六十四卦

六十四卦 意味・読み方

水火既済|意味・卦辞爻辞解説(すいかきせい)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

既済はすでに渡り終えた卦です。初めが吉なぶん、終わりの緩みがいちばん危うくなります。

卦象と卦名

既済は上卦が坎で水、下卦が離で火です。水は下へ行き、火は上へ行きます。その水が火の上に置かれ、火が水の下に置かれるので、二つは互いの働きを助けます。水火はもともと相克しますが、正しい位置に置かれれば相済います。水は火を得て烹飪の功を成し、火は水を得て燃え過ぎません。この状態では陰陽がそれぞれの位に安んじ、仕組みは完成して見えます。だから既済と呼びます。

卦の中心的な意味

済は渡ること、既はすでに、です。既済とは、すでに河を渡り、すでに事を成し、一つの段階を終えた形を指します。ただし既済は、ここから永久に太平だという保証ではありません。成っていない間、人は努力します。成ったあと、人は志も気も満ちて備えを緩めます。乱れは、その安定のなかから生まれます。

卦辞は「既済は亨ること小なり。貞に利あり。初めは吉、終わりは乱る」と言います。既済も亨りますが、その亨は大きく拡げる亨ではなく、小心に正を守る亨です。初めが吉なのは、危険を渡ったばかりだからです。終わりが乱れるのは、成功したと思って予防を忘れるからです。既済の知恵は祝勝の技ではなく、成ったものを保つ技です。

向いている問い

既済を得たときは、締め、点検、維持、保養、防備、後の手当てに向きます。大きく改めることにも、手を離すことにも向かない時期です。

新しい仕組みを動かしたあとは監視を続け、婚姻が安定したあとも営みを絶やさず、病が癒えたあとも養生し、勝利のあとも後患を防ぎます。既済がいちばん恐れるのは、成らないことではありません。成ったあとに乱れることです。

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卦辞

一言で読む

成った直後は吉です。守りを緩めた瞬間から、終わりの乱れが始まります。

原文

既済:亨小。利貞。初吉終乱。

書き下し文

既済は、亨ること小なり。貞に利あり。初めは吉、終わりは乱る。

現代語訳

既済は少し通じます。正しさに利があります。初めは吉で、終わりは乱れます。

卦辞の読み解き

すでに成ったものは小さく通じます。ただし最後まで正しく守らなければ乱れます。卦辞はその二つを一息で告げます。

既済の亨通は、すでに成ったものの亨通です。好きなだけ広げてよい亨通ではありません。坎水と離火が交わって働きを成し、さまざまな務めが整うので亨ります。それでも、その亨通のなかでこそ慎重に正しさを守る必要があります。形が満ちた時ほどあふれやすく、成ったものほど壊れやすいからです。

既済の時には自分の亨通を誇らず、かえって自分の正しさを励まします。初めにも正を守り、終わりにも正を守ります。長く正しさを保てなければ、亨通は続かず、すぐ後ろに乱れが来ます。もっとも整った卦に見えて、実際にはもっとも警戒の要る卦です。

人の営みにもよく当てはまります。人は危険を脱したばかりの時には慎みます。ところが事業が成り、婚姻が安定し、病が癒え、官位を得て、財が足りると、最初の苦難を忘れます。災いはしばしば安らかになった時に潜み、綻びは成ったあとに生じます。

実際の読み方

事業を問うなら、既済が命じるのは突進ではなく保全です。関係なら、もう良くなったからと放置せず、意思疎通を保ちます。健康なら、大病が癒えた直後ほど欲や疲労を慎みます。

財なら、利益のあとに余地を残しておきます。訴訟や衝突なら、すでに平らかになったものへ、もう一度火をつけないようにします。

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彖曰

一言で読む

位はすべて整っています。だからこそ、そこで止まれば道は窮まって乱れます。

原文

既済、亨、小者亨也。利貞、剛柔正而位当也。初吉、柔得中也。終止則乱、其道窮也。

書き下し文

既済は亨るとは、小なる者亨るなり。貞に利ありとは、剛柔正しくして位当たればなり。初め吉とは、柔中を得ればなり。終わりに止まれば則ち乱るとは、其の道窮まればなり。

現代語訳

既済で通じるのは、小さいものが通じることです。正しさに利があるとは、剛柔が正しく位に当たるからです。初めは吉とは、柔が中を得るからです。終わって止まれば乱れるとは、その道が窮まるからです。

