六十四卦

六十四卦 意味・読み方

地火明夷|意味・卦辞爻辞解説(ちかめいい)

資料説明周易と高島易断をもとに整理
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。

引

一言で読む

光が傷つく卦です。明るい徳が暗い場に押さえられる時は、輝きを収めて内の明を守ります。

卦象と卦名

明夷は上が坤、下が離です。離は火であり光、坤は地です。火が地の下に入ると、光は土に覆われて上へ燃え上がれません。前の晋は明が地上に出る卦でしたが、明夷は反対に、明が地中へ入り、光が傷つく卦です。

卦の中心的な意味

序卦伝は、晋は進むことであり、進めば必ず傷つく所があるので明夷を受けると言います。人が進み、目立ち、功を立てれば、嫉妬や圧迫に遭うこともあります。明夷の時は、暗いものが上にあり、明るいものが下にあります。有徳の人が正面から自分の明を押し出せば、かえって深く傷つきます。

卦辞は「明夷は艱貞に利あり」と言います。光が傷つく時、利は艱難のただ中で正を守るところにあります。艱は光を収めること、貞は正志を失わないことを指します。明を捨てるわけではありません。暗い場所に明を壊されないよう、しばらく内へ蔵しておきます。

向いている問い

明夷を得たら、職場や関係で上が暗く、正しいことが通りにくい可能性を見ます。才能や本音を全部出すより、証拠、実力、味方、体力を保ちます。

ただし、低く構えることと、周囲の暗さに染まることは違います。外は柔順にしていても、内の判断は明るく保ちます。言わずにおくことはあっても、心の正まで消しはしません。ここが明夷の実用の勘所です。

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卦辞

一言で読む

賢さを見せる時ではありません。傷つきやすい時に明を隠し、正を守るのが利です。

原文

明夷:利艱貞。

書き下し文

明夷は、艱みて貞しきに利あり。

現代語訳

明夷は、艱難の中で正しく守ることが利です。

卦辞の読み解き

光が傷つく時は、苦しい状況のただ中でこそ正を守ります。平穏な時に守る正ではありません。光が傷つき、押さえられ、誤解される時に守る正です。白昼のようにすべてを明らかにしてよい時ではありません。明を心に蔵し、外の衝突を避けることで、かえって正を保てます。

火が地中に入り、土に覆われるので、離火が傷つきます。読みはここから始まります。傷ついた火が坤地から飛び出して自分の明を誇れば、傷はさらに深くなります。だから晦く蔵します。艱は彩りを収めること、貞は光を匿しながら正を曲げないことです。退いて傷を避け、潜んで利を得る。これが用晦の道です。

肝心なのは、明夷が愚かになれと言う卦ではないところです。外では黙り、争わず、柔らかく構えて構いません。けれども内の明を消してはいけません。外晦而内明、外は晦く、内は明るい。そこで初めて艱貞になります。

実際の読み方

仕事では、能力や計画を全部さらけ出さず、必要な分だけ出します。争いでは、正面衝突を避けます。関係では、すべてを言い切らず、相手と時機を見ます。

修身では、暗い環境にいるからといって、自分の心まで暗くしません。明夷は隠れる卦であって、腐る卦ではありません。

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彖曰

一言で読む

外は柔順に低く、内の明は失わない。その人だけが大難の中で正を守れます。

原文

明入地中、明夷。内文明而外柔順、以蒙大難、文王以之。利艱貞、晦其明也、内難而能正其志、箕子以之。

書き下し文

明地中に入るは明夷なり。内は文明にして外は柔順、以て大難を蒙る、文王之を以てす。艱みて貞しきに利ありとは、其の明を晦ますなり、内に難ありて能く其の志を正す、箕子之を以てす。

現代語訳

明が地の中に入るのが明夷です。内には文明を持ち、外には柔順を用いて、大きな難を受けます。文王はこれを用いました。艱難の中で正しく守ることが利なのは、その明を晦ますからです。内側の難の中でも志を正しくできます。箕子はこれを用いました。

