六十四卦 意味・読み方
火風鼎|意味・卦辞爻辞解説(かふうてい)
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
革が旧を去った後、新しい秩序を載せる器を立て、資源を養いへ煮上げます。
卦象と卦名
鼎は上が離火、下が巽風木です。木が火の下にあり、火は上で煮ています。食材を鼎に入れ、木火によって火加減と五味を調える形です。革が旧を去る働きなら、鼎は新を取る働きにあたります。壊すだけで立てなければ、仕事はまだ半ばです。新しい制度、新しい人材、新しい資源を安んじて置けるようになって、はじめて鼎になります。
卦の中心的な意味
序卦伝は「物を革むる者は鼎に若くはなし。故に之を受くるに鼎を以てす」と言います。古代の鼎は重器で、祭祀にも、賓客を饗すにも、賢を養うにも用いられました。禹が九鼎を鋳て九州を象り、夏商周で鼎が移ることは、天命と国家正統の象徴とされました。鼎がどこにあるかは命がどこに帰るかであり、鼎が安定しているかどうかは、新しい秩序が安定しているかどうかに直結します。
卦辞は「鼎は元いに吉にして亨る」。大吉で通じます。ただし鼎の吉は、器具が整い、火候が合い、位置が正しく、養うべき人を養うところから生まれるもので、転がりこむ幸運とは質が違います。鼎には足、腹、耳、鉉があります。足が安定しなければ覆り、腹に実がなければ用をなさず、耳が通じなければ挙げられず、鉉が正しくなければ支えられません。
向いている問い
鼎を得たら、改めるべきかを問う段階は過ぎています。改めた後に何を載せられるかを問います。
事業なら組織構造と資源配置、家庭なら家業と養い、人材なら賢を養って用いられるかどうか。企てであれば、品物、手順、資金、人が一口の鼎の中で調和するかどうかを見ます。革で旧病を去った後、新しいものをよく煮て整え、人を養う形にまで仕上げます。
卦辞
器が安定し、火候が合えば、鼎は大吉に通じます。
原文
鼎:元吉、亨。
書き下し文
鼎は元いに吉にして亨る。
現代語訳
鼎は大いに吉で通じます。
卦辞の読み解き
新しい器が立ち、正しく人を養えるなら大吉で通じます。鼎は三代の重器であり、神に薦め、賓を饗し、賢を養う時に欠かせません。元吉の二字を軽く削れないのは、鼎がもともと吉器であり、重器であり、新を成す器だからです。革の後に鼎がなければ、ただ破壊だけが残ります。鼎があってはじめて礼があり、養いがあり、秩序があります。
鼎の値打ちは、成すところにあります。水、火、木、金、食材が一つの所にそろい、適切な火候を経て、生は熟へ変わり、雑は和へ変わります。人事も同じです。制度、人材、資源、礼法、実行が、安定した器の中で調和して、はじめて衆が受け用いるものになります。
鼎が象徴するのは、日常の小器ではありません。国家の命、宗廟の礼、賢才の養いです。元吉亨が指すのも、そこまでの大きさになります。一つの組織が新しい秩序を本当に立てる力も、この器に重なります。鼎を立てられてこそ、長く亨通します。
実際の読み方
変革後の事業を問うなら、鼎はまず器を立てよと答えます。先に核心構造を定め、そのうえで拡張を語ります。先に用人と制度を定め、そのうえで成果を語ります。
個人を問うても答えは同じです。能力は器の形にまで育てなければならず、心性は重さを受け止められなければなりません。火気だけあって鼎器がなければ、何も成りません。
彖曰
材料も人材も、器と火候を経てはじめて礼となり、賢を養う力になります。
原文
鼎、象也。以木巽火、亨飪也。聖人亨以享上帝、而大亨以養聖賢。巽而耳目聡明、柔進而上行、得中而応乎剛、是以元亨。
書き下し文
鼎は象なり。木を以て火に巽れ、亨飪するなり。聖人亨て以て上帝を享し、而して大いに亨て以て聖賢を養う。巽にして耳目聡明、柔進みて上行し、中を得て剛に応ず。是を以て元いに亨る。
