六十四卦 意味・読み方
山天大畜|意味・卦辞爻辞解説(さんてんたいちく)
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
山天大畜は、剛健な力をいったん止めて養い、時が熟してから大きく用いる卦です。
卦象と卦名
大畜は上が艮山、下が乾天です。乾は剛健で、動き、前へ進もうとします。艮は山で、止まり、収め、重く落ち着きます。天は本来、休まず運行しますが、この卦では大きな天の力が山の中に収められているようです。だから大畜と言います。畜の働きは三つあります。焦って進むのを止め、徳を蓄え、才力を養う。その三つです。
卦の中心的な意味
大畜と小畜は、はっきり分けて読みます。小畜は一陰が三陽を畜えるので、力はまだ弱く、小さく引き留めるだけです。大畜は艮山が上にあり、厚く実で、乾天の強い動力を本当に畜えられます。雑卦伝の「大畜は時なり」は、この卦の中心です。力が使えないわけではありません。時が来るまで乱用しないだけです。
無妄の後に大畜が来る配列にも意味があります。無妄が求めるのは、動きが真実で正しいことでした。しかし健やかに動けても、止まることを知らなければ災いになります。そこで大畜は、健やかでありながら止まれることを教えます。才能、資本、名望、気力は、制御、訓練、蓄積を経て初めて大任に耐えます。
向いている問い
大畜を得たら、「突進してよいか」と問う前に、力が本当に蓄えられているかを確かめます。能力、資源、制度、人材、信用、体力は足りているか。訓練は済んでいるか。資本は厚いか。時機は来ているか。
止まるべき時に止まり、養うべき時に養い、待つべき時に待つ。それができる人だけが、後で大きく進めます。この卦のよさは今の強がりにはありません。蓄え切って、将来の大事を担えるところにあります。
卦辞
大きな力を家に囲い込まず、正しく蓄えて公に用いるなら、大難も渡り切れます。
原文
大畜:利貞、不家食吉、利渉大川。
書き下し文
大畜は、貞しきに利あり、家食せざれば吉なり、大川を渉るに利あり。
現代語訳
大畜は、正しく守ることが利です。家で食べているだけでなく、外で用いられれば吉です。大きな川を渡るのに利があります。
卦辞の読み解き
大きく蓄えた力は、正しく保ち、私蔵せず、時が来れば大事に用います。大きく蓄えるには、正を守ることが必要です。自家の飯を食べて自分だけ安らぐのでは足りません。養った徳才が外へ出て用いられるなら吉です。蓄えが十分になれば、大きな川、大きな難事も渡れます。
利貞は飾りの言葉ではありません。大畜は艮で乾を止めます。止め方が正しくなければ、人材を圧するだけになります。進み方が正しくなければ、焦って進めば禍を招きます。正道で養い、正道で待ち、正道で発用する時、初めて大畜です。
家食せずが、この卦辞の要です。蓄えた徳を朝廷に用い、賢を養い、自分の家だけで食べてしまわない。能力が自分の安定のためだけに使われるなら、それは小用にとどまります。修養、技術、資源、信用が、公共の責任、組織の責任、専門的な責任を担えるところまで育てば、家食せずの吉です。
大川を渉るに利ありという一句は、大畜が止まりきりの卦でないことを示します。蓄えるのは用いるためで、止まるのは通るためです。徳才、資本、制度、船、楫、人、糧が備わって初めて川を渡れます。備えずに渡れば、ただの冒険です。備えたのに渡らなければ、所蓄を無駄にします。
実際の読み方
仕事では、今の食い扶持を守る段階か、より大きな職責を担える段階かを見ます。投資では、資本とリスク管理が厚いかどうかを見ます。関係では、信頼が難関を共に越えられるほど養われているかを見ます。大きな事業では、先に蓄え、先に正し、先に人を養います。
大畜は準備なしの冒険を認めません。とはいえ、準備が満ちた後の大用まで恐れる卦でもありません。
彖曰
剛健を厚く止められるからこそ才は日ごとに磨かれ、時が来れば大事に用いられます。
原文
大畜、剛健篤実輝光、日新其徳、剛上而尚賢。能止健、大正也。不家食吉、養賢也。利渉大川、応乎天也。
書き下し文
大畜は、剛健篤実にして輝光あり、日に其の徳を新たにし、剛上りて賢を尚ぶ。能く健を止むるは、大いに正しきなり。家食せざれば吉なるは、賢を養えばなり。大川を渉るに利ありとは、天に応ずればなり。
