六十四卦

六十四卦 意味・読み方

風雷益|意味・卦辞爻辞解説(ふうらいえき)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

上の余りが下へ流れ、風と雷が互いを起こして物を育てます。

卦象と卦名

益は上が巽風、下が震雷です。雷は地から起こり、風は天から行きます。風と雷が出会うと、動いて入り、万物はその鼓動を受けて成長します。だから益です。損と反対の形です。損が下を損して上を益するのに対し、益は上を損して下を益します。

卦の中心的な意味

風があまり暴れれば万物を折るので、その暴を損して気を和らげます。雷が振るわなければ万物を鼓舞できないので、その威を益して気を通します。益は何でも無限に積み上げる働きではありません。強すぎる所を和らげ、不足する所を奮い立たせ、全体を生き返らせる働きです。

益の向きは、下へ、実地へ、生きる力のある所へ向かいます。上位の人が資源、徳沢、機会を下へ流せば、民は自然に喜びます。個人に置き換えても、益は自分がもっと得ることに限りません。善を見ればすぐ移り、過ちがあればすぐ改める。人格と行いが本当に伸びていく。それが益の根です。

向いている問い

益を得たら、「得をするか」とだけ問うても足りません。その益がどこへ流れるかを見ます。

正事、公事、育つ事へ使えば益になります。私欲、貪り、虚栄に積み上げれば、益はやがて上九の凶へ転じます。

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卦辞

一言で読む

増えた力を正事に用いれば、遠くへ進み、大きな険も渡れます。

原文

益:利有攸往。利渉大川。

書き下し文

益は、往く攸有るに利あり。大川を渉るに利あり。

現代語訳

益は、行く所があるのに利があり、大川を渡るのに利があります。

卦辞の読み解き

増えた力や助けを得た時は、進むことにも大きな険を渡ることにも利がある。卦辞はそう告げます。益は、その場で量が増えるだけの話ではありません。増益を受けた後に動けることが眼目です。震は行くこと、巽は利、風は速く行き、雷は力強く動きます。だから進むのに利があります。また巽には木の象があり、木は舟となるので、大川を渉るのにも利があります。

ただし、どんな冒険でもよいわけではありません。資源、時機、人心、道具がそろって助ける時にこそ、もともと渡りにくい大川も渡れます。益が利であるのは、自分だけが増えるからではありません。環境も助け、人も押し、道具も役に立つからです。

しかも益は、必ず正事に用います。新しく得た資源を公事、農事、救済、遷国、創業、改過に用いれば、自然に日々進みます。もし益をただ私利として抱え込めば、増えたものは体の弱い太り方となり、やがて攻撃を招きます。

実際の読み方

事業なら進めてよい時ですが、何のための資源かをはっきりさせます。投資なら、育つ場所へ入れます。学びなら、善を見て移り、誤りを見て改めるので、進歩が速い時です。

協力では、益が双方に届く形にします。一方だけが独占すれば、益は長く続きません。

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彖曰

一言で読む

上の余りが下を養えば人心は喜び、増益は明るい道になります。

原文

益、損上益下、民説無疆、自上下下、其道大光。利有攸往、中正有慶。利渉大川、木道乃行。益動而巽、日進無疆。天施地生、其益無方。凡益之道、与時偕行。

書き下し文

益は、上を損して下を益す、民の説び疆り無し、上より下に下る、其の道大いに光る。往く攸有るに利あり、中正にして慶び有り。大川を渉るに利あり、木道乃ち行わる。益は動きて巽う、日に進みて疆り無し。天施し地生じ、其の益方無し。凡そ益の道は、時と偕に行う。

現代語訳

益とは、上を減らして下を益することです。民の喜びには限りがなく、上にいる者が下へ降るその道は大いに光明です。往く所があるのに利があるのは、中正であって慶びがあるからです。大川を渡るのに利があるのは、木の道が行われるからです。益は動きながら柔順であり、日々進んで限りがありません。天が施し、地が生み、その増益には決まった範囲がありません。すべて益する道は、時とともに進みます。

彖伝の読み解き

上の余りが下を養えば、人々は喜び、道は明るくなる。彖伝が言うのはそこです。上の余りを取り、下の不足を補います。民が実際に益を受ければ、喜びは限りありません。上に立つ者の道も、それによって明るくなります。