彖伝の読み解き

形は整い、事は成っています。しかしそこで止まれば乱れへ転じます。彖伝はその一点を突きます。

序卦伝は、人に過ぎた才徳があってこそ物事を成し世を救えるので、小過の後に既済が来ると言います。既済と未済はともに易の最後に置かれ、坎離、水火の象を取ります。水火は人生の大用であり、天地の大機です。互いに助け合えば万事が成り、背き合えば互いに傷つけます。

既済が成るのは、六爻の陰陽がそれぞれ位を得て、陽は陽位に、陰は陰位にあり、上下が相応しているからです。制度、人、職責、秩序がみな整ったように見える形です。

ところが彖伝はすぐ「終わりに止まれば則ち乱る」と続けます。既済そのものに欠点があるわけではありません。どんな完成状態も、極まれば未済へ向かうからです。天下に永遠に乱れない治はなく、永遠に維持を要しない仕組みもありません。聖人は既済を見て、人が喜ぶ時にかえって憂えます。未治はまだ治めやすく、已治は保ちにくいからです。

六爻は、完成後の維持の順序を示しています。初は渡りの始めで、力を尽くして危険を脱します。二は渡った途中で、小さな失いは追いません。三は大難を越えるのに長くかかり、小人を用いてはならないと戒めます。四は全盛にあって終日戒めます。五は完成後の福を受けますが、真心のこもった簡素な祭りが奢った礼に勝ります。上は完成の極みで、すでに危険へ転じています。全体が、成った事をどう保つかを説く卦です。

実際の読み方

既済を読む時は、完成したところから運用が始まるという心構えで見ます。契約が成ったあとは履行、結婚のあとは経営、病が癒えたあとはリハビリ、勝利のあとは善後、利益のあとは危険管理です。

既済は終わりを告げる卦ではありません。建てる段階から、守り維持する段階へ移る合図です。

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象曰

一言で読む

水と火が助け合う配置は、少し狂えば互いを壊します。だから先に防ぎます。

原文

水在火上、既済、君子以思患而預防之。

書き下し文

水、火の上に在るは既済なり。君子以て患いを思いて預め之を防ぐ。

現代語訳

水が火の上にあるのが既済です。君子はこれを見て患いを思い、あらかじめこれを防ぎます。

象伝の読み解き

象伝が言うのは一事です。成った時ほど、後の患いを先に考えて防ぐことです。

水が火の上にあり、配置が正しければ烹飪の功を成します。配置が悪ければ、水は火を消し、火は水を沸かして溢れさせます。互いに助け合う関係のなかに、もともと相害する可能性が潜んでいます。

君子はこの象を見て、既済を頼れる太平とは見ません。むしろ危険が生まれ得る時と見ます。坎険が外にあるのは、患難がなお外にあるからです。離明が内にあるのは、心中で明らかに先を思うべきだからです。禍は不測に生じ、害は安定のなかに伏します。先に危険を考え、先に防線を置けば、初吉を保ち、終乱を止められます。

既済の大象は今でもそのまま通じます。仕組みが正常に動く時ほど、控えを取っておきます。工事が終わったあとほど点検します。洪水が引いたあとほど堤を修めます。関係が和したあとほど旧病の再発を防ぎます。組織が目標を達したあとほど、驕り、功の争い、緩みに備えます。