現代語訳
鼎は、器の形を表す卦です。木を火に入れて、食物を煮ます。聖人は煮た供物を上帝に捧げ、盛大な料理によって聖賢を養います。巽順で耳目が聡明となり、柔が進んで上へ行き、中を得て剛に応じるので、大いに亨ります。
彖伝の読み解き
鼎は物をよく煮て、祭りと養賢に用いる器です。器の象がこれほど明らかな卦もありません。初爻は足に似て、二三四の陽は鼎腹の実に似て、五陰は鼎耳に似て、上陽は鉉に似ます。全体で一口の鼎の形になっています。
鼎の用は烹飪です。木が火を生み、火が物を熟し、鼎が五味を調えます。聖人は鼎を用いて上帝を祭り、また鼎を用いて聖賢を養いました。現実に置き換えれば、資源を礼、秩序、養い、人材の成長へ転化する働きです。原料を原料のまま置いておけば、鼎の用は立ちません。
「巽にして耳目聡明、柔進みて上行し、中を得て剛に応ず。是を以て元いに亨る」とあります。巽は順に入ること、離は明です。五は耳の位にいて聴くことができ、離は目にあたって見ることができます。鼎を立てる人や組織は、内に理へ順い、外に明察し、耳目が通り、中正で剛に応じて、はじめて複雑な資源を調和させ、用に立てられます。
実際の読み方
鼎を読む時は、火候と器具を確かめます。火が強すぎれば焦げ、弱すぎれば熟しません。足が不安定なら覆り、耳が壊れれば挙げられず、鉉が歪めば支えきれません。
事業、家庭、国家、組織、どれも同じです。新しい秩序は熱情だけで焼き上がりません。器、火、材料、人がそろって調えられて、ようやく成ります。
象曰
位が正しく据わらなければ、命は凝りません。まず自分の位置を正します。
原文
木上有火、鼎、君子以正位凝命。
書き下し文
木の上に火有るは鼎なり。君子以て位を正し命を凝む。
現代語訳
木の上に火があるのが鼎です。君子はこれを見て位を正し、命を凝らします。
象伝の読み解き
火と木で鼎を成すように、位置を正して大命を一つにまとめます。木の上に火があるのは烹飪の象です。鼎は宝器であり、三代は鼎をもって相伝えました。鼎のある所は天命のある所を象徴します。だから君子はその位を正し、その命を凝らします。
正位とは、位置が正しいということです。傾かず、越えず、乱れません。凝命とは、天命、人心、制度、職責を散らさず一つに凝らすことを言います。鼎が歪めば、中の食物は傾きます。人の位が正しくなければ、命も凝りません。国家、会社、家庭、どれをとっても同じで、核心の位置が正しくなければ、下にどれほど資源があっても翻覆します。
大有は「天の休命に順う」と言い、鼎は「位を正し命を凝む」と言います。前者は天に順うことを重んじ、後者は受け止める器を重んじます。大命、大任、大業を受けられるかどうかを決めるのは、うわべの勢いではありません。位置が正しく、器が安定し、耳目が明らかで、上下が応じているかどうかです。
実際の読み方
職位を問うなら、まず自分が正位にいるかを確かめます。指導者を問うなら、人心と制度を凝らせるかどうかを見ます。家業なら、核心の責任を誰が担うのかを見ます。
新しい企てなら、役割、手順、権責を先に正しく置きます。鼎が正しく据えられて、はじめて火候は安定します。
占断
足は安定しているか、腹に実はあるか、耳は通じ、鉉は正しいか。
総合的な占意
鼎卦の総合的な占意は、材料と人材を安定した器で受け止め、火加減を整えて人を養う成果へ変えることです。
項目別の占断
- 時運と功名:木が昇り火が燃えるように進みますが、能力と地位を釣り合わせます。
- 戦いと経営:主帥が位を得て器具が整えば成ります。木が火を生むように、資源を成果へ変えます。
- 家宅・病・訴訟:火災と肝火の上衝に注意します。争いの火が盛んな時は、さらに煽らず理が整うのを待ちます。
