六十四卦

六十四卦 意味・読み方

雷天大壮|意味・卦辞爻辞解説(らいてんたいそう)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

力が盛んな卦です。強い時ほど正と礼を守らないと、牡羊が垣に角をかける形になります。

卦象と卦名

大壮は下が乾天、上が震雷です。乾の剛が内にあり、震の動きが外にあります。剛健にして動き、その動きがまた剛に乗るので、陽気は盛んに長じ、勢いも大きくなります。だから大壮と言います。遯は陽が退く卦でした。大壮は陽が進む卦です。物は退き続けるばかりではいられず、退いた後にはまた進みがありますから、大壮が遯の後に置かれます。

卦の中心的な意味

四陽が下にあり、二陰が上にあります。陽気は四爻まで伸び、堅実で盛んです。力がここまで来ると、人はまだ進めると思いがちです。しかし大壮を、易が最も称える状態と見るのは早計です。六爻には警戒の辞が多いからです。初爻は足だけで急ぎ、三爻は垣に角をかけ、上爻は進むも退くも行き詰まります。力が大きくても正しさを欠けば、強いほど危うくなります。

卦辞は「大壮、貞に利あり」の一語です。元亨を言わず、まず正しさを言います。大壮に足りているのは勢いと資源と行動力です。足りないのは節制であり、礼であり、節度です。

向いている問い

大壮を得たら、自分が強すぎないか、急ぎすぎていないか、勢いを信じすぎていないかを見ます。力のある時に礼と規則と中道を守れるかどうかが、そのまま分かれ目になります。

事業では拡張力、競争では優位、関係では強い願望として現れます。ただし力ずくの衝突、やり過ぎ、勇み足、強がりは防がなければなりません。

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卦辞

一言で読む

大切なのは大きさより正しさです。勢いのある力を、正道の上に置きます。

原文

大壮:利貞。

書き下し文

大壮は、貞に利あり。

現代語訳

大壮は、正しく守ることが利です。

卦辞の読み解き

力が盛んな時ほど、勝てるかどうかより先に、正しいかどうかを問います。三陽なら泰ですが、陽が四まで長じて壮になります。壮に大を加えれば、すでに盛り過ぎの気が生じています。過剛は折れ、過勇は転び、過強は礼を犯します。

乾は元亨利貞を言い、震は亨を言うのに、大壮は元亨を言わず利貞だけを言います。目を留めるべきはここです。強ければ進めという卦ではなく、正を失って動くことを恐れる卦だからです。動いて正を失えば過失が出ますし、強くても正を守らなければ、事そのものを壊します。

国家にも当てはまります。国運が強く、資源が足り、人材が奮い立つのはよい時です。しかし盛りが極まれば奢りに、壮んが極まれば暴に傾きます。奢りも暴もひとしく正を失わせます。王者は満ちたものを保ち、泰を守ることを貴びます。本当の大きさは気焔の大きさではありません。正しくて大きいことを言います。

実際の読み方

事業では、資源があるからと独占に傾かず、機会があるからと無理押しに傾きません。権力では、位が高いほど礼を守ります。感情では、熱さが境界を越えないようにします。身体では、気血が盛んでも上衝を防ぎます。

大壮の第一原則は単純です。力は正道の管理下に置きます。

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彖曰

一言で読む

力が大きいほど、正しさで御してこそ天地にかなう大きさになります。

原文

大壮、大者壮也。剛以動、故壮。大壮利貞、大者正也。正大而天地之情可見矣!