実際の読み方

この卦でいちばん大切な動作は予防です。制御を失いやすい箇所を洗い出し、責任者を定め、余裕を残し、応急策を用意します。

水火の均衡が崩れてから救おうとしてはいけません。既済のうちに患いを防ぐほうが、未済へ転じてから手当てするより、はるかに軽い労で済みます。

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占断

一言で読む

よい、ただし緩めるな。既済の答えは、たいていこの一言に収まります。

総合的な占意

既済は悪い卦ではありません。ただし、その吉には必ず警戒が伴います。すでに結果のある事、完成した事、安定した事を問うなら、答えはたいてい「よい、ただし緩めるな」になります。まだ始まっていない大事を問う場合にも、完成図だけを見ず、完成後の維持費を先に見るよう促します。

項目別の占断

  • 時運と維持:物事はすでに完成し、運も盛んです。得意な時ほど、終わりと後の危険を考えます。
  • 経営と功名:今は時と価格を得て収穫できますが、資金、能力、退路を残し、余力を使い切りません。
  • 戦いと競争:大難が収まっても、後始末、補修、人心の安定を続け、勝利を危険の終わりとは見ません。
  • 婚姻と家宅:家庭や事業が成ったあとほど、制度、意思疎通、修繕を長く続けます。
  • 病・訴訟・出産:大病のあとは引き続き養生し、争いを再び起こしません。生まれる子の男女を占う古い断りは、当時の言い伝えとして扱います。

六爻の要点

  • 初九:険を渡り始めた時は車輪を引き止め、少し遅く進むことで軽率な失敗を防ぎます。
  • 六二:小さな物を失っても追わず、大局を守れば、時が巡って自然に戻ります。
  • 九三:大きな難題は長い努力で克服できますが、成功したあとに小人を用いてはいけません。
  • 六四:盛んな時にも繕う布を備え、終日警戒して小さな綻びを大患にしません。
  • 九五:盛大な形式よりも、時に合った簡素で真実な祭りのほうが、実際の福を受けます。
  • 上六:成功したあとも深く進み過ぎて首まで濡れれば、完成した局面が再び危険になります。

実際の読み方

見直し、検収、保守、更新、案件の締め、危険管理にもっとも向きます。祝ったあとすぐ放縦したり、成った土台にさらに無理な重荷を載せたりするのは、既済の意に背きます。

既済が言うのは、河は渡った、今度は船をしっかり繋げ、ということです。

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初爻

一言で読む

輪を曳き、尾を濡らしながら進むので、渡り始めの重さは咎になりません。

原文

初九:曳其輪、濡其尾、無咎。

書き下し文

初九、其の輪を曳き、其の尾を濡らす、咎なし。

現代語訳

その輪を曳きます。その尾を濡らします。咎はありません。

爻辞の読み解き

渡り始めに車輪が引かれ、尾が濡れても、咎はありません。

既済は水を渡る意味を取ります。輪は車輪、尾は馬の尾、あるいは渡る者の後ろです。渡り始めに車輪が水に引かれ、尾が濡れるのは、まだ完全に危険を脱していないしるしです。それでも引き続き力を尽くし、無理に進まず、気を緩めなければ渡り切れます。

象伝は「其の輪を曳くとは、義咎なきなり」と言います。この無咎は、楽をしたから与えられたのではありません。初爻が渡る難しさを知り、車輪を曳く労を引き受け、小さな濡れや困難に耐えるからです。危険を脱したばかりの時にいちばん避けたいのは、もう完全に安全だと思い込むことです。まだ抵抗が残っていると認められる人には、大きな咎がありません。

実際の読み方

時運はまだ完全には危険を脱しておらず、自ら励むべき時です。経営は創業の初めに苦労が多くても、進み続ければ渡れます。功名は先に難しく、後に得ます。

戦いは車が外れ馬がつまずくような危険があっても、勢いを保てば勝てます。家宅は初めて移る時に完全でなくても、住むうえで大きな咎はありません。婚姻は初めの聘礼が吉です。病は初期に危うくても救えることがあります。失せ物は水に濡れており、車中を探すと見つかることがあります。

高島の占例

明治二十一年、ある縉紳が気運を問うて既済の初爻を得ました。高島は、盛運はすでに来て身は泰く時も安いが、険難を脱したばかりなので、なお小さな災いや阻みがあると読みました。明後の二、三年は慎重にし、四年後に吉福が来て、往く所に不利がないと断じています。

