高島易断
沢雷随|意味・卦辞爻辞解説
沢雷随䷐:一言で読む 沢雷随は、時勢、正しい人、正しい事に従う卦です。うまく随えば通じますが、流されて随えば身を失います。 現代語訳 随は上が兌沢、下が震雷です。雷が沢の下で動き、沢はその動きに応じます。震は動き、兌は悦びです。こちらが動き、あちらが悦ぶので、随の象が成ります。高島は、随が豫の後に置かれることを重視します。豫で人心が悦び動くと、自然に人が自分に随い、自分もまた物や時に随って動くようになるからです。
導入
一言で読む
沢雷随は、時勢、正しい人、正しい事に従う卦です。うまく随えば通じますが、流されて随えば身を失います。
現代語訳
随は上が兌沢、下が震雷です。雷が沢の下で動き、沢はその動きに応じます。震は動き、兌は悦びです。こちらが動き、あちらが悦ぶので、随の象が成ります。高島は、随が豫の後に置かれることを重視します。豫で人心が悦び動くと、自然に人が自分に随い、自分もまた物や時に随って動くようになるからです。
随は、ただ受け身で自分がないことではありません。時、位、人、事を見て、何に従い、どこを改め、どこを守るかを知ることです。正しい道に従うなら吉です。邪に従うなら凶です。高島は「随の咎ではなく、何に随うかによって自ら咎を取る」と言います。随そのものが悪いのではなく、随う対象と方向を誤ることが危ないのです。
実際の読み方
仕事では、新しい部署、新しい職務、新しい上司や制度に入った時、まず老成したやり方に随うことが必要です。学びでは、師と義に随います。投資では、流れを見ることはできますが、風聞に乗るだけではいけません。関係では、情に流れず正を守ります。
随を得たら、四つ問います。私は何に随っているのか。相手は信頼できるのか。随う理由は義か、小利か。随っても自分の正しさは残るのか。利貞がなければ、随は詭随になります。
卦辞
一言で読む
随う力は大きく通りますが、相手と方向を正しく選ぶ時だけ咎がありません。
現代語訳
随は大きく通り、正しく守ることが利となり、咎はありません。つまり、従うこと自体は道を開くが、正しさを守る時だけ過ちがない、という字面です。震が下にあり動き、兌が上にあり悦びます。動いて悦ばれるので随となります。随の道には、自分を捨てて人の善を取る意味もあり、他人のよいところを喜んで学ぶ意味もあります。だから大きく亨ります。
しかし、貞正を失えば、随は危険です。自分を曲げて人に迎合するだけなら咎が生まれます。高島は『雑卦』の「随は故なし」を引き、上下がそれぞれ所を得て、時に順って行うことだと見ます。わざとらしい作為や、私情の引きずりではありません。
実際の読み方
仕事では、来たばかりの場所では経験ある人に随います。ただし、不正な慣習には随いません。共同事業では、誰が主で誰が従かを見ます。感情では、気分に随いすぎないこと。学習では、正しい師と道理に随うのが吉です。投資では、趨勢に随うことはできますが、流行に溺れると危うくなります。
随を読む時は、「従うかどうか」では足りません。誰に従うのか、なぜ従うのか、どこまで従うのか、従いながら正を守れるのか。ここまで見て、初めて無咎になります。
彖伝
一言で読む
強い者が身を低くして人を悦ばせる時、随う関係は正しく動き出します。
現代語訳
剛が来て柔の下におり、動いて喜ぶ、これが随です。大きく通り、正しく守れば咎はありません。天下が時に随うなら、随の時の意義は大きいのです。つまり、強いものが下へ降り、動きが悦びを生む時、物事は自然に随い合う、という字面です。高島は、この卦を否から変じた形としても読みます。剛陽が下へ降り、尊いものが卑いものへ下る。陽が動き、陰が悦ぶ。すると物が自分に随い、自分も物に随うようになります。
よい随には多くの形があります。君主が善に従う。臣下が正命に従う。学ぶ人が義に従う。子弟が師に従う。欲望が理に従う。邪念が正に従う。すべて随の善です。逆に、理が欲望に従い、正が私情に従い、人が名声や利だけに従えば、随は悪になります。
実際の読み方
リーダーなら、まず身を低くして人の声を聞きます。人材は、圧されて従うのではなく、悦んで従う時に力を出します。下にいる人は、正しい命令には随い、私的な圧力には随いません。学ぶ人は、よく知る人に従い、流行や評判だけを追いません。