- 婚姻と協力:各自が位に安んじ、互いを成就させれば家業を担えます。足、耳、火加減の乱れは翻覆を招きます。
六爻の要点
- 初六:鼎を逆さにして古い汚れを出し、新しいものを入れる前に整理します。
- 九二:鼎の中に実があるため、内容を守り、嫉妬や妨害を近づけません。
- 九三:鼎耳が変わって通路が塞がるので、伝達と操作を直し、滞りが解けるのを待ちます。
- 九四:担う力がないまま重任を負えば鼎足が折れ、公の食を覆す重大な失敗になります。
- 六五:黄耳と金鉉を備え、柔中の責任者が意見を聴き、全体を持ち上げます。
- 上九:玉鉉の剛柔が調い、器、内容、火加減、大綱がすべて正しく無不利です。
実際の読み方
鼎を得たら、四つを見ます。基礎の足は安定しているか。中身は実っているか。伝える耳は通じているか。持ち上げる鉉、すなわち大綱は正しいか。
一つの企てが成るかどうかは、よい材料がそろっているかだけでは決まりません。一口の安定した鼎で、きちんと煮上げられるかどうかで決まります。
初爻
初六の転倒は失敗に見えて、古い汚れを出し、新しいものを入れる支度になります。
原文
初六:鼎顛趾、利出否、得妾以其子、無咎。
書き下し文
初六、鼎趾を顛にす、否を出すに利あり、妾を得て其の子を以てす、咎なし。
現代語訳
鼎の足を逆さにします。悪いものを出すのに利があります。妾を迎えるのは、子をもうけるためです。咎はありません。
爻辞の読み解き
いったん器を逆さにして古い汚れを出せば、後の成果に用いられ、咎はありません。鼎趾は鼎の足、顛趾は鼎を逆さにすることです。普通に考えれば鼎が倒れるのはよくありません。しかし鼎の中に古い汚れが残っているなら、逆さにして洗うほうが、かえって汚れを出すのに利があります。
「妾を得て其の子を以てす」は古代の家族語で、現代ではその婚姻価値をそのまま用いません。平たく言えば、低い位置、旁支、もともと重んじられていなかった部分が、本当の成果をもたらすためにかえって値打ちを持つ、という話です。初六の重点は妾そのものより、敗によって功を成し、賤をもって貴を得るところにあります。先に汚れを清め、それから器を成します。
実際の読み方
時運は、禍によって福を得、敗を転じて成る兆しがあります。経営では初めに小さな損があっても、後には大利を得ます。家宅は基礎に傷みがあり、修めれば吉です。
身体や生活で積み滞っている事は、まず整理します。企てでは、中身をいったん出して点検することを恐れません。旧い垢が出なければ、新しい味は成りません。
高島の占例
ある紳士が夫人の病を問うて、鼎が大有に変じる初六を得たことがあります。高島は顛趾出否から、体内に宿積があり、古い濁りがまだ清められていないと読んで、調治と洗滌が必要だと断じました。これは古い占病の読みで、現代の医学診断に代わるものではありません。ただ爻義としては、先に積弊を出し、それから後を論じるという順序がよく分かります。
二爻
中身に実があれば、妬む者も近づけません。守っていれば吉です。
原文
九二:鼎有実、我仇有疾、不我能即、吉。
書き下し文
九二、鼎に実有り、我が仇疾有り、我に即く能わず、吉なり。
現代語訳
鼎に実があります。私の仇には病があります。私に近づくことができません。吉です。
爻辞の読み解き
器の中身が充実していれば、害そうとする者がいても近づけず、吉です。二は鼎腹の位置にあり、陽爻なので実があります。鼎の中に肉があり、内容があり、本当の用があるようなものです。鼎に実があってはじめて上帝を享し、聖賢を養えます。人も実才があってはじめて事務を担えます。
