六十四卦 意味・読み方
雷山小過|意味・卦辞爻辞解説(らいざんしょうか)
整理説明を見る
本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
小さな所なら少し過ぎてよく、大事では張らない卦です。高く上がるより、低く下ります。
卦象と卦名
小過は上卦が震で雷、下卦が艮で山です。雷が山上で動き、音は大きく響きますが、山の形勢に抑えられて、どこまでも広がることはできません。震は動、艮は止です。動くのも止まるのも、時に合っている必要があります。動き過ぎれば過であり、止まり過ぎてもやはり過です。ここでの過は、大きく破って大きく立てることではありません。小さな過越、小さな修正、小さな慎みを指します。
卦の中心的な意味
卦形は二つの陽が内にあり、四つの陰が外にあります。陰は小です。陰が陽に過ぎるので小過と言います。大過のように大任を担って大事をする卦とは、器が違います。細部で少し多くする、礼節で少し厚くする、慎みで少し余分にする、倹約で少し厳しくする。そうした振れ幅が向いています。大きな方向は守り、小さな動作だけを常より少し過ぎさせるわけです。
卦辞は「小過は亨る。貞しきに利あり。小事には可なるも、大事には可ならず。飛鳥之が音を遺す。上るに宜しからず下るに宜し、大いに吉なり」と言います。飛鳥が高く飛び過ぎれば、哀しい声だけを残し、上がるほど危うくなります。下りれば栖み所を得られます。小過の主旨はそこにあります。高く衝いてはいけません。小さな才と小さな勢いを、大才大勢と取り違えてもいけません。低くすれば、かえって吉です。
向いている問い
小過を得たときは、小事、細部、礼数、補修、収斂、低姿勢の意思疎通に向きます。大きな投資、大きな承諾、大きな冒険、大きな拡張には向きません。
感情では少し多めの気遣い、喪事では少し厚い哀敬、費用では少し多めの倹約が効きます。しかし自分を高く見積もり、位を越えて大を求めれば、事が起こりやすくなります。
卦辞
小事は通り、大事は通りません。上るほど危うく、下るほど吉になります。
原文
小過:亨。利貞。可小事、不可大事。飛鳥遺之音、不宜上宜下、大吉。
書き下し文
小過は亨る。貞しきに利あり。小事には可なるも、大事には可ならず。飛鳥之が音を遺す、上るに宜しからず下るに宜し、大いに吉なり。
現代語訳
小過は通じます。正しさに利があります。小事には可ですが、大事には可ではありません。飛ぶ鳥がその音を残します。上るのに宜しくなく、下るのに宜しく、大いに吉です。
卦辞の読み解き
小さい事なら通じます。大事や上昇には向かず、低く下るほど吉になります。
小過の過が指すのは、平常を少し越えることです。すべてが間違いという話ではありません。象伝の「行いは恭に過ぎ、喪は哀に過ぎ、用は倹に過ぐ」のように、平日より少し恭しくする、喪に少し深く哀しむ、用度を少し倹しくする。これらは取ってよい小過です。中道そのものではなくても、一時の浮薄、冷淡、奢侈を正すことができます。
亨るのは、過が細部にとどまり、大体を傷つけないからです。正を守るべきだと言うのは、過が正道を離れれば偏激になるからです。四陰が外にあり、二陽が中に挟まれています。柔弱が多く剛健が少ないので、大任を担う力が足りません。だから小事はできても、大事はできません。
「飛鳥之が音を遺す」は大事な象です。鳥が高く飛び過ぎて下へ栖めず、声だけを残して助けを求めます。上へ行くのは逆で、下へ行くのは順です。人事に置き換えれば、驕れば危うく、謙れば安らかです。焦って進めば凶、退いて守れば吉になります。
実際の読み方
事業なら、小さな試し、小さな修正、小さな案件から始めます。一歩で大きく賭けません。関係なら、先に低く出て修補し、高低を争いません。財務なら保守的に構え、高値を追いません。
