六十四卦 意味・読み方
風山漸|意味・卦辞爻辞解説(ふうざんぜん)
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
山上の木も鴻雁も、一段ずつしか進みません。飛び級のきかない卦です。
卦象と卦名
漸は上卦が巽で風、また木、下卦が艮で山です。山の上に木が生えている形になります。木は一夜で林になりません。土を得て、風を受け、日々少しずつ高くなります。巽は入り、木は伸び、艮は止まって動きません。ですからこの卦には進む意味がありますが、その進み方は性急な前進というより、山の重みに支えられた節度ある歩みです。
卦の中心的な意味
序卦伝は「艮は止なり。物は終に止まるべからず、故にこれを受くるに漸を以てす。漸は進なり」と言います。前の艮は止まることを説きました。しかし万物が永遠に止まっていることはできません。止まって定まった後は、また前へ行きます。ただし艮の後の進みは、震のように突然発する動きとは違います。ゆっくり、礼を踏み、位置を確かめながら進みます。
卦辞は「漸は、女帰ぐに吉。貞に利があります」と言います。女帰は女子が嫁ぐことです。古代の婚礼には媒妁、父母の命、納采、問名などの手順があり、喜びだけで勝手に結び合うものではありませんでした。漸は女帰を借りて、本当に安定する成就が、一歩ごとに礼、時、位へ合わせるところから生まれると教えます。
向いている問い
漸を得たら、急いで結果を取りにいきません。恋愛なら、名分、承諾、家庭、時機が一つずつ整っているかを見ます。仕事なら、資歴、資源、立場が積み上がっているかを見ます。学びなら、段階ごとの土台を作ります。
漸が求めているのは、のろのろ進むことではありません。一歩ごとに立てる場所を作ることです。遅く見えても、位置さえ正しければ、それが本当の前進になります。
卦辞
礼と時と位を順に整えるほど、成就は静かに安定していきます。
原文
漸:女帰吉、利貞。
書き下し文
漸は、女帰ぐに吉なり。貞しきに利あり。
現代語訳
漸は、女子が嫁ぐのに吉です。正しくするのに利があります。
卦辞の読み解き
婚姻のような大事は、順序を踏み、正しく進めば吉です。ここで漸と帰妹は対になります。どちらも女子が嫁ぐ象を取りますが、漸は礼にかなった女帰です。帰妹は悦びや情が先に立ち、名分が後から乱れやすくなります。漸は長女が順に帰ぐ象で、媒妁、父母、年齢、礼節が少しずつ熟しているので、正を得やすいのです。
咸卦と並べると、順序の違いがよく見えます。咸は少男少女が相感し、男が女を娶るので、まず「貞に利があります」と言い、その後で娶女吉を言います。漸は艮男、巽女で、女が男に帰ぐので、まず「女帰吉」と言い、そのうえで正を守ることを告げます。細かい違いに見えて、実は大切な区別です。感情は突然起こることがありますが、婚姻は漸く成るものです。機会は突然現れても、名分と責任は段階を踏んでしか定まりません。
漸の吉は、遅らせること自体から出るのではありません。礼を越えないところから出ます。女子の婚姻に限った話でもありません。事業への参加、職位の昇進、学問の進階、家庭の建設も同じです。前段の名分が曖昧で、手順が正しくなく、位置が不安なら、後で一時に賑わっても、帰妹の不正へ傾きます。
実際の読み方
漸を読んだら、まず三つを点検します。正当な道筋があるか。時機は成熟しているか。自分に相応する位置があるか。
恋愛では熱情だけで決めません。仕事では野心だけで進みません。投資では流行だけに乗りません。漸は前進を許しますが、その一歩一歩を長く支えられる形にしておくよう求めます。
彖曰
進むべき位へ進むから功があり、その正しさが家と国にまで及びます。
原文
漸之進也、女帰吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛、得中也。止而巽、動不窮也。
