六十四卦

六十四卦 意味・読み方

地天泰|意味・卦辞爻辞解説(ちてんたい)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
整理説明を見る

本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

上下が通じ、人心も資源も流れる卦です。ただし順調な時ほど、次の閉塞に備えます。

卦象と卦名

泰は上が坤地、下が乾天です。形だけを見ると、地が上にあり天が下にあるので逆のように見えます。しかし易はここで、形ではなく気の動きを見ます。天の気は上り、地の気は下り、上下の気が交わります。陰陽が交わるから雨沢が生じ、万物が通じて育ちます。高島は「泰」の字を、水を決して流れを通す形として読み、水が滞らなければ民は安んじると説きます。大禹が水を治め、九つの河を開いて流れを通し、耕作を教え、地平天成して民を太平に導いた象も、ここに重なります。

卦の中心的な意味

泰が指すのは、運のよさというより通じ方です。上の意が下へ届き、下の情が上へ届きます。指導する人と実行する人が同じ方向を向き、財や情報が滞らず、正しい人が内側で主軸になっています。だから吉です。しかし、泰の危うさもここにあります。人は順調に慣れると、制度を直さず、古い習慣に甘え、豊かさを当然と思い、変化への備えを忘れます。泰卦の六爻が、初めの「抜茅同進」から最後の「城復于隍」へ進むのは、通泰を放っておけば閉塞へ転じることを示しています。

向いている問い

仕事では、社内の上下、現場と経営、取引先と自社が本当に通じているかを見ます。事業を進めるにはよい時ですが、同時に制度、予算、分担、後継、人材の更新、危機への備えを整えます。関係では和合に向きます。ただ仲がよいだけでなく、互いの責任と利益が通っているかが大事です。家庭では、財務、住まい、役割、年長者と若い人の話が通っていれば泰です。泰を得た時は、「よかった」で終わらせません。今の順調は本当に構造が通っているからか、一時的に問題が隠れているだけか。正しい人が進み、不正なものが退いているか。利益は全体に巡っているか。未来の変化へ余地を残しているか。ここまで見て、はじめて泰を使える読みになります。

次へ:卦辞

卦辞

一言で読む

小さく閉じたものが退き、大きく担う力が内へ来ます。上下が通じて吉です。

原文

泰:小往大来、吉亨。

書き下し文

泰は、小往き大来る、吉にして亨る。

現代語訳

泰は、小さいものが去り、大きいものが来ます。吉で、通ります。

卦辞の読み解き

外卦の坤は陰、内卦の乾は陽です。内に陽があり外に陰があるので、内は健やかで、外は順う形になります。人事に当てれば、内側で君子が主軸となり、小人は外へ退いて実権を握りません。正気が来て邪気が退き、厚く担える力が中へ入り、薄く狭い力が去ります。これが小往大来です。

ここでいう大小は、人数や見た目の話ではなく、質の話です。大とは、責任を担えるもの、正しく生み出せるもの、長く通わせるものを指します。小とは、私欲、閉塞、浮薄、狭い利益、目先だけの勢いのことです。組織がにぎわっていても、内側で私欲や古い悪習が実権を握っているなら、それは泰ではありません。泰は表面の繁栄より、内にどの力が入っているかを見ます。

実際の読み方

事業なら、内部に確かな軸があり、外へは柔らかく応じられる時期です。人材を進め、古い滞りを退け、長期の仕組みを作ります。売買では、買い入れや仕込みに利が大きく、売り急ぎは薄利になりやすいと読みます。婚姻では陰陽が合う形なので吉ですが、礼と責任が伴います。

この卦辞を現代で使うなら、三つを確かめます。正しい人が進んでいるか。不正や閉塞が退いているか。上下の話と資源が通っているか。三つがそろえば真の泰です。見た目だけ盛んで内側が小人なら、すでに泰の中に否が伏しています。

次へ:彖曰

彖曰

一言で読む

泰の順調さは、にぎわいよりも、天地と上下の気持ちが本当に通う所にあります。

原文

泰、小往大来、吉亨。則是天地交而万物通也、上下交而其志同也。内陽而外陰、内健而外順、内君子而外小人、君子道長、小人道消也。

書き下し文

泰は、小往き大来る、吉にして亨る。則ち是れ天地交わりて万物通ずるなり、上下交わりて其の志同じきなり。内は陽にして外は陰、内は健にして外は順、内は君子にして外は小人なり。君子の道は長じ、小人の道は消するなり。