損は、見方によっては民から取って上へ奉じる象があるので、初めに有孚が必要でした。益はその反対で、上が下を厚くし、民を益する卦です。孔子のいう「富を加え、教えを加える」道に近いといえます。財を与えるだけでは足りません。教化、制度、機会、そして続いていく生計の道まで与えます。

「往く攸あるに利があります、中正にして慶あり。大川を渉るに利があります、木道乃ち行わる」。益が進めるのは、中正だからです。大川を渡れるのは、木の道、すなわち舟や橋となる道具があるからです。行動は熱意だけでは足りません。適切な道具、経路、制度が要ります。

「益は動いて巽、日進むこと疆なし」。震は動き、巽は順です。動いても順であり、焦って先走らず、逆らわない。だから日ごとに益を重ねます。天地の道は、天が施し地が生むところにあります。君の道も、恵みを施して下を生長させるところにあります。益の道はすべて時とともに行きます。益すべき時に益さなければ機を失い、益すべきでない時に無理に益せば、根が痩せます。

実際の読み方

益を読む時は、まず「上を損して下を益しているか」を見ます。現場、身体、根、顧客、家族、学ぶ力が養われているなら、多くは正しい益です。

上だけが満ち、欲だけが大きくなり、名声だけが派手になるなら、益が損へ変わる前触れと見ます。

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象曰

一言で読む

利益より、善をすぐ学び過ちをすぐ直す身軽さが自分を増やします。

原文

風雷益、君子以見善則遷、有過則改。

書き下し文

風雷は益なり。君子以て善を見れば則ち遷り、過ち有れば則ち改む。

現代語訳

風と雷が益です。君子はこれを見て、善を見ればそこへ移り、過ちがあれば改めます。

象伝の読み解き

益の根は、善へすぐ移り、過ちをすぐ改めるところにあります。風と雷は動きが速く、互いに押し合います。君子はこの象を取り、善いものを見ればすぐそこへ移り、自分の過ちに気づけば、雷のように果断に改めます。

善へ移るのは風のように速く、過ちを改めるのは雷のように勇ましく。益はまず外の財より、心と行いの中に現れます。他人の善を見て学び、自分の過ちを見て直す人が、長い目でいちばん確かな益を得ます。

このことは、益卦に吉が多い理由も説明します。益は静かに持っている量ではありません。動きつづける改善です。動けるうえに巽順であり、進めるうえに中正でもあります。改過遷善を欠いて外からの利益だけを求めれば、益は偏り、最後に上九の「心を立つること恒なし」の凶へ至ります。

実際の読み方

毎日、二つだけ問えば足ります。今日見た善のうち、すぐ学べるものは何か。今日見つけた自分の過ちのうち、すぐ改められるものは何か。

このように益を使えば、財運、事業、関係の伸びにも根ができます。

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占断

一言で読む

速く行い旧を改めれば益。私利だけを貪れば凶へ転じます。

総合的な占意

益には強い行動性があります。先延ばし、古い形への固執、ためらいには向きません。同時に、貪りを嫌う卦でもあります。新しく得た資源は、すぐ育つ所へ入れるのがよく、欲望の中に積み上げてはいけません。時に順って更新できれば益は続き、貪りが過ぎれば益は反撃します。

項目別の占断

  • 時運:運が奮い、旧を改めて新へ移る時です。行動を遅らせません。
  • 戦いと経営:勢いに乗って速やかに平定できます。利があれば取引し、なければ売り方をすぐ改めます。
  • 功名と病:風雷が互いに益し、功名は志を得ます。肝木が盛んに過ぎる病は、陽を減らして陰を助けます。
  • 婚姻と家宅:男女は自然に配合します。家は雷風の害を防ぎ、よい所は修理し、朽ちた所は作り直します。
  • 訴訟と失せ物:自省して怒りを鎮めれば訴訟は止みます。失せ物は移動・変形して、元の姿では戻りにくい時です。
  • 現代での応用:新たな資源は、改革、弱者支援、救難、成長へすぐ用い、欲望として蓄えません。

