六十四卦 意味・読み方
地水師|意味・卦辞爻辞解説(ちすいし)
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本ページは公開資料をもとに、卦辞、彖伝、象伝、占断、爻辞、占例を現代日本語で整理したものです。
引
正しい名義、老成した指揮者、守られる規律。三つそろって、はじめて人数は力になります。
卦象と卦名
師は上が坤地、下が坎水です。水が地中に隠れているように、兵は民の中に隠れ、力は組織の中に隠れています。法度と主将があれば、水は用になり、人は師になります。法度がなければ、水は険となり、人が多いだけの乱れになります。「師」には二つの意味があります。一つは子弟を教える師、もう一つは軍旅を率いる師。どちらも、一人が衆を導くという点では変わりません。
卦の中心的な意味
この卦は訟の後に置かれます。争いが深まると、やがて一人の口論では済まず、味方、資金、組織、兵、家族、社員、世論を巻き込みます。そこで師が来ます。師が扱うのは戦争だけに限りません。会社、学校、家族、議会、プロジェクト、訴訟チーム、危機対応など、人がまとまって動く全てに及びます。
向いている問い
占って師を得たら、最初に三つを問います。この行動は正当か。誰が統帥するのか。規律は実際に守られるのか。熱気や人数で勝とうとしてはいけません。要るのは正名、任将、法度、訓練、後方支援、賞罰です。組織なら責任者、権限、予算、連絡線、役割を明らかにし、家族なら人が多いほど家法と分担を先に決めます。会社では、制度の美しさより、実際に人を率いる者が人を得ているかを見ます。師の吉は、衆が正しさに順う時に現れます。
卦辞
大勢を動かすには、正しい目的と信頼される指揮者が要ります。欠ければ吉になりません。
原文
師:貞丈人吉、無咎。
書き下し文
師は貞なり。丈人なれば吉にして、咎なし。
現代語訳
師は正しくあるべきです。丈人のように老成し経験ある人が率いるなら吉で、咎はありません。
卦辞の読み解き
大勢を動かすには、正しい目的と信頼できる指揮者が要る。卦辞が言うのは、その二つだけです。
ここでの貞は、正しい名義、正しい目的、正しい規律を指します。人を動かし、資財を費やし、時に命まで傷つけることは、軽く行えません。軍旅は、やむを得ない時にだけ用いるものです。企業やチームでも同じで、大勢を動かすなら結果を引き受ける覚悟が要ります。丈人とは、単に年を取った人ではありません。老成持重で、徳望があり、経験が深く、上から信任され、下からも服される人を指します。この丈人こそ、師卦の成敗を分ける枢軸です。衆は、放っておいて秩序になるものではありません。正しい統帥者がいて、はじめて衆は師になります。激昂させるだけの人、命令するだけで責任を取らない人、賞罰を明らかにできない人に、丈人の座は務まりません。
実際の読み方
プロジェクトでは、まず真の責任者を定めます。名ばかりのリーダーは避けます。現場を知り、上に報告でき、下を服させ、判断できる人を選びます。競争や訴訟なら、私怨で人を動かさず、名義を正します。教育や研修でも、教師には徳と法の両方が要ります。師を読む時に探すのは「誰が九二か」です。誰が本当に衆を秩序へ導けるのか。その人がいなければ、企画は始まりが賑やかでも長くは続きません。
彖曰
人が多いほど、正しい中心と規律がなければ、力どころか乱れになっていきます。
原文
師、衆也。貞、正也。能以衆正、可以王矣。剛中而応、行険而順、以此毒天下、而民従之、吉又何咎矣。
書き下し文
師は衆なり。貞は正なり。能く衆を以て正しくせば、以て王たるべし。剛中にして応じ、険を行いて順う。此を以て天下を毒すれども、民之に従う。吉なり、又何の咎かあらん。
現代語訳