「我が仇疾有り」とは、こちらを害そうとする者、妬む者の側に自分の病があって、近づいてこられないということです。二は自ら堅く守り、不正な者に比附しません。だから小人が害そうとしても隙を見つけられません。鼎に実のある人ほど、行き先を慎む必要があります。不正へ近づけば、実才そのものが禍根に変わります。
実際の読み方
時運は正直で実があり、邪な人は自然に遠ざかります。功名は、名が成った後の妬みを防ぎます。経営では袋の中に財があるので、盗みや妬みを防ぎます。家宅は富足の家で、人に覗われないよう用心します。
病は陽実の症として、実際の状態に従って治療します。関係では、内容そのものが本当の資本になります。同時に、近づける相手は慎重に選びます。
高島の占例
占例1
明治十二年、大阪の豪商藤田伝三郎と中野梧一が拘留され、世論が騒いだとき、高島が立てた筮は鼎が旅に変じる九二でした。鼎に実があって動かしにくく、司法の側は動かそうとしても「疾」があって、ついに害することができない。二人は即日解かれると断じ、実際その通りになりました。
占例2
媒人の語る女性を娶ってよいかを問うた者も、同じ爻を得ています。高島は鼎有実から、すでに妊娠していると読み、婉曲に断るよう勧め、その人も後にそれに従いました。
占例3
英独の交際を占ったときにも、この爻が出ました。二五が相応じるので本来は親しめるはずですが、中間に阻みがある。それが退けば自然に相親しむ、という読みでした。
三爻
よい中身も、耳が壊れれば席まで運べません。潤いを待てば最後は吉です。
原文
九三:鼎耳革、其行塞、雉膏不食、方雨虧悔、終吉。
書き下し文
九三、鼎の耳革まる、其の行き塞がる、雉の膏食らわれず、方に雨ふりて悔いを虧く、終に吉なり。
現代語訳
鼎の耳が革まります。その行き道が塞がります。雉の膏は食べられません。まさに雨が降れば悔いを減らし、最後は吉です。
爻辞の読み解き
よい中身があっても、持ち運ぶ所が壊れていれば届きません。潤いが来て、最後に通ります。鼎は耳に鉉を通して持ち上げ、移します。鼎耳が変わって壊れたり外れたりすれば、鼎の中に雉の膏という美味があっても、席まで運べず、誰も食べられません。
この爻は、よい才、よい貨物、よい方案があるのに、接続、制度、経路、任用の仕方が壊れて、動きが塞がる状態に似ています。井卦の九三は井水が清いのに用いられず、鼎卦の九三は雉膏が美しいのに食われない。どちらも、使えるのにしばらく用いられない惜しさを言います。
「方に雨ふれば悔いを虧く。終に吉」は転機を示します。雨が来れば潤い、悔いは減ります。五爻の金鉉が耳を補うこともできます。肝心なのは、重要な接続部を乱りに改めないことです。しかるべき上位の支援、制度の修復、外からの潤いを待てば、塞がった所は必ず通じます。
実際の読み方
時運そのものは悪くありませんが、道筋を妄りに改めたために塞がることがあります。功名は、美しい才がありながら、しばらく売れず用いられません。方向を乱りに変えれば悔いが増えます。経営は業に移り変わりがあり、貨物が滞るので、数年後の復興を待ちます。
戦いでは糧食を奪われたり、軍行が阻まれたりするのを防ぎます。婚姻では、悔婚して別の縁へ移り、義を失うことを防ぎます。
高島の占例
ある公が今年顕職に昇ると断じた根拠は、その運が鼎から未済に変じるところにありました。三爻は才力が強いものの四、五と合わず、鼎耳が鉉を受けられないように、済世の才があってもしばらく施せない。しかし方雨は旱に雨を得るようなものなので、いずれ登用される——高島はそう解しました。某公は果たして伯爵に陞せられ、翌年には暴変に遭い、足疾の患いは四爻の鼎足折の兆に応じました。
四爻
力が任に及ばないまま重さを負えば、足が折れて公の食まで覆します。
原文
九四:鼎折足、覆公餗、其形渥、凶。
書き下し文
九四、鼎足を折る、公の餗を覆す、其の形渥る、凶なり。