書き下し文

大壮は、大なる者の壮んなるなり。剛以て動く、故に壮んなり。大壮は貞に利ありとは、大なる者の正しきなり。正大にして天地の情見るべし。

現代語訳

大壮とは、大きいものが盛んであることです。剛健で動くので盛んです。大壮で正しさが利なのは、大きいものは正しくあるべきだからです。正しく大きければ、天地の情理を見ることができます。

彖伝の読み解き

力が盛んでも、正しさを失えばその力は用をなしません。

天地は最も大きいものです。天地の運行が正を得れば、四時がめぐり、万物が生じます。天地が動いて序を失えば、災害になります。人の力も同じです。強盛な力が義と道にかなえば、天地の間に充ちる大用になります。義と道を離れれば、ただの暴力であり災気です。

人事では、大壮は本性が剛健で、動こうとする気が強く、勇往直前に出る象です。有為であること自体は善いのですが、過剛は折れます。雑卦伝の「大壮は則ち止む」は、壮に至るほど止まる力が要ると教えます。柔で剛を補い、静で動を定め、動いても動じないように構え、剛健でありながら剛を露わにしない。そこではじめて壮にして正となります。

維新前後の士にも、高島はこの卦を重ねます。議論が激しく忌諱を知らない人は、初九の壮趾の凶に当たります。著書して義を立て、中を得て正を守る人は九二の吉です。焦って進み力を用いすぎる人は羝羊触藩、礼を慎み謙を守る人は藩が開いて車の行く形になります。退くことで進む人は喪羊無悔であり、艱危を尽くしてのちに盛りを得た人は、上六の艱則吉に似ます。強盛の成敗は、力の用い方ひとつで分かれます。

実際の読み方

大壮を見る時は、力を三つに分けます。使える力、収めるべき力、そして自分に返ってくる力です。正を守り、中を得て、礼を知る力は助けになります。壮だけを用いて法度を用いなければ、その力はやがて自分を詰まらせます。

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象曰

一言で読む

最も盛んな時に、礼を外した一歩を踏まない。それが本当の強さです。

原文

雷在天上、大壮、君子以非礼弗履。

書き下し文

雷天上に在るは大壮なり。君子以て礼に非ざれば履まず。

現代語訳

雷が天の上にあるのが大壮です。君子はこれを見て、礼に合わないことは踏み行いません。

象伝の読み解き

大きな勢いがある時ほど、礼を外した一歩を踏みません。雷が天上で発する時、その気勢は最大になります。これが大壮の象です。しかし君子は、雷のように人を震え上がらせる術を学びません。礼に合わない所は踏まず、礼に合わない事はしないと自ら戒めます。

雷を含む諸卦を並べると、こうなります。随は秋雷のように陽勢が収まり、復は冬雷のように陽が微かに戻り、豫は春雷が地を出て奮う形です。大壮は雷が天上にあり、時を得た夏雷のように陽勢が健盛です。雷も時を外せば災いになり、人も礼を外せば悔いになります。

乾は行、震は足なので、履む、踏み行うという象があります。大壮は、すべての道を踏み平らげよと言う卦ではありません。踏める力がある時でも、みだりに踏まないことを教えます。孔子の非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、非礼勿動は、そのまま日用の作法になります。

実際の読み方

権力を問うなら、まず境界です。競争では、優位だからといって規則を破りません。家庭では、声の大きさと理の正しさは別物です。組織では、実行力が強いほど制度のブレーキが要ります。

大壮の成熟は、礼の前で力を止められるかどうかに表れます。

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占断

一言で読む

勢いも資源も速さもある時期です。正を守って障りは払えますが、力任せは危険です。

総合的な占意

実際の場面では、拡張、競争、訴訟、交渉、投機、軍政、創業、身体の陽亢などに現れます。大壮の強みは速度と勢いです。そして危険もまた、同じ速度と勢いから生まれます。

項目別の占断

  • 戦い:軍勢は強く動きも速いものの、兵は驕れば敗れるため深く戒めます。
  • 経営と功名:相場が高くなればよい所で売り、貪りません。勢いが遠くまで伝わり、名を成す望みがあります。
  • 家宅と病:家では火災を防ぎます。病は足の不調、肝陽の上亢、気血の過剰に注意します。
  • 婚姻:長男と長女が相配する自然な結びつきの象で、吉です。
  • 失せ物と妊産:失せ物は再び手に入りにくいものです。妊産は古い断で男児に当たります。
  • 現代での応用:拡張、競争、交渉、起業では速度と勢いを生かせますが、同じ力が暴進へ変わるのを防ぎます。

