六十四卦

六十四卦 意味・読み方

雷沢帰妹|意味・卦辞爻辞解説(らいたくきまい)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

情が礼を追い越した結びつきは、進むほど後の始末が重くなります。

卦象と卦名

帰妹は上卦が震で雷、長男。下卦が兌で沢、少女です。兌は悦び、震は動きにあたります。合わせると、好きになる、引かれる、得たいと思う心から動き出す形になります。前の漸卦とはちょうど反対です。漸は礼と順序のある女帰を説き、帰妹は次第、名分、位置が正を失いやすい帰を説きます。

卦の中心的な意味

帰妹とは古礼で、妹が姉に随って嫁ぎ、従属的な立場で帰ぐことを言います。易の男女の象では、咸の少男少女、漸の長女少男など、多くは夫婦を指します。それが震男兌女に至って兄妹、姉妹の象を取るのは、ここが正配の主位ではないからです。従属、偏位、次第の不当を示すために、あえてこの象が選ばれています。

卦辞は「帰妹。征けば凶。利のあるところはありません」と言います。すべての婚姻が凶だとか、すべての感情が誤りだとかいう話ではありません。戒めているのは、父母、媒妁、名分、礼法、正当な手順がないまま、情の悦びに引かれて私に往来することです。現代なら、関係、権責、承諾、境界を明らかにしないまま、同居、投資、協業、任職へ急ぐような形にあたります。

向いている問い

帰妹を得たら、まず自分の立場を問います。正位か偏位か。責任者か補助者か。長期の約束か一時の関係か。公にしても正当か、それとも内々で曖昧か。

次位や補助、あるいは待つべき事なら、慎んで対処する道があります。しかし主位を奪い、手順を越え、感情だけで押し進めようとしているなら、いったん止まって名分を正す必要があります。

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卦辞

一言で読む

名分が定まらないうちに情で進めば凶で、長く利する所もありません。

原文

帰妹:征凶、無攸利。

書き下し文

帰妹は、征けば凶なり。利ろしき攸なし。

現代語訳

帰妹は、進めば凶です。利のある所はありません。

卦辞の読み解き

名分の定まらないまま進めば凶で、長く利する所もありません。卦辞はそこを一息に言い切ります。

征は往くこと、進むことです。ここでは礼によらず私奔することを指すので、凶になります。問題になるのは古い婚俗そのものより、前進の理由が正しくないことです。一時の情欲、利益、依存、媚びによって動き、正当な道筋を欠くなら、長い利益は望みにくくなります。

漸は「女帰吉」と言います。礼と時にかなうからです。咸は「娶女吉」と言います。男女が感応しても、なお正を守るからです。帰妹は初めから「征凶」と言います。少女が悦び、長男が動きます。感情の推進が先に来て、名分の整理が後へ回るからです。順序が逆になれば、たとえ一時はうまく見えても、後で弊が出ます。

高島の筆はこの卦を人事にも国家にも広げます。婦が夫に従うのは、臣が君に従うことにも似ています。もし人が媚びて悦びを取り、私情によって地位を得たり、正位を挟んで制したりすれば、表面は寵を得たようでも、実際には家を乱し政を乱します。今日の組織でも、個人的な関係で制度を越えることは、長期の危険を埋め込むことになります。

実際の読み方

感情、協業、入職、投資、共同事業、承諾を問うなら、帰妹は身分を先に正せと言います。曖昧さを承諾の代わりにしません。熱情を契約の代わりにしません。一時的に必要とされている感じを、本当の位置と取り違えません。

今が補助役なら、補助役の分を守ります。正位を求めるなら、必ず正しい道を通ります。

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彖曰

一言で読む

婚姻には大義があります。それでも位が当たらなければ、大義ごと凶へ傾きます。

原文

帰妹、天地之大義也。天地不交、而万物不興、帰妹人之終始也。説以動、所帰妹也。征凶、位不当也。無攸利、柔乘剛也。

書き下し文

帰妹は、天地の大義なり。天地交わらざれば、而して万物興らず。帰妹は人の終始なり。説びて以て動く、妹を帰がしむる所なり。征けば凶なるは、位当たらざればなり。利ろしき攸なきは、柔剛に乘ればなり。