現代語訳

泰は、小さいものが去り、大きいものが来るので吉で通ります。天地が交わって万物が通じ、上下が交わってその志が同じになります。内は陽で外は陰、内は健やかで外は順い、内は君子で外は小人です。君子の道が伸び、小人の道が消えていきます。

彖伝の読み解き

彖伝のこの一段は、卦全体の重心です。ここで言われているのは天地の形の位置ではなく、天地の気が交わるかどうかということ。天気が上らず、地気が下らなければ雨は成りません。人事でも、上が下を思わず、下が上に届かず、命令だけが下り、訴えだけが上がるようでは、泰にはまだ届きません。泰の内側は乾の健、外側は坤の順です。内に正しく強い骨組みがあり、外に柔らかく応じる働きがあるので通じます。表面だけ繁栄し、会議や契約や売上はあるのに、志が通わず、現場の声が制度に入らず、利益の配分が歪んでいるなら、泰の姿をしていても、すでに否へ向かっています。

実際の読み方

会社では、経営と一線の情報が通っているかを見ます。家庭では、責任、感情、金銭の話が互いに届くかを見ます。共同事業では、契約書があるだけでなく、利益、速度、危険の感じ方が本当に合っているかを見ます。国や組織なら、制度が民情を受け止め、民情が制度へ戻る通路があるかが大切です。泰を読む時、ただ「今はうまくいく」と断じるのでは浅すぎます。上が下を思いやり、下が上へ応え、中枢が正しく、実行が力を持ち、情報と財が滞らない。そこまで見て、はじめて彖伝の泰になります。

次へ:象曰

象曰

一言で読む

順調な時ほど、過ぎたものを裁ち、足りないものを補い、太平の続く形を作ります。

原文

天地交、泰、后以財成天地之道、輔相天地之宜、以左右民。

書き下し文

天地交わるは泰なり。后以て天地の道を財成し、天地の宜しきを輔相し、以て民を左右す。

現代語訳

天地が交わるのが泰です。王者はこれを見て、天地の道を裁ち整え、天地のよい働きを助け、民を左右して助けます。

象伝の読み解き

「財成」は過ぎたところを裁ち整えること、「輔相」は足りないところを補い助けることです。天地は万物を生みますが、生まれたままで人の用に足りるとは限りません。日月星辰を観、節気を分け、城邑を定め、天時を察し、地利を弁え、春夏は耕し、秋冬は収めます。こうして天地の大きな働きが、人の暮らしに合う秩序になります。

泰の時こそ、制度を作る時期です。順調だから手を止めるのではなく、順調なうちに、後で崩れない形へ整えます。太平は、手を入れ続けてはじめて続きます。過ぎたものを抑え、足りないものを補い、人情と実務に合う仕組みへ落とし込む。そこまでやって保てます。

実際の読み方

会社なら、成長期にこそ予算、手順、責任分担、権限、採用、引き継ぎを整えます。家庭なら、和睦している時に財務、介護、子育て、住まい、相続の話を進めます。個人なら、調子がよい時に生活のリズム、貯蓄、学習、健康管理を作ります。泰の象が教えるのは、順調な時に難しい整備をしておく知恵です。文書を補い、古い役割を見直し、合わない人を配置換えし、現金を残し、旧い関係を修復する。どれも、否になってから救うより、泰のうちに過ぎたものを裁ち、足りないものを補う方がはるかに容易です。

次へ:占断

占断

一言で読む

通達、和合、安定、上下相応の象です。吉の中の満ちすぎ、通の中の詰まりを防ぎます。

総合的な占意

泰の総占は、天地、上下、内外の交通が通じ、正しい力が内に入っているかを見ます。順調な時ほど制度を整え、盛極から否へ転じる兆しを防ぎます。

項目別の占断

  • 時運・国運:上下が応じ、君臣が正しく、民が安んじる泰平の時ですが、盛極から否へ転じる兆しを防ぎます。
  • 事業・仕官:謀り事は成りやすく、正しい仲間や旧交とともに進めます。すでに名位が高い人ほど持盈保泰が必要です。
  • 商業・開発:売買はともに吉で、買い入れの利が大きくなります。公益の開発では荒遠を包み、広く人を利することを重んじます。
  • 婚姻・家政:陰陽が和合して婚嫁は吉です。よい内助や適任の管理者を得れば、家業を保てます。
  • 農事・雑占:雨水が調い、年成は豊かです。妊産は男女の双子を得る象を含み、失物は左右の近い所を探します。