随は「随時」を重んじます。雷は動くべき時に動き、沢は応じるべき時に応じます。時に合う変化は無原則ではありません。時と道に合わない固執は正ではありません。変えるべき時に変えることも、随の本義です。
象伝
一言で読む
本当に時に随う人は、進む時だけでなく休む時も外しません。
現代語訳
沢の中に雷があるのが随です。君子はこれを見て、日暮れに向かえば中へ入り、安らかに休みます。つまり、時に随うとは、動く時に動くだけでなく、休む時に休むことでもある、という字面です。ここでは雷が外で鳴り動くのではなく、沢の中に蔵されています。夕暮れになれば、人は家に入り休みます。高島は、ここで大切なのは「時に随う」ことだと読みます。冬に雷が伏蔵し、黄昏に人が宴息するように、動かないこともまた随です。
随を「外の流れにずっとついて行く」と読むと誤ります。君子は天時に随います。暗くなれば休み、力を養い、次の動きに備えます。休める人だけが、次に正しく動けます。
実際の読み方
仕事では、ずっと走ることだけが努力ではありません。収めるべき時は収めます。身体では、昼夜のリズムに随い、無理な徹夜や過労を避けます。チームでは、繁忙期に動き、閑散期に養います。関係では、近づく時と退く時を見ます。
随の象は、行動と休息の両方を教えます。今は前へ出る時か、蔵して整える時か。外から催促されても、時が晦なら休む。これも随の知恵です。
占断
一言で読む
随を得た時は、変動、追随、加入、転任、方針転換、趨勢への適応を読みます。吉は正と時に随うこと、凶は私情と邪に随うことです。
現代語訳
高島の占断では、時運は今は平常で、しばらく晦蔵するのがよく、明年に遠行の利があり、第五年に利を得るとします。戦いでは退守がよく、明年に小功があり、久しくして敵が就縛します。商業では貨物が一時売れにくく、来春に利があります。家宅は伏した怪しみや夜の驚きを防ぎます。訴訟は牢獄や遠行の災を恐れます。失物は枕席の間を探します。行人はすぐ帰ることがあります。
六爻は、随の正邪を細かく示します。初九は心官と職務の変通で、出門して交われば功があります。六二は小子に係って丈夫を失う、近い小利に引かれて大を失う爻です。六三は丈夫に係って小子を失い、求めれば得ますが貞に居る必要があります。九四は随いて獲るが、私に人心を据えれば凶。九五は善に孚して吉。上六は随が極まり、拘束と維系になります。
実際の読み方
職場では、職位や方針が変わることがあります。商業では、急売せず、時を待つ読みです。関係では、主従、正邪、大小を分けます。病では薬や医師を替える必要がある場合があります。訴訟では、拘束される前に慎みます。
随は、すぐ動けと言う卦ではありません。先に隠れ、待ち、見定め、それから正しいものに随います。目の前の熱気に随うのではなく、道と時に随うのです。
初爻
一言で読む
役目や方針が変わる時でも、正しさを保って外へ出て交われば成果が出ます。
現代語訳
官に変化があります。正しければ吉です。門を出て交われば功があります。つまり、役目や方針が変わっても、正しさを守り、外へ出て人と交われば成果がある、という字面です。官は心の官でもあり、担当する職務や事柄でもあります。渝は変わることです。初九は剛で正を得ており、随卦を成す主でもあります。本来は軽く人に随う位置ではありません。
しかし随の時にあっては、権変を知らなければなりません。変えても正を失わないので貞吉です。門を出ると見聞が広がります。私に溺れず、善に従って行けば交わりに功があります。内に閉じて自分のやり方だけを守るのではなく、外へ出て学ぶ爻です。
実際の読み方
新しい職務では、まず既存の経験や老成した人に従います。商業では、貨物を外地へ運ぶと利があります。家宅では、修造、移転、外出に利があります。戦いでは、方角や方針を変えて吉です。病では、薬が合わなければ替え、遠方の良医を求めます。
ある人が友人の就官を占った時、高島は初九を得て、入仕の初めは学力があっても、まず老成の指揮に随うべきと読みました。新しい場所で「自分を少し変える」ことは敗北ではなく、随の正しい始まりです。
二爻