現代語訳

帰妹は天地の大義です。天地が交わらなければ万物は興りません。帰妹は人の終わりと始まりに関わります。悦んで動くことが、妹を嫁がせる所以です。進めば凶なのは位が正しくないからです。利するところがないのは、柔が剛に乗っているからです。

彖伝の読み解き

帰妹は天地の大義である、と彖伝は言い切ります。婚姻は小事ではありません。家庭、後代、人倫の秩序に関わります。天地が交わって万物が生じるように、人の道にも大きな義があります。

しかし危険は後の句にあります。「悦んで動く。これが娘を嫁がせる所以である。進めば凶なのは、位が正しくないからである。利するところがないのは、柔が剛に乗っているからである」。兌は悦び、震は動きです。好きになったから動き出すのに、位置のほうは正しくありません。弱い側、偏った側が、正位や主位を押さえてしまいます。関係がこの形で始まれば、後に問題が出ないほうが難しくなります。

婦徳が一たび乖けば家道が欠け、臣道が一たび乖けば国政が乱れます。現代語にすれば、親密な関係、組織の関係、資源の関係が、媚び、依存、越位、奪位から始まれば、後には支配、不均衡、怨み、名分の争いが生じるということです。

実際の読み方

目的が大義に見えても、そのやり方が正当かどうかは別に見ます。婚姻に大義があるからといって、私奔が吉になるわけではありません。協業に機会があるからといって、内々の取り分が安定するわけでもありません。

帰妹は、目的と経路を同時に見よと言います。目的がよくても、経路が正を失えば凶になります。

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象曰

一言で読む

始めに悦びで動く時ほど、終わりの形と後の弊まで先に見ておきます。

原文

沢上有雷、帰妹、君子以永終知敝。

書き下し文

沢上に雷有るは帰妹なり。君子以て終わりを永くし敝れを知る。

現代語訳

沢の上に雷があるのが帰妹です。君子はこれを見て終わりを長くし、弊れを知ります。

象伝の読み解き

動き出す前に、長い結末と後の弊害まで見ておく。象伝が求めているのはそこです。

雷が沢の上にあれば、雷が動くたびに沢水が揺れます。人の内心も、好き、誘惑、欲望に動かされると、静かでいられなくなります。帰妹で最も危ういのは、始めが慎重でないために、後で収めようとしても収まらなくなることです。

「永終知敝」が鍵になります。君子は、目の前で結べるか、取引できるか、寵を得られるかだけを見て終わりません。長い終局にどんな弊が出るかまで見ます。もし最初から妾が嫡を奪い、賤が貴を妨げ、偏が正を圧し、名分が厳でないなら、後に必ず乱れます。

今日の言葉で言えば、どんな関係にも長期の結果評価が要ります。目の前の甘さ、利益、昇進、依りどころは、たしかに存在するかもしれません。しかしそれが非公開、不正当、不対等、不安定な位置に立っているなら、弊は後ろで待っています。

実際の読み方

決める前に四つを問います。この名分は公開できるか。責任は明らかに書けるか。終わる時にどう収めるか。すでにある正当な関係を傷つけないか。

この四つに答えられないなら、目の前の悦びと動きに連れて行かれないほうがよい時です。

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占断

一言で読む

承諾を急がず、身分と実資源と終局を調べ、偏位なら分を守ります。

総合的な占意

帰妹にまったく使い道がないわけではありません。初、二、四、五にはそれぞれ処し方があります。低位なら低位を守ります。片目の視なら幽貞を守ります。時を過ぎたなら待ちます。尊貴なら謙抑します。帰妹が本当に反対しているのは、自分の位置を認めないまま、急いで正位を奪いにいく振る舞いです。