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二爻

一言で読む

覆いを失っても追いません。七日めぐれば、失せ物のほうが戻ってきます。

原文

六二:婦喪其茀、勿逐、七日得。

書き下し文

六二、婦其の茀を喪う、逐う勿かれ、七日にして得。

現代語訳

婦人がその茀を失います。追ってはいけません。七日にして得ます。

爻辞の読み解き

覆いを失っても追わずにいれば、七日で戻ります。爻辞の要はそこにあります。

茀は婦人が車に乗る時の覆いです。渡河の途中で覆いを失い、車を止めて追いかければ、かえって大事を遅らせます。急いで追う必要はありません。時が一巡すれば自然に得られます。七日は循環して復る数です。

小さな得失にとらわれて大事を失わない。この爻の眼目はそこにあります。茀を失うのは確かに不便です。しかし今は渡りの途中で、要は大事を成すことにあります。体面、飾り、微物のために止まれば、本当に済うべき事を誤ります。

実際の読み方

時運は小さな得失を気にしなければ、大難を脱し大功を成せます。経営は失ってまた得る象があります。功名は復職、あるいは栄誉を回復することがあります。

戦いは途中で輜重を失っても、七日内に勝つことがあります。婚姻は早ければ七か月、遅ければ七年で再び集まる象です。病は七日で癒えることがあります。失せ物はほどなく得られます。小さな覆いを、渡河より重く見てはいけません。

高島の占例

友人が、ある貴顕は勲章を得ないことを遺憾に思っていると語り、占を求めました。得たのは既済の六二です。高島は、勲章は車の覆いのような栄飾であって、大功大業そのものには関わらない、追う必要はなく、ほどなく自然に得るだろうと断じました。後にその貴顕は果たして勲章を得ました。

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三爻

一言で読む

高宗でさえ鬼方に三年かかりました。勝ったあと誰を使うかで、成果は決まります。

原文

九三:高宗伐鬼方、三年克之、小人勿用。

書き下し文

九三、高宗鬼方を伐つ、三年にして之に克つ、小人は用うる勿かれ。

現代語訳

高宗が鬼方を伐ちます。三年でこれに克ちます。小人は用いてはいけません。

爻辞の読み解き

賢い君でも難敵に克つには長くかかります。しかも成ったあとに小人を用いてはならない、と爻辞は戒めます。

高宗は殷の中興の主、武丁です。鬼方は西方の部族です。賢明な君主が小国を伐つ場合でさえ、克つのに三年かかりました。険を渡り切るのは容易ではありません。九三は内卦の終わりで、初と二の難を経て、初めて本当に渡り成そうとする位置なので、三年克鬼方をたとえに引きます。

「小人は用うる勿かれ」は既済のなかでも重い警告です。艱難の事業は、多く年をかけてようやく成ります。いったん人を誤り、小人を近づければ、成った所から崩れます。苦労して得た成果ほど、後続を私心の狭い者、功を焦る者、手柄を貪る者へ渡してはいけません。

実際の読み方

時運は苦労に耐えれば、謀りは成ります。経営は数年の経営のあとに利があります。功名は辛苦して成ります。戦いは長征で克てますが、軍民は疲れます。

婚姻は三年内に縁が調うことがあります。家宅は三年後なら住むのに向きます。病は一時無事でも、長引けば保ちにくくなります。訴訟は三年で終わることがありますが、小人がまた事を生むのを防ぎます。

高島の占例

占例1

商人が謀事の成否を問うて、この爻を得ました。高島は、その謀りは容易な事ではなく、早ければ三か月、遅ければ三年でようやく成ると読みました。成ったあとの二年は大吉ですが、必ず正しい人とともに謀るべきで、小人と謀れば敗れると断じています。

占例2

足尾鉱毒事件の紛擾についての見立ては、この害が一日で生じたものではなく、治めるには有能な人材を要し、小人の煽動を防がねばならないというものでした。堤防を修築し、坎水の害を断って、初めて収まります。