現代語訳
剛健で篤実なので、光が輝き、その徳は日ごとに新しくなります。剛が上にのぼって賢者を尊び、健やかな力を止められるのは大きく正しいことです。家で食べないのは賢者を養うからで、大川を渡るのに利があるのは天に応じるからです。
彖伝の読み解き
大畜は強い力を正しく止め、賢を養い、天の時に応じて大事へ向かいます。内に乾があるので剛健、外に艮があるので篤実です。剛健だけなら急ぎ、外へ走りすぎます。篤実だけなら停滞します。大畜ではこの二つが合うため、内に力があり、外に落ち着きがあり、徳業の光が日に新しくなります。
剛上りて賢を尚ぶとは、上九の剛が高い所に居り、賢を尊ぶことを言います。能く健を止む、大正なりとは、艮が乾を止め、しかも正しく止めることをいいます。大畜は、下の進取心をただ押さえつける卦ではありません。政府、上位者、父母、指導者が、下の人の出頭を恐れて抑え込むなら、それは畜というより圧です。人材を見つけ、養い、成熟を待って用いるのが大畜です。
家食せず、吉を、彖伝は養賢と説明します。大川を渉るに利ありは、天に応ずることです。賢を養うのは私蔵のためではありません。天時に応じて世務を成し遂げるためです。本当に大川を渡る人は、平素すでに徳、才、器具、組織を備えています。
六爻を一つの道として見ると、初九は危険を知って自ら止まり、九二は車の輹が外れたように時勢上進めないことを知ります。九三は良馬となりますが、なお日々車馬と護衛を訓練します。六四は童牛の角が伸びる前に牿を加え、早く衝突を防ぎます。六五は豕の牙を根本から制して、鋭さと躁りを化します。上九では天の衢が開き、蓄えの極みがついに大通となります。
実際の読み方
大畜を読む時は、単純に「止まる」か「進む」かだけを見ません。力が使えるところまで訓練されているか。人材が任せられるほど養われているか。制度が大難を越えられるほどできているかを見ます。
まだ足りなければ止めます。蓄えが満ちたなら、家に私蔵せず、用いるべき所へ出します。大畜の止は、未来の大行のために置かれた止です。
象曰
前人の言行を集めて終わりにせず、自分の徳へ蓄え直す。それが大畜の学びです。
原文
天在山中、大畜、君子以多識前言往行、以畜其徳。
書き下し文
天山中に在るは大畜なり。君子以て多く前言往行を識り、以て其の徳を畜う。
現代語訳
天が山の中にあるのが大畜です。君子はこれを見て、昔の言葉と昔の行いを多く知り、それによって自分の徳を蓄えます。
象伝の読み解き
大きな力を内に収めるように、前人の知恵と実例を自分の徳へ蓄えます。天ほど大きいものが山の中に収められている。これが大畜の象です。天の広大さが失われたわけではありません。いったん収められ、沈み、蓄えられているのです。
前言とは、古人が残した訓戒、言葉、道理です。往行とは、古人が行った事業、功績、失敗、成敗の実例です。君子はこれを多く知ります。ただし狙いは博識の誇示にありません。前人の言行を自分の身に照らし、事に遇う時の判断や節度や責任へ変えるためです。
この読みは現代にもそのまま通じます。歴史を読む、古典を読む、事例を検討する、失敗例を省みる、前人の成功と破綻を研究する。これらはみな前言往行を多く識る営みです。真の大畜を測る物差しは資料の量ではありません。それが人の判断力、節度、徳性になっているかどうかです。
実際の読み方
学習では、新奇な知識だけを追わず、自分の判断へ変えます。管理では前例に当たり、一時の血気で決めません。創業では、前人がどこで勝ち、どこで敗れたかを見ます。修身では、見識を広げつつ落とし所を実にします。
大畜は、知識を蓄えるにとどまらず、知識を徳へ蓄え直す卦です。読んだことが節度に変わり、見たことが責任に変わって初めて、徳が畜えられます。
占断
今は焦って進む時ではありません。先に守って蓄え、満ちたところで通じて大成します。
総合的な占意
これらの占断に共通するのは、すぐ咲かせようとせず、先に根を厚くする姿勢です。戦いは鋭を蓄え、商いは貨と信を蓄え、功名は学と徳を蓄え、家宅は家業を蓄え、関係は信頼を蓄えます。急いで証明したい、急いで外へ出たい、急いで蓄えを現金化したい。そうした気持ちは卦意に反します。