項目別の占断

  • 時運と功名:一時は動いても長くは保ちにくい時です。正しい道によらず進めば、後に悔いが生じます。
  • 経営と戦い:相場や勢いは短期に上がっても、長期の見込みとは限りません。一勝の後ほど資源の疲弊を防ぎます。
  • 婚姻と関係:名分、立場、長期の責任を先に確かめ、一時の情欲や中身のない約束だけで結びません。
  • 家宅と訴訟:帰るべき者が本来の位置へ戻ることが大切です。地盤や家族の役割が動く時は早く整理します。訴訟には終結の象があります。
  • 病と判断:古占では不利と見ますが、現実には速やかに受診します。重大な約束では実際の条件を確認します。

六爻の要点

  • 初九:補佐の位置でも、主位を争わず分を守って従えば吉に進めます。
  • 九二:偏った位置では表の主位を争わず、静かに正を守って状況を見通します。
  • 六三:名分が正しくない時は正位を奪わず、自分に合う位置へ退きます。
  • 九四:眼前の期限を過ぎても、名分と時機が熟すまで待てば帰する時があります。
  • 六五:尊い結びつきを吉にするのは華美よりも、中正、謙抑、適切な立場です。
  • 上六:形だけの礼と名分で実質や約束がなければ、成し遂げられるものはありません。

実際の読み方

関係を問うなら、まず名分を定めます。協業なら権責を定めます。職位なら、正当な任命かどうかを確かめます。投資なら、資本と貨物が実在するかを見ます。

帰妹が最も嫌うのは、空の承諾、空の形、空の名分です。誰かに好かれた、誘われた、約束されたという目先の感じだけで、長期の代価を忘れないようにします。

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初爻

一言で読む

娣の位でも、主位を争わずに歩けば、進んで吉になります。

原文

初九:帰妹以娣、跛能履、征吉。

書き下し文

初九、妹を帰がしむるに娣を以てす、跛にして能く履む、征けば吉なり。

現代語訳

娣の身分で嫁ぎます。足が不自由でも歩けます。進めば吉です。

爻辞の読み解き

娣は随嫁の妹で、古礼では従属の位置にあります。初爻は最下にいるので、娣の象を取ります。中心の役ではありませんし、嫡位を越えることもできません。跛者が速く歩けないように、自分の脚力には限りがあります。しかしその限りを知り、分に従って一歩ずつ行けば、それでも歩いていけます。

全卦としては悦びによって動くので征凶です。しかし初九一爻だけを見れば、陽剛が陽位にいて下位に安んじ、先を争わず、分を越えないので、往ってかえって吉になります。この爻の吉は高貴さから出るのではありません。恒を守り、順に従い、位を過ぎないところから出ます。

実際の読み方

時運は地位が低く、人の力を借りて成す時です。経営は完全な自主ではないので、命を受けて処理すれば利を得ます。功名は副職や偏位の象です。

戦いでは主帥の座につけませんが、偏師として勝つことがあります。家宅は偏屋、廊下、脇の部屋の象です。病は足の病や歩行の不便があり得ますが、命に大きな障りは少ないと読みます。

高島の占例

占例1

高島が藤野正啓先生に会い、その気運を占って帰妹が解に変じる初九を得たことがあります。その席で別の例が引かれました。ある人が久しく欧米を遊歴し、帰国後に商店へ雇われて主管となったが、勤勉誠実であっても、あまりに自分が主人のように振る舞ったため解雇された、という話です。初爻の道は従属して行くことにあり、自ら主張し過ぎてはいけません。また帰魂の象から藤野先生の六年後の命限をも告げ、後にそのとおりになりました。