書き下し文
漸の進むや、女帰ぐこと吉なるなり。進みて位を得、往きて功有るなり。進むに正しきを以てすれば、以て邦を正すべきなり。其の位剛にして、中を得るなり。止まりて巽えば、動きて窮まらざるなり。
現代語訳
漸とは、順を追って進むことです。女が嫁いで吉なのは、進んで正しい位を得るからで、往けば功があります。正しい道で進めば、国を正すことができます。その位は剛で、中を得ています。止まるべき所に止まってから巽順に進むので、その動きは窮まりません。
彖伝の読み解き
女帰が吉である理由は「進みて位を得る」ところにあります。進む先が進むべき位置であって、はじめて往って功があります。正しい道で進めば、家を正し、国を正すことにもつながります。夫婦は家道の始めです。家道が正しくなければ、風俗や国家の秩序も根を持ちません。漸が説いているのは婚姻に限らず、あらゆる秩序がどのように育つかという話です。
卦体は下に艮、上に巽です。艮は止まり、巽は順い入ります。止まってから順い、順ってから動くので、動きが窮まりません。艮の篤実がなければ、巽の入り方は軽く流れます。巽の成長がなければ、艮はただの停滞に終わります。漸とは、根を据えたうえで、ものごとを順に進める道です。
天下の事はみな進むことを貴びますが、貴ぶべきは速さより、ゆったりと順を得ることです。世の人は急功を好むので、漸の道は忘れられやすいところがあります。婚嫁にはまだ手順が多く残っているため、卦辞はとくに女帰を取りました。また六爻はすべて鴻雁を象に取ります。雁は来る時があり、飛ぶ列があり、配偶が定まっているので、有序に進むことを最もよく表します。
実際の読み方
漸で成敗を見る時に見るのは、速度より位です。昇進は資歴に合っているか。創業は基礎に合っているか。婚姻は承諾に合っているか。学問は工夫に合っているか。
各段階には、水辺、磐石、陸、木、陵、逵があります。この位置を乱さないことが、そのまま本当の前進になります。
象曰
風俗は命令では変わりません。長くその徳に居ることで少しずつ善くなります。
原文
山上有木、漸、君子以居賢徳善俗。
書き下し文
山上に木有るは漸なり。君子以て賢徳に居り俗を善くす。
現代語訳
山の上に木があるのが漸です。君子はこれを見て賢徳に居り、風俗を善くします。
象伝の読み解き
木が山上にあるのは、その所を得ている形です。女子が正しく嫁ぐのも、所を得ることにあたります。木は漸く長じるもので、一日では材になりません。風俗も漸く善くなるもので、一日では改まりません。
君子はこの象を見て、教化を一時の命令で押し出せないことを知ります。まず自分が賢徳に居り、見ることのできる手本になる。すると人は少しずつ仁に親しみ、義に近づき、風俗は自然に善へ向かいます。古代の賢婦の徳が風俗を化したという話も、この筋にあたります。家の中の徳、男女の正しい配偶、日常の礼節が、ゆっくり外へ広がっていきます。
ここでの「居」という字は大切です。たまに善い顔をしてみせるのとは違い、長くその徳の中に安んじることを言います。山上の木は、日々風を受け、日々土に養われて高くなります。人の徳も日々そうであってこそ、周囲を納得させます。
実際の読み方
組織、家庭、教育、ブランド、評判を問う時、漸は速成を求めるなと言います。風俗、信頼、口碑、家風、専門能力は、長く居ることによって化するものです。
一度の大きな宣言より、毎日正しいことを少しずつ行うほうが強く働きます。漸の力は、派手さよりも積み重ねから出ます。
占断
順序を作って蓄積と礼法を守れば終わりは吉、急げば位を失います。
総合的な占意
この卦の吉は、多くが有序から生まれます。感情には礼、事業には履歴、学びには段階、経営には資金の流れと信用、家宅には家風が要ります。どれも一足飛びには備わりません。結果へ飛びたいだけで過程を歩まないなら、漸の道を失います。
項目別の占断