六爻の要点

  • 初九:茅を抜けば根が連なるように、正しい仲間とともに進みます。
  • 九二:荒遠を包み、険を渡り、遠人を棄てず、私党を離れて中道を守ります。
  • 九三:平らなものは傾き、往くものは復るため、順境の中でも艱貞を守ります。
  • 六四:上から軽やかに下り、富で誘わず、誠によって隣や仲間と交わります。
  • 六五:尊位から謙って礼を成し、正しい相応によって福を得ます。
  • 上六:城が壕へ崩れ戻り、泰が尽きます。外征を止め、自邑の立て直しへ戻ります。

実際の読み方

仕事では、大事を進められますが、撤退線と次の制度を作ります。財務では、仕込みや長期の配置はよいものの、順調さを前提に借りすぎません。関係では、和合を礼と謙虚さで保ちます。組織では、正しい人を進め、小人に実権を渡しません。仕途を問えば、初九のように旧交や同類の引き立てで進むことがあります。公益や開発なら、九二のように荒地や辺境を包む働きが要ります。盛名や高位なら、九三のように持盈保泰が必要です。古い企業なら、六四のように旧態を改め、適任の新人を入れます。家政なら、六五のように賢い管理者や内助を得て保ちます。末運なら、上六のように拡張を止め、内政を整えます。泰は何をしても吉という卦ではありません。吉の根がどこから来ているかを見る卦です。

高島の占例

明治二年、ある藩士が商業に従事すべきかを問うた時、高島は初九を得ました。しかし商業より仕途に向くと判断しました。「抜茅茹」は旧交が根で連なる象なので、顕職にある友人を通じて仕官を求めれば身を立てられると読み、後にその人は実際に仕官し昇進しました。泰の吉も、どの根から来るかを見なければなりません。

次へ:初爻

初爻

一言で読む

一人の動きが同類を連れてきます。だからこそ、誰と進むかが吉凶を分けます。

原文

初九:拔茅茹以其彙、征吉。

書き下し文

初九、茅を拔くに茹たり、其の彙を以てす、征けば吉なり。

現代語訳

茅を抜くと根がつながっていて、その仲間も一緒に抜けます。進めば吉です。

爻辞の読み解き

初九は剛明の才徳を持ちながら下にあり、六四と応じます。在野の賢人が大臣に推薦されるような象です。三つの陽は同じ乾体なので、一陽が進めば、他の陽も根で連なって進みます。君子が得位すれば賢士が朝に集まり、同心して泰を成します。

同時に、同類が引き合う危うさもあります。君子が進めば君子が連なりますが、小人が中心に座れば小人もまた同類を呼びます。初九が問うのは、一人で突進する英雄ぶりよりも、どの根に連なるかということです。

実際の読み方

仕事では、推薦、旧交、同僚、同窓、前職の縁から道が開くことがあります。採用や共同事業では、能力だけでなく根の正しさを見ます。商売では、志の合う仲間や貨財が集まる象です。功名なら、段階を踏んだ昇進になります。失物は、草むらや束になったものの中を探す読みもあります。

高島の占例

明治二年、藩士が商業に転じてよいかを問うた占では、初九から、商業より旧交に引かれて仕途へ進む方がよいと断じられました。後にその人は仕官して昇りました。この爻は、吉の方向がどの根から伸びているかを見ます。

次へ:二爻

二爻

一言で読む

荒いものも遠いものも包み、私党に偏らず中道で用いる力から、本当の安定が生まれます。

原文

九二:包荒。用馮河、不遐遺、朋亡。得尚于中行。

書き下し文

九二、荒を包み、馮河を用い、遐きを遺てず、朋亡ぶ。中行に尚ばるるを得。

現代語訳

荒いものを包み、川を歩いて渡るような危険も用い、遠いものを遺さず、私党を失えば、中道にかないます。

爻辞の読み解き

九二は剛中で、泰の中軸にあたります。なかでも重いのが「包荒」だ、というのが高島の読みです。太平を治める人は、整った場所も荒れた場所も、親しい人も遠い人も、楽な仕事も難しい仕事もまとめて引き受けます。未開の地、粗野な人、遠方の資源、難しい危険まで包み込む。「馮河」は危険を承知で川を渡る勇気を言います。「不遐遺」は遠い者を棄てないことです。「朋亡」は友を失うという意味ではありません。私党に偏らないことを指します。