六爻の要点

  • 初九:力が生じたばかりで突進すれば、性急さによって傷つきます。
  • 九二:強い時こそ中道と節度を守り、正しさを持続すれば吉です。
  • 九三:腕力だけで押し通せば、羊の角が垣根に掛かるように行き詰まります。
  • 九四:正しさを守って着実に進めば、障害は開き、力を発揮できます。
  • 六五:争って勝とうとする執着を手放せば、悔いはありません。
  • 上六:極端に達して進退とも難しい時は、困難を認めて絡みを順に解きます。

実際の読み方

事業では、拡張できる時ほど先に規則と販路と受け止める力を審らかにします。投資では、よい所で収めます。関係では、強い願望で相手を圧しません。健康では、火を降ろし、気を穏やかにし、足と肝を守ります。訴訟は、争わずに済むなら争いません。

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初爻

一言で読む

足先だけが先走っています。志は真でも、時機が早すぎて凶になります。

原文

初九:壮于趾、征凶、有孚。

書き下し文

初九、趾に壮んなり、征けば凶なり、孚有り。

現代語訳

足指に力が盛んです。進めば凶です。誠があっても行き詰まります。

爻辞の読み解き

力が足先から先走り、時機を見ずに進めば凶です。初爻は全卦の最下にあり、足指に当たります。大壮の始めで、力はまず足に躁ぎ、すぐ出征し、すぐ行動しようとします。震は征、乾は行です。道を見ず、吉凶を量らず、一筋の勢いだけで追えば征凶になります。

有孚は、凶を吉に変える言葉ではありません。象伝は「其の孚窮まるなり」と言います。約束も信も応じる相手もあるのに、初爻の往く先はすでに窮まっています。九四は遠く、援けになりません。事が失敗するのは、信心や契約や熱情を欠くからとは限りません。時機が早すぎ、道筋も定まらないまま動くから苦境に入ります。

実際の読み方

戦いでは孤軍深入を戒めます。勇があっても謀がなければ凶です。売買では、貨物に流行の勢いがあっても、販路を見ずに運べば利を得にくいものです。功名は初爻が下にあるので低く小さくなります。家宅は安んじて止まるのがよく、移動には向きません。婚姻は聘約があっても縁が窮まる恐れがあり、足の疾患にも注意します。失せ物は踏まれて壊れたおそれがあります。妊産は、古い占断では男児と見ます。

高島の占例

事業の成否を問うた友人が、大壮が恒に変じる初九を得ました。初爻は事を起こす始めを謀る位で、機会が来ないうちに足だけが動く形だと高島は読みます。来占者は速成を望みますが、計画はまだ詳らかでなく、経験も定まっていません。急に進めば利がないどころか凶です。友人は聞かずに事業を急ぎ、失策して家を傾けました。後に別の人が三分の一の資金でその業を継ぎ、大きな利を得ています。

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二爻

一言で読む

強い中で中道を保てるなら吉です。過剛へ傾かずにすむからです。

原文

九二:貞吉。

書き下し文

九二、貞にして吉なり。

現代語訳

正しく守れば吉です。

爻辞の読み解き

力が盛んな時でも、中道を守れば吉です。大壮は多く過剛を戒めますが、九二だけは中を得ています。中とは、どちらにも偏らない構えを指します。怯えず、躁がず、強いまま行き過ぎません。九二は六五に応じ、抵触の失もありません。進退がほどよいので、爻辞は壮に触れず、余計な説明も置かず、ただ貞吉と言います。

易は陽を扶け陰を抑える面がありますが、陽剛も過ぎれば中を失います。だから過剛を抑え、中道へ返す必要があります。九二は剛でありながら柔を知り、下卦の中に居て、大壮のうちで最も穏やかな爻です。大壮の利貞は、九二において中をもって形になります。