訴訟や衝突なら温度を下げ、上へ大きく持ち上げません。志を捨てよという卦ではありません。今の吉が、低い所、細い所、制御できる所にあると教えているだけです。
彖曰
柔が中を得るので小事は吉、剛が位を失うので大事は成りません。時とともに低く行きます。
原文
小過、小者過而亨也。過以利貞、与時行也。柔得中、是以小事吉也。剛失位而不中、是以不可大事也。有飛鳥之象焉、有飛鳥遺之音、不宜上宜下、大吉、上逆而下順也。
書き下し文
小過は、小なる者過ぎて亨るなり。過ぐるに貞しきに利ありとは、時と与に行えばなり。柔中を得たり、是を以て小事は吉なり。剛位を失いて中ならず、是を以て大事には可ならざるなり。飛鳥の象有り、飛鳥之が音を遺すこと有り、上るに宜しからず下るに宜し、大いに吉なりとは、上るは逆にして下るは順なればなり。
現代語訳
小なるものが過ぎて通じます。過ぎるには正しさに利があり、時とともに行うからです。柔が中を得るので小事は吉です。剛が位を失って中でないので、大事には可ではありません。飛鳥の象は、上れば逆で下れば順であることを示します。
彖伝の読み解き
時に合った小さな過ぎ方はかまいません。ただし大事を無理に進めず、低く順います。
いつでも過ぎてよいという卦ではありません。今の時勢が、少し過ぎた配慮を必要としているのです。時が厚さを求めるなら、平常より厚くします。寛さを求めるなら、平常より寛くします。慎みを求めるなら、平常より慎みます。過ぎても正を失わないことが、時とともに行うということです。
二と五は柔で中を得るので、小事は吉です。三と四は剛で位を失うので、大事は成りません。今は柔、小、低、細を用いる時であって、強、大、高、猛を用いる時ではありません。小過が無理に大過のように振る舞えば、災いになります。
制度も時によって定まります。夏は忠を尚び、殷は質を尚び、周は文を尚びました。それぞれ時の必要から出ています。その時でないのに忠に過ぎ、質に過ぎ、文に過ぎれば、みな過になります。国家がそうであるように、人も同じです。低くすべき時に高く出て、退くべき時に進むのは、飛鳥が高く飛んで下りられなくなるようなものです。
小過は中孚の後に来ます。中孚は内の信を説き、小過は性情が常を失ったあとの慎みと収斂を説きます。中でもなく信でもなく、動いて止まらなければ、小過は大禍へ積もります。六爻に鳥の象が多いのもそのためです。初と上は翼で、妄りに飛べば凶です。二と五は中で、低く守れば小吉です。三と四は身で、三は防を知らず凶、四は止まって大過を免れます。
実際の読み方
小過を判断する時は四つを問います。これは小事か。時に合うか。正を守っているか。下へ、低く、安定した方へ向かっているか。
四つが揃えば、常より少し過ぎてもかまいません。大事であり、時に合わず、動機が正しくなく、方向も高く衝いているなら、そこで止まります。
象曰
行いの恭しさ、喪の哀しみ、用度の倹しさは、平常より少し厚くしてかまいません。
原文
山上有雷、小過、君子以行過乎恭、喪過乎哀、用過乎倹。
書き下し文
山の上に雷有るは小過なり。君子以て行いは恭に過ぎ、喪は哀に過ぎ、用は倹に過ぐ。
現代語訳
山の上に雷があるのが小過です。君子はこれを見て、行いは恭に過ぎ、喪は哀に過ぎ、用は倹に過ぎます。
象伝の読み解き
象伝が説くのは、日常の徳行を少し丁寧にし、哀しみを少し厚くし、費用を少し倹しくすることです。
雷は本来動いて止まりません。山は本来止まって動きません。雷が山上にあると、動きは抑えられ、気勢はあっても無辺には広がりません。だから小過です。
君子がこの象を取るのは、小徳を少し厚くするためであって、大事で位を越えるためではありません。平日の行いに少し恭敬を加えれば傲慢を正せます。喪事に少し哀痛を加えれば薄情を正せます。日用の費えに少し倹約を加えれば奢侈を正せます。これらの所で過ぎるのは、害がないどころか、風俗を改めます。