現代語訳
鼎の足を折ります。公の食を覆します。その形は濡れて汚れます。凶です。
爻辞の読み解き
鼎を支える足が折れれば、大切な中身まで覆り、汚れて凶になります。鼎は三足で安立します。一足が折れれば、鼎の中の実物、美味、祭食はすべて覆ります。公餗は公家の食であり、広く公共の資源、国家の事務、大きな成果を表します。支える者が職を失えば、損失は個人の範囲にとどまりません。
四は五に近く、近臣、大臣、実務を預かる者のような位置です。ここで引かれるのが繋辞の「徳薄くして位尊く、知小にして謀大きく、力小にして任重ければ、及ばざる鮮し」。徳が薄いのに位が高く、知が小さいのに謀が大きく、力が小さいのに重任を負えば、鼎はたやすくひっくり返ります。この爻の凶は、任に勝てないことから自ら招く咎です。
実際の読み方
時運は覆りやすく、小さくは折損、大きくは重い禍があります。戦いでは兵を損じ将を折ります。功名は、未成なら望みにくく、すでに成っていても敗を防ぎます。経営では資産が覆り、身命にまで及ぶことがあります。
家宅は棟や垂木が折れ崩れる患いを防ぎます。組織では、まず重さを支える人と制度を点検します。任に勝てない人が高位にいる——それがいちばん危うい形です。
高島の占例
明治十五年、朝鮮京城の内変で大臣が殺され、日本公使が追われたとき、ある貴顕が占って鼎が蠱に変じる九四を得ました。高島は、鼎の三足は三公を象り、折足は朝廷の大臣に変があることだと読みました。四は五に近い君の近臣の位なので、大院君の専権に応じます。鼎実が覆るのは、府庫の資財が耗散する姿です。変卦の蠱には三虫が相食む象があり、開化派、保守派、事大派の諸党が互いに傾け合うことを示すとしました。後に大院君は清国に幽せられました。
五爻
六五の黄耳と金鉉は、重い器を動かす枢です。正を守るところに利があります。
原文
六五:鼎黄耳金鉉、利貞。
書き下し文
六五、鼎に黄耳金鉉あり、貞しきに利あり。
現代語訳
鼎には黄い耳と金の鉉があります。正しくするのに利があります。
爻辞の読み解き
中正な耳と強い鉉があれば、重い鼎も正しく動かせます。五は鼎耳の位置にあり、離は黄なので黄耳です。鉉は鼎耳を貫いて鼎を持ち上げる横木、または金具を指します。耳の中が虚であってはじめて鉉を通せます。鼎は重いものですが、この枢をつかめば挙げ動かせます。
この爻の中心にあるのは、中正と枢です。鼎腹に実があっても、耳と鉉がなければ運用できません。組織に資源があっても、指導、制度、意思疎通の枢がなければ動きません。利貞とは、重器を揺らさず、鼎を挙げる者が心も位も法も正しくあれ、ということです。
実際の読み方
時運は貴重で、正を守れば福を得ます。功名には大貴の兆しがあります。経営では、情報が明らかで経路が順うので、厚い利を得ます。婚姻にも貴い兆しがありますが、正でなければなりません。
家宅は富貴の家です。組織では、枢となる人物と規則を正しくつかめば、重器を挙げられます。正を守らなければ、金鉉そのものが争いの的に変わります。
高島の占例
占例1
ある商人が気運を問うて、鼎が姤に変じる六五を得ました。鼎は五味を調える器だから、商いもその術を得れば利を謀れます。黄耳金鉉は珍貴の象なので財運は盛大だと、高島は断じました。
占例2
明治三十一年に改進党の気運を占ったときも、同じ爻でした。党中に鼎耳金鉉のような首領がいれば、党議は行える。それが高島の読みです。後に改進党は自由党と連合して政府に入りましたが、ほどなく党内の疑心と反目から退きました。利貞の戒めを審らかにしなかったところに応じます。
上爻
玉の鉉は剛柔が調っています。傷つけずに挙げるから、大吉で不利がありません。
原文
上九:鼎玉鉉、大吉、無不利。
書き下し文