占例2

ある官が気運を占ったときも、同じ爻でした。人に依って事を成し、人に従って歩めば吉、という断です。

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二爻

一言で読む

片目でも見えるものはあります。表に立たず、幽人の貞を守ります。

原文

九二:眇能視、利幽人之貞。

書き下し文

九二、眇にして能く視る、幽人の貞に利あり。

現代語訳

片目でも見ることができます。幽人の正しさに利があります。

爻辞の読み解き

眇は一つの目が小さい、または偏っていることを言います。見えるには見えますが、正面から完全に見えるわけではありません。二爻は陽剛で中を得ていますが、帰妹の中では賢能であっても偏位にいます。下互離は目、上互坎は疾なので、眇目の象があります。

娣妾が偏位にいて、正面から争寵はできず、側目で寵を得るようなものです。しかし寵を得たとしても、それを恃んではいけません。だから幽人のように貞静を守る必要があります。幽人とは、役に立たない人という意味ではありません。表に立たない静かな位置にいても、自分の道を変えない人のことです。

実際の読み方

時運は道が正しくないか、位置が偏っています。静かに正を守るのがよいでしょう。経営では暗に商況を見て、独自の見識を得られます。功名は高尚にして仕えず、あるいは裏方に退くのがよい時です。

戦いでは細かな兆しを察し、敵を読むのに利があります。家宅は幽居が向きます。婚姻は無理に正位を作れば反目しやすくなります。訴訟では幽閉や拘束を防ぎます。

高島の占例

占例1

芸人の伊藤潮花が生命を占って、帰妹が震に変じる九二を得ました。高島は帰魂と上爻の象から五年後の命終を断じています。潮花はその後、家政を整え、産業を計画し、五年後に病没しました。

占例2

明治三十一年に台湾総督府の政略を占ったときも、同じ爻でした。台湾は新たに版図に入ったばかりで、風俗をすぐに革め尽くすべきではない。政府は別眼をもって見、静かに鎮めるのが幽人の貞に合うと断じています。

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三爻

一言で読む

名分が苦しいなら、退いて受け止められる位置へ戻り、時を待ちます。

原文

六三:帰妹以須、反帰以娣。

書き下し文

六三、妹を帰がしむるに須を以てし、反りて帰がしむるに娣を以てす。

現代語訳

「須」の身分で嫁ぎ、引き返して娣の身分で嫁ぎます。

爻辞の読み解き

須には二つの読みがあります。一つは賤妾や低い位の女性、もう一つは時を待つことです。三爻は兌の悦びの極にあるので、悦びによって進もうとしがちです。しかも柔が剛に乗り、位置が正しくありません。だから初めは、より低く、より苦しい名分に落ちます。

「反り帰ぐに娣を以てす」が転機になります。正位を奪えという話ではありません。自分が受け止められ、礼に合う位置へ戻るのです。須を待つと読めば、時がまだ来ないのでまず待ち、時が来てから娣の位で行くことになります。どちらにしても、この爻が教えるのは、悦びに任せて強引に進む道ではありません。忍耐し、位を退き、時を待つ道です。

実際の読み方

時運は苦しい立場にあり、人に押さえられますが、忍耐すれば後に伸びます。経営は価格が低く、しばらく利を得にくいものの、後に上がることがあります。功名は得るものが卑くなります。

婚姻は正式な婚姻でない、あるいは名分がまだ正しくない象です。家宅は偏小の屋になります。病は時を待って癒えることがあります。行人はしばらく待ってから帰ります。訴訟も時を待って終えるのがよいでしょう。

高島の占例

ある県人が親友の書を携えて官を謀ることを問うて、帰妹が大壮に変じる六三を得ました。高島は、この人には才智があるものの、ある顕官に押さえられ、微末な官階しか授けられない。これが帰妹以須だと断じました。しかし妄りに進みを求めず、ひとまず順に受ければ、後にはなお昇進の機があります。それが反帰以娣の待つ道です。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