- 時運と進展:高山の木が春に育つように、順序を守って積み重ねれば、ゆっくりでも発展します。
- 経営と功名:利益は資源と信用に伴って段階的に増えます。才徳を長く磨けば、人材として選ばれる機会があります。
- 戦いと競争:見知らぬ山林へ深く進む時は、伏兵や情報の空白を防ぎ、足場を固めてから進みます。
- 婚姻と家宅:関係は礼に従って名分を定め、段階を踏んで深めます。家では家風と長期の基盤を育てます。
- 病と出産:落ち着いて養生し、医師の指示に従います。古い占い方の男女の象は、そのまま現代に当てません。
六爻の要点
- 初六:始まりが浅く力も弱い時は、約束と礼を守って議論や危うさを越えます。
- 六二:磐石のような足場と養いを得て、漸進に和やかな基礎ができます。
- 九三:高みに進んでも正道を外れれば内外が乱れるため、遠征せず守ります。
- 六四:本来は不安定な位置でも、平らな足場を得て柔らかく身を置けば咎はありません。
- 九五:高位で長く隔てられても、正しく応じ合うものを最後に妨げるものはありません。
- 上九:段階を踏み切った成果が、自分を越えて周囲の模範となります。
実際の読み方
目標を、受け止められる段階に分けます。まず水辺に至り、次に磐石に立ち、さらに高い陸へ進み、平らな枝を得て、丘陵へ登り、最後に羽が儀となります。
漸が恐れているのは遅さではありません。順序を欠いた進み方です。低い所にいること自体も問題になりません。危ういのは、正しい道を離れてしまうほうです。
初爻
水辺に下りたばかりで力も浅く、取り沙汰もされますが、礼を守れば咎はありません。
原文
初六:鴻漸于干、小子厲、有言、無咎。
書き下し文
初六、鴻干に漸む、小子厲うし、言有れども咎なし。
現代語訳
鴻が水辺へ漸みます。小子は危ういです。言葉があっても咎はありません。
爻辞の読み解き
干は水辺です。鴻雁が水際に下りるのは漸の最初であり、最も低く浅い位置になります。雁は往来に時があり、群れで飛ぶ列があり、古代の婚礼にも用いられました。偶が定まって乱れないところを取るからです。漸卦の六爻がすべて鴻雁を用いるのも、この秩序ある進み方を示すためです。
「小子厲うし」とは、初位が年少で力が弱く、少男が長女に配されるように、年齢、地位、時機に不安があることを言います。だから人から取り沙汰されやすいのです。「言有り」は、媒妁の言、前の約束、あるいは周囲の噂とも読めます。すでに正当な約束があり、時を待って礼を守れるなら、まだ低いという一事だけで大きな過ちに至ることはありません。
実際の読み方
時運は、人が微かで年も若く、初行に危うさがありますが、正を守れば大過は免れます。戦いでは江辺に屯して危険を防ぎますが、謀言を告げる人があります。経営では取引が始まったばかりなので、契約や約束を早く明らかにします。
功名は起点が低くても漸進の象があります。婚姻は年齢や条件がまだなら、待つほうがよいでしょう。家宅は水辺に近い象なので、小さな病や災いを防ぎます。
高島の占例
ある友人が事業の成否を問うて、漸が家人に変じる初六を得ました。高島は、漸の初爻は事業の初創に当たり、干は水辺の低い所で、秋の雁が初めて来てまだ遠く飛べないようなものだと読みました。事業を始めれば、必ず小人の妨げや閑言があります。それでも初志を抱き、成言を改めなければ、四年後に上爻へ至って応援を得、大きな利益を得られると断じました。
二爻
足場が磐石まで整いました。飲食は和やかで、漸進はここでいったん吉です。
原文
六二:鴻漸于磐、飲食衎衎、吉。
書き下し文
六二、鴻磐に漸む、飲食衎衎たり、吉なり。
現代語訳
鴻が磐へ漸みます。飲食は和やかです。吉です。
爻辞の読み解き
磐は水中の平らな石で、初爻の水辺より安定しています。衎衎は和楽の様子です。鴻雁が磐石に至れば、水を飲み、魚や稲を食べられます。女子が嫁いでその所を得、夫婦が合卺して食を共にし、室家が和楽であるような象になります。