ここで区別が要ります。すべてを過度にせよという卦ではありません。恭に過ぎ、哀に過ぎ、倹に過ぎるのは、それらが徳行に近いからです。勝つことに過ぎ、貪ることに過ぎ、張り出すことに過ぎるなら、それは小過の吉ではなく、飛鳥上逆の凶です。
実際の読み方
生活ではとても使いやすい象です。謝る時に少し誠を多くする。見舞う時に少し心をかける。金を使う時に少し抑える。事に当たる時に少し準備を厚くする。
一見すると小さなことにこだわっているようですが、それが人情を補い、危険を避けます。小過の美徳は、小さい所を厚くするところにあります。
占断
大きく賭ける時ではありません。低く小さく直す仕事なら、丁寧さが利になります。
総合的な占意
小過の総占は全凶ではありません。ただ、大きくやるなということです。大きな投資、大きな承諾、大きな拡張、大きな飛躍には向きません。小さな修理、小さな譲り、小さな節度、小心、小さな退きは、かえって利になります。
項目別の占断
- 時運と位置:志は清くても、環境と噛み合いにくい時です。今は小事と低い位置を選び、勢いだけで高く飛びません。
- 経営と功名:価格や目標が高すぎれば取引と支持を失います。手の届く小さな利益と成果を取ります。
- 戦いと競争:位置が高すぎると進退の道を失うので、目立ち過ぎず境界と退路を守ります。
- 婚姻と家宅:年齢、立場、条件の差が大き過ぎる時は慎重に判断します。住まいも低く安定した形が適します。
- 病と出産:寒熱の偏りを中へ調え、医療に従います。男女を占う古い言い伝えは、当時の物差しとして読みます。
六爻の要点
- 初六:力が小さいうちに高く飛ぼうとすれば、分を外れ、退き場を失って凶となります。
- 六二:最高位に届かなくても、身近で相応しい位置を選べば咎はありません。
- 九三:止まって防ぐべきなのに境界を越えて進めば、傷つけられる危険があります。
- 九四:分を越えなければ自然に出会えますが、さらに進めば危ういので固執しません。
- 六五:勢いだけが高く実りがない時は、大きな成果を待たず手近な小利を取ります。
- 上六:止まるべき所を越えて高く進み続ければ、逃げ場を失って災いを招きます。
実際の読み方
高値を追って売買する、越級して職を求める、高い縁にすがる、無理に拡張する。こうした時に小過が出たら、いったん止まります。
反対に、穴を補う、関係を直す、費用を下げる、危険を管理する、小さな誤りを直すのであれば、小過は丁寧にやることを後押しします。
初爻
翼が育たないうちに舞い上がると、下りる場所を先に失います。
原文
初六:飛鳥以凶。
書き下し文
初六、飛鳥以て凶なり。
現代語訳
飛鳥によって凶です。
爻辞の読み解き
鳥のように飛び上がろうとすれば凶になります。
初爻は下にあり、本来は低い所に安んじて、艮止の道を守るべき位置です。ところが上爻とともに鳥翼の象を取り、少し動くと翼を振って直上しようとします。小過の卦辞は「上るに宜しからず、下るに宜し」とはっきり言っています。初六は下から逆に上ろうとするので、自分から凶を取ります。
鳥は巣を安らぎとし、飛ぶことを労とします。飛んで下りられなければ、栖む所を失います。人が小を捨てて大を図り、低を去って高に就くのも同じです。鳥が高く飛び過ぎ、あとで小さい所へ退こうとしても退けなくなるようなものです。
実際の読み方
時運は本分に安んじず、妄りに上ろうとするので凶があります。経営は力が小さいのに大を図り、位が低いのに高を謀るので敗れます。功名は卑小な所に自ら安んじるのが向きます。
戦いは兵を動かさないほうが安全です。婚姻は門戸が釣り合うほうがよく、高い縁にすがらないことです。家宅は低く小さいほうが向きます。病は神魂が飛び越え、心が定まらない象です。
高島の占例
占例1