期を過ぎても、遅れて帰る時があります。焦って承諾を急ぎません。

原文

九四:帰妹愆期、遅帰有時。

書き下し文

九四、妹を帰がしむるに期を愆る、遅く帰ぐに時有り。

現代語訳

嫁ぐ時期を過ぎます。遅れて嫁いでも、ふさわしい時があります。

爻辞の読み解き

愆期は予定の期限を過ぎることです。遅帰は少し遅れて帰ぐことを言います。九四は震動の主で、心は急いで動こうとします。しかし帰妹の事は順序を重んじます。妹は姉を越えて先に行けません。だから年を待ち、時を待ち、条件が熟すのを待つほうがよいのです。

三爻は悦を主とし、貴きを求めて賤しきを得ました。四爻は動を主とし、速きを求めてかえって遅れます。どちらも「悦びて以て動く」危険を戒めたものです。九四の救いは、動きたい心があっても、爻辞がそれを押しとどめている点にあります。帰れないわけではなく、遅れて帰るのです。望みがないのでもなく、時があるのです。

実際の読み方

時運には、行くべき時があります。焦って進んでも益はありません。戦いは時を審らかにし、軽く進んで兵を損じないようにします。経営では値を待って売れば、遅い販売がかえって利になります。

功名は性急に進めば敗れます。婚姻は年や条件が熟すのを待ちます。家宅は宅運がまだ来ておらず、移居には向きません。行人はしばらく帰りません。失せ物は久しくして得ることがあります。

高島の占例

ある商人が売買の機会を問うて、帰妹が臨に変じる九四を得ました。高島は、女子が時を待って嫁ぐのは、貨物が値を待って売れることに似ると読みました。この人には以前から売れない貨物があり、後に仕入れた貨物もまた長く待つことになります。しかし遅れて売ることを憂える必要はなく、値の合う時を待てば利益を得ると断じました。

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五爻

一言で読む

尊い人ほど袖を飾りません。満ちきらない月のような謙抑が吉を呼びます。

原文

六五:帝乙帰妹、其君之袂、不如其娣之袂良、月幾望、吉。

書き下し文

六五、帝乙妹を帰がしむ、其の君の袂は、其の娣の袂の良きに如かず、月望に幾し、吉なり。

現代語訳

帝乙が妹を嫁がせます。その君の袖は、その娣の袖の良さに及びません。月が望に近いです。吉です。

爻辞の読み解き

帝乙は商王、君は正妻、袂は袖を指します。天子の妹が諸侯へ下嫁するなら、身分はもともと尊いはずです。それなのに正妻の袖は、随う娣の袖ほど華美ではありません。本当の貴さが飾りや媚びから来るのではなく、徳、位置、中正から来ることを示しています。

「月望に幾し」は、月が満ちようとしてまだ満ち切らないことです。婦徳は月のように、円満に近くても過満にならないほうがよい。尊いのに自ら抑えるから吉になります。ここで引かれるのは、湯が妹を嫁がせる時の言葉です。女子が夫に従うには礼義をもってし、貴さを恃んで妄動せず、衣飾の美で人に媚びてはならない、と説かれました。五は震の中、二は兌の中で、中と中が応じるので、位置が相当し、貴きをもって行っても吉です。

実際の読み方

時運は、何事も謙抑し、自慢せず、満ち切らず、中を得れば吉です。戦いでは尊を下に置くことで軍心を得ます。月夜の進軍で敵の不意を突く象もあります。経営では後から来た貨物が前の貨物に勝り、望日前後に高値で売れることがあります。

功名は兄弟が同じく求めて、後の者がかえって勝つことがあります。婚姻は二女同帰の象もありますが、重んじるべきは飾りより徳です。家宅は中央に位して喜びがあります。行人は望日前に帰ることがあります。

高島の占例

ある友人が、ある人の赴任の吉凶を問うて、帰妹が兌に変じる六五を得ました。高島は、この人の身分は必ず貴く、今回の赴任は帝女の下嫁に似て、小さくその職を受ける形だと読みました。その才調は前任に勝りますが、媚びず、自恃せず、光明公平な政で民に臨むべきで、月が望に近い象によって吉と断じています。

