六十四卦 意味・読み方
火水未済|意味・卦辞爻辞解説(かすいびせい)
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
未済は失敗の卦ではありません。まだ渡り終えていないだけで、道はなお残っています。
卦象と卦名
未済は上卦が離で火、下卦が坎で水です。火は本来上り、水は本来下ります。その火が水の上に置かれているので、水火は背き合い、まだ交わって用を成しません。既済とはちょうど裏返しの形です。既済では水が火の上にあり、二つはすでに互いを助けています。未済では火が水の上にあり、それぞれが別々の方へ行きます。だから事はまだ完成しません。
卦の中心的な意味
卦名は不済ではなく未済です。ここが要になります。永遠に成らないのではなく、まだ成っていないだけです。道がないのでもありません。水火、位置、人、時機を、まだ互いに成就する状態へ整えていないだけです。未済には危険もありますが、同じだけ希望もあります。
卦辞は「未済は亨る。小狐汔んど済らんとして、其の尾を濡らす。利しき攸なし」と言います。小狐がほとんど渡り終えようとして、最後に尾を濡らす。最後の一歩ほど誤りやすいのです。未済が亨るのは、なお渡り切る道が残るからです。しかし尾を濡らせば利はありません。岸に上がるまで、完成したとは言えません。
向いている問い
未済を得たときは、整理を続けること、足りない位置を補うこと、方向を見分けること、慎重に進めることに向きます。感情が定まらない、事業が収束しない、計画が閉じていない、仕組みがまだ本格稼働していない。そういう時が未済です。
急いで完成を宣言せず、まだ成らないからといって放り出しもしません。位置を見、道具を補い、時機を待ち、最後の一段を安定して渡ります。
卦辞
あと一歩が、いちばん粗くなります。小狐は岸の手前で尾を濡らしました。
原文
未済:亨。小狐汔済、濡其尾、無攸利。
書き下し文
未済は亨る。小狐汔んど済らんとして、其の尾を濡らす。利しき攸なし。
現代語訳
未済は通じます。小狐がほとんど渡ろうとして、その尾を濡らします。利のある所はありません。
卦辞の読み解き
未完成でも通じる道はあります。ただし最後を雑に渡れば利はありません。卦辞はその二つを並べて置きます。
未済がなお亨るのは、未完成のなかに完成の可能性が残るからです。河を渡る時、まだ水中にいて岸に上がっていなければ、渡ったとは言えません。それでも方向が正しく、道具があり、気力が残っていれば、ついには渡れます。
小狐は力が弱く、しかも気が急いて進むものの象です。すでに岸辺へ近づいているのに、自分の力を量らず、最後の始末を慎まないため、尾を濡らします。尾が濡れれば身が重くなり、進退が難しくなり、前の功が最後の一点で壊れます。未済が恐れるのは開端の難しさだけではありません。最後の一段での軽々しさです。
既済の尾は未済の首に接し、未済の尾はまた既済の首に続きます。高島の読みでは、六十四卦が未済で終わるのは、天地人事に本当の句点がないからです。完成のあとにも未完成があり、未完成はまた完成へ転じます。要は、続けられるか、受け止められるかです。
実際の読み方
事があと少しで終わる時ほど、検査を減らしてはいけません。関係が定まりかけた時ほど、勝手な振る舞いを避けます。仕組みが本番に近い時ほど、試験を飛ばしません。交渉が成りかけた時ほど、急に条件を上乗せしないことです。
未済の亨は、慎重に続けるところにあります。だいたいで済ませた人に、この亨は開きません。
彖曰
位はどれも当たっていません。それでも剛柔が応じるので、続ければ渡り切れます。
原文
未済、亨、柔得中也。小狐汔済、未出中也。濡其尾、無攸利、不続終也。雖不当位、剛柔応也。
書き下し文
未済は亨るとは、柔中を得ればなり。小狐汔んど済らんとすとは、未だ中を出でざればなり。其の尾を濡らす、利しき攸なしとは、終わりを続けざればなり。位に当たらずと雖も、剛柔応ずるなり。
現代語訳
未済が通じるのは、柔が中を得るからです。小狐がほとんど渡ろうとして、まだ中を出ていません。その尾を濡らす、利のある所なしとは、最後まで続けないからです。位に当たっていなくても、剛柔が応じるからです。
彖伝の読み解き