友人が謀事の成否を問うて、小過の初爻を得ました。高島は、その人が小を捨てて大を謀り、低を去って高を求めようとしていると断じました。事が大きいほど難しく、成りにくいだけでなく、後に退くことも難しいので、安心して退守するよう勧めました。
占例2
日本とロシアの交際を占ったときは、内卦を日本、外卦をロシアと見ました。ロシアが動兵すれば日本も動かざるを得ず、両方が動けば両方とも凶になるという読みです。後に日本が清国と講和し、宜下の旨に順ったことで和平の結末を得ました。
二爻
祖にも君にも届きません。近くの妣と臣に遇えたのなら、それで足ります。
原文
六二:過其祖、遇其妣、不及其君、遇其臣、無咎。
書き下し文
六二、其の祖を過ぎ、其の妣に遇う、其の君に及ばずして、其の臣に遇う、咎なし。
現代語訳
その祖を過ぎ、その妣に遇います。その君に及ばず、その臣に遇います。咎はありません。
爻辞の読み解き
高すぎる所は過ぎても、近く届く相手に遇えれば咎はありません。
この句は複雑に見えますが、やはり「上るに宜しからず、下るに宜し」です。祖と君はより高い所を指します。妣と臣は近く、柔らかく、届きやすい所です。六二は高すぎて及ばないものを過ぎ、同類で親しめるものに遇います。君位まで上達できなくても、臣位に遇えるので失当にはなりません。
二と五はともに陰柔であり、遇うものは多く同類だ、と高島は説明します。二は低位なので、分を越えて上を求めるには当たりません。途中で得るべき所に遇えるなら、最高でなくても十分です。小過のなかでは善い爻に入ります。及ばないものへ無理に及ぼうとせず、低い所へ順に安んじているからです。
実際の読み方
時運は半分を得られれば平順です。経営は満載で帰れなくても、半分の利は得ます。功名は最高でなくても、中ほどを得ます。戦いは将を斬り旗を奪えば、すでに成果です。
病は薬力がまだ届き切りません。婚姻は正配でない恐れがあります。この爻が教えるのは、届く所を先に成し、最高だけを追って今ある機会を失わないことです。
高島の占例
占例1
ある俳諧家が、自分の俳諧を天覧に上げたいと望みました。高島はこの爻を得て、「其の君に及ばず」なので天皇の聴きに達するとは限らないが、貴顕に陳べ、風雅を解する人に認められることはあり、大きな過失にはならないと断じました。
占例2
朴泳孝がアメリカから帰り、朝鮮政府が帰国を促した折にも、この爻が出ました。高島は、促帰は君命ではなく臣下から出ている可能性があり、卦は上が動いて下が止まる形なので帰るべきではないと読みました。朴泳孝はこれに従い、後に朝鮮の廷臣には多く傾軋が起こりました。
占例3
日本と英国の交際を占ったときには、「君に及ばず臣に遇う」を、両国が使臣を通じて好を通じ、重洋を隔てても助け合えることと解しました。
三爻
越えずに防ぐ位置です。従って進めば、近い所から傷つけられます。
原文
九三:弗過防之、従或戕之、凶。
書き下し文
九三、過ぎずして之を防ぐ、従えば或いは之を戕う、凶なり。
現代語訳
過ぎずにこれを防ぎます。従って行けば、あるいはこれを傷つけるでしょう。凶です。
爻辞の読み解き
越えずに防ぐべき時です。従って進めば、傷つけられる恐れがあります。
三は下卦の上にあり、剛ではあっても中ではなく、多凶の位に立ちます。本来は過ぎることを止め、防ぐべき場所です。防線を越えて前へ行けば、後ろや傍らから人に傷つけられることがあります。だから凶です。
卦中の陽画が横に亘って防の象を作り、艮も止なので防となります。上互の兌には金刀の象があるので戕と言います。三爻の問題は、剛強が過ぎて防備を軽く見るところにあります。そのぶん危険が近づきます。
実際の読み方
時運は道が正しくなく、慎んで自ら防げば禍を免れます。経営は外へ販売や輸送をする時、盗難や劫奪を防ぎ、前進を急ぎません。功名は求めに往くべきではなく、求めれば禍があります。
婚姻は正しくない縁や仇怨を防ぎます。家宅は禍が門に臨むので防ぎます。病は刀傷や手術などの象に注意します。失せ物は無理に追わず、災いを生まないようにします。危険が近い時は、まず防ぎます。