一言で読む
小利や近い情に縛られると、本当に頼るべき大きなものを失います。
現代語訳
小さい者に係れば、丈夫を失います。つまり、目の前の小さなものに縛られると、本当に大きく頼れるものを失う、という字面です。高島は、剛は自立して随い、柔は自立できず係ると見ます。六二は柔で陰位にあり、近くの小さなものに引かれやすい。ここでいう小子と丈夫は年齢ではありません。対象の大小、正邪、遠近、責任の重さを言います。
眼前の小利、小情、小権勢に係ると、本当に大きく正しいものを失います。随の危険は、近くて甘いものに引かれることです。近いから安心、楽だから正しい、すぐ得られるからよい、とは限りません。
実際の読み方
時運は反復しやすく慎重にします。商業では小利を貪って大きな取引や信用を失わないこと。家宅では、陰陽倒置、小人や婦人の専制、家主の受制を警戒します。婚姻では不釣合いに注意します。失物は小物は得ても大物は失いやすいです。
尾藤判事の娘の婚姻占で、高島は六二を得ました。相手は体面ある縁でしたが、爻辞から、父母の好みだけで娘の終身を縛れば、真の丈夫を失うと読み、慎重にすべきとしました。人生の大事は、眼前の体面に係られてはいけません。
三爻
一言で読む
大きく正しいものにつながるなら小さな執着は捨ててよいが、得る時ほど正を守ります。
現代語訳
丈夫に係り、小さい者を失います。随って求めるものがあれば得ます。正しさに居るのが利です。つまり、大きく頼れるものに従えば小さなものは失うが、求めるものは得られ、ただし正しさに留まる必要がある、という字面です。六三は、初九の丈夫に随い、九四の小子を捨てる形です。六二とは反対です。高島は、三が初に随えば求めて得ると見ます。
ただし、人に随って求め得る時ほど、自分を曲げて人に迎合する危険があります。だから居貞が必要です。より大きな目標、より正しい師、より頼れる道を選ぶことはよいことです。しかし、得たいという気持ちが強すぎて原則を捨てれば、せっかくの随が壊れます。
実際の読み方
時運は好運に向かい、求財や求名がかないやすいです。商業では、小が往き大が来る利があります。戦いでは敵将を生け捕るような大勝の象があります。家宅は豊かですが、小児に注意します。病では大人は無妨、小人には不利を見ることがあります。
成佛寺の弁真和尚が小乗仏学から易を学びたいと問うた時、高島は六三を得て、これは塵世の小務ではなく天神妙理を求めることであり、「丈夫に係り小子を失う」に当たると読みました。高明の道に随うなら得る。しかし得るには守正がいる。六三の要点はここです。
四爻
一言で読む
人が随って成果が出る時ほど、それを私物化せず公明な誠に戻します。
現代語訳
随って得るものがあります。正しくても凶です。真実が道にあり、それを明らかにできるなら、何の咎がありましょう。つまり、人が随い成果も出るが、それを私有すれば正しく見えても凶で、誠を公道に置き明らかにすれば咎はない、という字面です。九四は君に近く、人心を得る力があります。人々が自分に随い、功も得ます。しかし臣下が人心や功績を自分のものとして据え、君上と公道へ帰さなければ臣道を失います。
救いは「有孚在道以明」です。真実の心があり、道にあり、公開で明らかであれば、君臣上下に疑いは生まれません。得たものを私にせず、公へ戻すことが九四の用です。
実際の読み方
時運は吉凶が混じるので弁えが必要です。商業では、利益を得た後の意外な災いを防ぎます。家宅では、新築や新購入に慎重。戦いでは、小勝の後に大敗を警戒します。病は先に危うく後に吉。訴訟では初審が危うくても、上訴で大咎を免れることがあります。
鹿児島士族の金禄公債証書漏れの補請を占った時、高島は九四を得ました。維新の功績によって恩給を求める理はあるが、政府の優待を当然視して強く求めれば「随有獲」の義が凶に傾く。公正の理で願い出れば「有孚在道」になると読みました。九四は、人がついて来る時ほど、私有しないことを求めます。
五爻
一言で読む
善いものを見分けて誠を通わせる人には、人も時勢も正しく随って吉になります。
現代語訳