彖伝の読み解き

外は柔順にし、内の明を守ることで大難を越えます。

文王は外臣として紂王に遇い、羑里に囚われましたが、忠を失わず、外は柔順、内は文明で、大難を受けても徳を傷めませんでした。箕子はさらに難しい立場です。紂王の宗親であり、諫めても聞かれません。去れば君の悪を明らかにしすぎ、留まれば禍が迫ります。そこで髪を乱し、狂ったふりをし、奴となって明を晦まし、正志を守りました。

文王も箕子も、屈服したわけではありません。用晦したのです。変じても正を失わず、危うくても安を保ちます。そのために、才も名声も直言も、あえて深く蔵します。明夷の世では、才を露わにせず、徳を深く隠し、風向きを見て早く退くことが、そのまま正道を保存する方法になります。

六爻を通して見ると、初は賢者が早く去る象、二は文王が傷を受けても壮馬に救われる象、三は南狩で大首を得る象、四は微子が心を知って門庭を出る象、五は箕子の佯狂守貞、上は紂王の昏暗自墜です。全卦が勧めるのは臆病ではありません。暗い時代に明をどう守るかを教えます。

実際の読み方

明夷を読む時は、忍ぶことと明を消すことを分けます。忍ぶのは、時機が悪いので露出を減らす構えです。明を消すのは、正邪の判断まで捨ててしまう態度です。前者は吉へ向かい、後者は上六の暗へ落ちます。

外は柔らかく、内は澄ませます。進むより保ちます。言い勝つより生き残ります。それが明夷の読み方です。

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象曰

一言で読む

人に臨む時も明察はむき出しにしません。少し晦ましてこそ本当の明になります。

原文

明入地中、明夷、君子以莅衆、用晦而明。

書き下し文

明地中に入るは明夷なり。君子以て衆に莅み、晦きを用いて明らかなり。

現代語訳

明が地の中に入るのが明夷です。君子はこれを見て、人々に臨む時、晦さを用いながら明らかにします。

象伝の読み解き

明察を外へ出しすぎず、少し晦ましてこそ人を治められます。光が地中に入ると、明は外へ出ません。しかし消えたわけでもありません。君子が衆人に臨む時も同じで、明察は必要ですが、それをすべて表に出してはいけません。

不明なら人に欺かれます。かといって明が過ぎれば、人は近づけず、下は身の置き場を失い、上は功を妬みます。用晦而明とは、智を柔らかさの中に置き、鋭さを露わにせず、美を内に蓄えることです。古人が旒や纊で耳目を少し遮り、屏を立てて内外を分けたのも、明を捨てるためではありません。明の使い過ぎを防ぐためです。

今の管理や人間関係でも変わりません。見えていても、その場で全部を言いません。知っていても、相手を逃げ場のない所まで追い込みません。証拠を持っていても、すぐには全部を出しません。真の明は、自分も事柄も生かす形で使われます。

実際の読み方

チーム管理では、欠点を一つずつ暴いて人を潰すより、改善できる余地を残します。職場の争いでは、証拠を保存し、正面からぶつかる時機を選びます。家庭では、分かっていることと、それを言って刺し通すこととを混同しません。

明夷の象が教えるのは、暗い場所で強い光を振り回すことではありません。火種を守って朝を待つ構えです。

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占断

一言で読む

低く構え、傷を養い、正を守る時期です。鋭い光を外へ出しすぎないようにします。

総合的な占意

明夷は道がない卦ではありません。道が明るい表に出ていないだけです。明言しても通らない時は、暗いうちに準備します。強く争って勝てない時は、いったん曲を受け入れて損を止めます。それも明を守るための道です。