師とは衆のことです。貞とは正しさです。衆を正しく用いることができれば、王者の道にかないます。剛中の者が応じられ、危険な事を行っても人々が順い、厳しく天下を治めても民が従うから、吉で咎がありません。
彖伝の読み解き
師卦は、一つの陽である九二が内卦の中にいて、五つの陰を統べる形です。上には六五の君位があり、九二はその命を受けて衆を率います。内卦の坎は険、外卦の坤は順。危険な事を行いますが、衆は正令に順います。これが「行険而順」です。「毒天下」を、ただ害するという意味に取らないのが高島の読みです。厳正な法度によって治め、役し、養うところまで含めて読みます。衆を用いるのに、甘いだけでも、残酷なだけでも足りません。法があり、糧があり、賞罰があり、道義があり、上命と民心が通じていること。それが彖伝の挙げる条件です。
実際の読み方
実際に見るのは、授権が本物か、指揮者が中を得ているか、衆が気分に流されず規律で動けるか、この三点です。上から信任されない指揮者は孤立し、下から信任されない指揮者は人が動きません。命令はあっても補給がなければ、いずれ崩れます。会社なら社長や責任者が人を得ているか。議会なら上命と民心が通じているか。家庭なら家規が皆に納得されているか。師卦が問うのは、多く集めることではなく、多くを正しく用いることです。
象曰
平日に人を受け入れ、守り、育てておくから、いざという時に集団の力が使えます。
原文
地中有水、師、君子以容民畜衆。
書き下し文
地中に水有るは師なり。君子以て民を容れ衆を畜う。
現代語訳
地中に水があるのが師です。君子はこれを見て、民を受け入れ、衆を養います。
象伝の読み解き
力は外で急に集めるものではありません。普段から人々の中に蓄えておくものです。象伝はそう言います。
地は水を包み、水は地を潤します。堤も器もない水は災いになりますが、地に含まれた水は生命を養います。兵も同じです。民の中に兵があり、平日に民を養い、教え、守り、訓練しておけば、有事に師として用いられます。これを「兵を民に蔵す」と言います。兵の利を残しつつ、兵の害を減らすやり方です。容は受け入れ、守ること。畜は養い、蓄え、訓練し、教化することです。師の根は戦場よりも、平日の養いのほうにあります。
実際の読み方
組織では、危機が来てから人を叱咤しても遅すぎます。平日に給与、訓練、文書、道具、連絡、休息、賞罰、信頼を整えます。家庭なら子弟に規矩を教え、会社ならプロセスと後方支援を作り、コミュニティや国家なら民生を安定させます。人が普段から大事にされていなければ、危機の時に順いません。用いることのできる衆は、喊び声からは生まれません。長い養成から生まれます。
占断
集団行動、規律、人選、資源の配り方を読みます。正名任賢が吉、乱衆失律が凶です。
総合的な占意
師は、人が多くなるほど危険も大きくなる卦です。金、人、派閥、感染、士気、責任、指揮系統が絡み合います。
項目別の占断
- 軍事・危機:正当な名義、統一した規律、明確な指揮が要ります。攻めるのが不利なら、退いて守っても咎はありません。
- 会社・組織:責任者、制度、定款、人選を、概念や資金より重く見ます。
- 会議・政治:上の正当な命を受け、下の民心に順ってこそ、議事と実行が続きます。
- 貿易・財運:衆人が利を争う時は、価格、運賃、在庫、競争費用を計算し、暴利だけを見ません。
- 任命・功名:大任は老成して中を得た指揮者へ渡し、伏している賢才には正式な任用を与えます。
- 婚姻・家族:親比は成り得ますが、責任、家の規則、共同目的を明らかにします。
- 健康:古占の腹中の水、寒多熱少、憂思という象に頼り切らず、早く専門診療を受けます。
六爻の要点
- 初六:動員前に規律を立て、初めの乱れを防ぎます。規律が善くなければ凶。
- 九二:指揮者が現場の中にいて中正に任事し、上からたびたび正式な命と権限を受けます。