位置はまだ合っていません。それでも応じ合う力が残るので、最後まで続ければ通じます。彖伝はそう説きます。
六爻の位置はみな正しくありません。だから未済です。しかし陰陽はなお互いに応じています。だから絶望ではないのです。
既済の亨は、すでに成ったものの亨です。未済の亨は、まだ成らないけれども最後には成り得る亨です。未済は下に坎、上に離があり、水火が交わりません。天地がまだ明けず、宇宙がまだ開かないようなものです。それでも柔は中を得、剛柔は応じます。乱れて見えても、つながる関係が中に残っています。
人が世を渡る以上、険のない道はなく、また渡り切ろうとしないわけにもいきません。未済に安んじてしまえば、最後まで渡り切れません。勤めて努力し、渡り切ろうと押し続ければ、一時は未済でも最後には渡り切れます。未済が貴いのは、続ける道を残すからです。
六十四卦が既済で終わらず未済で終わるのも、易の道が終わってまた始まり、生々としてやまないからです。既済は已に尽き、未済は無窮です。既は未を開き、未は既を継ぎます。人事も同じで、一つの問題が終われば別の問題が始まり、一つの段階が未完なら、そこが次の努力の場所になります。
実際の読み方
未済を判断する時、まだ成らないという一点だけを見てはいけません。応じ合う資源、関係、位置、時機がなお残っているかを見ます。
位置が誤っているなら正します。種類の違うものが混じっているなら分けます。道具が足りなければ補い、時機がまだなら待ちます。未済の希望は、いつも調整の側にあります。
象曰
押す前に分けます。物を弁じ、それぞれをふさわしい方位へ置くのが先です。
原文
火在水上、未済、君子以慎辨物居方。
書き下し文
火、水の上に在るは未済なり。君子以て慎みて物を辨じ、方に居らしむ。
現代語訳
火が水の上にあるのが未済です。君子はこれを見て慎んで物を弁じ、方に居らせます。
象伝の読み解き
象伝が命じるのは一事です。慎んで物を弁じ、それぞれをふさわしい位置に置くことです。
火は熱く、水は寒く、性質が違います。離は南、坎は北で、方位も違います。火が水の上にあれば、炎上するものはさらに上へ、潤下するものはさらに下へ行き、互いに交わらず、互いの用にもなりません。だから未済です。
君子はこの象を見て、急いですべてを混ぜ合わせようとはしません。まず弁じます。何が何か。誰がどの位置にいるべきか。何を先にし、何を後にするか。物がその類を得て、位がその方を得れば、未済は既済へ進む可能性を持ちます。
未済の問題の多くは、資源の不足よりも置き場所の誤りから起きます。人を誤った役に置く。金を誤った方向へ使う。言葉を誤った場で言う。薬を寒熱に合わせず用いる。事の順序が乱れている。どれも水火不交を生みます。慎んで物を辨じ方に居らしむとは、まず位置のずれを正すことです。
実際の読み方
混乱に遇ったら、まず強く押さないことです。分類し、位置を定め、順序を並べ、責任者を決めます。
関係では感情と事実を分けます。仕事では目的と手段を分けます。健康では寒熱虚実を分け、財務では売上と実際に使える資金を分けます。未済は突進ではなく、弁別によって完成へ近づきます。
占断
足りない物、ずれた位置、切れた手順を見分けてから、最後の一段を渡ります。
総合的な占意
未済の総占では、急いで吉凶を断じてはいけません。希望が絶えているのではなく、かみ合わない所が多く残っているだけです。方向が合わない。時機が合わない。人事が合わない。物と位が合わない。これらを合わせれば亨ります。合わないまま強行すれば、小狐の濡尾になります。
項目別の占断
- 時運と進行:物事はまだ完成せず、順序も逆になりがちです。準備、経路、接続を点検してから進みます。
- 経営と功名:商品、場所、能力がまだかみ合っていません。慎重に組み直してから利益を求め、評価は完成まで待ちます。
- 戦いと競争:陣地、道具、人員が連動しなければ、まず整備し、準備なしで危険を渡りません。
- 婚姻と家宅:家柄、条件、方角が合わない時は基礎の組み方を改め、完成間近でも結論を急ぎません。
- 病・失せ物・出産:薬と治療は医学に基づいて慎重に進めます。失せ物は方角を確かめます。男女を言い当てる古い占い方は、昔の記録として置いておきます。