項目別の占断

  • 時運:大難の時であり、光を隠して根本を保ちます。
  • 戦い:表に示す道と裏で進む道を分け、隠れた策によって勝機を得ます。
  • 経営と功名:公然と大きな利益や名声を求めるのは難しく、裏で小さな利を守ります。無理に目立てば災いを招きます。
  • 家宅と婚姻:家道が不順で家族が離れる象もありますが、保全は可能です。婚姻は公に整った縁になりにくい時です。
  • 病・訴訟・妊産:肝火の内鬱を調え、訴訟は争いを止めて禍を免れます。妊産は、古い断で女児に当たります。
  • 現代での応用:公の説明が通じない時は、静かに準備し、記録と実力を守り、一時の屈曲で長期の保全を図ります。

六爻の要点

  • 初九:光が傷つき始めたら早く離れ、飢えや批判を受けてもまず身を守ります。
  • 六二:傷が行動に及んだら、強い援助を借りて脱します。
  • 九三:暗黒の主因を捉えられても、改革を急がず段階的に進めます。
  • 六四:暗い中心を見抜いた後は、絡み続けずに離れます。
  • 六五:外には光を隠し、内では正しい意志を守って難を越えます。
  • 上六:自ら闇となって人を抑えれば、最後には高所から落ちます。

実際の読み方

仕事では、まず立場、記録、健康、味方を守ります。感情では、真心が誤解されるなら、説明を増やすより観察を増やします。投資や経営では、表立った拡張を避け、見えない費用や小さな利を丁寧に見ます。

健康では、怒り、睡眠不足、肝火、目や心の疲れに注意します。明夷の実用は、いま光ることにはありません。光を消さずに残すところにあります。

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初爻

一言で読む

傷が浅いうちに飛び去ります。飢えも非難もありますが、明は保てます。

原文

初九:明夷于飛、垂其翼。君子于行、三日不食、有攸往、主人有言。

書き下し文

初九、明夷、飛ぶに于いて、其の翼を垂る。君子行くに于いて、三日食らわず、往く攸有れば、主人言有り。

現代語訳

明が傷つき、飛び去る時に翼を垂れます。君子は行き去り、三日食べません。進む所があれば、主人から言葉があります。

爻辞の読み解き

傷が浅いうちに急いで離れれば、苦しみや非難はあっても明は保てます。翼を傷めた鳥が、翼を垂れて飛ぶ象です。初九は離明の始めにあり、傷はまだ深くありません。早く見切って去れば、明はそのまま残ります。

三日食わずとは、急な出発で食の備えもないこと、またはその国を去ってその粟を食べない義を示します。主人有言とは、元の主人や周囲が何か言うことです。偏っている、頑固だ、時務を知らない。そんな非難を受けるかもしれません。けれども明夷の初爻では、言われることを恐れて居続けるより、早く避ける方が明を保つ道になります。

実際の読み方

時運は初めからよくありませんが、早く避ければ身を保てます。戦いでは軍糧が尽きる象があるので、退くのがよいでしょう。経営では資本が傷み、遠くへ運ぶ途中で難があり、関係者から不満も出ます。功名は翼が垂れて高く飛べません。

婚姻は応じるはずの相手と害し合いやすいものです。家宅は借家や人の家にいる象で、移った方がよい場合があります。初九が教えるのは、何を言われても去るべき時がある、という一点です。

高島の占例

占例1

気運を問うた友人が、明夷が謙に変じる初九を得ました。その人の面には黒気が覆っており、やがて主人と離散するだろうと高島は読みます。去ろうとしても主家に縛られ、前途にも利がありません。身を隠して禍を避けるべきだとしました。

占例2

明治二十八年に日本の気運を占った折には、日清戦後に三国干渉を受けた日本を傷翼の鳥になぞらえています。進んで抗うには兵力が足りず、退いて和すれば国民が不服です。三日食わずは、その日夜の苦しい思案を示すと読みました。

