません。後に失うことを免れにくい。
占例では、明治二十二年にある貴顕の気運を占い、兌が履に変じる上六を得ました。高島は、上爻は外卦の極にあり、これ以上進む所がない。物は極まれば変わるので、反って退こうと思う象があると読みました。この貴顕は長く高位にいたが、身を引いて退隠し、自ら楽しむだろう。これを引兑と呼ぶと断じました。その年の冬、この人は果たして辞職し帰隠しました。
実際の読み方
時運は末端に来ており、人に引き立てられて行く程度で、平平です。功名は推薦があっても遅すぎる嫌いがあります。経営は人の導きが必要で、海外へ出て商いする象もありますが、大利は得にくい。
戦いでは兵を西へ引きますが、時機は遅い。病は内の邪が外へ引き出されれば癒える望みがあります。婚姻は牽引や誘合が多く、正礼に合わないので慎むべきです。
兌為沢:読みの覚え
兌為沢は、悦びと対話の卦です。本当の悦びは媚びではなく、内に剛正、外に和やかさがある時に通じます。
悦びには真がいる
兌では、言葉が人を開きますが、甘言にも落ちやすいです。信にもとづく喜びか、相手を引くための作り笑いかを見分けます。
本当の悦びは媚びではありません。内に剛正があり、外に和やかさがある時、対話は人を開きます。
立てておきたい問い
- この喜びは、正しさに支えられていますか。 - 相手を喜ばせるために、本心を曲げていませんか。 - 友と学び合い、実践を深める悦びがありますか。
柔らかく話すほど、内を曲げない
会話、和解、販売、友人関係では、柔らかく話すほど内の正しさを守ります。相談の中で正邪を見分ければ、不安は喜びへ変わります。
あわせて読む
巽為風は柔らかく入る卦で、兌為沢は悦びで開く卦です。沢山咸と読むと、響き合いと対話の違いが見えてきます。
本卦の問い
この喜びは、正しさに支えられていますか。
正しさに支えられた喜びは、安心と学びを生みます。正しさを外した喜びは、甘言やごまかしになりやすいです。
相手を喜ばせるために、本心を曲げていませんか。
相手を喜ばせるために境界や本心を曲げているなら、兌の悦びではありません。和やかでも、内の正しさは守ります。
友と学び合い、実践を深める悦びがありますか。
友と語り、学び、実践へ戻れる喜びなら深いものです。楽しさだけで終わらず、互いをよくする方向へ開きます。
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