実際の読み方

戦いでは中営が力を得て勝てます。経営では価格も時機も中を得れば利があります。功名はちょうど選ばれる象です。婚姻は雀屏に当たるような吉となります。家宅は西に坐し東に向き、地位が中正で大吉です。病は中焦にあり、潜陽滋陰がよいでしょう。訴訟は中人の調解で止まります。妊産は、旧来の断が男児を示します。行人は中途にあって、まもなく帰ります。

高島の占例

ある会社の社長が社運を問うと、大壮が豊に変じる九二が出ました。四陽が下、二陰が上で陽が大きく陰が小さく、資金は豊かで事をなすに足ると高島は読みます。ただし得たのは二爻ですから、柔で剛を補い、静で動を制し、急な効を求めず、謙和に礼を保ち、進退を中に置くべきです。そうすれば利益は徐々に上がり、二年後に九四の大壮の主へ至って大利を得ると断じました。後にその通りになっています。

次へ:三爻

三爻

一言で読む

強さをむき出しに使えばどうなるか。羊の角が垣にからみ、進退が詰まります。

原文

九三:小人用壮、君子用罔、貞厲。羝羊触藩、羸其角。

書き下し文

九三、小人は壮を用い、君子は罔を用う、貞なるも厲し。羝羊藩に触れ、其の角を羸しむ。

現代語訳

小人は強さをそのまま用い、君子は力をないもののように収め、法度で自分を制します。正しくしても危ういです。牡羊が垣に突っかかり、その角をからめます。

爻辞の読み解き

強さをむき出しに使えば、進退が詰まります。羝羊は牡羊で、剛猛でよく突きます。三から五の互卦は兌で羊の象があり、乾剛が出ようとし、震動が成ろうとする所なので、壮の勢いが強くなります。そこで牡羊が垣に触れる象を取ります。

小人用壮は、正を守らない人が力を恃んで動く姿を指します。自分に力があるという一点しか見ていません。君子用罔には二つの意味があります。一つは、力があっても用いず、有るようで無いように収める読みです。もう一つは、罔を法網と取り、君子が壮の危うさを知って、刑法や規則や礼度で自分を戒めるという読みです。九三は陽で陽位にあり、重剛で中を得ていないので、自分では正しいつもりでも危うくなります。

羊が垣に触れれば、角がからまって、進むことも退くこともできません。逞しさの行き着く先です。力で局面を開こうとして、かえって局面に自分がはまり込みます。

実際の読み方

戦いでは、善く戦う者は機を審らかにして妄りに動きません。勇に恃んで孤軍深入すれば凶です。経営では、財を恃んで独占を図れば、貨物が損じ売り場も失い、大損します。功名は無謀な者が敗れ、謙退する者が成ります。家宅は地位が高ければ屋を低くするのがよく、高すぎれば震え陥る恐れがあります。病は血気が過剛なので、血を調え気を下げます。訴訟は忍んで止めるのがよく、強いて争えば終には凶です。婚姻は富を恃んで相手を凌げば夫婦が反目します。妊産は、古法では男児に当たります。

高島の占例

占例1

商業の盛衰を問うた友人は、大壮が帰妹に変じる九三を得ました。家業は父子が力を合わせ、財力も盛んで、思うままに進めば同業を圧倒できそうに見えます。しかし過剛は必ず折れ、同業に排斥され、羊が垣に角をかけて出られなくなると高島は読みました。友人はそれでも壮を用いて事を進め、同業に押されて数万金を失いました。

占例2

駐英公使の重病を占った折にも、同じ理が働いています。肝陽が過ぎて盛んで脾陰が克されているのに、医者は壮んな体を実火と見てひたすら肝を瀉し、元気をいっそう虚しくしました。これも用壮の誤りです。善医であれば陰を育てて陽を潜める、すなわち用罔でなければなりませんでした。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