六爻の要点

  • 初九:新たに得た助力を長く続き人々を利する大事へ用いれば、大吉です。
  • 六二:大きな援助を得ても長く正しさを守り、敬慎して受け取ります。
  • 六三:災難の中では増益を救急と救難に用い、誠実に処すれば咎はありません。
  • 六四:中に立って調整し、事実を率直に進言すれば、公の移転や改革を進められます。
  • 九五:真心から人を益し、見返りを問わなければ自然に大吉です。
  • 上九:さらに多くを貪って人を恵まなければ、援助を失い、攻撃を招きます。

実際の読み方

成長を問うなら、まず「増えた後に何をするのか」を見ます。旧を改め、弱きを助け、事業を立て、危難を救い、善へ移り過ちを改めるなら、よい益です。

見せびらかし、独占、奪い合い、過度な拡張のためなら、そこで手を止めます。

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初爻

一言で読む

得た力を抱え込まず、皆を生かす大きな仕事へ回す時です。

原文

初九:利用為大作、元吉、無咎。

書き下し文

初九、用て大作を為すに利あり、元いに吉にして、咎なし。

現代語訳

これを用いて大きな事をなすのに利があります。大いに吉で、咎はありません。

爻辞の読み解き

得た益を公共性のある大事へ用いれば、大吉になります。大作とは、大きく公共の意味を持つ事です。古くは巡狩、省耕、賑貸、祭告、遷国などを指しました。現代なら、基盤整備、新しい事業の創設、救済、長期の計画がこれに当たります。

初爻は事の始めで、上からの益を受けています。この資源を大事、正事、長久の事に用いれば、利益は天下と分かち合われます。下の人はそれを上だけの私事とは見ず、自分たちの事として喜んで力を出します。だから大いに吉で、咎もありません。

実際の読み方

時運はよい運に入り始め、大きな事をしてよい時です。戦いでは初戦で一気に大功を立てられます。経営では、初めての営業でも資本が厚く、構えが大きければ、大利を得て長く続きます。

功名は大きな首位を望める時です。家宅は新しく大きく造るのに吉、婚姻も大吉です。訴訟は、私憤ではなく公共の大事であれば、大過はありません。

高島の占例

明治二十四年、高島が秋の収穫の豊凶を占い、益が観に変じる初九を得ました。「大作」を農事の作と読み、秋収の問いにぴたりと合うとします。爻辞は用いるに利あり、大吉で咎なしと言い、卦名は益、卦義は益下です。そこで年穀は豊登し、千倉万箱に満ちる、まさに「天施地生、その益方なし」と断じました。

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二爻

一言で読む

思いがけない大益も、長く守り天を敬えばこそ続きます。

原文

六二:或益之、十朋之亀弗克違、永貞吉。王用享于帝、吉。

書き下し文

六二、或いは之を益す、十朋の亀も違うこと克わず、永く貞にして吉なり。王用て帝に享す、吉なり。

現代語訳

ある人がこれを益します。十朋の亀でもこれに逆らえません。長く正しく守れば吉です。王がこれを用いて天帝に祭れば吉です。

爻辞の読み解き

外から大きな益が来ても、長く正しく守り、天に告げる心があってこそ吉になります。六二はその条件を示します。十朋の亀は貴重な卜亀であり、外から来る大きな益と吉兆を表します。益の二爻の亀は、損の五爻の亀と照応します。損の五では亀が上に奉られ、益の二では上からの益が下を益します。

永貞吉は、この益が一時の風で終わらず、長く正しく保てることを言います。二は震の中にあり、位に当たり、巽に応じます。祭告し、帝に享する象です。王がこの亀を用いて天帝に告げ、天の守りを願います。この益には敬天、守正、長久の意味が重なっています。

実際の読み方

時運は思いがけない財を得ることがあり、しかも長く守れます。戦いでは、先に占って吉を得るように、出師して勝てます。経営では貨幣と財利が豊かで、神助があるように厚利を得ます。

功名は吉兆を得て顕達を望める時です。病は祈りと治療で癒えます。家宅は長く安住でき、婚姻は長男長女の配合のように百年の好合です。

高島の占例

友人がある富豪の家政を占って、益が中孚に変じる六二を得ました。高島は、二爻が内卦の中にいて柔順当位なので、家の内政がよく整っており、益はあって損はないと読みます。十朋の亀は財が豊かで、祥瑞が外から来ること。享帝は神明が福を降すことです。その富豪の家風は清正で、内政は修まり、家道は日々進み、長く大きく栄えると断じました。