項目別の占断
- 戦いと時運:精鋭を養い、時を待って動く時。今は志が高くても守り、運と福が至ってから進みます。
- 商い:しばらく蓄え、近ければ三か月、遠ければ三年の積み重ねを経て広げます。
- 家宅と功名:山に近い地で家業が隆盛する象です。若い時の才気は妨げられても、三十以後に大任を担う望みがあります。
- 訴訟と病:訴訟は初め屈して後に理を伸ばせます。病は初爻から五爻なら保ちやすく、上爻は寿命の根を慎みます。
- 婚姻と妊産:婚姻はおおむね吉で、妊産は古い占断だと貴い男子と読みます。
六爻の要点
- 初九:勢いがあっても危険が見える初めは、止まれることを利とします。
- 九二:客観的に進めない時は車を止め、力を保って時を待ちます。
- 九三:走れる力が整った時ほど、日々訓練し防備を固めます。
- 六四:荒い力が小さいうちに規矩を置き、強罰なしに患いを防ぎます。
- 六五:牙を折るより、根本の荒さを養い変えて制御します。
- 上九:蓄えが満ちて道が開き、止められていた力を大きく用います。
実際の読み方
目の前の行動では、先に守り、先に練り、先に備えます。長期の発展から見れば、大畜はむしろよい卦です。蓄えるべき材があることを示すからです。
突破の時機は、家食の段階を越えて、大きな責任を担えるかで見ます。大川を渡るための船、人、糧、道がそろっているなら、止から通へ移ります。
初爻
勢いはあっても危うさが見える出発点では、止まれることがいちばんの利になります。
原文
初九:有厲利已。
書き下し文
初九、厲うきこと有り、已むに利あり。
現代語訳
危ういことがあります。止めるのが利です。
爻辞の読み解き
前へ進む力はあっても、危険が見える今は止まるほうがよいでしょう。初九は乾体の最下にあり、陽気が起こったばかりで、性質は剛健、前へ行きたがります。しかし応じる六四は艮に属し、艮は止です。初九が動こうとすれば、すぐ外の制限に当たります。能力に問題があるわけではありません。能力は始まったばかりで、時位がまだ足りないだけです。
有厲は危険があること、利已は止まるのがよいことを指します。初九は危険を知って止まるので、災いを犯しません。創業、求名、出兵、訴訟、遠出の初めに、勢いだけで進むと大きな形勢に押さえられます。先に止まれる人が、未来を残します。
実際の読み方
戦いでは守るのがよく、攻めてはいけません。援助が得られてから進みます。商業では資本がまだ浅いので、慎重に守り、後に助けがあって利を得ます。功名では才学が高くても早く外へ出しすぎず、大器晩成を期します。婚姻では夫が妻に制される象があり、順えば災いはありません。出行はしばらく止まって時を待ちます。病は大きな障りなく保てます。
高島の占例
ある県の士族が気運を占い、大畜の初九を得たことがあります。才力は強いが一時には成りにくく、躁って貴顕に取り入ろうとすれば禍がある、というのが高島の断でした。本人は聞かず、権貴に干謁し、さらに書記官の戒めにも従わず、三日以内に警視庁に拘留されました。後に悔悟し、この爻に感服しました。初九が止まれと言うのは、才がないからではありません。才があっても止まれなければ災いになる、という警告です。
二爻
車の輹が外れて進めない時です。無理をやめて力を保つ判断が、身を守ります。
原文
九二:輿説輹。
書き下し文
九二、輿輹を説く。
現代語訳
車の輹が外れます。
爻辞の読み解き
車軸を留めるものが外れて、車は今、進めません。輿は車、輹は車軸を結び留める部材です。車から輹が外れれば、進みようがありません。九二は剛健で中を得ており、本来は才力があります。しかし正応の六五は大畜の主位にあり、畜止の力が強いところです。九二は勢いに逆らえないことを知り、躁らず止まります。
初九は前に危険があるので自ら止まります。九二は車の進行機構そのものが外れ、客観的に進めません。ここで無理に引けば、車を壊します。九二は中を得ているので過失がありません。時勢が許さない時に車を停めるのは、敗北というより明知です。
実際の読み方