正しく穏やかに進むので垣は開きます。車軸が強く、遠くまで行けます。

原文

九四:貞吉悔亡、藩決不羸、壮于大輿之輹。

書き下し文

九四、貞にして吉、悔亡ぶ、藩決けて羸しまず、大輿の輹に壮んなり。

現代語訳

正しく守れば吉で、悔いは消えます。垣は開いて角をからめません。大きな車の車軸が強い状態です。

爻辞の読み解き

正しく進めば障害は開き、安定して前へ行けます。九四は乾を出て震に入り、動きの始まりに当たります。陽で陰位に居るので、剛を極端まで押しません。正を守れば吉で、古い悔いは消えます。

九三の前には藩があり、その藩は九四に当たります。九四へ至ると前の二陰が開き、藩籬は破れて角をからめません。輹は車軸を結ぶ部材で、大輿は大車です。車軸が強ければ、車は遠くまで行っても妨げがありません。ここで言う壮は、羊の角で力任せに突く壮とは別のものです。車体が安定し、道が通じている壮を指します。

実際の読み方

戦いでは前方の城垣が破れ、車が走り馬が逐い、長征に妨げがありません。功名では文昌車馬の象があり、名声が顕れます。経営では満載して帰れます。家宅は車馬往来の地にあり、前の藩籬が破れているなら急いで修理します。病は発膚を藩、心神を車馬と見て、肌が破れ心神が揺らぐ時は病が長くない恐れがあります。婚姻は車の輹が脱ける形で、夫婦反目の象ですからよくありません。妊産は長子を主に見ます。

高島の占例

明治二十七年九月、大本営が広島へ進み、大元帥陛下が親征されようとした折、高島は大壮が泰に変じる九四を得ました。四陽が連なって進み、上の二陰を決する、その勢いは盛大です。日本軍が清を征するにあたり、清軍が固く守っても抵抗しきれません。藩衛はすでに決し、大車が坦途を行くように吉であると断じ、これを貴顕に呈しました。

次へ:五爻

五爻

一言で読む

突く羊の性を手放すのは損に見えます。しかし過剛の悔いはそこで消えます。

原文

六五:喪羊于易、無悔。

書き下し文

六五、羊を易に喪う、悔なし。

現代語訳

羊を場で失います。悔いはありません。

爻辞の読み解き

突き進む羊の性を失えば、かえって悔いがありません。兌は羊であり、六五は羊の象に当たります。易は場であり疆場でもあり、交易や容易の意にも取れます。乾は郊であり、郊外は牧場です。羊にはもともと藩防があります。三爻では藩に触れ、四爻では藩が破れ、五爻では羊が場へ逸れます。これが喪羊于易です。

なぜ羊を失って悔いがないのでしょうか。大壮が最も恐れるのは、剛鹵でよく突く羊の性だからです。羊がいなくなれば藩に触れません。藩に触れなければ、用壮の悔いも起こりません。旅卦の「牛を易に喪う」は柔を失うので凶ですが、大壮の喪羊は剛躁を失うので無悔となります。

実際の読み方

戦いでは、三爻の羊触藩は攻撃ですが、五爻の喪羊は触れないので、戦事が平らぐことがあります。経営では小さな失いはあっても大悔はなく、さらに高値を貪ることもありません。功名は亡羊補牢で、晩年に望みがあります。家宅は郊外が空闊で、牧畜には不利です。病は喪の字に凶象があります。婚姻は、羊がなければ礼が調いにくいものです。妊産は、古い伝えで女児と見ます。

高島の占例

占例1

ある貨物を買い占めて利を得られるかと問われた時、高島は大壮が夬に変じる六五を得ました。五爻では壮の勢いがすでに失われ、爻辞も羊を喪うと言いますから、損はあっても得るものはないと読みます。問うた友人は台湾、軍需、清との戦いを見込んで食品貨物を買い入れようとしていました。後に和平の報を聞いて大きく損し、三年経っても償いきれませんでした。

占例2

明治二十七年十一月、旅順口の形勢を問われた時も同じ爻でした。喪うのは清国、得るのは日本であり、易には容易の意もあるから、旅順は力戦せずとも得られると読みます。数日後、旅順は陥落しました。