九二の泰は、内輪の安楽とは別の所から来ます。中心に立つ者が広く包み、危険を引き受け、公の道で用いるので、太平が広がります。

実際の読み方

管理では、辺縁の社員、遠方の市場、未整理の領域、面倒な問題を切り捨てません。事業では、危険を取って拡張できますが、中道を守り、私的な仲間だけで固めません。家業では、使用人や周辺の人を寛く扱いながら、決断は偏らずに下します。

高島の占例

東京の友人が常陸の沼地開墾を問うた時、高島は九二を得て、荒地を開き五穀を植え、社会にも国にも利があると読みました。財ある者がただ安逸を求めるより、資金を投じて荒れた所を開き、飢寒を救う。それが九二の包荒です。

次へ:三爻

三爻

一言で読む

盛んな時ほど傾き始めます。艱難を忘れず正しく守ることが、泰を長持ちさせます。

原文

九三:無平不陂、無往不復、艱貞無咎。勿恤其孚、于食有福。

書き下し文

九三、平らかにして陂かざるは無く、往きて復らざるは無し。艱みて貞なれば咎なし。其の孚を恤うること勿かれ、食において福有り。

現代語訳

平らで傾かないものはなく、往って戻らないものはありません。艱難を思って正しければ咎はありません。その誠を憂えなくても、食には福があります。

爻辞の読み解き

九三は泰運の盛んな所にいますが、同時に陽が極まり、陰が迫り始める所でもあります。月が満ちれば欠け、花が開けば落ちます。警めはそこにあります。泰がここまで来ると、すでに否へ移る機が見えています。

だから九三の徳は、盛りに酔わないところにあります。泰の極みにいる人は、患いを思い、危険を予防し、いつも艱難を忘れず正を守ります。「食に福あり」は、誠を守れば生活の福は保てるという慰めでもあります。

実際の読み方

事業では、最高に順調な時こそ反落を見ます。売上、名声、権限、人気が大きい時ほど、資金繰り、後継、在庫、批判、法務を点検します。商売では、目の前の失意の後に利があることもありますが、守りが要ります。戦いや競争では伏兵を警戒して固守を選び、家業では先業を謹んで守ります。

高島の占例

三条相公の気運を占って九三を得た時、高島は、声名と勲業が盛んであるほど、これから陰へ移る機を警めました。後に三条は顕職を解き、内大臣の閑位に就き、なお誠を尽くしました。盛位で一歩退くことが、失勢ではなく泰を保つ道になることもあります。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

勢いが空になり始めたら、命令より、近い者との信で下へ交わり直します。

原文

六四:翩翩、不富以其隣、不戒以孚。

書き下し文

六四、翩翩たり、富まずして其の隣を以てす、戒めずして孚あり。

現代語訳

ひらひらと下ります。富によらず隣とともにし、戒めなくても誠によって集まります。

爻辞の読み解き

翩翩は、鳥が羽をひるがえして下りる姿です。六四、六五、上六は外卦の陰で、本来は下に安んじるべき柔が上にいます。だから心は落ち着かず、三陰が連なって下へ交わろうとします。外見はまだ整っていても、内側は空になり始めています。同業、親族、近隣の助けで、かろうじて保っている象です。

不戒以孚とは、命令や警戒で無理に集めなくても、中心に本当の信があるので自然に応じ合うことを言います。六四はすぐ凶になる爻ではありません。ただ、泰の半ばを過ぎ、旧い調和が緩み始めたしるしではあります。

実際の読み方

事業では、表面の勢いより内実を見ます。売上や看板はあっても、資金、人材、技術、信用が空になっていないかを確かめます。古い会社や家業では、旧来のやり方に恋々とせず、新しい適任者を入れ、権限を渡し、周囲と信を通わせます。商売では、同業の助けで成ることがあります。失物は、隣家や近所に問う読みもあります。

高島の占例

維新後、東京の豪商が旧商況の変化で衰えた時、高島は六四から、古い番頭たちが新法に通じないことを見て、適任の新人に実権を委ねるべきと読みました。後に家風を改革して再び盛んになりました。六四は、旧い泰を守るには下へ交わり直す必要があると教えます。

次へ:五爻

五爻

一言で読む

高い立場の者がへりくだって賢い相手と結ぶとき、福が来て大吉になります。

原文

六五:帝乙帰妹、以祉、元吉。

書き下し文

六五、帝乙妹を帰がしむ、以て祉あり、元いに吉なり。

現代語訳

帝乙が妹を嫁がせます。それによって福があり、大吉です。

爻辞の読み解き

六五は柔で尊位にあり、下の九二の剛中と応じます。帝乙が妹を嫁がせるのは、単なる婚姻の話にとどまりません。尊い側が身を下げ、礼を尽くして、正しい相手と結ぶ象です。聖君が虚心に賢臣を礼遇し、九二の補佐によって治を成し、太平の福を開く。読みはそこまで広がります。