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二爻

一言で読む

足場を傷めたなら、無理に進みません。強い助けを使って早く脱すれば吉です。

原文

六二:明夷、夷于左股、用拯馬壮、吉。

書き下し文

六二、明夷、左の股を夷る、用て拯うに馬壮んなれば、吉なり。

現代語訳

明が傷つき、左の股を傷つけます。救うには強い馬を用いれば吉です。

爻辞の読み解き

行動の足場は傷んでも、強い救援があれば脱け出せます。二は臣位であり、離の中に居て明があります。五とは二五の位で向かい合いますが、どちらも陰なので正応にはなりません。しかも五は坤の暗主です。本来なら助けとなるはずの相手が、かえって明臣を傷つける形になります。股は歩く力であり、支える力です。左股を傷つけられるとは、行動の根、補佐の力、進退の足場が損なわれることを言います。

用拯馬壮は、強い馬で救い出す形を言います。二爻が動けば乾の象があり、乾は馬です。馬が壮んなら、傷ついた人を危険な所から救い出せます。傷は負っても、助けを得て脱け出せるので吉です。文王が紂に囚われた時、文馬九駟を献じて救われた故事にも通じます。

実際の読み方

仕事では、足場や補佐役が傷むことがあります。交通、移動、左側、足腰にも注意します。戦いでは左営が不利でも、馬隊や機動力が働けば敗勢を転じられます。経営では、計画が時に合わず損を受けても、輸送力や機動力のある助けを得れば吉になります。

六二は傷を認める爻です。傷を認めた上で強い救援を使うから、吉へ向かいます。

高島の占例

明治二十二年、ある貴顕の気運を占うと、明夷が泰に変じる六二が出ました。目下の運には損傷と刑克があり、とりわけ左道邪僻の人に近づいてはならない。道を行く時は左足の転倒傷や皮膚の病を防げ。高島はそう読みました。午の年、午の月、午の運は馬の象に通じるので、救助を得やすいともしています。

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三爻

一言で読む

暗い時代にも急所は捕えられます。ただし勝った後に急ぎ続けてはいけません。

原文

九三:明夷于南狩、得其大首、不可疾貞。

書き下し文

九三、明夷、南に狩するに于いて、其の大首を得たり、疾かに貞しくすべからず。

現代語訳

明が傷つく時、南で狩りをして大きな首を得ます。急いで正しさを押し通してはいけません。

爻辞の読み解き

暗い時でも、首悪や急所は捕えられます。ただし、そこから急ぎ続けてはいけません。九三は離の終わりにあり、南は離の方位です。狩りは表向き狩猟ですが、古くは兵を動かすことを隠して言う場合もありました。明夷の時は、正面から軍事や処断を口にせず、南狩と言って用晦します。

大首を得るとは、首悪、魁首、大きな目標を捕えることです。小さな従者をむやみに責めず、根本の頭を取ります。しかし不可疾貞です。正しい処断であっても、急いではいけません。一度うまくいったからと何度も兵を興し人を疲れさせれば、正しさそのものが害になります。

実際の読み方

時運は大きな破れを含みますが、冬や南方に利が出ることがあります。戦いでは、正面から強引に進むより、潜兵や側面の策がまさります。功名では南方文明、大首を得る象があり、首選となることもあります。

ただし、得た後に急いで次を求めてはいけません。九三は、勝てる時ほど一度止まる知恵を求めます。

高島の占例

占例1

明治十六年、ある商人が気運を問い、明夷が復に変じる九三を得ました。目下の運は傷ついてよくないものの、冬に南海道へ行って貨物を買えば大きな取引があり、利を得られます。ただし大利を得た後、再び貪って出かけてはならない。高島はそう読みました。