- 六三:指揮者を誤り、複数が権を争えば大損となるため、直ちに止めます。
- 六四:無理に攻めず、退いて駐まり、隊伍を休ませ再編するので無咎です。
- 六五:害が現れたため正しく対処しますが、成熟した主将を選び、未熟な者へ権を渡しません。
- 上六:戦後は功を正しく賞し、制度を作り、小人を中枢へ入れません。
実際の読み方
会社なら社長、制度、定款、選人を見ます。議会や政治なら、上に承ける命と下に順う民心を見ます。貿易なら、衆人が利を争うほど運賃、価格、競争で利益が消えることを警戒します。危機では、退守できるなら退守し、常を失わなければそれも咎になりません。任命では、長子帥師なら吉、弟子輿尸なら凶です。
高島の占例
工業会社の成否を問う占で、高島が「定款は整っているが、社長が得人かを見なければならない」としたように、師卦の実占は人選に厳しいです。制度だけで勝てず、人だけでも勝てず、制度と指揮者が合って初めて衆が力になります。
初爻
集団行動の始まりで規律を立てそこねると、名義がよくてもそのまま凶へ転がります。
原文
初六:師出以律、否臧、凶。
書き下し文
初六、師出づるに律を以てす。臧からざれば凶なり。
現代語訳
軍を出すには規律を用います。規律が善くなければ凶です。
爻辞の読み解き
出発の第一歩で何より大切なのは、法度と手順です。
律は法、号令、節制、手順、賞罰。初爻は出師の始まりなので、まず規律を言います。軍隊が一度出る時に法度がなければ、口では善を唱えていても凶になります。衆が各自の私意で動けば、それはもう師ではなく乱です。
これは軍事に限りません。会社設立、プロジェクト開始、家族の大事、病気の治療、学びの開始。どれも初めに律が要ります。始まりで乱れたものを後から整えるのは、それだけ難しいからです。
実際の読み方
創業やプロジェクトでは、章程、予算、権限、プロセス、安全規則を先に定めます。チームで決めておくのは、誰が決めるか、誰が報告するか、何をしたら止めるかです。家事では、人が多いほど家法が要ります。病では、初めに良医を選び、勝手に薬を乱用しません。
高島の占例
ある工業会社を占った時、高島は定款だけで成敗を断ぜず、社長の選任を待つべきだとしました。初六が見るのは、制度の出発点です。見るべきは開局の美辞よりも、実際の律です。
二爻
責任者が現場の中心にいて、上の信任と下の人心を得る。その時、集団は吉へ向かいます。
原文
九二:在師中吉、無咎、王三錫命。
書き下し文
九二、師に在りて中なれば吉にして、咎なし。王三たび命を錫う。
現代語訳
師の中にいて吉です。咎はありません。王から三度も命を賜ります。
爻辞の読み解き
主将が現場の中心にいて、上から繰り返し信任を受ける。爻辞はその位置を描きます。
九二は師卦の主爻です。一つの陽が五つの陰を統べ、しかも中にいます。遠くから空命令を出すのではなく、軍中、組織の中、現場の中にいる主将です。上の六五に応じるので、君命と授権もあります。王が三たび命を賜うとは、単なる褒賞というより、権任と信任を繰り返し確認する象です。九二は「丈人」に最も近い爻です。剛だから断てます。中だから偏りません。応じているから孤立しません。師卦が恐れる、有権無徳、有徳無権、有衆無主を避けられる位置です。
実際の読み方
チームでは、責任者を現場に置き、明確な授権を与えます。管理者は人心を知り、上に報告し、下を捨てず、資源を合わせます。議会や政治では、上に信任され、下に民心を得て初めて議事が行えます。家庭でも見るところは同じで、実際に担う人が皆を服させられるかどうかです。
高島の占例
第五議会の気運を占った時、高島は上に君令を承け、下に民心へ順うことを重く見ました。九二が問うのは「中心にいる指揮者」の質です。声の大きい人ではなく、中を得た人が要ります。