ここでの尊さは、高い所にとどまる姿勢とは逆を向きます。高い位置にある者が、自分の位を保ちながら、本当に働ける人へ下り、任せ、結びます。柔中が剛中に応じるので、元吉です。

実際の読み方

婚嫁では、遠方の縁、尊卑や家格の差を礼で整える縁に吉があります。リーダーなら、上位者が謙虚に賢者を用いる時です。家業では、賢い管理者、内助、配偶者、補佐役によって保てます。商業では、外地や海外との通じも読みます。失物は、拾った人が返しに来る象を取ることもあります。

高島の占例

ある豪富が家政を占って六五を得た時、高島は、旧業と家教はあるが時勢に障りがあり、九二のような忠実な管理者を用いれば商運を興せると読みました。古い仲間の嫉妬やそしりがあっても、管理者が柔順に相従えば消えていきます。六五は、富や家柄だけでは泰を保てず、賢を任せる礼が要ると示します。

次へ:上爻

上爻

一言で読む

順調が崩れ始めたら、外へ攻めるより内側へ戻って修復するほかありません。

原文

上六:城復于隍、勿用師、自邑告命、貞吝。

書き下し文

上六、城隍に復る、師を用うる勿かれ、邑より命を告ぐ、貞なるも吝なり。

現代語訳

城が壕へ崩れ戻ります。軍を用いてはいけません。自分の邑から命を告げます。正しくても吝です。

爻辞の読み解き

隍は水のない城壕です。城はもともと、壕を掘った土で築かれます。その城が壕へ戻るとは、高く築いたものが崩れて元へ返ることです。泰が極まれば否へ転じ、君徳は衰え、威権は廃れ、下情は上へ通らず、上の恵みは下へ流れず、人心は離れます。

この時に外へ兵を用いて解決しようとしてはいけません。城が壊れているのに、それを拠点にして戦うことはできません。できるのは、自分の邑、すなわち手の届く内側へ戻って命を告げ、文を修め、内政を整えることだけです。ただし、否へ転じる寸前まで放置してから命を告げるのは遅く、たとえ正しくても吝が残ります。

実際の読み方

事業では、拡張を止め、内部の整備、資金の回収、人員の整理、顧客対応、基盤の修復へ戻ります。家業では守りを固めて倒壊を防ぎ、商売では小さく扱って時を待ちます。競争では、城を攻めること自体はできても、内部の統治が乱れているなら、武力や力攻めに頼るのは危うくなります。上六は絶望を告げる爻ではありません。泰の盛んな時のやり方が、もう通じないと告げる爻です。九三で防げばここまで来ません。上六に至ったなら、体面より修復を、外征より内政を、拡大より基盤を選びます。

地天泰:読みの覚え

地天泰は、上下が通じて気が流れる卦です。安らぎがある時ほど、それを続ける仕組みと、次の詰まりへの備えを見ます。

通っているうちに手を入れる

泰は上下が交わり、内外が通じている形です。いちばん良い泰は、目の前に何も起きていない状態ではありません。意見がまだ往き来し、圧力が見えていて、小さな不具合を早いうちに直せる状態です。順調さだけを味わい、耳に痛い言葉を聞かなくなると、泰は安穏の中でゆっくり否へ傾きます。

まだ本音が言えるか

順の時にいちばん分かりにくいのは、この順調さが構造の通りから来ているのか、問題が一時的に覆われているだけなのか、という点です。見分け方は素朴で、上と下、内と外、双方がまだ本当のことを言えるかを見ます。本音が口に出せなくなったら、帳面がどれだけよくても、通っているのは表面だけです。

順のうちに骨組みを作る

協力、家庭、経営、関係の修復。どれも泰は得がたい好機で、制度を定め、信を補い、長い計画を進めるのに向きます。泰を享楽だけに使うのはもったいない話です。人の心が通っているうちに土台を厚くしておきます。とくに、自分がいちばん触りたくない所から手をつけます。

泰の中にすでに否がある

九三の「無平不陂、無往不復」は、全卦の警鐘です。泰が高みに達したとき、落ちる勢いはすでにその中にあります。泰は慎重さを嫌いませんが、順調を常態と思い込むことだけは嫌います。退路を先に想定し、余力を残し、艱難を忘れない。そこまでできて、泰を使いこなしたと言えます。