戦いでは鋭進すれば敗れるので、退くことで進みます。売買では、貨物は早めに売り、大利はなくても損を少なくします。家宅は旧家が破れても、守っていれば復興できます。功名は時を待ち、一時を争いません。婚姻は二五が相応じるので貴い縁の象です。病は腹疾が多く、すぐには癒えにくいものの大害は少ないでしょう。訴訟は初め敗れて後に和します。
高島の占例
占例1
ある県人の気運を占ったときは、政府が人才を不要としているのではなく、浮ついて性急に進む人を嫌っているのだ、と高島は読みました。権貴の周りを走り回り、互いに標榜する人は、かえって当道に軽んじられます。九二のように退蔵して時を待つ方が便宜を得ます。
占例2
明治三十年の国家財政を占ったときは、乾を金、艮を蔵と見て、貨幣が政府の軍費や準備に畜えられて商工へ流通せず、百業の進展が阻まれると読み、後に財政と工商の困難がその通り現れました。
三爻
走れる力が整った時ほど、日々の訓練と防備を重ねてから進み出します。
原文
九三:良馬逐、利艱貞。曰閑輿衛、利有攸往。
書き下し文
九三、良馬逐う、艱みて貞しきに利あり。曰く輿衛を閑えば、往く攸有るに利あり。
現代語訳
良馬が追い進みます。艱難を知って正しく守るのが利です。日々、車と護衛を訓練します。往くところがあるのに利があります。
爻辞の読み解き
進める力が出てきても、備えと訓練を怠らなければ進んで構いません。乾は馬です。九三は乾体の上にあり、才徳がすでに成って、良馬が走れるような状態です。逐は追い、並び進むことです。ここでは畜えられるばかりでなく、前へ行く条件が整い始めています。
しかし爻辞はすぐ、艱貞と日閑輿衛を言います。閑は訓練、輿は車、衛は護衛と防備を指します。良馬がいても、車を扱う技術と護衛と防備を毎日練らなければなりません。善く騎る者がかえって馬から落ち、善く泳ぐ者がかえって溺れます。得意で進める時ほど、恐れて備えるのです。
実際の読み方
事業では、時機は近く、進めますが、制度、リスク管理、人員を走りながら訓練します。戦いでは馬到成功の象がありますが、臨事に恐れることが必要です。商いでは、売り手と買い手が同心し、行動が速く、険に遭っても越えられます。功名は青雲の道を得ます。家宅は勤倹で起こり、日に進んでも安きに危うきを忘れません。婚姻は男女の志が合って大吉、病は慎んで養えばよいでしょう。
高島の占例
占例1
友人が馬の購入について占い、九三を得たことがあります。馬は確かに健やかで速く走るが、御しにくく、訓練と防備が要ると高島は読みました。話が終わらないうちに馬が引かれて来ました。友人が試乗しようとすると、岸辺につないだ船の大きな音に驚いて、馬は後退して溝へ落ちました。友人は購入をやめました。
占例2
別の士族の気運を占ったときは、その人に任用すべき才があり、艱難の任に耐えて守衛の職に就くと読みました。後にその人は警部となっています。
四爻
荒い力は小さいうちに規矩を置けば、強く罰しなくても大吉へ向かいます。
原文
六四:童牛之牿、元吉。
書き下し文
六四、童牛の牿あり、元いに吉なり。
現代語訳
小牛に牿を付けます。大いに吉です。
爻辞の読み解き
力がまだ幼く荒れ切らないうちに制すれば大吉です。童牛は小牛、牿は牛馬を制する横木や囲いです。牛がまだ成長して衝突の性を強くする前に、あらかじめ制します。手数は最も少なく、しかも最も吉です。天下の事は、未然に防ぐのはたやすく、すでに成ったものを制するのは難しい。奸邪、衝突、躁暴が形になる前に化すれば、上は厳刑を用いず、下も傷つきません。
六四は艮の始まりで、初九を畜止する位置です。初九の陽剛はまだ幼く、童牛のようです。六四は柔で位を得ており、始まりの所でこれを制せます。事後に罰するより、早く教え、早く風土を作り、早く危険を管理するほうがよい。子どもでもチームでも事業でも国家でも、小さなうちに引いた境界はそのまま保護になります。
実際の読み方
教育や管理では、問題が小さいうちに規則を置きます。商業では、新しい貨物や時節の貨物は先に蓄え、価格を待ちます。功名では、少年の才器は将来用いられますが、まず規範を受けます。家宅では新宅の前や道路に阻みがあっても後に通じます。病では幼子の災いに注意します。訴訟は拘束を受ける象がありますが、後には解けます。婚嫁は少年の婚が吉です。
高島の占例
占例1