三爻
不適任な人に大勢を任せれば、持ち帰るのは成果ではなく損失のほうになります。
原文
六三:師或輿尸、凶。
書き下し文
六三、師或いは尸を輿す、凶なり。
現代語訳
軍が死傷者を車に載せて帰ることがあります。凶です。
爻辞の読み解き
不適任な統率で進めば、持ち帰るのは勝利ではなく損失です。
尸を車に載せて帰るとは、敗軍、死傷、空虚な結果、大きな損失の象です。六三は陰柔不中で、坎の険の上にあり、主将にふさわしくありません。それなのに妄りに衆を動かせば、勝つどころか被害を載せて戻ります。この「尸」は商売にも読み替えられます。貨物を積んで行っても売れず、運送費だけがかさみ、利益どころか元本を傷つけます。人選や判断の失敗が、そのまま集団全体の損失になります。
実際の読み方
プロジェクトでは、責任者の資歴、判断力、権限、徳望が足りないなら止めます。投資や貿易で危ないのは、暴利話を聞いて衆が競い合う時です。価格は上がり、売値は下がり、運賃と在庫が利益を食います。チームでは、誰かが熱心だからというだけで大任を渡しません。
高島の占例
横浜の商人が箱館で舶来品を売ろうとした件では、高島が六三から、暴利の噂に群がる商人たちの損失を予見しました。六三が教えるのは、「皆が儲かると言い出した時」の危うさです。
四爻
進むべきでない時に脇へ退いて休整するのも、これはこれで立派な軍法です。
原文
六四:師左次、無咎。
書き下し文
六四、師左に次る、咎なし。
現代語訳
師が左に退いて駐まります。咎はありません。
爻辞の読み解き
正面から進まず、退いて態勢を整えるなら、それは過失になりません。
次は駐まること、左は正面ではなく脇へ退くことです。六四は陰柔で位を得ており、自分が進むべきでないことを知っています。華やかな勝利とは言えませんが、常を失わないので咎はありません。ここは休泊、退守、修整、低く構えることとして読みます。師卦が説くのは、攻めることばかりではありません。休むべき時に休み、退くべき時に退き、補給すべき時に補給します。これも軍法です。進むべきでない時に進めば、六三の輿尸になります。
実際の読み方
競争では、無理に攻めず、補給と情報整理に回ります。事業なら、延期、維持、改善、修繕を選びます。売買では、上等品でなくても、正直に扱えば一定の利があります。婚姻では、婿入りや相手側へ寄る読みもあり、それも咎とは限りません。病では、退いて休養し、生気を保ちます。
高島の占例
軍艦が帰港せず心配された占で、高島が左次を一時の休泊修繕と読んだように、六四では、遅延や退避をすぐ全凶と見ず、「未だ常を失わざる」かどうかを見ます。
五爻
対処すべき害がある時ほど、理由の正しさより、任せる人を誤らないことです。
原文
六五:田有禽、利執言、無咎。長子帥師、弟子輿尸、貞凶。
書き下し文
六五、田に禽有り。言を執るに利あり、咎なし。長子師を帥い、弟子尸を輿さば、貞なるも凶なり。
現代語訳
田に害する禽があります。問題をはっきり言葉にして処置するのに利があり、咎はありません。長子が師を率いればよいですが、弟子が率いれば尸を車に載せて帰り、正しくても凶です。
爻辞の読み解き
処置すべき対象があっても、人選を誤れば敗れます。
田の禽は、作物を害する獣や鳥であり、民を害する寇賊の象です。放置してよいものではありません。六五は君位なので、言を執り、命令を出し、討つ名義を明らかにします。
しかし爻辞は、そのすぐ後で人選を問います。長子が師を率いれば、中正で老成しているので吉。弟子が任に当たれば、未熟なまま尸を載せて帰ることになります。ここでは「使」の一字が重いところです。使者、将帥、代表の当否が、民命、国家、会社、家庭の安危を左右します。
実際の読み方
