高島易断
地山謙|意味・卦辞爻辞解説
地山謙䷎:一言で読む 地山謙は、実力があるのに自分を高く置かない卦です。山は本来高いのに地の中に隠れているので、長く保ち、終わりを全うできます。 現代語訳 謙は上が坤地、下が艮山です。山は本来、地の上に高くそびえるものです。しかしこの卦では山が地の中にあります。これは、才、功、位、財がある人が、それを人の上へ誇らず、低いところに置く象です。高島は「謙」を、心がつねに下へ向かい、自満せず、亢らないことと説きます。自分を屈して物の下に置くのも謙であり、自分を低くして人に従うのも謙です。
導入
一言で読む
地山謙は、実力があるのに自分を高く置かない卦です。山は本来高いのに地の中に隠れているので、長く保ち、終わりを全うできます。
現代語訳
謙は上が坤地、下が艮山です。山は本来、地の上に高くそびえるものです。しかしこの卦では山が地の中にあります。これは、才、功、位、財がある人が、それを人の上へ誇らず、低いところに置く象です。高島は「謙」を、心がつねに下へ向かい、自満せず、亢らないことと説きます。自分を屈して物の下に置くのも謙であり、自分を低くして人に従うのも謙です。
この卦は大有の後に来ます。大きく所有した者は、満ちすぎてはいけません。富、名声、地位、能力を持った後に、なお謙でいられるか。これが大有を保つ方法です。謙は、弱くなることでも、意見をなくすことでも、何でも譲ることでもありません。高いものを自分で低く置き、余ったものを足りないところへ回し、強さを人に圧として使わないことです。
実際の読み方
仕事では、有能な人が功を独り占めせず、部下や協力者へ功績を分ける時です。名声を問えば、自慢しないほど長く残ります。家庭では、貢献を理由に人を圧しません。共同事業では、利益、負担、権限を公平に量ります。修身では、力が増した時ほど自分を小さく保ちます。
謙卦は六爻に吉が多い卦です。それは謙が不思議な幸運を呼ぶからではありません。満ちすぎを自分で削り、足りないものを補い、周囲の怨みを減らし、終わりまで続けられる形を作るからです。
卦辞
一言で読む
実力や功を低く置ける人は、始めだけでなく終わりまで道を保てます。
現代語訳
謙は通ります。君子は終わりを全うできます。謙は低く退くことを義とします。内には艮の止があり、外には坤の順があります。内で止まり、外で順う。高いものを屈して低いところに置く。だから通じます。高島は、小人は少し得るとすぐ満ち、小さな成功を泰と思い、満てば結局を保てないと説きます。君子は尊くても低く、高くても下り、心を小さくするほど道が大きくなります。
卦辞には「吉」とは明言されません。しかし「有終」の中に吉が含まれています。世の多くの事は、始めは通っても終わりまで通ることが少ない。謙は、最後まで保つための徳です。
実際の読み方
事業では、謙は不進ではありません。低姿勢で着実に進むことです。名声では、功を自分から誇らず、人が自然に認めるようにします。協力では、譲るところは譲り、相手を尊重し、余地を残すほど成りやすくなります。家庭では、自分の貢献を武器にしません。
謙を読む時は、「終わりを保てるか」を見ます。始めに勢いがあることより、有功、有財、有権、有名になった後も、驕らず、満ちすぎず、人を圧しないかが大事です。口だけ謙虚で心は勝ち負けに燃えているなら、謙ではありません。
彖伝
一言で読む
満ちすぎは削られ、低く受けるものは助けられるので、謙は長く通る道になります。
現代語訳
謙は通ります。天の道は下へ助けて光明となり、地の道は低くして上へ行きます。天の道は満ちたものを欠けさせ、謙を益します。地の道は満ちたものを変じて謙へ流し、鬼神は満ちたものを害して謙に福を与え、人の道は満ちたものを憎み、謙を好みます。謙は尊くても光り、卑くても越えられません。これが君子の終わりです。
天は高いのに、その気を下へ降ろして地を助けます。地は低いのに、その気を上へ伸ばして天に交わります。謙は、この上下が助け合う道です。
高島は、満ちたものが損なわれる例を、日月の晦明、山川の変化、奸雄の末路、暴富が怨みを集める姿に見ます。満ちきれば自然も人もそれを削ります。謙とは、外から削られる前に、自分で低くして通路を作る徳です。