占例2

明治二十七年八月、平壌進軍を占った時も同じ爻でした。南北から挟み撃ちにするのがよいと読み、後に敵将左宝貴が討たれて、得其大首の象に合いました。

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四爻

一言で読む

暗い内側の本心を見抜いたら、どうするか。留まらず、門を出て離れます。

原文

六四:入于左腹、獲明夷之心、于出門庭。

書き下し文

六四、左の腹に入り、明夷の心を獲て、門庭を出づ。

現代語訳

左の腹へ入り、明夷の心を得ます。そして門庭を出ます。

爻辞の読み解き

暗い内部へ入り、その本心を見抜いたなら、そこから離れます。四爻は離から坤へ入る所です。坤は大腹であり、方位では離の西にあたるので、左とも取ります。左腹に入るとは、暗い内側へ深く入り、その内部の心を知ることです。

ここで得るのは、ただの坤の心ではありません。明夷の心です。つまり、なぜこの局面が明を傷つけるのか、どこに暗さの本心があるのかを見抜きます。見抜いたなら、そこに居続けてはいけません。門庭を出ます。微子が商を去ったように、上を救えないと知って身を清くし、離れる象です。

実際の読み方

時運では、明るい場から暗い場へ入っており、家に閉じこもるより外へ出る方がよいことがあります。仕事では、組織の内情や悪意を知ったら、証拠を持って離れる、部署を変える、距離を置くという判断が要ります。

戦いでは、敵の左営に潜入して機密を得る象です。病は心腹にあり、外へ出て医を求めるのがよいでしょう。六四は、見抜いた後に留まらない爻です。

高島の占例

ある縉紳が気運を問い、明夷が豊に変じる六四を得ました。今は明より暗が、陽より陰が強く、下属の執事の中に腹黒い者がいます。心意を探り、口実を作って長官に告げ、長官に疑わせ、あちこちで掣肘している。高島はそう読み、退身して禍を避けるよう勧めました。後にこの人は友人を通じて長官へ事情を告げ、別局へ移って禍を避けています。

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五爻

一言で読む

内側の難で退けない時は、箕子のように明を晦まして正志を守ります。

原文

六五:箕子之明夷、利貞。

書き下し文

六五、箕子の明夷なり、貞しきに利あり。

現代語訳

箕子の明夷です。正しく守ることが利です。

爻辞の読み解き

内側の難のただ中で、明を隠しながら正を守ります。箕子は商の紂王の宗親です。紂が無道で、箕子が諫めても聞かれませんでした。人が去るよう勧めると、箕子は、諫めて聞かれないから去るのは、君の悪を明らかにして民に喜ばれることであり、自分には忍びないと言いました。そこで髪を乱し、狂ったふりをして奴となり、琴を鼓して明を晦ましたのです。

彖伝は、内難にして能く其の志を正しくす、箕子これを用うと言います。内難は外難より深い難です。内側にいて、親族、職分、責任に結ばれ、出ても留まっても難しい。箕子の明は、傷つかずに済んだのではありません。傷ついても消えなかったのです。後に周へ洪範九疇を伝えたことが、その明のなお残っていた証になります。

実際の読み方

時運は困厄の中ですが、正を長く守れば後に通ります。仕事では、主や上司が不明なので、すぐ前へ出るのは得策ではありません。功名は時事が難しく、進むより退いて守る方がよいでしょう。家では親族の不和が出やすくなります。

病では精神の混乱や狂状に注意します。訴訟は一時は正しさが通らなくても、久しければ自然に明らかになります。六五は、明を消さずに晦ます最高の爻です。

高島の占例

明治十八年、千家大教正の命で仏教の気運を占い、明夷が既済に変じる六五を得ました。仏法は本来、万世を昭明するものです。しかし今は教道が衰微し、箕子の明夷の時に似ていると高島は読みました。千家大教正は教道の貞を守り、宗旨の伝を明らかにし、釈迦の聖徳と菩提の宗風を滅ぼさないようにすべきだと説いて、これを明不可息としています。