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上爻

一言で読む

筐に実はなく、羊に血も出ません。形だけ整えて、何が残るでしょうか。

原文

上六:女承筐無実、士刲羊無血、無攸利。

書き下し文

上六、女筐を承くるに実なし、士羊を刲くに血なし、利ろしき攸なし。

現代語訳

女は筐を受けても実がありません。士は羊を割いても血がありません。利のある所はありません。

爻辞の読み解き

筐を捧げ、羊を割くのは祭礼の動作です。女子が筐を持っても中に祭品がなく、士が羊を割いても血が出ない。外形は礼を行っているようでいて、内実が空になっています。

この爻は婚礼と宗廟から説明されます。女子は入門して三か月後に廟見を行い、そこではじめて婦となりました。祭礼では主婦が筐を奉じ、司馬が羊を割き、それぞれに位があります。もし不当な人を祭礼に入れたり、名分が正しくないのに無理に礼を作ったりすれば、人倫を乱すだけです。筐に実なしは財物が空であることを指し、羊に血なしは生命と流通が絶えていることを指します。空の名分、空の資本、空の儀式に、利があろうはずもありません。

実際の読み方

時運は、万事を強行してはいけません。戦いでは糧草が備わらず、兵器も修まらないので、出れば敗れます。経営は資本が空で貨物が欠け、利を得にくいところです。功名は空手で名を求める形になり、なかなか得られません。

婚姻は名分が正しくなく、家道を損ないます。家宅は家の規範が正しくないので、正偏の争いを防ぎます。病は古い占い方では虚労や失血の重い象としますが、現実には速やかに医療機関を受診します。失せ物は多くの場合、戻りません。

高島の占例

ある友人が人と共同事業を興したいと考え、喜ばしい事で利益も多いように見えると言って、高島に占を請いました。出たのは帰妹が睽に変じる上六です。兌悦震動で喜びによって動く象そのものであり、上爻の筐無実、羊無血は財力がともに空であることだと断じられました。共同事業の相手の一方には実がなく、もう一方には血がない。資本も流通もないのだから、事業は成らないという読みです。

雷沢帰妹:読みの覚え

雷沢帰妹は、情が礼より先に動く危うさを読む卦です。名分と順序が整わない関係では、進むほど後患が増えます。

悦びで動く、その順序

兌の悦びが下にあり、震の動きが上にあります。好きになったから動く、という順序です。彖伝はここを見て、位が当たらないから征けば凶、柔が剛に乗るから利する所がない、と言います。 婚姻そのものは天地の大義です。帰妹は結びつきを否定しません。否定しているのは、大義を掲げながら経路が正を失っている形です。目的がよくても、経路が正しくなければ凶になります。

自分がどの位置にいるか

初九は娣、九二は眇、六三は須、九四は愆期。どれも主位でない立場から出発します。それでも初九は分を守って歩けば吉、九二は幽人の貞に利あり、九四は遅れても時がある、と言われます。帰妹が本当に戒めているのは、自分の位置を認めないまま正位を奪いに行くことです。 恋愛、再婚、提携、職位の移動。まず確かめるのは肩書きと実質です。補助の役なら補助の分を守り、正位が欲しいなら正当な道を通します。

決める前に置いておく問い

- この関係や契約に、正しい名分がありますか。 - 情や勢いが、順序を追い越していませんか。 - 自分が主位でない場で、何を守りますか。 - この名分は公開できますか。終わる時、どう収めますか。

待てる遅れと、空の名分

九四の愆期は、遅れそのものを凶とはしません。帰れないわけではなく、時が来るのを待つだけです。焦って条件を下げ、承諾を急ぐほうが、後の位置を崩します。 危ういのは遅れよりも空です。上六の女は筐を受けても中身がなく、士は羊を割いても血が出ません。礼の形だけが動いて、財も生命も通っていない。約束、資本、責任のどれかが空のまま形だけ整えても、そこから出てくるものはありません。