実際の読み方
高い位置の人は、下に問う、下を助ける、現場に下りることが必要です。低い位置の人は、卑屈になるのではなく、低さをもって受け、上へ伸びる力を持ちます。組織では、上位が圧するだけ、下位が恨むだけなら謙ではありません。上下が流通する時に謙になります。
「謙尊にして光り、卑くして逾ゆべからず」という言葉も重要です。尊い人が謙であれば、かえって光が増します。低い人が正しく謙であれば、誰も踏み越えられません。謙は自分を消すことではなく、位置を整えて道を長くすることです。
象伝
一言で読む
謙は態度だけでなく、多い所を減らし少ない所へ補う公平な配分として現れます。
現代語訳
地の中に山があるのが謙です。君子はこれを見て、多いものを減らし、少ないものを益し、物を量って施しを公平にします。山は高いのに地の中に含まれ、外からは高さを誇りません。高島は、人が近くから小さな丘を見ると高く見え、遠くから千仞の高山を見ると平らにも見えると言います。地が山を包むことこそ謙です。
君子はここから、分配の道を学びます。多すぎるところから少し削り、足りないところへ補う。物の軽重を量り、相応に施す。謙は態度だけではありません。利益、名声、権限、責任をどう整えるかという実務です。
実際の読み方
資源の多い人は少し譲ります。資源の少ない人には必要な補いをします。リーダーは功績を下の人へ分けます。富家は弱い者を顧みます。共同事業では、出資、労力、リスク、信用を量って配分します。家族でも、介護、家計、子育ての負担を公平に見ます。
口先で謙虚と言いながら、利益配分が歪んでいれば謙はありません。逆に、多いところを少し削り、少ないところへ回し、強弱を調えて平らにするなら、謙徳は現実になります。
占断
一言で読む
謙を得た時は、平順、漸進、低くして助けを得ること、持久、有終を読みます。和に利があり、争いと取り尽くしを嫌います。
現代語訳
高島の占断では、時運は目下平順で、一歩一歩高まる象があります。商業では物価が均平で利益は順適、長く保てます。家宅は山麓に近いことがあり、家道は平順で利があります。戦いでは、陣を山に近づけ、隊伍を整え、賞罰を厳明にします。五爻なら進軍でき、上爻なら城邑を討つ読みがあります。訴訟は平和に収めるべきで、争いに利はありません。病は内に鬱する症で、心を広くし調治します。失物は積土の中を探すことがあります。年成は風雨が調い、豊かすぎず乏しすぎず平平です。
各爻は謙の深さを示します。初六は謙の上にさらに謙で、大川も渡れます。六二は鳴謙で、徳が内に積もり名が自然に聞こえます。九三は労謙で、功があっても居らない主爻です。六四は撝謙で、謙を施策に用います。六五は不富以其鄰で、柔だけでなく必要なら剛断も用います。上六は鳴謙ですが、志がまだ得られず、内部を整える爻です。
実際の読み方
事業では、まず低い姿勢で根を張ります。共同事業では、公平な分配と余地が大事です。競争では、軽く兵を動かさず、まず隊伍と賞罰を整えます。病や心身では、鬱結をほどき、急に攻めず調えます。関係では、一歩退くことは負けではなく、長く続けるための通路です。
謙の実占は、勝つことより終わりを保つことを重んじます。今少し譲ることで、後の大きな損を避けられるなら、それが謙の吉です。
初爻
一言で読む
低いところでさらに謙を重ねる人は、その慎みで大きな危険も渡れます。
現代語訳
謙に謙を重ねる君子です。それを用いて大川を渡れば吉です。初六は柔で最下にあり、謙卦の初めです。まさに謙の中の謙です。利益を先に言うのではなく、謙の道を用いて険を渡るから、おのずから宜しくなるのです。江海を渡るような危険は、軽率に急いで進めば失いやすく、寛やかで慎重なら患いが少なくなります。
象伝の「卑くして自ら牧す」は、自分の心を牛馬を牧するように制することです。争って先へ出ようとする心、誇ろうとする心、焦る心を、低く保ちます。
実際の読み方
事業では、低い姿勢で難しい仕事に取りかかれば通ります。商売の初めは、謙虚に慎み、大利を得る可能性があります。家宅では、苦労して家を興し、資産を積みます。訴訟では、双方が費やし傷つきやすいので慎みます。