危機対応では、行動そのものは必要でも、責任者を慎重に選びます。重大プロジェクト、外交、訴訟代表、交渉、手術、資金運用を、空いているから、若いから、声が大きいからという理由で任せません。
高島の占例
朝鮮京城の事変後、日本政府の清国交渉について高島が伊藤伯を長子帥師として読んだように、六五は大任に老練で中正な人を用いるべきことを教えます。ここでの吉凶は、対象よりも人選にかかります。
上爻
事が終わったら功を正しく賞し、秩序を作ります。ただし小人に権限は渡しません。
原文
上六:大君有命、開国承家、小人勿用。
書き下し文
上六、大君命有り。国を開き家を承く。小人は用うる勿かれ。
現代語訳
大君に命があります。国を開き、家を承けさせます。小人を用いてはいけません。
爻辞の読み解き
大事が終わった後は、功績に応じて地位と責任を与える。ただし不徳の者へ権限を渡してはいけません。
師の終わりは、もう戦う時ではありません。功成り帰りて秩序を立てる時です。開国は諸侯を封ずること、承家は卿大夫の家を承けさせること。功績を認め、地位と責任を配り、戦後の制度を作る段階です。ここで最も恐れるべきは、小人の任用です。乱の中で一時役に立った人が、平時の中枢に置かれると邦を乱すことがあります。功は正しく賞すべきですが、未来の権限は慎重に与えなければなりません。
実際の読み方
プロジェクトが終わったら、経過を見直し、功労を認め、報酬や役割を整え、次の制度を作ります。会社では、便乗者や争いを煽った人に中枢を握らせません。家族では、後継、財産、役割を慎重に定めます。病気や命数の占では、上爻で帰魂的な象を取る場合があり、軽く吉とは読まない慎重さが要ります。
高島の占例
維新の功績ある人の爵位について、高島が上六から大君の命を読んだ例のように、問功名なら論功受命です。問病命なら、同じ爻でも特に慎重に扱います。
地水師:読みの覚え
地水師は、人を集めて動かす時の卦です。人数の多さではなく、正しい名義、信頼される指揮、守られる規律を見ます。
大勢は、それだけでは力にならない
師では、集団の力がそのまま吉になるわけではありません。目的が正しく、責任者が中心にいて、賞罰と補給が整って、はじめて大勢は力になります。 善意の集まりでも、指示系統がなければ混乱します。強い組織ほど、何のために動くのかをはっきりさせておきたいところです。
動かす前に、三つ確かめる
人を集める前に、次の三つを確かめます。 - この集団行動には、誰もが納得できる名義がありますか。 - 指揮を任せている人は、現場と上位の信任を得ていますか。 - 規律の不足を、勢いでごまかしていませんか。 三つのうち一つでも空欄なら、動員より先にそこを埋めます。
役割と補給を整える
チーム運営、採用、競争、プロジェクト管理では、まず役割と指示系統を明らかにします。誰が決め、誰が支え、どこから補給するのか。そこが曖昧なまま進むと、勢いはやがて疲労に変わります。
心が寄るのが先、動かすのが後
水地比とあわせて読むと、比は人心が中心へ帰ること、師は集まった人々を組織して動かすことだと分かります。心が寄っていない集団に命令を重ねても、残るのは号令だけです。雷地豫とあわせれば、師に要る規律と、豫に要る士気が見えてきます。規律だけでは冷え、士気だけでは散る。どちらが欠けても、集団は保てません。
地水師:読みの覚え札記を開く
地水師は、人を集めて動かす時の卦です。人数の多さではなく、正しい名義、信頼される指揮、守られる規律を見ます。
大勢は、それだけでは力にならない
師では、集団の力がそのまま吉になるわけではありません。目的が正しく、責任者が中心にいて、賞罰と補給が整って、はじめて大勢は力になります。 善意の集まりでも、指示系統がなければ混乱します。強い組織ほど、何のために動くのかをはっきりさせておきたいところです。