六爻の要点
- 初六:初めから準備不足で水に入り尾を濡らせば、未完成のまま苦しい立場になります。
- 九二:条件が整い始めても車輪を引き止め、速度を制御して正しさを守れば吉です。
- 六三:危険な位置から準備なしで進めば凶ですが、道具と経路を整えれば大川を渡れます。
- 九四:前半の険を抜けたあとも、正しく長く進み続けてこそ大きな賞を得ます。
- 六五:完成に近づいた時、明るい徳と真実の信によって全体を結べば吉で悔いはありません。
- 上九:完成後の祝杯に咎はありませんが、酒に溺れて節度を失えば、すでに得た信まで失います。
実際の読み方
未済を得たら、点検の一覧を作ります。何が足りないか。誰の位置が違うか。手順はどこで切れているか。資源はつなげられるか。時間は熟しているか。
ここに答えられれば、未済から既済へ歩けます。
初爻
入り口から尾を濡らすようでは、渡り切る前に進退が苦しくなります。
原文
初六:濡其尾、吝。
書き下し文
初六、其の尾を濡らす、吝なり。
現代語訳
その尾を濡らします。吝です。
爻辞の読み解き
渡り始めから尾を濡らせば恥ずかしく、その先も進みにくくなります。爻辞はそう告げます。
卦辞の小狐濡尾が、そのまま初爻に落ちています。既済の上爻は首を濡らし、未済の初爻は尾を濡らします。首尾は相接します。前の既済ですでに首の濡れる危うさを戒められていたのに、後の未済でまた尾を濡らす。戒懼を知らず、同じ轍を踏む姿です。
初爻は未済の開端で、本来は前を審らかにし後ろを顧み、進退を明らかにすべき時です。ところが初めから軽く水に入り、尾を先に濡らすのは、道具も準備も判断も足りないしるしです。渡り切れないと決まったわけではありません。ただ、このやり方では吝であり、見苦しく、進退両難に陥りやすくなります。
実際の読み方
時運は、前後を審らかにせず、進退を顧みない無謀さが出ます。経営は前の失敗を後でも戒めず、旧い誤りを繰り返しやすくなります。功名は開端で勢いを失い、人の尾に付くことさえ難しくなります。
婚姻は首尾がそろわず、まとまりにくい形です。家宅は前後の門の方位が正しくありません。病は下半身に関わる象があります。まず前後を確かめ、それから動くことです。
高島の占例
友人が製造業を問うて、未済の初爻を得ました。高島は、旧業を引き受けて再興しようとしているものの、前の人が失敗した原因を知らないまま軽く進むので、製品が一時売れず、抵当にして金を求めても不利となり、進退両難になる象だと読みました。まさに小狐がほとんど渡ろうとして尾を濡らす形です。二爻の「其の輪を曳く」に至る翌年には、車で外へ運んで販売し、利を得られると断じました。
二爻
輪を曳いて速度を抑えます。未済で効くのは、速さよりも安定です。
原文
九二:曳其輪、貞吉。
書き下し文
九二、其の輪を曳く、貞にして吉なり。
現代語訳
その輪を曳きます。正しければ吉です。
爻辞の読み解き
車輪を引いて慎重に進み、正しければ吉になります。爻辞の眼目はそこです。
二は坎中にあり、坎には輪の象があります。輪は渡りの道具です。既済の初爻では輪を曳いて尾を濡らしましたが、ここでは輪を曳いても尾は濡れません。道具がより使え、方法もより安定していることを示します。
輪を曳くとは、速く突っ切ることではありません。輪を引き、車を制御し、中道を正しく行くことです。未済の時にいちばん恐ろしいのは、気が急いて進むことです。九二は中を守り、水勢に押し流されないので吉になります。象伝の「中以て正を行うなり」が、まさにこれに当たります。
実際の読み方
時運は軽い車で水を渡るようなもので、中道によって渡り切れます。経営は満載して帰る象があります。功名は君臣が互いに助け合い、載せてくれる人があります。
戦いは偽って退く策、または車船の策が使えます。婚姻は夫婦がともに挽き、賢い配偶を得ます。家宅は輪奐ともに美しい形です。病は胸腹の気機が通らず、三焦を開く必要があります。要は速さではなく安定です。
高島の占例