ある県の勧業課長が、種牛購入、畜牧改良、桑園、蚕業、米麦良種の収集で農業を振興したいと問うた時、高島は初六を得ました。上位者が下民のために、貴い身で賤事を謀るのは謙にかなうとし、事業は大きく難しくても、農桑牧畜の泥の中へ自ら下りれば成功すると読みました。初六は、口先ではなく身体で下へ行く謙です。
二爻
一言で読む
本物の謙徳は自分で宣伝しなくても自然に伝わり、正しく守れば吉になります。
現代語訳
謙が鳴ります。正しければ吉です。六二は柔順中正で、九三に比し、六五に応じます。九三の剛に服し、六五の柔に従うことができるので、謙名は遠近へ伝わります。高島は、鳴謙を自分から「私は謙虚です」と言うことではないと強く見ます。徳が内に積もり、名声が自然に外へ響くのです。
名を求めて謙を装えば、それは沽名です。名と実が合って初めて貞吉です。謙の声は、自慢の声ではなく、周囲が感じ取って伝える声です。
実際の読み方
時運では名声が起こり、得意があります。商業では利を得ます。家宅では蓄えがあり、外名もよいです。戦いでは鼓を鳴らして直進し、中軍を攻めて勝つ読みがあります。病は心労の過ぎを見ます。功名や試験では名を得る喜びがあります。
井田氏の爵賞を友人が願い出ようとした時、高島は六二を得て、功高くして低位にある謙であり、朋友が代わって申し立てるのは鳴謙が上に達する象だと読みました。また求学の書生にも、虚心に師に従えば名誉が後から自然に出ると読みました。六二は、本物の名声が内から鳴る爻です。
三爻
一言で読む
大きな功労がある人ほど、その功に居座らなければ終わりまで吉を保てます。
現代語訳
労して謙である君子です。終わりがあり、吉です。九三は全卦で唯一の陽で、衆陰の中にいます。多くの陰がこれに順うため、一人が信任され、万民が帰服する象があります。力も功も労もあります。しかし自分で功を伐らず、人に恩を着せず、功績を自分の所有にしません。高島は、身が険難にあり、動いて恐れを知ることを労謙と見ます。
労して労を誇らず、功あって功に据わらない。そうであれば、天下にその功を争う者がいません。だから有終吉です。謙卦の主爻であり、最も実務的な謙です。
実際の読み方
時運では、長い苦労の後に通達し、老運がさらによいと読みます。商業では、辛苦の経営の後、基業が成り長く利を得ます。家宅では、苦労して家を興し、持盈保泰します。病では労弱に注意します。功名では、労績によって登用されます。
高島は国家の例で、維新の諸侯や臣子が王事に勤労し、封土を奉還し、郡県へ改め、有功でも自ら誇らない姿を労謙と見ています。ただし、功ある者が過度に退隠し、国家の召しに応じないと、不平の徒に利用されることもあります。九三は、有功不居はよいが、担うべき時に逃げすぎてもいけないと教えます。
四爻
一言で読む
謙を心の中だけで終わらせず、用人や制度として実際に施せば何事にも利があります。
現代語訳
利のないものはありません。謙を施し発揮します。六四は大臣の位置にあり、上には柔順で謙徳の君、下には労謙で功ある九三がいます。その間に正位でいるので、上に疑われず、下に忌まれません。だから無不利です。「撝」は振るう、施す、発揮する意味です。高島は、謙をただ心に持つだけでなく、法則にかなって用いることと読みます。
この爻の謙は、口の柔らかさではありません。賢者を立てる、功を分ける、権限を委ねる、低い声を聞く、制度を整える。謙が実際の動きになります。
実際の読み方
時運では好運に当たり、万事吉です。商業では、適切な指揮に従えば利がありますが、売買には余地を残します。家宅では、家中が謙和に事を行い順です。戦いでは指揮が意のままに行き、大勝を得ます。病では、表へ散らす治療を考えます。
明治二十二年、ある院の気運を占って高島は六四を得ました。謙卦では九三の一陽が衆の宗となるので、衆賢の集まる場所に、九三のような有功で下にいる人を登用すべきと読みました。撝謙とは、虚心に賢を求め、さらに信任して任用することです。
五爻
一言で読む
高位にいて富を誇らず隣と同心し、必要な時は境界を守る剛断も用います。
現代語訳