二は五と正応するので、配偶が相得る象があります。賢徳の婦人には内助の功があり、ただ夫家の食を食むだけで終わりません。だから象伝は「素飽ならざるなり」と言います。平たく言えば、この位置の安楽は、何もせずに受け取れるものではありません。配合が正しく、位置が正しく、内助に実があるからこそ得られる安楽です。
実際の読み方
時運は安楽で満ち足り、吉です。戦いでは食糧が足り、軍心が喜び、磐石のように安定します。経営は小から大へ進み、漸く利を得ます。
功名には宴楽によって名を成す象があります。婚姻は二五相応で、長く和合できます。家宅は地盤が安く、一門が和楽です。病は飲食過多に注意し、胃腸を調えます。
高島の占例
占例1
明治二十三年にある貴顕の気運を占って、漸が巽に変じる六二を得ました。高島は、この人は干から磐へ進み、足跡はだんだん高くなり、学識も漸く長じると読みました。二五相応は君臣が和楽し、夫婦が相得るようなもので、美衣飽食、安きこと磐石のごとしと断じています。
占例2
北海道庁の気運を占ったときも、同じ爻でした。乱から治へ、衰から盛へ入るところで、北海は魚産が豊かなので、民はその土地に住んで飲食衎衎となるという読みでした。
三爻
高く進んでも正道を外せば、家も成果も乱れます。攻めるより守るほうに利があります。
原文
九三:鴻漸于陸、夫征不復、婦孕不育、凶、利御寇。
書き下し文
九三、鴻陸に漸む、夫征きて復らず、婦孕みて育わず、凶なり、寇を禦ぐに利あり。
現代語訳
鴻が陸へ漸みます。夫は征いて帰らず、婦は孕んでも育てません。凶です。寇を防ぐのに利があります。
爻辞の読み解き
陸は高く平らな地です。位置だけを見れば、水辺や磐石より高くなっています。しかし九三は陽剛が過ぎ、内外の境にあるので、正道を離れやすい位置です。
「夫征きて復らず」は男が外へ出て帰らないこと、「婦孕みて育わず」は孕んでも養い成せないことを言います。どちらも夫婦の道が正を失った姿です。三と四は近く比し、正応を離れて私に牽かれる象があります。漸進の大義に背くので、家庭は和せず、生育も順成しません。鴻雁は本来、雌雄が相守り、飛止も相保ちます。雄が飛んで帰らなければ、群れを離れ、道を失います。
ただし爻辞は「寇を禦ぐに利があります」とも言います。雁群は夜に相呼んで警戒し、互いに従い保つので、防寇の象があります。この爻は主動的な遠征には不利ですが、守って外敵や盗難を防ぐことには利があります。乱れた所でさらに妄動せず、まず境界を守ります。
実際の読み方
時運は道筋が正しくないので、外からの禍を防ぎます。戦いは守御がよく、出征には向きません。経営は利益を得にくく、盗難や共同者との失序を防ぎます。
功名は軍政や防務なら名を得ることがありますが、ほかは不安定です。婚姻は初めが乱れ、後に離れることを防ぎます。家宅は生産に不利な象になります。病、とくに産に関わることは、現実には必ず医療を重んじます。
高島の占例
高島が獄中にいた時、獄吏の和田某が罪案について再占を請い、漸が観に変じる九三を得ました。「夫征きて復らず」は旧案が再び追及されないこと、「婦孕みて育わず」は禍の種が枝を生まないこと、「御寇」は審獄の官が身を保つことだと読まれました。後に和田は継任官と相談し、五十か月の徒刑を二十か月に減じ、高島も出獄できました。
四爻
望みどおりの位置でなくても、平らな枝を得て柔らかく身を置けば咎はありません。
原文
六四:鴻漸于木、或得其桷、無咎。
書き下し文
六四、鴻木に漸む、或いは其の桷を得ば、咎なし。
現代語訳
鴻が木へ漸みます。あるいはその桷を得ます。咎はありません。
爻辞の読み解き
巽は木で、四は巽の始めなので木と言います。鴻雁は水鳥であり、本来は木に止まるのに向きません。桷は大きく平らな枝です。もしちょうどそのような枝を得られれば、最上の場所ではなくても、ひとまず足を置けます。