明治八年、朝鮮が日本の雲揚艦を砲撃し、朝議が問罪の兵を起こそうとした時、陸軍大佐が占って未済の九二を得ました。高島は、未済二爻の輪は海路の輪船と見られ、雲揚艦は撃たれても輪を曳いて帰ることができる、今年は兵を起こして怨を結ぶには至らないと読みました。三爻に至れば「征凶、利渉大川」があるので、後には事が起こる恐れがあり、海軍には利があり陸軍には不利とも見ています。後に当時は和平へ帰しました。
三爻
無謀に征けば凶、舟を備えて渡れば利。禁じられているのは動くことではありません。
原文
六三:未済、征凶、利渉大川。
書き下し文
六三、未済なり、征けば凶なり、大川を渉るに利あり。
現代語訳
未済です。征けば凶です。大川を渡るのに利があります。
爻辞の読み解き
未完成のまま無理に進めば凶、備えて大きな川を渡るなら利がある。爻辞は同じ一行にその二つを置きます。
三は内外卦の境にあり、首も尾もまだ岸に着いていません。未済が未済である要の位置です。さらに一歩進めば険を出ることもできますが、一歩誤ればまた険へ入ります。だから無謀な前進は凶です。
それでも爻辞は同時に「大川を渉るに利あり」と言います。これは矛盾ではありません。盲目に征伐するのは不可、備えて険を渡るのは可、ということです。大きな難と大きな功は、しばしば危うい時勢から生まれます。問われているのは動くか動かないかだけではありません。舟楫があるか、時に合うか、正当かです。
実際の読み方
時運は静かに時を待つべきで、躁いで動けば凶です。戦いは海軍を集結させ、水陸を併せて進めば、凶中から吉へ転じることがあります。経営は舟運、水路、広域の流通に利があります。
功名は舟を作って川を渡る力があります。婚姻は嫁を迎えるなら吉、入婿や位を失う形なら凶です。病は地を移して険を避けることができます。この爻が禁じているのは動くことではなく、乱れたまま動くことです。
高島の占例
高島が衆議院の気運を占って、未済の六三を得ました。政府は欧米文明に倣って富強を図り、議員は欧米の自由を学んで権利を図ろうとしていた頃です。これは火が上にあり水が下にあって、両者が互いに助け合わない形だと読まれました。当時の議員には賄賂によって来た者も多く、位が当たらないので「征けば凶」です。しかし議院制度そのものは、人を得て中正に行うなら「大川を渉るに利あり」の可能性もあるとしました。
四爻
険を出たあとも正しく続ければ、三年かけた働きに大国から賞が来ます。
原文
九四:貞吉、悔亡、震用伐鬼方、三年有賞于大国。
書き下し文
九四、貞にして吉なり、悔い亡ぶ。震いて用て鬼方を伐ち、三年にして大国に賞有り。
現代語訳
正しければ吉で、悔いは消えます。奮い立って鬼方を討ち、三年後に大国から賞を受けます。
爻辞の読み解き
正しく遠征して長く努めれば、後に賞があります。爻辞はそう約束します。
未済の下三爻はまだ未済のなかにあります。上三爻から既済へ向かい始めます。九四は坎険を出て離明へ入る所です。正道をもって動けるので、悔いは消えます。
この爻と既済の九三は、どちらも鬼方を伐つことを言います。既済九三の「三年にして之に克つ」は、長い戦いの疲れに重心があります。未済九四の「三年にして大国に賞有り」は、志が行われ、艱難のあとに凱旋して賞を受けることに重心を置きます。前者は久戦の労、後者は成功後の栄です。
実際の読み方
時運は大運が転じています。正を守れば吉で、名利を全うできます。戦いは遠征して凱旋し、賞命を受けます。経営は遠方との取引で財利が豊かになります。
功名は名声が遠くまで響きます。婚姻は三年で成ることがあります。家宅は正を守れば吉です。病については、鬼方の語が不祥なので、久しい病は三年の後に保ちにくいと古くは見ます。
高島の占例
占例1
友人が気運を問うて、未済の九四を得ました。高島は、年来の困苦がだんだん成功へ向かい、三年の間に威名が遠く揚がり、賞を得て栄を受けると断じました。志が満ち業が成る時に当たります。
占例2
明治二十七年の冬至に翌年の聖運を占ったときも、同じ爻でした。高島は「震いて用て鬼方を伐つ」から征清得勝を断じ、「三年にして大国に賞有り」から戦後に論功行賞があると読みました。
五爻
誠が内に積もり、光が外へ出ます。完成の手前で現れる、いちばん明るい爻です。
原文
六五:貞吉、無悔、君子之光、有孚、吉。
書き下し文
六五、貞にして吉なり、悔いなし。君子の光あり、孚あり、吉なり。
現代語訳