次へ:上爻

上爻

一言で読む

進退が詰まった後でも、艱難を認めて強がりをやめれば吉へ転じます。

原文

上六:羝羊触藩、不能退、不能遂、無攸利、艱則吉。

書き下し文

上六、羝羊藩に触れ、退くこと能わず、遂ぐること能わず、利する攸なし、艱めば則ち吉なり。

現代語訳

牡羊が垣に突っかかり、退くこともできず、遂げることもできません。利するところはありません。艱難を知れば吉です。

爻辞の読み解き

強さで詰まった後は、苦しさを自覚して慎むことで吉へ転じます。上六は外卦の尽きる所にあり、九三と応じて、なお牡羊が垣に触れる象です。九三は角をかけても力はまだ盛んで、進退の余地が少し残っています。上六は勢いが衰え、位も極まり、後ろの路は断たれ、前の路も窮まります。だから進めないと言うより、遂げられないと言います。壮んに往こうとする願いが成就しません。

ここでは、大壮の行き過ぎた害がそのまま現れています。進めず、退けず、力ずくで支えても利はありません。残された出路は一つです。艱難を知り、慎んで自ら守り、これ以上強がらないこと。艱をもって自戒できれば、過ちは長く続かず、吉へ転じます。なお強硬さを自分の本領と思えば、いよいよ深くはまり込みます。

実際の読み方

戦いでは、窮寇を追って深入りし、かえって敗軍に囲まれる象です。経営では、買い占めたまま時を過ごし、値が下がって元も取りにくくなります。功名は高位ゆえに危うく、地位に執着して退かなければ、禍が来てからでは遅くなります。家宅は中に響きがあり、木が動いて土を剋す象ですから、艱難を知って守れば後に吉です。婚姻はよく調べずに決めたため、後悔しても改めにくく、苦しさを知って守れば時とともによくなります。妊産は、旧断では女児と見ます。

高島の占例

杉君の倉庫に賊が入り、勲章や礼服を含む物品が盗まれました。その一件を問われて、高島は大壮が大有に変じる上六を得ています。上爻は極まった位で、賊は勲章礼服を得ても売れず、自分で用いることもできず、利がありません。羝羊触藩の象から、貴重品は近くの垣や塀の間に置かれているかもしれないから探すようにと読みました。実際、隣家の垣の上で見つかっています。

雷天大壮:読みの覚え

雷天大壮は、力がすでに現れた卦です。ただし強盛は、横へ突き進んでよいという許可ではありません。力を持ちながら正を守り、進むことも止まることもできる。それが本当の大壮です。

強い所ほど、境を越えやすい

雷が天の上にあって、勢いは十分です。大壮に力がないのではなく、その力が礼法を越えやすいところに難があります。羝羊が垣に触れれば、強さは強さのまま角をからめ取られます。読む時はまず、この力がどこまで行くと人を傷つけ、自分を傷つけ、規則を壊すのかを見ます。手を出す前に、もう一つ分けておきたいことがあります。優位は本当に明らかなのか、それとも自分が強いと感じているだけなのか。

強くても弱きを侮らない

力のある人にとって難しいのは、力を出すことより、収める方です。強くても弱い者を侮らず、速くても礼を越えない。言葉にすれば簡単ですが、実地では止まる場所を具体的に決めておく必要があります。どの一歩の前には必ず手続きを踏むのか、どの一言は口にしないのか、どの便宜は受け取らないのか。九二は中を得て、爻辞に壮の字さえ置かず、正を守れば吉とだけ言います。語っているのはこの一点です。

力がある時ほど、位を守る

競争、交渉、昇進、権利の主張、体を鍛える場面で、大壮はしばしば使える勢いを示します。しかし勢いがあるほど、証拠と手続きと礼数と停止点が要ります。強者が正を失えば、優位はたちまち禍の種に変わります。前へ進めず後ろへも戻れなくなれば、残るのは困難を認め、絡みを一つずつ解いていく道だけです。