高島の占例
横浜商人の橘屋磯兵衛が、友人の左右田金作の店童に三千円を持たせて三井銀行へ向かわせたところ、午後になっても帰らず、銀行も受け取っていないと言いました。高島は小過の九三を得て、この人は害に遭った恐れがあり、凶手は外の盗賊ではなく熟知した人物で、三日内に見つかると断じました。後に某人の米櫃から屍体が発見され、凶手の雨宮忠右衛門は店童と同郷で顔見知りでした。巨金を携えているのを見て悪心を起こし、殺して金を奪ったのです。
四爻
越えないから遇えます。そこで止まらず押し通すと、危うさへ変わります。
原文
九四:無咎、弗過遇之。往厲必戒、勿用永貞。
書き下し文
九四、咎なし、過ぎずして之に遇う。往けば厲うし必ず戒めよ、永く貞なるを用うる勿かれ。
現代語訳
咎はありません。過ぎずにこれに遇います。往けば危ういです。必ず戒めなさい。長く正しさを用いてはいけません。
爻辞の読み解き
越えなければ遇えます。進み続ければ危うくなります。
四も陽爻ですが、剛が柔位に居るので、九三のように強引に上へ出ません。だから大きな咎はありません。よい点は、過ぎないことで遇うべき人や事に自然に遇うところです。悪い点は、さらに前へ行こうとすれば険に入るところで、必ず戒慎が要ります。
「永貞に用うる勿れ」が禁じるのは、この時に一つの方法を死守して、ずっと押し進めることです。永遠に正を守るなという話ではありません。小過は時とともに行います。時が止まるべきなら止まり、動くべき時にだけ動きます。九四はすでに遇えるものに遇っています。貪って多くを求め、位を越えてはいけません。
実際の読み方
時運は、機会に遇ったらそこで止まるのが正解です。妄りに軽進してはいけません。経営は得られる所で止め、貪らないようにします。功名は焦って求めなければ、思いがけない喜びがあります。妄りに栄進を求めれば禍があります。
戦いは進攻に向きません。婚姻は自然に良縁があり、時が来れば遇うので、急いで媒を立てる必要はありません。家宅は安居が向き、移る必要はありません。
高島の占例
友人が金銭の貸借を問うて、小過の九四が謙に変じました。高島は、九四は震動の始めなので前へ求めたくなりやすい、しかし四と五は近く、五を越えてはならないと読みました。五爻は密雲不雨と言うので、大きな恵みは望みにくい。また弋取彼在穴と言うので、小さな恵みは得られる。五を越えてさらに求めれば、得るものがないばかりか危険があると断じました。
五爻
雲は厚いのに雨が降りません。穴の獲物なら、今日でも手に入ります。
原文
六五:密云不雨、自我西郊、公弋取彼在穴。
書き下し文
六五、密雲雨ふらず、我が西郊よりす、公弋して彼の穴に在るものを取る。
現代語訳
密雲があって雨は降りません。我が西郊から来ます。公が弋して、穴にいるものを取ります。
爻辞の読み解き
雲はあっても実りの雨は落ちず、手に入るのは低い穴の小さな獲物です。
雲は密ですが雨が降りません。西郊から来るので、気勢はあっても、実際の潤いはまだ落ちません。六五は陰が尊位に居り、陰気が盛んで雲の象があります。しかし震動が艮に止められるので、雲はあっても雨がありません。これが小過の「大事には可ならず」の象そのものです。
後半の「公弋して彼の穴に在るを取る」は、小事ならまだできることを示します。大事は王と言い、小事は公と言います。穴は下方にあり、弋取も小さな事です。雲が上にあって雨にならないのは、上るに宜しからず。穴が下にあって取れるのは、下るに宜しです。大きな恵みは来ませんが、小さな利は手に入ります。
実際の読み方
時運は平穏で、大事は成りにくく、小さな成果を受け取る程度です。経営は小利を取れます。功名は山林に伏していて、後に召されることがあります。