正しければ吉で、悔いはありません。君子の光があります。孚があって吉です。
爻辞の読み解き
正しくあれば光が現れ、信があるので吉になります。
五は離の中にあり、離は日、明、光です。未済も五爻まで来ると、成功に近い明るい所へ出ています。ただ水を渡る険だけの段階は、もう越えています。正を守れば悔いはありません。
五は未済の主で、四に比し、二に応じます。二は中正であり、四には征伐の功があります。五に至ると、文徳は昭明となり、武功も顕れ、臣下の功業がそのまま君上の威光になります。だから君子の光と言います。この光は虚名ではありません。誠信が中に積もり、英華が外へ発したものです。
実際の読み方
時運は全盛に当たり、百事が吉です。戦いは師卦の「師は貞し、丈人なれば吉」と合わせて見ることができ、統帥の光があります。経営は政府の公事、軍費、兵器などに関わり、上からの余沢を得ることがあります。
功名は参内して寵を受け、昇進する象があります。家宅は大吉です。婚姻は君子の好逑で、必ず得ます。産み月については、女児を生んで貴くなるという古占が伝わります。
高島の占例
ある縉紳が官階の昇進を問うて、未済の六五を得ました。高島は、五は離中にあって日光であり、五はまた君位なので君子の光だと読みました。五は二と応じ、二は相談者に当たるので、君に近づき、聖化に浴し、龍光を仰ぐ象があります。昇進を賀すべきだという断でした。
上爻
祝杯までは咎になりません。首まで濡れた時点で、積んできた信が消えます。
原文
上九:有孚于飲酒、無咎、濡其首、有孚失是。
書き下し文
上九、孚有りて酒を飲む、咎なし。其の首を濡らせば、孚有るも是を失う。
現代語訳
飲酒に孚があります。咎はありません。その首を濡らせば、孚があってもこれを失います。
爻辞の読み解き
信をもって祝うのはかまいません。ただし酔って節を失えば、その信まで失います。爻辞の警告はそこにあります。
上爻は未済の終わりで、反転すれば既済です。坎険はすでに脱し、上下は相孚します。だから飲酒して宴楽し、祝うこと自体に大きな咎はありません。
しかし酒は礼を成すためのものであって、性を乱すためのものではありません。飲酒に節があり、賢者と楽しみを共にすれば、そこには信と礼があります。もし酔って首を濡らすほど沈み、出られなくなれば、節を知らない姿になり、かえって徳を敗り信を失います。初めは孚があるから飲酒したのに、後には飲酒によって孚を失う。「有孚失是」が指すのは、この転倒です。
実際の読み方
時運は険難が平らかになり、人々が喜びをともにする時です。節を知れば大過はありません。戦いは勝って師を返し、飲酒して功を策する時です。経営は厚利を得たあと、入る量を量って出せば富を保てます。
功名は得てまた失う患いがあります。病は飲食の失節によることが多い形です。訴訟は酒から事が起こることがあります。出産については、女児と見る古占が残ります。六十四卦最後の戒めは、完成のあとにも節を知れ、ということです。
高島の占例
明治二十八年七月の夕方、高島が友人と書楼で閑談していた時、新聞号外の声が聞こえました。友人が何事かと占いを求め、未済の上爻が解に変じました。断は、必ず飲酒過度、酔中の溺水に類する禍だというものでした。号外が届くと、それは山陽鉄道の列車転覆で乗客が負傷した記事でした。後に分かったところでは、当時は風雨が激しく、停車を勧める者がいたのに機関士は聞かず、出発前に強い酒も飲んで、そのまま進行して事故に至ったのです。
火水未済:読みの覚え
火水未済は、六十四卦の最後に置かれた、まだ渡り終えていない卦です。終わらないことが、そのまま続きの合図になります。
未完成は、まだ道があるということ
未済は不済ではありません。永久に成らないのではなく、まだ成っていないだけです。六爻の位置はどれも当たっていませんが、陰陽はなお応じ合っています。ここが残っているかぎり、整え直せば完成へ向かえます。 いちばん雑になるのは、あと一歩の近さです。小狐は岸のすぐ手前で尾を濡らしました。渡り終える前に祝わず、物と位置と手順をもう一度つなぎ直します。
押す前に、分ける