無妄と夬、二枚の鏡

天雷無妄とあわせて読むと、無妄が恐れるのは妄りな動きで、大壮が恐れるのは強さを恃む心です。動機を正した後も、行いには度が要ります。この二つは互いの代わりになりません。沢天夬とあわせれば、大壮は強い勢いが伸びていく時、夬はその勢いが公の決断を迫られる関門です。力が一定まで溜まれば、遅かれ早かれ、やるかやらないかの一点へ押し出されます。そこで問われるのは力ではなく、節度です。

雷天大壮:読みの覚え札記を開く

雷天大壮は、力がすでに現れた卦です。ただし強盛は、横へ突き進んでよいという許可ではありません。力を持ちながら正を守り、進むことも止まることもできる。それが本当の大壮です。

強い所ほど、境を越えやすい

雷が天の上にあって、勢いは十分です。大壮に力がないのではなく、その力が礼法を越えやすいところに難があります。羝羊が垣に触れれば、強さは強さのまま角をからめ取られます。読む時はまず、この力がどこまで行くと人を傷つけ、自分を傷つけ、規則を壊すのかを見ます。手を出す前に、もう一つ分けておきたいことがあります。優位は本当に明らかなのか、それとも自分が強いと感じているだけなのか。

強くても弱きを侮らない

力のある人にとって難しいのは、力を出すことより、収める方です。強くても弱い者を侮らず、速くても礼を越えない。言葉にすれば簡単ですが、実地では止まる場所を具体的に決めておく必要があります。どの一歩の前には必ず手続きを踏むのか、どの一言は口にしないのか、どの便宜は受け取らないのか。九二は中を得て、爻辞に壮の字さえ置かず、正を守れば吉とだけ言います。語っているのはこの一点です。

力がある時ほど、位を守る

競争、交渉、昇進、権利の主張、体を鍛える場面で、大壮はしばしば使える勢いを示します。しかし勢いがあるほど、証拠と手続きと礼数と停止点が要ります。強者が正を失えば、優位はたちまち禍の種に変わります。前へ進めず後ろへも戻れなくなれば、残るのは困難を認め、絡みを一つずつ解いていく道だけです。

無妄と夬、二枚の鏡

天雷無妄とあわせて読むと、無妄が恐れるのは妄りな動きで、大壮が恐れるのは強さを恃む心です。動機を正した後も、行いには度が要ります。この二つは互いの代わりになりません。沢天夬とあわせれば、大壮は強い勢いが伸びていく時、夬はその勢いが公の決断を迫られる関門です。力が一定まで溜まれば、遅かれ早かれ、やるかやらないかの一点へ押し出されます。そこで問われるのは力ではなく、節度です。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

優位に立っている今、大壮は押してよいと言っているのですか。

押してよいとは言いますが、横へ突き進んでよいとは言いません。大壮はあなたに力があると認めた上で、強い所ほど正を守れと釘を刺します。節度を欠いた強さは、最後に自分を垣へ絡め取ります。仕事で言えば、進みながら規則も手続きも礼数も残し、それで勢いを支えるということです。

大壮が出た時、いちばん警戒すべきことは何ですか。

強さを恃むこと、勢いで人を圧すこと、声の大きさだけで押し切る癖です。力が大きいほど、礼法とはっきりした停止点が要ります。それを欠けば、優位はすぐ禍に転じます。

優位に立っている今、大壮は押してよいと言っているのですか。開く

押してよいとは言いますが、横へ突き進んでよいとは言いません。大壮はあなたに力があると認めた上で、強い所ほど正を守れと釘を刺します。節度を欠いた強さは、最後に自分を垣へ絡め取ります。仕事で言えば、進みながら規則も手続きも礼数も残し、それで勢いを支えるということです。

大壮が出た時、いちばん警戒すべきことは何ですか。開く

強さを恃むこと、勢いで人を圧すこと、声の大きさだけで押し切る癖です。力が大きいほど、礼法とはっきりした停止点が要ります。それを欠けば、優位はすぐ禍に転じます。