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上爻

一言で読む

自分の不明で上った人はどうなるか。初めは高くとも、最後は地へ落ちます。

原文

上六:不明晦、初登于天、后入于地。

書き下し文

上六、明らかならずして晦し、初めは天に登り、后には地に入る。

現代語訳

明らかでなく暗いです。初めは天に登り、後には地に入ります。

爻辞の読み解き

はじめ高く上ったように見えても、最後は自分の暗さで墜ちます。上六は坤の極であり、明夷全卦の暗い主です。ここで傷つくのは有徳の人の明ではありません。本人がそもそも不明で、その上さらに晦いのです。だから不明とだけ言わず、晦と重ねます。

初め天に登るとは、自分が四方を照らすかのように高く登る姿を言います。後に地に入るとは、最後に明が地中へ落ち、身も名も失う姿です。文王や箕子の明入地とは違います。彼らは用晦して明を保ちました。上六の入地は、法を失って、真に暗へ墜ちる形です。

明夷の六爻はみな用晦を教えますが、上六だけは、凶と言わずとも凶が明らかです。上に立つ者が時勢を審らかにせず、急に登り、光がまだ遍く届かないうちに自ら敗れるなら、その禍は自ら取ったものです。

実際の読み方

時運は初めよく見えて後に悪くなりやすいので、一歩退く方が過ちは少なくなります。功名は身を晦まし、跡を隠すのがよく、自分を誇ってはいけません。経営では価格が初め高く後に下がるので、ほどよい所で収めます。

戦いでは、高所や険地を攻めて深みへ落ちるのを防ぎます。婚姻は先に富み後に貧しくなる形、家宅は前に高山、後ろに深い谷という地勢に注意します。上六は、明を隠す知恵を失って自分から暗くなる危険を示します。

高島の占例

明治二十一年、高島らは尾州熱田で石灰と粘土を焼いて作る製品の会社を興しました。後に会社の景況を占うと、明夷が賁に変じる上六が出ます。粘土を湿った地中から取るので入地、黒い土を用いるので不明晦、工人が焼成する時は天に登るようで、製品となって壁や地に用いられるので後にまた地へ入る。そう読みました。製品は美しく外国にも売れると見ています。後に同じ爻を再び得て、その象の妙を感じたと述べます。

地火明夷:読みの覚え

地火明夷は、光が傷つく卦です。今は光がないのではなく、光を平常どおりには現せません。明を蔵する術を覚える時であって、暗がりへ自分を燃やして見せる時ではありません。

明を蔵すのは負けではない

火が地の下にあります。光は確かにあるのに、環境に押さえつけられています。明夷は、自分を見失うほど惚けろと言う卦ではありません。本当の判断と鋒先を、きちんとしまっておけと言う卦です。昏い場所で無理に明るく見せれば、たいてい傷が深くなるだけです。腹を決める前に、一つ分けておきます。この光は環境に押さえられているのか、それとも自分が早く出しすぎたのか。二つでは処置がまるで違います。

暗い所で明るさを競わない

職場の抑圧、家族の無理解、世論の逆風、才が傷つく局面を問えば、明夷はまず内側の判断を守れと言います。口数を減らしても、一歩下がっても、証拠を残しておいてもかまいません。今はっきり言うべきか、本当の判断をしばらく伏せておくかは、言った後にそれを受け止められる人がいるかどうかで決めます。これは光を捨てることではありません。照らせる時が来るまで待っているだけです。しばらく表に出さないのは構いませんが、心の中の明かりまで一緒に消してしまってはいけません。

離と明夷、遯と明夷

離為火とあわせて読むと、離は光を現し、明夷は光を蔵します。向きは逆でも、扱っているのは同じ一つの火です。天山遯とあわせれば、遯は身を退けることに重きがあり、明夷は明を隠すことに重きがあります。険に処する時、この二つはよく響き合います。身を退けられるなら退き、退けない場所では、まず明るい所を収めます。文王が囚われても明を失わず、箕子が狂を装って正志を変えなかったのは、いずれもこの手でした。