次へ:四爻

四爻

一言で読む

美しい衣の下に繕う布を忍ばせておくほど、全盛の日には終日の用心が要ります。

原文

六四:繻有衣袽、終日戒。

書き下し文

六四、繻に衣袽有り、終日戒む。

現代語訳

華美な衣の中にも破れた綿があります。終日、警戒します。

爻辞の読み解き

爻辞が求めるのは一事です。美しい衣にも破れ布を備え、一日中用心することです。

繻は美しく彩られた衣物と見ることができ、袽は破れた布、古びた綿です。四爻は内外卦の境にあり、離明から坎険へ入る所に当たります。既済の盛んな時、衣冠文物は新しく輝いています。しかし天命は無常で、新しいものは古くなり、盛りは衰えへ転じます。時に応じて補わなければ、華服もすぐ破れ綿になります。

もう一つよく用いられる解釈では、袽は船の漏れを塞ぐ破布です。既済は水を渡る卦です。船が中流にあって小さな漏れができれば、すぐ破布で塞がなければなりません。高島も占例ではこの読みを用い、治水や航行を断じています。二つの解釈は合わさって同じ一点に行き着きます。既済の盛りは、一日中、漏れ、壊れ、古びを防ぐ時だということです。

実際の読み方

時運はまさに全盛ですが、予防を欠けば衰えはすぐ来ます。経営は船が中流で漏れるようなものなので、急いで繕います。功名は急に賜られ、また急に奪われる恐れがあります。

戦いは勝った時に敗を考えます。婚姻は新しきを喜んで旧きを棄ててはいけません。病は老弱の症が多く、長く保養します。よく晴れた日にも堤を修めることです。

高島の占例

占例1

土木局長の西村捨三が治水を問うて、この爻を得ました。「危き者は之を防ぎ、漏るる者は之を塞ぐ」と読み、治水は地に因って宜しきを制し、砂土木石で穴を補うべきで、要は終日戒めることだという断でした。

占例2

阪田春雄がオーストラリア博覧会のあと予定を過ぎても帰らず、母が憂えて占いました。高島は、船はすでに赤道を過ぎて北洋にあり、船の破漏の患いはあるものの、命には障りないと読みました。後に春雄が帰り、船が赤道以北で暗礁に触れて遅れたと分かりました。

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五爻

一言で読む

牛を供える東隣より、簡素な禴祭の西隣が福を受けます。中身が礼を超えます。

原文

九五:東隣殺牛、不如西隣之禴祭、実受其福。

書き下し文

九五、東隣の牛を殺すは、西隣の禴祭の実に其の福を受くるに如かず。

現代語訳

東の隣人が牛を殺して行う盛大な祭りは、西の隣人の簡素な禴祭に及ばず、後者が実際に福を受けます。

爻辞の読み解き

盛大な儀礼より、簡素でも真実な祭りが福を受けます。爻辞はそこを裏返して見せます。

東隣が牛を殺すのは大礼です。西隣の禴祭は薄い祭りです。それでも真に敬があれば、かえって福を受けます。高島の読みでは、東隣は殷紂、西隣は周文王に当たります。殷は東、周は西です。殷の道はすでに衰えていて、牛を殺して厚く祭っても福を受けにくくなっています。周の徳はまさに新しく、祭礼は簡素でも、時に合い、敬に合い、天意に合うので福を受けます。

この爻は既済後の反転を示します。すでに盛んな者が外の儀式だけに頼れば、すぐ退きます。これから興る者が真心を持ち倹約を守れば、かえって進みます。奢って敬いを欠くより、倹しくして敬うほうがよい。外の礼物が大きいことは、内心が真であることに及びません。

実際の読み方

時運は、すでに盛んな者は退いて倹約を守るべきで、これから盛んになる者には進む望みがあります。経営では、共同者や同業者のなかで、外見が豊かで華美な者が必ずしも頼れるとは限らず、倹約して実質を備える者がかえって利を得ます。