攝綿土の販売を占って六四を得たことがあります。攝綿土は石灰や粘土などから作り、長く置くと石のように固まる品でした。大畜の象から、今年は急いで売らず、牿をかけるように倉へ蓄え、後に価格と用途が通じた時に売るべきだと高島は読み、実際その通りになりました。
占例2
韓国とロシアの交際を占ったときは、韓国を内卦乾の進もうとする力、ロシアを外卦艮の押さえる力と見ています。ロシアが大国の威力で韓国を制するのは童牛に牿を加えるようなもので、韓国が早く策を立てなければ、西伯利亜鉄道完成後は保全が難しいと読みました。
五爻
鋭い牙を折るより、荒さの根を養い変えるほうが本当の制御になります。
原文
六五:豶豕之牙、吉。
書き下し文
六五、豶豕の牙あり、吉なり。
現代語訳
勢いを制された猪の牙です。吉です。
爻辞の読み解き
突進する荒さを根本から制すれば吉です。豶豕は小猪、また処置された猪です。牙の字については高島の考証が細かく、ここでは牙そのものに加えて、互に通じる遮り木、隔て、突進を止めるものの意味も見ています。眼目は、牙が長じてから力ずくで折る所にはありません。根本から暴れ突く性を制して、暴衝できないようにする所にあります。
六五は尊位にあり、下の九二と応じます。九二は乾陽の才ですが、まだ若く、稚く、任せれば焦って進み衝突する恐れがあります。六五はこれを畜止しつつ、同時に禄を与えて養い、潜修させて器にします。だから吉であり、慶びもあるのです。よい指導者は人才を殺しません。食べるもの、規矩、訓練、待つ場を与えて、鋭さを器量へ変えます。
実際の読み方
戦いでは、敵軍が野猪のように突進することを防ぎ、険湿の地にあらかじめ禁制を設け、謀ってから動きます。商業では、初めての貿易のように資本がまだ小さく、約束や制限を受ける方がかえって吉です。互市通商の象もあります。功名では、少年が名を求めて躁りやすいので、まず自分で止まることを知ります。家宅は前に二つの水が交わる象で、多くは吉です。病は木旺水虧に属するので、節制して調えます。婚姻は木水相生、制伏の形もあって大吉。妊産は、古い断だと女子と見ます。
高島の占例
明治二年の時勢を占って六五を得たことがあります。友人は、箱館平定の後に各藩士族が政府へ集まり、争権や乱が起こらないかと尋ねました。下乾を各藩士族、上艮を政府と見れば、政府はその逸りを止め、しかも禄を与えて養い、英才を隠居潜修させて大器に育てる、と高島は読みます。後にその通りとなり、友人はたびたびこの占に感服しました。
上爻
蓄えが満ち切ったところで天の大路が開き、止められていた力が大きく通ります。
原文
上九:何天之衢、亨。
書き下し文
上九、何ぞ天の衢なる、亨る。
現代語訳
なんと天の大通りであることか。通ります。
爻辞の読み解き
蓄えが極まって天の大路が開き、大きく通ります。ここでの何は、荷う、天の助けを受ける意味にも読めます。衢は四方へ通じる大路です。天の衢とは、広く開けて妨げのない道です。大畜が上九に至ると、もうさらに押さえ込む段階ではありません。畜えが極まり、通じる時です。
艮の畜は、永久に行かせないために置かれたのではありません。才を養成して、後に大行させるためのものです。四は初を畜え、五は二を畜え、上は三を畜えます。上九に至ると、九三の良馬はすでに訓練を終え、車馬と護衛も備わり、道が開いて通行無碍となります。象伝は、道が大いに行われると言います。
戦いでは、旌旗が道に満ち、一戦して成功する象があります。経営では、前の苦しい貿易が、畜えの極みに至って大きな利を得ます。功名は青雲の道を得ます。家宅は大道のそば、また天祐を得る象です。婚姻は天作の合で、妊産は古い例に従えば男子と読みます。
実際の読み方
上九を得たら、自分が本当に蓄え切ったかを見ます。訓練も制度も経験もないのに気分だけで進むなら、その道は天衢とは言えません。長く積み、制約を受け、艱難を知り、備えが整っているなら、ここで大いに行けます。
大畜はここで、止から通へ移ります。長い待機は道を閉ざすためのものではなく、大道を開くための時間でした。
高島の占例