「或いは」には、幸いにして得るという響きがあります。鴻雁が所を失う姿で、婦人が所を失うことをたとえています。九三に「夫征きて復らず」があり、六四は正しい配所を失ったような状態です。それでも柔順をもって自ら処し、置かれた場に安んじ、正を乱さなければ、大きな咎はありません。
実際の読み方
時運は位置が正しくありませんが、順に処すれば一時は安んじられます。経営では得るものが多くなくても、過失を免れる程度には足ります。戦いでは倚角の勢を得ており、敵勢はすでに衰えています。
功名は競争の中で少し得られますが、大きくはなりません。病は古い占い方では肝木の盛り過ぎや順気調養を見ますが、医療判断を優先します。家宅は寡居、失所、相手に恵まれない感じが出やすいところです。行人は外で一時身を置き、すぐには帰りません。
高島の占例
旧大垣藩主華族戸田氏の母が神奈川の別荘で療養しており、医師の戸塚文海が病勢を問いました。高島は以前に代占して漸が遯に変じる四爻を得ており、近い病は差し支えないが、明後年あたり命限に阻みがあると推していました。後に三年を経て、太君は果たして亡くなりました。漸は長女であり帰魂の象でもあるので、四から上までの三爻を三年と見た読みです。
五爻
三年孕まないのは時がまだ来ていないだけで、正しい応じ合いに勝てるものはありません。
原文
九五:鴻漸于陵、婦三歳不孕、終莫之勝、吉。
書き下し文
九五、鴻陵に漸む、婦三歳孕まず、終に之に勝つこと莫し、吉なり。
現代語訳
鴻が陵へ漸みます。婦は三年孕みません。最後にはこれに勝つものがありません。吉です。
爻辞の読み解き
陵は大きな丘です。鴻雁は北方の故地へ帰ってこそ孕育の所を得ます。九五は尊位にあり、六二と正応します。ですから正しい夫婦が家に居る形になり、生育の遅速をもってこの爻を説明します。
「三歳孕まず」が言っているのは、永遠に成らないという話ではありません。時がまだ至らず、陰陽がまだ和しておらず、過程に待つべきものがあるということです。艮は少男、巽は長女ですから、女はすでに成熟していても男がまだ冠していないように、すぐには生育できません。時が至って和合すれば、自然に孕みます。二五は正応で、内外とも位置が正しいので、「終に之に勝つこと莫し」、この正応に勝てるものはなく、最後は願いを得ます。
この爻は九三との対照でもあります。九三は六四と近く比して正しくなく、孕んでも育てないので凶でした。九五は六二と正しく応じ、しばらく孕まなくても最後には願いが成るので吉です。漸卦が重んじているのは、まさに正と時です。
実際の読み方
時運は中正に進んでおり、三年、あるいは一つの周期の後に良くなります。戦いでは高阜に屯し、長く待ってから向かう所に利があります。功名は待つ必要がありますが、後に成ります。
経営は目先の利益が難しく、大きな利は後にあります。婚姻は子を得るのが少し遅くても終吉です。家宅は高丘の間にあれば吉です。妊娠出産をめぐる古い象は、昔の読み方として置いておきます。
高島の占例
ある商人が気運を問うて、漸が艮に変じる九五を得ました。高島は、この人は商いを長年営み、事業はすでに漸進して高くなっているが、今すぐ利益を得るのは難しいと読みました。鴻雁の雌雄が相随っても、一大一小ではただちに生育できないようなものです。商業もさらに三年待てば大きな利を得て、他人の及ばないものになると断じました。
上爻
最後まで礼を踏んだ人の羽は、儀式にも用いられる手本になります。
原文
上九:鴻漸于陸、其羽可用為儀、吉。
書き下し文
上九、鴻陸に漸む、其の羽用て儀と為すべし、吉なり。
現代語訳
鴻が陸へ漸みます。その羽は儀に用いることができます。吉です。
爻辞の読み解き