象伝は、慎んで物を弁じ、方に居らしむと言います。混乱した局面で最初にすべきなのは、力を入れることではなく、分けることです。何が何か。誰がどこにいるべきか。何を先にし、何を後にするか。 未済の行き詰まりは、資源が足りないからというより、置き場所を間違えているから起きます。人を合わない役に置く。金を違う方向へ使う。言葉を出す場を誤る。順序が入れ替わっている。関係なら感情と事実を、仕事なら目的と手段を、財務なら売上と使える資金を、まず分けます。 分け終えてから動くと、同じ力でも進み方が変わります。九二が輪を曳きながら中道を行くのは、その状態です。
終わりの卦、そして始まりの卦
水火既済とあわせると、既済は成ったあとも緩まず守ること、未済は成る前に諦めず進むことを示し、易が未完成で結ばれる意味を深く読めます。水雷屯とあわせれば、屯は始まりの難しさ、未済は完成直前の不揃いを示すので、起点と終点手前にある二つの難を対照できます。
火水未済:読みの覚え札記を開く
火水未済は、六十四卦の最後に置かれた、まだ渡り終えていない卦です。終わらないことが、そのまま続きの合図になります。
未完成は、まだ道があるということ
未済は不済ではありません。永久に成らないのではなく、まだ成っていないだけです。六爻の位置はどれも当たっていませんが、陰陽はなお応じ合っています。ここが残っているかぎり、整え直せば完成へ向かえます。 いちばん雑になるのは、あと一歩の近さです。小狐は岸のすぐ手前で尾を濡らしました。渡り終える前に祝わず、物と位置と手順をもう一度つなぎ直します。
押す前に、分ける
象伝は、慎んで物を弁じ、方に居らしむと言います。混乱した局面で最初にすべきなのは、力を入れることではなく、分けることです。何が何か。誰がどこにいるべきか。何を先にし、何を後にするか。 未済の行き詰まりは、資源が足りないからというより、置き場所を間違えているから起きます。人を合わない役に置く。金を違う方向へ使う。言葉を出す場を誤る。順序が入れ替わっている。関係なら感情と事実を、仕事なら目的と手段を、財務なら売上と使える資金を、まず分けます。 分け終えてから動くと、同じ力でも進み方が変わります。九二が輪を曳きながら中道を行くのは、その状態です。
終わりの卦、そして始まりの卦
水火既済とあわせると、既済は成ったあとも緩まず守ること、未済は成る前に諦めず進むことを示し、易が未完成で結ばれる意味を深く読めます。水雷屯とあわせれば、屯は始まりの難しさ、未済は完成直前の不揃いを示すので、起点と終点手前にある二つの難を対照できます。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
関連記事
本卦の問い
未済が出ました。もう間に合わないということですか。
逆です。未済は不済ではありません。まだ成っていないだけで、応じ合う関係は残っています。位置を正し、道具を補い、時機を待てば、そのまま既済へ移れます。
あと少しなのに、うまく着地しません。
小狐の尾がその形です。終盤ほど検査を省き、条件を上乗せし、勝手に振る舞いたくなります。最後の一段だけは、速さより安定を取ります。九二が輪を曳くのは、そのためです。
終わったので、そのまま打ち上げに行ってよいですか。
上九は、信をもって飲む酒に咎はないと言います。問題はその先で、首まで濡れるほど酔えば、積んできた信が消えます。六十四卦の最後の一句が節度の話であることには、意味があります。
未済が出ました。もう間に合わないということですか。開く
逆です。未済は不済ではありません。まだ成っていないだけで、応じ合う関係は残っています。位置を正し、道具を補い、時機を待てば、そのまま既済へ移れます。
あと少しなのに、うまく着地しません。開く
小狐の尾がその形です。終盤ほど検査を省き、条件を上乗せし、勝手に振る舞いたくなります。最後の一段だけは、速さより安定を取ります。九二が輪を曳くのは、そのためです。
終わったので、そのまま打ち上げに行ってよいですか。開く
上九は、信をもって飲む酒に咎はないと言います。問題はその先で、首まで濡れるほど酔えば、積んできた信が消えます。六十四卦の最後の一句が節度の話であることには、意味があります。
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