上九、鼎に玉鉉あり、大吉にして、利あらざるなし。
現代語訳
鼎には玉の鉉があります。大吉で、利のないものはありません。
爻辞の読み解き
玉のように剛柔の調った鉉で鼎を挙げられれば大吉で、すべてに利があります。上爻は鼎耳の上を横に渡るので鉉の象があります。玉は堅くて温かく、剛でありながら燥かず、潤っていて軟らかすぎません。上九は剛をもって柔位に居り、その徳が玉に似ているので玉鉉と言います。
五爻の黄耳金鉉は、君位と枢を重く見ます。上九は位なくして上にあり、養われる聖賢、あるいは位なき賢者とも見られます。金と玉が相配し、剛柔が互いに節し合って、鼎養の功はここで大成します。ただ挙げるだけなら金鉉でも足ります。玉鉉は、温潤で、程よく、傷つけずに挙げるところに眼目があります。
実際の読み方
時運は温潤和平で、往く所に利があります。戦いでは軍令がすでに張っており、進めば克たないことはありません。功名は鼎鉉に近い位を得るので大吉です。経営は美玉が売り時を待つように、よい値で利を得ます。
婚姻は金玉のように調って大吉です。家宅は地位が非常に高くなります。事業では、器が成って人を養える段階に入りました。温潤で剛正な徳をもって、この大成を守ります。
高島の占例
気運を占ったある紳士に出たのは、鼎が恒に変じる上九でした。鼎は火を用とし、下は鼎を象り、上は烹ることを象るので、功用は上にあって上卦に吉が多い、と高島は説きます。上爻を得るのは鼎鉉の象です。玉で鉉を飾り、その鉉をもって鼎を挙げる。鼎が挙がれば養いは天下に及びます。運が亨って時が来て、剛柔が互いに助け合い、行う事も謀る事も、すべてに利があると断じました。
火風鼎:読みの覚え
火風鼎は、改革の後に新しい秩序を据える卦です。器を安定させ、素材を煮上げ、人を養う形へ整えます。
鼎の在り処が、命の在り処
鼎は三代の重器で、鼎のある所が天命のある所と見られてきました。だから大象伝はまず位を正すことを言います。核心の位置が傾いたまま資源だけを積み増しても、いずれ全部が覆ります。 改革で古いものを除いた後に問われるのは、何を入れるかより、どんな器で受けるかです。器が先に立っていれば、火加減はあとからでも整えられます。
足・腹・耳・鉉をそろえる
初爻は足、二三四は腹の実、五は耳、上は鉉に当たります。この四つは、そのまま制度、資源、伝達、担い手に置き換えられます。足元の制度が緩ければ器は傾き、腹に実がなければ煮るものがなく、耳が通じなければ誰も持ち上げられず、鉉が歪めば支えきれません。 よい素材があるのに物事が動かないときは、たいてい耳と鉉、つまり連絡と運用の側が壊れています。九三はまさにその状態で、雉の膏があっても席まで運べません。
重さに耐える人を置く
新体制づくり、事業の再編、文化の立て直し、祭祀や飲食に関わる問いでは、速さより器の安定を先に見ます。九四が凶なのは、志の善悪によるものではありません。力が任に届かないからです。徳が薄いのに位が高く、力が小さいのに任が重ければ、成果ごと覆ります。 初六の転倒も、同じ順序の話です。古い汚れを出すときには一時の損や不快が伴いますが、それは失敗というより、器を清める工程にあたります。
除いた後、養う前
沢火革とあわせると、革は古いものを除き、鼎は改めた後の成果を新しい器に収めて定着させる卦なので、改革と建設の順序が分かります。山雷頤とあわせれば、頤は何を取り入れて人を養うかを問い、鼎は取り入れたものをどう煮て養いへ変えるかを問う、という違いが見えてきます。
火風鼎:読みの覚え札記を開く
火風鼎は、改革の後に新しい秩序を据える卦です。器を安定させ、素材を煮上げ、人を養う形へ整えます。
鼎の在り処が、命の在り処