上爻と三爻には、どちらも高い所へ進む意味がありますが、趣は異なります。九三は内外の境で正を失うので、陸が不安の場所になりました。上九は漸の終わりにいて、人の位を越え、羽翼が成り、礼儀に用いられるほどになっています。だから吉です。
漸卦の六爻がみな鴻雁を用いるのは、夫婦の礼をたとえるためです。雁は偶があって乱れません。古代の納采問名に雁を用いたのも、この秩序を取ったからです。上爻の「羽用て儀となすべし」は、人、家族、事業が、初めから終わりまで礼に従って漸進すれば、最後は自分が吉を得るだけでなく、他人が観て法とする姿にまでなることを示します。
実際の読み方
時運は盛んで、世に出て用いられます。ただし寿命や帰止のような問いでは、変卦と全体の流れもあわせて見ます。戦いでは平陸から進み、威儀が明らかです。経営では貨物がよく値も高く、利を得ます。
功名は世に出て用いられ、儀表となることがあります。婚姻は吉です。家宅は地位が高く、人に仰ぎ見られます。妊娠出産の男女の象も、旧来の読みとして留めます。
高島の占例
明治十九年、横浜でコレラが流行し、高島が箱根へ避けていた時、門人の尾藤某が越後高田裁判所長に赴任することになりました。自筮が不吉だったため、あらためて占ったところ、漸が蹇に変じる上九が出ました。全卦は漸進して上に至り、もう進む所がないので、新たに北国高田の任を授けられることには合う。爻辞にも吉象があります。しかしこの爻は帰魂の象でもあり、身命を占うには阻みがあると読まれました。人々は、なぜ一筮で死を断じるのか分かりませんでしたが、尾藤は赴任後まもなく亡くなりました。
風山漸:読みの覚え
風山漸は、順序を踏んで進む卦です。婚姻、仕事、学問、出世は、一足飛びより段階を守るほど吉になります。
一足飛びが危ういわけ
漸が恐れているのは、遅さではありません。順序のない進み方です。低い位置にいること自体も問題になりません。正しい道筋から外れたまま高さだけを稼ぐと、九三のように、外へ出た夫が帰らず、孕んでも育たない形になります。 一足飛びに見える成功ほど、足場が次の高さに耐えられません。肩書き、約束、実力、生活の準備のどれかが置き去りになっていないか。結果だけ先に取ると、後で必ず揺れます。
六段の足場をたどる
六爻はすべて鴻雁で語られます。水辺の干、水中の磐、高く平らな陸、木の桷、丘の陵、そして最後の羽。雁には来る時があり、飛ぶ列があり、配偶が定まっているので、有序な進みを映すのにちょうどよい鳥でした。 結婚、昇進、移住、研究。どれも、この六段のどこにいるのかを確かめるところから始めます。手順を飛ばさないことが、結局はいちばんの近道です。六四のように不本意な位置へ落ちても、平らな枝さえ見つければ、大きな失敗は避けられます。
居ることで、化していく
大象伝は、賢徳に居て俗を善くすると言います。「居る」という言葉が大切です。たまに善い顔をしてみせるのとは違い、長くその徳の中に安んじる。山上の木が日々風を受け、日々土に養われて高くなるのと同じ育ち方です。 信頼、口碑、家風、専門能力。どれも一度の宣言では立ちません。九五は三年孕まない爻ですが、正しく応じ合っているものを最後に妨げるものはありません。待てる相手か、育て合える相手か、手順を尊重できる相手か。そこで見えてきます。
礼に沿う進みと、位置の乱れた進み
雷沢帰妹とあわせると、漸は礼と順序に従って進み、帰妹は名分や位置が不安定なまま進む卦なので、婚姻や協力関係の順序を対照できます。地風升とあわせれば、升は上へ育つ勢い、漸は一歩ずつ進む節度を示し、上昇の力と歩調を分けて読めます。
風山漸:読みの覚え札記を開く
風山漸は、順序を踏んで進む卦です。婚姻、仕事、学問、出世は、一足飛びより段階を守るほど吉になります。
一足飛びが危ういわけ