功名は既成の者は慎み、未成の者には望みがあります。婚姻は西隣の縁が吉です。家宅は西側に利があります。病について祈る場合も、形式より真心を重んじます。

高島の占例

高島が横浜の岩井屋へ木材を売ったところ、相手は外見こそ富んでいて実際は困窮しており、木代を滞らせました。占って既済の九五を得ます。岩井屋を東隣、紹介人の橘屋を西隣と見れば、主方は応方に及ばないので、橘屋へ代金を求めるべきだという断になりました。また離火が木を生む象から、橘屋の妻女を通じて交渉し、後に果たして代金を回収しました。

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上爻

一言で読む

尾から始まって、首まで濡れました。ここから先へ進めば、既済は未済へ戻ります。

原文

上六:濡其首、厲。

書き下し文

上六、其の首を濡らす、厲うし。

現代語訳

その首を濡らします。危ういです。

爻辞の読み解き

渡り切ったはずなのに、頭まで水に濡れています。爻辞はそこまで進んだ姿を写します。

初爻は尾が濡れ、まだ渡り始めでした。上爻は頭まで濡れます。すでに極みに至り、もう一歩進めば既済から未済へ転じるような状態です。事は成ったのに止まることを知らず、危険がまず頭上に来ます。

上は首、初は尾で、首尾は相接します。夏と殷の盛りは長く続かず、桀と紂で壊れました。文王と武王の興も、後には幽王、厲王へ降ります。治の日は少なく、乱の日は多い。古今ともに嘆くところです。だから象伝は「何ぞ久しかるべけんや」と言います。既済が上六に至る時、いちばん恐ろしいのは、好運が過ぎたことに気づかず、退くことを知らないままでいることです。

実際の読み方

時運は好運がすでに過ぎ、慎むべき所です。戦いは坎険の極にあり、首領に不利なことを防ぎます。経営は第一回の取引で利を得にくい形です。功名は首位を取ることがあっても、後続を防ぎます。

婚姻は正妻に災があり、再婚には大過がないという古い象があります。家宅は本家筋に不利です。訴訟では首領が保ちにくくなります。病は頭面の病が危うい形です。頂点では一歩退いて身を保つことです。

高島の占例

友人が行運を問うて、既済の上爻が家人に変じました。高島は、上は既済の終わりにあって終わりを保てず、既済は未済へ転じると読みました。前運はすでに過ぎ、後運がまさに来ます。過去の険は平らかになったものの、未来の険は多い。今は運の交わりであり、前運は大いに佳かったが、後運は慎重にして初めて険を出て危を脱せると断じました。

水火既済:読みの覚え

水火既済は、河を渡り終えた地点から始まる卦です。完成は区切りであって、終わりではありません。

完成した日から保守が始まる

既済では、始めが吉でも終わりが乱れやすいと読みます。渡り切った安心が、そのまま備えの緩みに変わるからです。納品、合格、結婚、和解、回復。どれも一つの区切りにすぎず、その翌日から保守と引き継ぎが始まります。 見るのは、漏れ、破れ、慢心、後継の四つです。成果が大きいほど、この四つは成功の陰に隠れます。

予防は、崩れてからでは高くつく

象伝は、患いを思ってあらかじめ防げと言います。水と火が助け合う配置は、少し狂うだけで互いを壊す配置でもあります。仕組みが正常に動いている時に控えを取り、工事が終わったあとに点検し、洪水が引いたあとに堤を修める。順番が逆になると、同じ手当てに何倍もの労がかかります。 六四が繻のなかに破れ布を備えるのも同じ考え方です。船が中流で漏れてから布を探しても、間に合いません。

形より中身が福を受ける

九五は、牛を供える東隣より、簡素な禴祭の西隣が福を受けると言います。すでに盛んな側が形式だけに寄りかかると退き、これから伸びる側が真心と倹約を守ると進みます。 祝賀や表彰の場面で効く読みです。派手さで補おうとしているのか、中身で立っているのか。既済のあとほど、この差がはっきり出ます。

渡り終えた卦と、渡りかけの卦

火水未済とあわせると、既済は成ったあとの乱れを防ぎ、未済はまだ成らないなかにも道を残す卦で、完成と未完成を一組として読めます。地天泰とあわせれば、泰は上下が通じる勢い、既済は物事が完成した状態を示すので、通じる時には流れを、成ったあとには維持を重んじる違いが分かります。