動かす前に、三つ確かめる
人を集める前に、次の三つを確かめます。 - この集団行動には、誰もが納得できる名義がありますか。 - 指揮を任せている人は、現場と上位の信任を得ていますか。 - 規律の不足を、勢いでごまかしていませんか。 三つのうち一つでも空欄なら、動員より先にそこを埋めます。
役割と補給を整える
チーム運営、採用、競争、プロジェクト管理では、まず役割と指示系統を明らかにします。誰が決め、誰が支え、どこから補給するのか。そこが曖昧なまま進むと、勢いはやがて疲労に変わります。
心が寄るのが先、動かすのが後
水地比とあわせて読むと、比は人心が中心へ帰ること、師は集まった人々を組織して動かすことだと分かります。心が寄っていない集団に命令を重ねても、残るのは号令だけです。雷地豫とあわせれば、師に要る規律と、豫に要る士気が見えてきます。規律だけでは冷え、士気だけでは散る。どちらが欠けても、集団は保てません。
この卦を読む前に
本卦、動爻、問いを照らす
卦は一ページだけで読み切るより、問いの置き方、動いた爻、六十四卦全体の流れと合わせて見ると見え方が落ち着きます。
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本卦の問い
人はそろっているのに、うまく動きません。
師では、人数はそれだけでは力になりません。名義、指揮、規律、補給のどれが欠けているかを分けて見ます。命令はあるのに補給がない、責任者はいるのに授権がない。この二つが、集団が動かない時によくある形です。
リーダーを誰にするかで迷っています。
卦辞が言う丈人は、年齢の話ではありません。老成持重で、上から信任され、下からも服される人です。九二のように現場の中にいて、判断でき、賞罰を明らかにできるかを見ます。六五が警告するとおり、未熟な人に大任を渡せば、成果の代わりに損失が返ってきます。
今回は撤退したほうがよいのでしょうか。
六四は、脇へ退いて駐まることを咎としません。進むべきでない時に無理に進めば、六三の輿尸になります。退いて補給と再編に回り、常さえ失わなければ、それも正しい軍法のうちです。
事が終わった後、論功行賞はどう考えますか。
上六は、功を正しく賞して制度を立てよと言います。ただし、賞と権限は別に考えます。乱の間に働いた人がそのまま平時の中枢に向くとは限りません。報いは厚く、権限は慎重に。これが師の締め方です。
人はそろっているのに、うまく動きません。開く
師では、人数はそれだけでは力になりません。名義、指揮、規律、補給のどれが欠けているかを分けて見ます。命令はあるのに補給がない、責任者はいるのに授権がない。この二つが、集団が動かない時によくある形です。
リーダーを誰にするかで迷っています。開く
卦辞が言う丈人は、年齢の話ではありません。老成持重で、上から信任され、下からも服される人です。九二のように現場の中にいて、判断でき、賞罰を明らかにできるかを見ます。六五が警告するとおり、未熟な人に大任を渡せば、成果の代わりに損失が返ってきます。
今回は撤退したほうがよいのでしょうか。開く
六四は、脇へ退いて駐まることを咎としません。進むべきでない時に無理に進めば、六三の輿尸になります。退いて補給と再編に回り、常さえ失わなければ、それも正しい軍法のうちです。
事が終わった後、論功行賞はどう考えますか。開く
上六は、功を正しく賞して制度を立てよと言います。ただし、賞と権限は別に考えます。乱の間に働いた人がそのまま平時の中枢に向くとは限りません。報いは厚く、権限は慎重に。これが師の締め方です。
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