戦いは敵が山穴に伏すので、まず慎重に偵察し、潜伏した敵を探ります。婚姻は正式な婚姻でないことがあります。天候は旱の象です。失せ物は洞穴や低い所、隠れた所を探します。病は針で疎通するような象を取ることがあります。
高島の占例
明治三十年に陸軍省の気運を占い、小過の六五を得ました。高島は、陸は旱地であって本来雨を取らないと読みました。西方は金で兵の象があり、日本は東なので、兵は西へ行きます。爻象には雲があっても雨がなく、大きな動きがないことを示します。穴中を弋取るのは小事で、小さな備えならあることを示します。本年の陸軍には大きな行動がなく、相安んじて無事であろうと断じました。
上爻
遇わないまま行き過ぎる鳥は、網にかかります。これを災眚と呼びます。
原文
上六:弗遇過之、飛鳥離之、凶、是謂災眚。
書き下し文
上六、遇わずして之を過ぐ、飛鳥之に離る、凶なり、是を災眚と謂う。
現代語訳
遇わずにこれを過ぎます。飛鳥がこれに離れます。凶です。これを災眚と言います。
爻辞の読み解き
相手に遇えないまま行き過ぎます。飛ぶ鳥が網にかかるような凶です。
四爻は過ぎずに遇いました。上六は遇わないのに過ぎていきます。全卦の最上まで来て、なお高く飛び続けるので、「上るに宜しからず」の戒めを真正面から犯します。
離は罹とも読み、鳥が網にかかる意味があります。初六は飛ぼうとしただけで凶、上六は飛び極まってさらに凶です。初六にはまだ飛ばずにすむ機会がありますが、上六はすでに高亢が過ぎています。だから災眚と言います。位置が卦の外にあり、鳥翼が飛び尽くして、脱けようとしても脱けられない形です。
実際の読み方
時運は高くなるほど危うく、退守を知らないまま、自分で凶を招きます。功名は焦って進めば禍を招きます。経営は時に遇わないのに妄りに進むので、必ず敗れます。
戦いは進んでも敵に遇わず、敵は暗所に伏している恐れがあるので、退軍が向きます。婚姻は奸媒の局を防ぎます。病は危険な所まで来ていますが、病因を見極めてすぐ戻れば、救える余地があります。
高島の占例
友人が長子の病を問うて、小過の上爻が旅に変じました。高島は、上爻は震の極であり、震は長子なので長子の病に当たると読みました。重陰で中でもないため、病は多く過寒から来ます。医者が過寒を察せず、かえって寒涼の薬を用いれば、病はいっそう凶になります。ただし「飛鳥之に離る」は、生きた鳥が網にかかっているようなもので、まだ必ず死ぬわけではありません。寒熱を早く見極めて温養に改めれば、なお挽回できると断じました。
雷山小過:読みの覚え
雷山小過は、雷が山の上で鳴るように、音は大きくても届く範囲が限られる卦です。過ぎてよいのは、小さい所だけです。
低く飛ぶ
小過では、過ぎるなら小さく、慎むなら厚くします。飛鳥の象がくり返し出るのは、高く上がるほど下りられなくなるからです。上るのは逆で、下るのが順。低い所、近い所、細かい所に、今日の吉があります。 自分の才と勢いを、実際より一段大きく見積もっていないか。ここを外すと、小過の助言はそのまま裏返ります。
厚くしてよい三つ
象伝が挙げるのは、行いの恭しさ、喪の哀しみ、用度の倹しさの三つです。この三つだけは、平常より少し過ぎても害になりません。むしろ浮薄、冷淡、奢侈を正します。 裏を返せば、勝ちに過ぎ、貪りに過ぎ、張り出しに過ぎることは、小過が許さない過ぎ方です。同じ「少し多め」でも、徳へ寄せるか欲へ寄せるかで結果が反対になります。
小過を測る三つの問い
動く前に、次の三つを確かめます。 - 今扱っているのは小事ですか、大事ですか。 - 背伸びして、高く飛びすぎていませんか。 - 細部の慎みを、面倒だからと省いていませんか。 一つでも引っかかるなら、九四の言うとおり、遇えた所で止めておきます。
小さな修正を丁寧に