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三爻

一言で読む

増益は享楽より、危急を救うために誠をもって使う時です。

原文

六三:益之用凶事、無咎。有孚中行、告公用圭。

書き下し文

六三、之を益すに凶事を用う、咎なし。孚有りて中行す、公に告ぐるに圭を用う。

現代語訳

これを益するのに凶事を用います。咎はありません。真心があって中道を行き、公に告げるのに圭を用います。

爻辞の読み解き

災害や危急を救うために益を使い、誠と正式な信をもって進めば、咎はありません。凶事とは、凶作や飢饉、死喪、兵険、危急の事を指します。三は震の極にあり、動いて益を求めます。互体の坤には事、用、死喪の象があるので、凶事に用いると言います。

益を自分の享楽だけに使えば、器は小さいままです。救凶済危に使ってこそ、益の難しさと大きさが出ます。ただし「孚ありて中行」が要ります。救済を名目に私利を得てはいけません。圭は符信です。公に告げ、上下の信を通じて難を救います。

実際の読み方

時運は艱難がありますが、素行が誠実で人が信じるなら大過はありません。戦いでは、兵が険地にいても、諸軍が同心し本営へ告げれば救われます。功名は先に苦しみ、後に甘さが来る形です。

経営は富を求めるために険しい道を取ることもありますが、必ず信と中道を守ります。家宅は険が多くても中正で化吉できます。婚姻は喪服や苦境の中で成ることもありますが、大過はありません。訴訟は、上に告げて正しい信を得てからやめるのがよいでしょう。

高島の占例

占例1

ある友人が気運を問うて、益が家人に変じる六三を得ました。その人は西亜米利加地方に移民公社を設け、土地を買い、開墾牧畜して、無産の人々に仕事を与えようとしていました。高島は、爻辞がまさにこの事に合うと断じます。益を凶事に用いるとは、貧を救い危を済うこと。貧民が信じて移るのは有孚中行。政府の嘉賞を得るのは告公用圭です。

占例2

高島が北海道炭鉱鉄道会社の社長として鉱山を巡った時、札幌で四十度の熱を出し、この爻を得たこともあります。初めは病を凶と思いましたが、四爻に遷国の辞があるので、病をおして函館へ移りました。翌日、札幌の旅館が夜に火事になったと知ります。凶が指していたのは病ではありませんでした。火であり、変卦の離も火象に応じていたのです。

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四爻

一言で読む

中に立って公へ告げ、信を得れば、大きな移転も利になります。

原文

六四:中行、告公従。利用為依遷国。

書き下し文

六四、中行す、公に告げて従わる。用て依るを為し国を遷すに利あり。

現代語訳

中道を行き、公に告げれば従われます。より所として国を遷すことに用いるのに利があります。

爻辞の読み解き

人々を益するために筋を通して公へ告げるなら、大きな移転や制度変更も利になります。四は巽の始めにあり、初と応じ、三と比します。初爻は大作をなすに利ありと言い、四爻の遷国もまた大作です。三爻は有孚中行、告公用圭と言い、四爻もまた中行告公と言います。

遷国は、軽々しい引っ越しとは違います。もとの場所が不利で、国や共同体に難がある時、より生き延び、より伸びられる場所を選ぶことです。盤庚の殷への遷都、太公の岐への遷りがその例で、遷るのは時に民を保ち民を益するためであって、逃避ではありません。

実際の読み方

時運は眼前に難があり、よい場所を選んでしばらく避けるのがよい時です。戦いでは退兵して陣を移し、急いで救援を請います。経営では店主に告げ、別の場所へ移って新しい商圏を開くのがよいでしょう。

家宅は移居がよい時です。功名は今の道で成らなければ別業へ改めます。婚姻は別の媒人を探す必要があります。失せ物は多く得にくい時です。

高島の占例

友人がある貴顕の気運を占って、益が無妄に変じる六四を得ました。高島は、卦象は上を損して下を益し、爻象は衆を動かして国を遷すので、その貴顕が国と民のための任に当たることに合うと読みます。当時の日本には盤庚のような遷都はありませんでしたが、北海道の開拓、内地の民の移住、また避暑の行宮を設ける議論がありました。移民の議はその貴顕が主宰していたので、この爻は彼が中行の徳をもって天皇に進言し、許可を得て行う国家開化の盛業だと断じました。