水火既済:読みの覚え札記を開く

水火既済は、河を渡り終えた地点から始まる卦です。完成は区切りであって、終わりではありません。

完成した日から保守が始まる

既済では、始めが吉でも終わりが乱れやすいと読みます。渡り切った安心が、そのまま備えの緩みに変わるからです。納品、合格、結婚、和解、回復。どれも一つの区切りにすぎず、その翌日から保守と引き継ぎが始まります。 見るのは、漏れ、破れ、慢心、後継の四つです。成果が大きいほど、この四つは成功の陰に隠れます。

予防は、崩れてからでは高くつく

象伝は、患いを思ってあらかじめ防げと言います。水と火が助け合う配置は、少し狂うだけで互いを壊す配置でもあります。仕組みが正常に動いている時に控えを取り、工事が終わったあとに点検し、洪水が引いたあとに堤を修める。順番が逆になると、同じ手当てに何倍もの労がかかります。 六四が繻のなかに破れ布を備えるのも同じ考え方です。船が中流で漏れてから布を探しても、間に合いません。

形より中身が福を受ける

九五は、牛を供える東隣より、簡素な禴祭の西隣が福を受けると言います。すでに盛んな側が形式だけに寄りかかると退き、これから伸びる側が真心と倹約を守ると進みます。 祝賀や表彰の場面で効く読みです。派手さで補おうとしているのか、中身で立っているのか。既済のあとほど、この差がはっきり出ます。

渡り終えた卦と、渡りかけの卦

火水未済とあわせると、既済は成ったあとの乱れを防ぎ、未済はまだ成らないなかにも道を残す卦で、完成と未完成を一組として読めます。地天泰とあわせれば、泰は上下が通じる勢い、既済は物事が完成した状態を示すので、通じる時には流れを、成ったあとには維持を重んじる違いが分かります。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

既済はよい卦だと聞きました。安心してよいですか。

よい卦です。ただし条件つきです。初めは吉、終わりは乱ると、卦辞にはっきり書かれています。今のよさは、渡ったばかりだから保たれています。緩めた瞬間から、終わりの側へ動きます。

完成したのに、何を点検すればよいですか。

漏れ、引き継ぎ、支払い、記録、後継、そして休息です。六四が終日戒めるのは、まだ壊れていない箇所に手を入れておくためです。壊れてから直すほうが、いつも高くつきます。

せっかく成功したので、勢いのまま次へ進みたいのですが。

上六が首まで濡れる形になります。渡り切ったあとにさらに押すと、既済は未済へ戻ります。到達したら、進む力の一部を点検と維持へ振り分けます。

大きな仕事が終わり、人を入れ替えます。

九三が念を押すところです。三年かけて克った鬼方も、あとを誤れば崩れます。功を焦る人、手柄を貪る人に後を渡さない。既済でいちばん重い一句がここにあります。

既済はよい卦だと聞きました。安心してよいですか。開く

よい卦です。ただし条件つきです。初めは吉、終わりは乱ると、卦辞にはっきり書かれています。今のよさは、渡ったばかりだから保たれています。緩めた瞬間から、終わりの側へ動きます。

完成したのに、何を点検すればよいですか。開く

漏れ、引き継ぎ、支払い、記録、後継、そして休息です。六四が終日戒めるのは、まだ壊れていない箇所に手を入れておくためです。壊れてから直すほうが、いつも高くつきます。

せっかく成功したので、勢いのまま次へ進みたいのですが。開く

上六が首まで濡れる形になります。渡り切ったあとにさらに押すと、既済は未済へ戻ります。到達したら、進む力の一部を点検と維持へ振り分けます。

大きな仕事が終わり、人を入れ替えます。開く

九三が念を押すところです。三年かけて克った鬼方も、あとを誤れば崩れます。功を焦る人、手柄を貪る人に後を渡さない。既済でいちばん重い一句がここにあります。