明治十四年の国会開設請願では、賁から大畜へ変じる象で政治時勢を推し、明治二十年が大畜の上爻に当たると高島は見ました。剛健に事を行ってきた者たちは艱難を経て時勢を知り、もはや畜止される必要がなく、道は豁然と開きます。とりわけ鉄道建築が盛んになる、という読みでした。後に明治二十年には全国の人心が鉄道へ向かい、株式が流行し、建設が盛んになりました。まさに天衢の象です。
山天大畜:読みの覚え
山天大畜は、大きな力をいったん止めて養う卦です。能力を押し殺すためではなく、時が来たときに公へ用いるために蓄えます。
止めることが、養うことになる
大畜では、止めることがそのまま成長の一部になります。知識、徳、資金、人材を内に蓄え、日々磨き、準備が満ちてから大きな道へ出ます。力があるから走ってよい、とは限りません。大きな力ほど、訓練と防備を済ませてから外へ用いる必要があります。 ですから、いま止められている力が何を養うためのものかを考えます。妨害としか見えなかった制約が、準備期間として読み直せることは少なくありません。
蓄積を腐らせない
資格取得、研究、資金準備、人材育成では、急な成果より蓄積を重んじます。とはいえ蓄えは、家の中で眠らせておくものでもありません。時が来たら公の道へ出します。 出口を考えないまま抱え込むと、大畜の力はただ重くなります。走る前に、弱点、手順、協力者、資金の持ちを点検しておきます。
小畜と無妄から照らす
風天小畜とあわせると、小畜は細かな所で牽制し、大畜は大きな構えで力を養う卦だと分かります。天雷無妄とあわせれば、無妄は動機に偽りがないこと、大畜は力を正しく養えることを求め、心を正してこそ蓄えが生きると見えてきます。
山天大畜:読みの覚え札記を開く
山天大畜は、大きな力をいったん止めて養う卦です。能力を押し殺すためではなく、時が来たときに公へ用いるために蓄えます。
止めることが、養うことになる
大畜では、止めることがそのまま成長の一部になります。知識、徳、資金、人材を内に蓄え、日々磨き、準備が満ちてから大きな道へ出ます。力があるから走ってよい、とは限りません。大きな力ほど、訓練と防備を済ませてから外へ用いる必要があります。 ですから、いま止められている力が何を養うためのものかを考えます。妨害としか見えなかった制約が、準備期間として読み直せることは少なくありません。
蓄積を腐らせない
資格取得、研究、資金準備、人材育成では、急な成果より蓄積を重んじます。とはいえ蓄えは、家の中で眠らせておくものでもありません。時が来たら公の道へ出します。 出口を考えないまま抱え込むと、大畜の力はただ重くなります。走る前に、弱点、手順、協力者、資金の持ちを点検しておきます。
小畜と無妄から照らす
風天小畜とあわせると、小畜は細かな所で牽制し、大畜は大きな構えで力を養う卦だと分かります。天雷無妄とあわせれば、無妄は動機に偽りがないこと、大畜は力を正しく養えることを求め、心を正してこそ蓄えが生きると見えてきます。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
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本卦の問い
大畜が出たら、今は何もしないほうがよいのですか。
手を止めるという意味ではありません。外へ出す動きを控え、その分を訓練、資金、人材、信用の蓄積に回す時期です。蓄えが満ちれば、この卦は大川を渡ることまで許します。
準備が足りたかどうかは、どこで見分けますか。
家食せずが目安になります。自分の食い扶持を守るだけの段階か、より大きな職責を引き受けられる段階か。船も人も糧も道もそろっているなら、止から通へ移ってよい頃合いです。
大畜が出たら、今は何もしないほうがよいのですか。開く
手を止めるという意味ではありません。外へ出す動きを控え、その分を訓練、資金、人材、信用の蓄積に回す時期です。蓄えが満ちれば、この卦は大川を渡ることまで許します。
準備が足りたかどうかは、どこで見分けますか。開く
家食せずが目安になります。自分の食い扶持を守るだけの段階か、より大きな職責を引き受けられる段階か。船も人も糧も道もそろっているなら、止から通へ移ってよい頃合いです。
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