鼎は三代の重器で、鼎のある所が天命のある所と見られてきました。だから大象伝はまず位を正すことを言います。核心の位置が傾いたまま資源だけを積み増しても、いずれ全部が覆ります。 改革で古いものを除いた後に問われるのは、何を入れるかより、どんな器で受けるかです。器が先に立っていれば、火加減はあとからでも整えられます。
足・腹・耳・鉉をそろえる
初爻は足、二三四は腹の実、五は耳、上は鉉に当たります。この四つは、そのまま制度、資源、伝達、担い手に置き換えられます。足元の制度が緩ければ器は傾き、腹に実がなければ煮るものがなく、耳が通じなければ誰も持ち上げられず、鉉が歪めば支えきれません。 よい素材があるのに物事が動かないときは、たいてい耳と鉉、つまり連絡と運用の側が壊れています。九三はまさにその状態で、雉の膏があっても席まで運べません。
重さに耐える人を置く
新体制づくり、事業の再編、文化の立て直し、祭祀や飲食に関わる問いでは、速さより器の安定を先に見ます。九四が凶なのは、志の善悪によるものではありません。力が任に届かないからです。徳が薄いのに位が高く、力が小さいのに任が重ければ、成果ごと覆ります。 初六の転倒も、同じ順序の話です。古い汚れを出すときには一時の損や不快が伴いますが、それは失敗というより、器を清める工程にあたります。
除いた後、養う前
沢火革とあわせると、革は古いものを除き、鼎は改めた後の成果を新しい器に収めて定着させる卦なので、改革と建設の順序が分かります。山雷頤とあわせれば、頤は何を取り入れて人を養うかを問い、鼎は取り入れたものをどう煮て養いへ変えるかを問う、という違いが見えてきます。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
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本卦の問い
鼎が出たのに、物事が動きません。どこを見ますか。
多くは足か耳の問題です。足元の制度と責任者が定まっているか、そして連絡と運用の経路が通っているかを確かめます。中身を増やすのはその後です。
準備の途中で古い問題が噴き出しました。悪い兆しですか。
初六は鼎を逆さにして汚れを出す爻です。損や不快は出ますが、それは新しい器を清める工程にあたります。出るものが出ないうちに、新しい味は成りません。
重い役を引き受けてよいか迷います。
九四は、力が任に及ばないまま重さを負えば足が折れ、公の食まで覆すと告げます。徳、知、力の三つが位に釣り合っているかを、引き受ける前に確かめます。
金鉉と玉鉉は、何が違いますか。
金鉉は重い器を確かに持ち上げる強さ、玉鉉は温潤で、傷つけずに挙げる調いです。六五は枢をつかむ正しさを、上九は剛柔の釣り合った仕上がりを説きます。
鼎が出たのに、物事が動きません。どこを見ますか。開く
多くは足か耳の問題です。足元の制度と責任者が定まっているか、そして連絡と運用の経路が通っているかを確かめます。中身を増やすのはその後です。
準備の途中で古い問題が噴き出しました。悪い兆しですか。開く
初六は鼎を逆さにして汚れを出す爻です。損や不快は出ますが、それは新しい器を清める工程にあたります。出るものが出ないうちに、新しい味は成りません。
重い役を引き受けてよいか迷います。開く
九四は、力が任に及ばないまま重さを負えば足が折れ、公の食まで覆すと告げます。徳、知、力の三つが位に釣り合っているかを、引き受ける前に確かめます。
金鉉と玉鉉は、何が違いますか。開く
金鉉は重い器を確かに持ち上げる強さ、玉鉉は温潤で、傷つけずに挙げる調いです。六五は枢をつかむ正しさを、上九は剛柔の釣り合った仕上がりを説きます。
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