天地否・水火既済と並べて

天地否と並べれば、泰は通じ、否は通じません。泰のうちに満ちすぎを防がなければ、そこに否の影が差します。水火既済と並べれば、泰は気が通ったこと、既済は事が成ったことを指し、通じることと完成することは別だと分かります。どちらも、その先の手入れが要ります。三卦をつないで読むと、通ること、成ること、閉じることの区別がはっきりします。

地天泰:読みの覚え札記を開く

地天泰は、上下が通じて気が流れる卦です。安らぎがある時ほど、それを続ける仕組みと、次の詰まりへの備えを見ます。

通っているうちに手を入れる

泰は上下が交わり、内外が通じている形です。いちばん良い泰は、目の前に何も起きていない状態ではありません。意見がまだ往き来し、圧力が見えていて、小さな不具合を早いうちに直せる状態です。順調さだけを味わい、耳に痛い言葉を聞かなくなると、泰は安穏の中でゆっくり否へ傾きます。

まだ本音が言えるか

順の時にいちばん分かりにくいのは、この順調さが構造の通りから来ているのか、問題が一時的に覆われているだけなのか、という点です。見分け方は素朴で、上と下、内と外、双方がまだ本当のことを言えるかを見ます。本音が口に出せなくなったら、帳面がどれだけよくても、通っているのは表面だけです。

順のうちに骨組みを作る

協力、家庭、経営、関係の修復。どれも泰は得がたい好機で、制度を定め、信を補い、長い計画を進めるのに向きます。泰を享楽だけに使うのはもったいない話です。人の心が通っているうちに土台を厚くしておきます。とくに、自分がいちばん触りたくない所から手をつけます。

泰の中にすでに否がある

九三の「無平不陂、無往不復」は、全卦の警鐘です。泰が高みに達したとき、落ちる勢いはすでにその中にあります。泰は慎重さを嫌いませんが、順調を常態と思い込むことだけは嫌います。退路を先に想定し、余力を残し、艱難を忘れない。そこまでできて、泰を使いこなしたと言えます。

天地否・水火既済と並べて

天地否と並べれば、泰は通じ、否は通じません。泰のうちに満ちすぎを防がなければ、そこに否の影が差します。水火既済と並べれば、泰は気が通ったこと、既済は事が成ったことを指し、通じることと完成することは別だと分かります。どちらも、その先の手入れが要ります。三卦をつないで読むと、通ること、成ること、閉じることの区別がはっきりします。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

関連記事

易占い無料ガイド六十四卦の読み方動爻と之卦の読み方易占い 質問の立て方易占い 恋愛易占い 仕事易占い 復縁易占い 転職易占い 金運・お金得た卦を見る高島易断とは六十四卦一覧

本卦の問い

順調な時に、いちばんやっておくべきことは何ですか。

面倒で、しかし必要なことです。書類を補い、手順を作り、現金を蓄え、責任を分け、古い関係を直します。泰はよい卦ですが、憂いのない卦ではありません。順調さを味わうだけで終えると、それがそのまま否へ転じる種になります。

関係のことを泰で占ったら、何をすればよいですか。

まだ話が通じるうちに、これまでの行き違い、これからの決めごと、役割の分担を言葉にしておきます。泰の値打ちは通じるところにあります。気が閉じてから直そうとしても間に合いません。

泰と天地否は、なぜ対にして読むのですか。

通と閉は互いに移り変わるからです。泰は順の時に閉を防げと言い、否は閉の時に正を守れと言います。二つを合わせて見ると、順も逆も永久ではないと分かります。

順調な時に、いちばんやっておくべきことは何ですか。開く

面倒で、しかし必要なことです。書類を補い、手順を作り、現金を蓄え、責任を分け、古い関係を直します。泰はよい卦ですが、憂いのない卦ではありません。順調さを味わうだけで終えると、それがそのまま否へ転じる種になります。

関係のことを泰で占ったら、何をすればよいですか。開く

まだ話が通じるうちに、これまでの行き違い、これからの決めごと、役割の分担を言葉にしておきます。泰の値打ちは通じるところにあります。気が閉じてから直そうとしても間に合いません。

泰と天地否は、なぜ対にして読むのですか。開く

通と閉は互いに移り変わるからです。泰は順の時に閉を防げと言い、否は閉の時に正を守れと言います。二つを合わせて見ると、順も逆も永久ではないと分かります。