漸が恐れているのは、遅さではありません。順序のない進み方です。低い位置にいること自体も問題になりません。正しい道筋から外れたまま高さだけを稼ぐと、九三のように、外へ出た夫が帰らず、孕んでも育たない形になります。 一足飛びに見える成功ほど、足場が次の高さに耐えられません。肩書き、約束、実力、生活の準備のどれかが置き去りになっていないか。結果だけ先に取ると、後で必ず揺れます。
六段の足場をたどる
六爻はすべて鴻雁で語られます。水辺の干、水中の磐、高く平らな陸、木の桷、丘の陵、そして最後の羽。雁には来る時があり、飛ぶ列があり、配偶が定まっているので、有序な進みを映すのにちょうどよい鳥でした。 結婚、昇進、移住、研究。どれも、この六段のどこにいるのかを確かめるところから始めます。手順を飛ばさないことが、結局はいちばんの近道です。六四のように不本意な位置へ落ちても、平らな枝さえ見つければ、大きな失敗は避けられます。
居ることで、化していく
大象伝は、賢徳に居て俗を善くすると言います。「居る」という言葉が大切です。たまに善い顔をしてみせるのとは違い、長くその徳の中に安んじる。山上の木が日々風を受け、日々土に養われて高くなるのと同じ育ち方です。 信頼、口碑、家風、専門能力。どれも一度の宣言では立ちません。九五は三年孕まない爻ですが、正しく応じ合っているものを最後に妨げるものはありません。待てる相手か、育て合える相手か、手順を尊重できる相手か。そこで見えてきます。
礼に沿う進みと、位置の乱れた進み
雷沢帰妹とあわせると、漸は礼と順序に従って進み、帰妹は名分や位置が不安定なまま進む卦なので、婚姻や協力関係の順序を対照できます。地風升とあわせれば、升は上へ育つ勢い、漸は一歩ずつ進む節度を示し、上昇の力と歩調を分けて読めます。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
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本卦の問い
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漸では、遅いこと自体は凶になりません。九五は三年孕まなくても終吉です。見るべきは速さより、道筋が正当か、位置が相応か、時機が熟しているかどうかです。
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足場が次の高さに耐えられるかを見ます。必要な技能、信頼、資金、関係が追いついていれば進めますし、追いついていなければ、まず今の段階を固めるほうが結局は早く着きます。
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六四は、水鳥が木に止まるような不似合いな位置の爻です。それでも平らな枝を選び、柔順に身を置いて正を乱さなければ咎はありません。所を得ないまま無理に動くほうが危うくなります。
話が遅々として進みません。見込みがないということですか。開く
漸では、遅いこと自体は凶になりません。九五は三年孕まなくても終吉です。見るべきは速さより、道筋が正当か、位置が相応か、時機が熟しているかどうかです。
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足場が次の高さに耐えられるかを見ます。必要な技能、信頼、資金、関係が追いついていれば進めますし、追いついていなければ、まず今の段階を固めるほうが結局は早く着きます。
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六四は、水鳥が木に止まるような不似合いな位置の爻です。それでも平らな枝を選び、柔順に身を置いて正を乱さなければ咎はありません。所を得ないまま無理に動くほうが危うくなります。
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