順序に沿う結び、位置の危うい結び

風山漸とあわせると、漸は順序と礼を踏んで関係を成し、帰妹は順序や位置が正しくないまま進む卦なので、礼に沿った成就と位置の乱れを対照できます。沢山咸とあわせれば、咸は双方の感応、帰妹はその感情を置く名分を問い、心が動いた後に位置が安定しているかを見られます。

雷沢帰妹:読みの覚え札記を開く

雷沢帰妹は、情が礼より先に動く危うさを読む卦です。名分と順序が整わない関係では、進むほど後患が増えます。

悦びで動く、その順序

兌の悦びが下にあり、震の動きが上にあります。好きになったから動く、という順序です。彖伝はここを見て、位が当たらないから征けば凶、柔が剛に乗るから利する所がない、と言います。 婚姻そのものは天地の大義です。帰妹は結びつきを否定しません。否定しているのは、大義を掲げながら経路が正を失っている形です。目的がよくても、経路が正しくなければ凶になります。

自分がどの位置にいるか

初九は娣、九二は眇、六三は須、九四は愆期。どれも主位でない立場から出発します。それでも初九は分を守って歩けば吉、九二は幽人の貞に利あり、九四は遅れても時がある、と言われます。帰妹が本当に戒めているのは、自分の位置を認めないまま正位を奪いに行くことです。 恋愛、再婚、提携、職位の移動。まず確かめるのは肩書きと実質です。補助の役なら補助の分を守り、正位が欲しいなら正当な道を通します。

決める前に置いておく問い

- この関係や契約に、正しい名分がありますか。 - 情や勢いが、順序を追い越していませんか。 - 自分が主位でない場で、何を守りますか。 - この名分は公開できますか。終わる時、どう収めますか。

待てる遅れと、空の名分

九四の愆期は、遅れそのものを凶とはしません。帰れないわけではなく、時が来るのを待つだけです。焦って条件を下げ、承諾を急ぐほうが、後の位置を崩します。 危ういのは遅れよりも空です。上六の女は筐を受けても中身がなく、士は羊を割いても血が出ません。礼の形だけが動いて、財も生命も通っていない。約束、資本、責任のどれかが空のまま形だけ整えても、そこから出てくるものはありません。

順序に沿う結び、位置の危うい結び

風山漸とあわせると、漸は順序と礼を踏んで関係を成し、帰妹は順序や位置が正しくないまま進む卦なので、礼に沿った成就と位置の乱れを対照できます。沢山咸とあわせれば、咸は双方の感応、帰妹はその感情を置く名分を問い、心が動いた後に位置が安定しているかを見られます。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

相手の気持ちは本物だと思います。それでも危ういのですか。

帰妹が見ているのは気持ちの真偽より、その気持ちを置く場所です。名前のつけられない関係や、役割の曖昧な契約は、気持ちが本物であるほど後で痛みます。

話が予定より遅れています。縁がなかったということですか。

九四は、期を過ぎても遅れて帰る時があると言います。遅れ自体は凶の印になりません。焦って条件を下げ、承諾を急ぐほうが、後の位置を崩します。

うまい話に乗ってよいか、どこで見分けますか。

上六の、筐に実なし、羊に血なしが目安です。資本、貨物、責任者、支払い条件のどれかが空のまま形だけ整っているなら、そこから利は出ません。

相手の気持ちは本物だと思います。それでも危ういのですか。開く

帰妹が見ているのは気持ちの真偽より、その気持ちを置く場所です。名前のつけられない関係や、役割の曖昧な契約は、気持ちが本物であるほど後で痛みます。

話が予定より遅れています。縁がなかったということですか。開く

九四は、期を過ぎても遅れて帰る時があると言います。遅れ自体は凶の印になりません。焦って条件を下げ、承諾を急ぐほうが、後の位置を崩します。

うまい話に乗ってよいか、どこで見分けますか。開く

上六の、筐に実なし、羊に血なしが目安です。資本、貨物、責任者、支払い条件のどれかが空のまま形だけ整っているなら、そこから利は出ません。