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五爻

一言で読む

誠から恵む人は、問うまでもなく吉。徳は返ってきます。

原文

九五:有孚惠心、勿問元吉。有孚惠我徳。

書き下し文

九五、孚有りて心に惠あり、問うこと勿かれ元いに吉なり。孚有りて我が徳を惠とす。

現代語訳

真心があり、恵む心があります。問う必要はなく、大いに吉です。真心があり、我に徳を恵みます。

爻辞の読み解き

誠の心で人を益せば、占うまでもなく大吉です。その徳はやがて自分へ返ります。九五は剛健中正で尊位におり、益卦の主です。ここでの益は恵みとしての益、しかも心から行う恵みです。心が真であれば恵みは広く、心に尽きることがなければ恵みも尽きません。

初爻の大作、二爻の享帝、三爻の救凶、四爻の遷国は、すべて民を恵む事でした。五爻に至ると、もう吉凶を問う必要はありません。誠心で恵政を行うこと自体が大吉だからです。上が誠をもって下を恵めば、下は徳としてこれに報います。上下が互いに孚し、下を益する者もまた益を得ます。

実際の読み方

経営では、義を利とし、誠実に交わり、利益を分かち合えば前途は広いでしょう。功名は実が至って名が帰る形です。戦いでは賞罰に公信があり、戦えば克ちます。

家宅は仁里徳門で、問うまでもなく吉です。婚姻は親しい縁や旧交から来ることが多く、大吉です。妊産は、古占では女児と見ます。

高島の占例

占例1

友人がある家の子を養嗣に迎えたいと考え、その前途を問うて、益が頤に変じる九五を得ました。高島は、益は父を損して子を益する象でもあり、父が誠心で恵みを子に授け、子も喜んでその子となり、将来は父の業を継いで家を興すので、問うまでもなく吉と断じました。

占例2

明治二十八年に日本と清国の交際を占った時もこの爻でした。講和後の両国は利を共有し、益を共に受け、東海の国を共に保つべきだという読みです。欧州列強には清を損して己を益しようとする者が多いけれども、日本と清は隣国であり、有孚恵心で接すれば欧西に軽んじられないと説きました。

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上爻

一言で読む

増やすことだけを求めると、助けは来ず反撃を招きます。

原文

上九:莫益之、或撃之、立心勿恒、凶。

書き下し文

上九、之を益すこと莫し、或いは之を撃つ、心を立つること恒なる勿し、凶なり。

現代語訳

これを益する者はいません。ある者がこれを撃ちます。心を立てることに恒常がありません。凶です。

爻辞の読み解き

なお利益を求め続けて心が定まらなければ、助けは来ず、かえって攻撃されます。益が極まってなお益を求めれば、行き過ぎます。益卦の本義は上を損して下を益することですが、上九は逆に、下からさらに上を益させようとします。心が偏って公を離れているので、誰ももう益してくれません。それどころか、外から撃つ者さえ現れます。

根本の病は「立心勿恒」です。初めは下を益すと言い、後には自分を益すことに変わる。初めは公のためと言い、後には私の貪りになる。初めは恵心があり、後には恒心がない。益が恒常と公心を失えば、そこから先は奪い合いです。

実際の読み方

時運は、よい運が退く頃です。貪りが過ぎて思わぬ禍を招かないよう防ぎます。戦いでは、増兵や兵糧の追加を待たず、今ある力で進撃する方がよいでしょう。経営では、ひたすら自利を求め、奪っても満足しなければ、必ず争いの端を開きます。

功名は、人の功を奪って名とするなら長くもちません。家宅は地位が高すぎて害があり、長居に向きません。婚姻は偕老しにくい恐れがあります。行人は途中の盗難や襲撃を防ぎます。