富まず、隣とともにします。侵伐に用いるのに利があり、利のないものはありません。六五は尊位にあり、柔中の徳を持ちます。「不富」は貧しいという意味ではありません。爵位、財、権勢を自慢の富にしないことです。「以其鄰」は、臣隣と心を合わせて治を図ることです。君が謙順で、高さを誇らなければ、人心は帰ります。
ただし謙は一味の柔和ではありません。柔らかすぎれば、軽慢し服さない者が出ます。そこで「利用侵伐」と言います。高島は、柔を剛で済い、威徳をともに明らかにすべきと読みます。これは好戦ではなく、境界を守る剛です。
実際の読み方
時運では正運にありますが、齟齬があるなら奮い立つ必要があります。商業では、得た利益を他人に取られて揉めないようにします。家宅では、よい隣を選び、守望相助を重んじます。婚姻では近隣の縁に利があります。病では攻めて消す治療を取る場合があります。訴訟では隣人の証言で理を得ることもあります。
高島は国家や台湾施政の占で六五を用い、政府が寛厚に人民を撫育しても、自由を放縦と誤る者、官吏に抗する凶悍な者があれば、ただ姑息にしてはいけないと読みました。六五は、温柔と境界を併せ持つ謙です。
上爻
一言で読む
謙が極まっても内側が整わないなら、外へ強がらず自分の範囲を整えるべきです。
現代語訳
謙が鳴ります。軍を動かし、邑国を征するのに利があります。上六は謙の極みで、再び鳴謙と言います。しかし六二の鳴謙が、誠が中に満ちて自然に外へ響くものだったのに対し、上六は極にいて志がまだ十分に得られず、平らかでないために鳴く面があります。柔が上にあり、柔だけでは物事を収束できません。そこで師を行います。
ただし征するのは「邑国」です。これは自分の範囲内の小国、小集団、内部の不服です。大規模に外へ強引に攻める意味ではありません。謙の最後は、虚名に安んじるのではなく、内側の乱れを整えるところへ向かいます。
実際の読み方
時運では盛りを過ぎ、すぐ得意とは限りません。商業では名はあっても実が薄く、旧業を整える必要があります。家宅では怪しい音や不安を整理し、鎮めます。病では自ら心志を調えます。内部統制、後継、家内の不服、部署内の混乱に向く爻です。
明治九年のある占で、高島は上六を、有功の大臣が高位を辞し山林に隠れ、天下がその謙徳を称えるが、長く召しに応じず疑わしい跡があれば、朝廷はやむなく声罪して討つ、と読みました。後に西海と東京で事が起こり、高島は天命の畏るべきを感じたと述べています。上六は、退きすぎて内部の不平を生むなら、最後は整頓が必要になると示します。
地山謙:読みの覚え
地山謙は、実力を低く置く卦です。自分を小さく見せる技巧ではなく、高いものを下げ、足りない所へ補う働きです。
低く置くから、長く保てる
謙は態度の美徳にとどまりません。功があっても居座らず、余ったものを減らし、少ない所へ行き渡らせるから、終わりまで保てます。
低くすることは、逃げでも自己否定でもありません。力を場に合わせて置き直す、静かな調整力です。
立てておきたい問い
- 私は功績を、次の仕事の土台にしていますか。 - 低くすることが、逃げや自己否定になっていませんか。 - 多すぎる所から少ない所へ、何を移せますか。
場を立てて、仕事を進める
昇進、表彰、交渉、家庭内の調整では、まず相手と場を立てます。謙は遠慮し続けることではなく、必要な時には静かに実務を進める力です。
あわせて読む
雷天大壮は力が盛んな卦で、謙はその力を低くして保つ卦です。山沢損と読むと、何を減らすことが本当の均衡かが見えてきます。
本卦の問い
私は功績を、次の仕事の土台にしていますか。
功績を看板にして居座るより、次の人や次の仕事が育つ土台にします。謙は、成果を消すのではなく循環させる卦です。
低くすることが、逃げや自己否定になっていませんか。
本当の謙は、力を隠して消えることではありません。必要な仕事を引き受けながら、余計な自己主張を下げることです。
多すぎる所から少ない所へ、何を移せますか。
時間、発言権、資源、注目、手柄を見ます。多い所から少ない所へ少し移すだけで、場の均衡が戻ることがあります。
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