善いものに誠があります。吉です。つまり、善く正しいものに真実の心で通じるなら吉、という字面です。九五は中正を得た尊位で、随卦の中で最も正しい位置です。嘉は善、美、正当なものです。孚は真実に感通することです。高島は、善に随うのであって、人に盲目に随うのではないと読みます。
君が善に随い、臣が君の善に随い、民が徳に随う。各々が正しいところを得るので吉です。九五の随は、権勢や利益ではなく、善への信です。
実際の読み方
時運は盛んで万事吉です。商業では品物がよく、大きく利を得ます。家宅は積善の家で、人が信じ従い、一郷の望みとなります。戦いでは軍衆が同心して勝ちます。婚姻は百年好合。訴訟は和することができます。病にも吉です。
明治三年、高島がある事を占って九五を得た時、天下の人心が君上の命に随うことを読み、まもなく廃藩置県の令が出ました。また、元老院議官が県知事へ転じる時には、下って民情に随い、私意を挟まなければ人民が嘉して服すと読み、後にその県は安定しました。九五は、随わせる力は圧ではなく、善に随う誠から生まれると示します。
上爻
一言で読む
随い続けた縁は最後に深い結びになりますが、それが礼義か束縛かを見分けます。
現代語訳
これを拘り係け、さらに従ってこれを結びます。王はこれを用いて西山に祭ります。つまり、随が極まると、軽い追随ではなく深く結び留める関係になり、至誠なら祭祀にも通じる、という字面です。拘は執って放さないこと、維は結びつけ保つことです。随が上まで来ると、軽い追随ではなく、深く結ばれ、ほどけにくい関係になります。高島は、至誠の極みなら君心を孚し、鬼神にも通じると見ます。
同時に、占断上は拘束、桎梏、家人の怨苦、訴訟の縛りにもなります。大切なのは、その結びが礼義廉恥による維系か、人を苦しめる束縛かです。随い続ける関係は、最後には命運や制度にまで及びます。
実際の読み方
時運は今すぐ伸びやかではなく、支えが足りない感じがあります。商業は堅固に守るならできますが、自由な発展は弱いです。家宅では、約束や規則が厳しすぎて家人が苦しむことがあります。病では祈祷や精神的な支えを見る場合があります。婚姻では赤い糸で結ばれるような縁です。訴訟では拘束を防ぎます。
南部の山本寛次郎が寿命を占って上六を得た時、高島は帰魂と終局を見、拘係を妻子の思い、亨于西山を宅の西に葬る象として読みました。後に占の通りになりました。また政治提携の占でも、深く結ばれる関係として読みました。上六は、随の最後が軽い同調ではなく、深い結びになることを教えます。
沢雷随:読みの覚え
沢雷随は、時に従い、人に従い、流れに合わせる卦です。ただし随う先を誤れば、柔軟さはただ流される弱さになります。
従う先を見てから動く
随では、変化に合わせることと正しさを失うことを分けます。大きく正しいものへ随うなら、小さな執着は捨ててよい。けれど邪や私情へ随うなら、そこで止まるべきです。
適応は、何にでも合わせることではありません。時、相手、方向を見て、自分の中心を失わずに動くことです。
立てておきたい問い
- 私は時に随っていますか、それとも空気に流されていますか。 - 捨てるべき小さな執着は何ですか。 - この関係は、礼義の結びですか、逃げにくい束縛ですか。
休むことも随の一部
転任、方針変更、チーム参加、師弟関係では、まず随う相手の正邪を見ます。休む時に休めることも随の一部です。動き続けることだけが適応ではありません。
あわせて読む
天風姤は思いがけない出会い、沢雷随はその後どこへ従うかです。水地比と読むと、親しむことと随うことの違いが見えてきます。
本卦の問い
私は時に随っていますか、それとも空気に流されていますか。
時に随う時は、方向と理由が見えています。空気に流される時は、なぜそうするのかを自分で言えません。そこを分けて見ます。
捨てるべき小さな執着は何ですか。
古い役割や見栄、これまでのやり方へのこだわりかもしれません。大きく正しい流れへ入るためなら、小さな執着は軽くしてよいです。
この関係は、礼義の結びですか、逃げにくい束縛ですか。
随うほど心身が整い、責任も明るくなるなら礼義の結びです。離れにくさ、恐れ、依存だけが強くなるなら束縛を疑います。
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