地火明夷:読みの覚え札記を開く

地火明夷は、光が傷つく卦です。今は光がないのではなく、光を平常どおりには現せません。明を蔵する術を覚える時であって、暗がりへ自分を燃やして見せる時ではありません。

明を蔵すのは負けではない

火が地の下にあります。光は確かにあるのに、環境に押さえつけられています。明夷は、自分を見失うほど惚けろと言う卦ではありません。本当の判断と鋒先を、きちんとしまっておけと言う卦です。昏い場所で無理に明るく見せれば、たいてい傷が深くなるだけです。腹を決める前に、一つ分けておきます。この光は環境に押さえられているのか、それとも自分が早く出しすぎたのか。二つでは処置がまるで違います。

暗い所で明るさを競わない

職場の抑圧、家族の無理解、世論の逆風、才が傷つく局面を問えば、明夷はまず内側の判断を守れと言います。口数を減らしても、一歩下がっても、証拠を残しておいてもかまいません。今はっきり言うべきか、本当の判断をしばらく伏せておくかは、言った後にそれを受け止められる人がいるかどうかで決めます。これは光を捨てることではありません。照らせる時が来るまで待っているだけです。しばらく表に出さないのは構いませんが、心の中の明かりまで一緒に消してしまってはいけません。

離と明夷、遯と明夷

離為火とあわせて読むと、離は光を現し、明夷は光を蔵します。向きは逆でも、扱っているのは同じ一つの火です。天山遯とあわせれば、遯は身を退けることに重きがあり、明夷は明を隠すことに重きがあります。険に処する時、この二つはよく響き合います。身を退けられるなら退き、退けない場所では、まず明るい所を収めます。文王が囚われても明を失わず、箕子が狂を装って正志を変えなかったのは、いずれもこの手でした。

この卦を読む前に

本卦、動爻、問いを照らす

卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。

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本卦の問い

押さえつけられた立場では、明夷はただ我慢しろと言うのですか。

我慢する中身を分けます。しばらく表に出さないのは構いません。しかし内側の明まで消してしまってはいけません。判断と証拠と一線を保つ方が、その場で明るく見せるよりも大切です。

明を蔵すことと、暗さに染まることは、どこが違いますか。

内側が変わったかどうかで分かれます。外が柔順で、争わず、黙っているうちは、まだ明を蔵しています。正志まで環境に合わせて曲がった時、それは蔵したのではなく、灯を消したことになります。

仕事で明夷が出たら、何から手をつけますか。

多くは、才が今の環境に受け入れられないか、口を開いた途端に傷を負う場面です。まず職位、資料、体、味方を守ります。誤った場所で鋒先を出し切らないようにします。

この局面に、転機はありますか。

あります。火が地の下にあるのは、消えたからではありません。照らし出せないだけです。上の土が緩めば、光はそのまま残っています。この時期の課題は養うことと蓄えることで、すり減らすことではありません。

押さえつけられた立場では、明夷はただ我慢しろと言うのですか。開く

我慢する中身を分けます。しばらく表に出さないのは構いません。しかし内側の明まで消してしまってはいけません。判断と証拠と一線を保つ方が、その場で明るく見せるよりも大切です。

明を蔵すことと、暗さに染まることは、どこが違いますか。開く

内側が変わったかどうかで分かれます。外が柔順で、争わず、黙っているうちは、まだ明を蔵しています。正志まで環境に合わせて曲がった時、それは蔵したのではなく、灯を消したことになります。

仕事で明夷が出たら、何から手をつけますか。開く

多くは、才が今の環境に受け入れられないか、口を開いた途端に傷を負う場面です。まず職位、資料、体、味方を守ります。誤った場所で鋒先を出し切らないようにします。

この局面に、転機はありますか。開く

あります。火が地の下にあるのは、消えたからではありません。照らし出せないだけです。上の土が緩めば、光はそのまま残っています。この時期の課題は養うことと蓄えることで、すり減らすことではありません。