小さな修正、謝罪、家計の見直し、移動、低姿勢の交渉には吉があります。大きな約束や越級の挑戦は避け、手近な小利と安全を選びます。 六五が示すとおり、雲が厚くても雨の落ちない時期があります。それでも穴の獲物は取れます。今日取れるものを取り、大きな恵みを待って手を止めないのが小過の運びです。
誠と、慎みと
風沢中孚とあわせると、中孚は内なる誠意、小過は外に現れる小さな節度を重んじる卦で、誠と細部が揃って初めて信頼になると分かります。震為雷とあわせれば、震は大きな音で人を目覚めさせ、小過は低く慎重に動く卦なので、雷の警告のあとほど行動を小さく収める必要が見えてきます。
雷山小過:読みの覚え札記を開く
雷山小過は、雷が山の上で鳴るように、音は大きくても届く範囲が限られる卦です。過ぎてよいのは、小さい所だけです。
低く飛ぶ
小過では、過ぎるなら小さく、慎むなら厚くします。飛鳥の象がくり返し出るのは、高く上がるほど下りられなくなるからです。上るのは逆で、下るのが順。低い所、近い所、細かい所に、今日の吉があります。 自分の才と勢いを、実際より一段大きく見積もっていないか。ここを外すと、小過の助言はそのまま裏返ります。
厚くしてよい三つ
象伝が挙げるのは、行いの恭しさ、喪の哀しみ、用度の倹しさの三つです。この三つだけは、平常より少し過ぎても害になりません。むしろ浮薄、冷淡、奢侈を正します。 裏を返せば、勝ちに過ぎ、貪りに過ぎ、張り出しに過ぎることは、小過が許さない過ぎ方です。同じ「少し多め」でも、徳へ寄せるか欲へ寄せるかで結果が反対になります。
小過を測る三つの問い
動く前に、次の三つを確かめます。 - 今扱っているのは小事ですか、大事ですか。 - 背伸びして、高く飛びすぎていませんか。 - 細部の慎みを、面倒だからと省いていませんか。 一つでも引っかかるなら、九四の言うとおり、遇えた所で止めておきます。
小さな修正を丁寧に
小さな修正、謝罪、家計の見直し、移動、低姿勢の交渉には吉があります。大きな約束や越級の挑戦は避け、手近な小利と安全を選びます。 六五が示すとおり、雲が厚くても雨の落ちない時期があります。それでも穴の獲物は取れます。今日取れるものを取り、大きな恵みを待って手を止めないのが小過の運びです。
誠と、慎みと
風沢中孚とあわせると、中孚は内なる誠意、小過は外に現れる小さな節度を重んじる卦で、誠と細部が揃って初めて信頼になると分かります。震為雷とあわせれば、震は大きな音で人を目覚めさせ、小過は低く慎重に動く卦なので、雷の警告のあとほど行動を小さく収める必要が見えてきます。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
関連記事
本卦の問い
小過が出た時、動いてよいのですか。
動けます。ただし小さく、低くです。点検、修正、謝罪、節約、礼を少し厚くする。こうした動きは向いています。大きな投資や越級の挑戦だけは、今回は見送ります。
上を目指すのは、いつも悪いことですか。
小過の時に限っての話です。この卦では上るのが逆、下るのが順で、高く飛ぶほど下りる場所を失います。初六と上六が凶なのはそのためです。志を捨てる必要はなく、今回は低い所から積む、というだけです。
小過が出た時、動いてよいのですか。開く
動けます。ただし小さく、低くです。点検、修正、謝罪、節約、礼を少し厚くする。こうした動きは向いています。大きな投資や越級の挑戦だけは、今回は見送ります。
上を目指すのは、いつも悪いことですか。開く
小過の時に限っての話です。この卦では上るのが逆、下るのが順で、高く飛ぶほど下りる場所を失います。初六と上六が凶なのはそのためです。志を捨てる必要はなく、今回は低い所から積む、というだけです。
本ページの現代語訳は gaodaoyijing.com が独自に整理・翻訳したものです。© 2026 gaodaoyijing.com。無断転載、複製、機械的な大量取得、商用データベースでの利用を禁じます。