高島の占例

占例1

友人が気運を問うて、益が屯に変じる上九を得ました。高島は、卦名は益でも上爻は物極まって変じるので、益がないどころか損傷があるかもしれないと断じます。後にこの友人は人から五百円を借り、さらに別の友人に千円まで借りようとしました。その友人は近頃落ちぶれており、彼が大金を持つのを見て、途中で襲い、金を奪い、重傷を負わせました。まさに「或いは之を撃つ」です。

占例2

明治二十六年、雨宮敬次郎の依頼で銀貨相場の結末を占った折も、この爻でした。「之を益する莫し」を銀価がもう上がらないこと、「或いは之を撃つ」を値が必ず下がること、「恒なし」を相場が定まらないことと読み、後に銀価は下落して市場は困りました。

風雷益:読みの覚え

風雷益は、増える力を善い方へ流す卦です。上の余りが下を養えば、人は喜んで伸びていきます。

流れる先で値打ちが決まる

風と雷は互いを起こし、動いて入ります。益で決まるのは、量よりも流れる先です。資源を誰に渡すのか、助けをどこまで届けるのか、速さをどの区間に足すのか。 自分が多く取るだけなら、表向きは益でも実際は偏りです。根の所まで届けば、事の全体が生き返ります。

何が足りず、間に合っているか

いま足りないのは資源なのか、信頼なのか、速さなのか、それとも人手なのか。まずそこを分けます。そのうえで、増えた分が本当に必要な人と場所へ届いたかを見ます。二つが噛み合わなければ、いくら足しても手応えは出ません。 益には行動の色もあります。補うべきなら補い、詫びるべきなら詫び、渡るべきなら渡る。機会は速く来るので、動きも遅らせられません。長く引けば時宜の利を失い、功を急げば今度は薄い利に化けます。

加える力か、伸びる力か

山沢損と益は表裏です。当を得ない所を減らせるからこそ、本当に益すべき所へ届きます。地風升はまた別の道で、益は外から力を加える働き、升は自分の根から少しずつ伸びる働きになります。手元の一件がどちらなのかを、先に見分けておく値打ちがあります。

風雷益:読みの覚え札記を開く

風雷益は、増える力を善い方へ流す卦です。上の余りが下を養えば、人は喜んで伸びていきます。

流れる先で値打ちが決まる

風と雷は互いを起こし、動いて入ります。益で決まるのは、量よりも流れる先です。資源を誰に渡すのか、助けをどこまで届けるのか、速さをどの区間に足すのか。 自分が多く取るだけなら、表向きは益でも実際は偏りです。根の所まで届けば、事の全体が生き返ります。

何が足りず、間に合っているか

いま足りないのは資源なのか、信頼なのか、速さなのか、それとも人手なのか。まずそこを分けます。そのうえで、増えた分が本当に必要な人と場所へ届いたかを見ます。二つが噛み合わなければ、いくら足しても手応えは出ません。 益には行動の色もあります。補うべきなら補い、詫びるべきなら詫び、渡るべきなら渡る。機会は速く来るので、動きも遅らせられません。長く引けば時宜の利を失い、功を急げば今度は薄い利に化けます。

加える力か、伸びる力か

山沢損と益は表裏です。当を得ない所を減らせるからこそ、本当に益すべき所へ届きます。地風升はまた別の道で、益は外から力を加える働き、升は自分の根から少しずつ伸びる働きになります。手元の一件がどちらなのかを、先に見分けておく値打ちがあります。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

益の卦が出たら、得をするのは自分ですか。

必ずしもそうとは限りません。増える象は確かにありますが、眼目は自分の取り分より、その益がどこへ流れるかにあります。流れが正しければ、めぐって自分にも返ってきます。

この卦でいちばん危ないのはどこですか。

増益を貪りに変えてしまうところです。自分の分だけを増やし、流れる先を問わなければ、最後は根を損ないます。上九が凶と言うのは、その状態を指しています。

益の卦が出たら、得をするのは自分ですか。開く

必ずしもそうとは限りません。増える象は確かにありますが、眼目は自分の取り分より、その益がどこへ流れるかにあります。流れが正しければ、めぐって自分にも返ってきます。

この卦でいちばん危ないのはどこですか。開く

増益を貪りに変えてしまうところです。自分の分だけを増やし、流れる先を問わなければ、最後は根を損ないます。上九が凶と言うのは、その状態を指しています。